最強のライブバンドだったビートルズ~ 映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』【横山シンスケ連載】

コラム | 2016.09.19 17:00

毎回このコラムであのバンドが好きだこのアーティストが好きだと、あれも好きこれも好きばかり書いて節操がないように見られてるが、ひとつだけ選べと言われたら即座に「ビートルズ」と答える。レコードを1枚だけ選べと言われたら「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」と即答する。もう1枚選べと言われたら「マジカル・ミステリー・ツアー」と答え、もう一枚と言われたら「リボルバー」と答え、もう一枚と言われたら「ラバーソウル」と答える。

ビートルズは圧倒的だ。

50年も前の曲なのにビートルズが流れると今も世界中の老若男女をゴキゲンな気分にさせる。そんなアーティストはやはりビートルズ以外にいない。

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夢中になった頃、なぜこんなにまで凄いのか本気で不思議になり、子供なりに分析した事があるが理由はシンプルだった。

・名曲をすぐ作詞作曲できる天才が2人もいる(途中からジョージも!)
・全員歌えて全員天性の歌声
・全員見事にチャーミングなルックス

ほら、こんなにシンプルだが実は50年以上経った今もこれを全クリアしてるアーティストはひとつも存在しない。だからいまだに誰ひとりビートルズを超えていない。

もっと言うと、ビートルズを上回るもの自体もこの世には存在しない。大げさじゃない。音楽だけじゃないのだ。この世のもの全てでビートルズを超えるものはない。

ビートルズ公式としてはなんと46年ぶりとなるこの映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』を観れば音楽やエンターテイメントだけでなく、直接ではなくてもビートルズが世の中のあらゆるものに影響を与え、世界を変えていった事がよくわかる。

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映画の中でビートルズの現役ファンだった黒人の映画女優ウーピー・ゴールドバーグは、「『ビートルズが好き』という同じ思いだけで人種や国や差別(黒人など人種で席分けするような会場での演奏をビートルズは断固拒否した)までも全てがふっ飛び、世界中の若者を『自由』という気持ちでひとつにした。ビートルズはそれくらい圧倒的だった」とティーンエイジャーの頃のように楽しそうに思い出を語っている。

ビートルズはその楽曲以外にも4人の発言や行動、考え方や見た目、そのパフォーマンスすべてが世界中を動かしていたのだ。

今回この映画が最高なのはテーマが、ビートルズ全体のヒストリー映画でなく、63年から66年のライブ活動をやめるまでのアグレッシブな初期ピークでもあるライブバンドとしてのビートルズに焦点を絞っているところだ。

全レコード作品はもう全て歴史的な世界遺産みたいなものになってしまってるが、そもそもビートルズは物凄いライブバンドなのだ。

映画のフライヤーでトライセラトップスの和田唱さんも書いてたが、ビートルズは演奏が下手だったという腹立たしい一般の通説が真っ赤なウソだという事実がこの映画で見事に晴らされる。超カッコよくて素晴らしいライブ演奏が爆音で沢山観れてホントに最高だった。

実際映画の中でポールも、自分達はすぐ大ブレイクしたと勘違いされてるが、長い下積み時代があって毎日クラブで8時間(!)ライブ演奏していた。そこで演奏力も客を惹きつけるパフォーマンス力も全て身につけたと語っている。

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4人のプレイヤーとしての見事なテクニックと楽曲のクオリティの高さ。ひとつのマイクにあえてふたりでフロントの3人が代わる代わる見事なコーラスをキメる。シャウトしながら首を振って髪を振り乱し女のコ達を熱狂させる。曲によってメインボーカルもどんどん代わる。MCも役割分担し、ポールが女のコにウケそうな事を言うと、次の間でジョンがブラックジョーク交じりのエキセントリックなMCで盛り上げる。

何度も言うがこんな事を全部オリジナルでやれてるライブバンドはいまだにいない。ビートルズは世界最高のロックバンドである前に世界最強のライブバンドだったのだ。

今回は映画の後で劇場限定で65年の56,000人以上集めたシェイ・スタジアムでの30分のライブ映像も観る事ができる。

若い頃から何度も観てきた映像だが、今あらためて大きなスクリーンでジョンとポールがひとつのマイクでふたりで唄うとこを観てると夢を見てるみたいな気分になり、胸がいっぱいになる。

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個別の回想インタビューで4人全員が口を揃えて言ってたある共通点がある。

それは、「自分たちは4人が互いを信頼し合いどんな事も全て4人で決めていた。互いを助け合い尊重し4人で必死で努力し高めあっていた」という事だった。

才能よりビジネスより何より、ビートルズが最強だった理由はそのシンプルな“4人の絆”だったんだと気付かされる映画だった。

映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years』

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ザ・ビートルズの驚異的な初期のキャリアを描き、1970年の『レット・イット・ビー』以来46年ぶり、『ザ・ビートルズ・アンソロジー』から実に21年ぶりとなるアップル公式作品。監督はロン・ハワード。
9月22日(木・祝)より角川シネマ有楽町ほか全国公開
(C)Apple Corps Limited. All Rights Reserved.

■参照リンク
映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years』公式サイト
http://thebeatles-eightdaysaweek.jp/

横山シンスケ

お台場のイベントハウス「東京カルチャーカルチャー」店長・プロデューサー。その前10年くらい新宿ロフトプラスワンのプロデューサーや店長。前記の通りビートルズの中期が特に好き。一番好きな曲は「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」。
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