ピアノゾンビ シャイの爆発10周年【横山シンスケのライブオアダイ】連載:第4回

2017.09.1615:00

高校生の時、友達が出る高校生バンドを集めたライブを見に友達とライブハウスに行った。
いくつかのバンドが出る対バンライブで、友達のバンドは最後の方だったので、それまで他のバンドを観ていた。
そしたらパンクっぽい感じのバンドが出てきて、バンドの演奏が始まったら、突然客席の後ろからモヒカンで白塗りで、鋲を付けまくった学生服を着たボーカルと思われる男が絶叫しながらステージに上がってきた。
男は「ブッつぶせ!」「壊れろ!」とか叫びながら、みんな引いて客のいなくなったステージ前の客席に何度も思い切りダイブし、自分の学生服についた鋲で自分でケガをして血を流しながらも、踊り叫びながら客をあおり続けた。
それでいつ歌い出すんだろう?と思って見てたら、ギターを弾いていた男が歌い出したので、僕と友達もまわりの客達も「ボーカルじゃないのかよ!?」「じゃあアイツ何なんだよ!?!?」と、みんな心の中でツッコミながら嘲笑気味になっていたが、クールに演奏が続けられる中、その演奏には何も参加せず、ひとり一生懸命に客をあおり続け、暴れ踊り叫び続けるその白塗りモヒカンにみんな目が釘付けになっていた。
そしてある曲の途中で「でもまだ童貞なんだ!」と白塗りモヒカンは叫び、また客席にダイビングしようとしたが、モニターに足が引っかかり、思いっきり床に全身が叩きつけられ、そのままマジで起き上がれなくなりグッタリしてしまった。そしてその白塗りモヒカンは同級生と思われる仲間達に担ぎ出されていなくなったが、まあ元々演奏には関係ないので、ライブは続けられ、そして終わった。とてもいい演奏でとてもいいバンドだった。

僕は一緒に観ていた友達と話した。
僕「なんか凄かったね。」
友達「うん、凄かった。」
僕「でも結局アイツ何だったんだろうね?」
友達「うん、アイツ何だったんだろうな。」
僕「でも、アイツなんか伝わってくるものがあったね。」
友達「うん、最高だった。アイツきっとイイ奴だと思う。」

全部終わった後で、ライブで出てた友達にその事を話すと、その友達も凄く気になったようで、その白塗りモヒカンのバンドのメンバーに話しかけて色々聞いてみたところ、そのメンバーは、あの白塗りモヒカンとバンドを始めようとしたものの、白塗りモヒカンはどの楽器もうまく弾けず、歌も超音痴で、とにかく何にもできなかったけど、仲間とバンドをやりたいという熱意だけは誰よりも強かったので、じゃあなんか適当に踊ってれば?と言ったら、次の日突然頭をモヒカンにしてきて、自ら白塗りや奇抜な格好をし始めて、こうなったのだそうだ。
ちなみに聞くと、白塗りモヒカンはシャイだけど友達思いのとてもイイ奴で、そして、メンバーの中でただ一人まだ童貞だという事だった。
僕と友達はその話を聞いて、その白塗りモヒカンの事がますます好きになってしまった。

書き出すと懐かしくて、前置きの話しがあまりに長くなったが、僕はピアノゾンビを見る度に、どうしてもあの高校生の時に見た白塗りモヒカンのバンドを思い出してしまう。

初めてピアノゾンビを見た時に思った事は、その素晴らしい楽曲とカッコいいパフォーマンスの中で、ひとり(正確には二人だが)異彩を放つ、というか、ピアノゾンビを初めて見た人はきっとみんな同じ事を思ったと思うが、それは「この白塗りの人はいったい何なんだ?」という事だった。

ホネヌキマン

ホネヌキマン

気になってすぐ調べたら、ホネヌキマンという名前で、バンドの役割は「大王」という事だった。「ああ、フザケてるな」と思ったが、気になっていたのはそんな事ではなく、要するに「この人は何をやってるんだ?」という事だった。

ピアノゾンビというバンド名なのに、音源をいくら聞き込んでもピアノの音はほとんど聞こえてこない。PVやライブ映像を見ても、ホネヌキマンの前に一応キーボードはあり、キーボードを弾くパフォーマンスも見せるも、歌ったり踊ったりあおったり寸劇をやる方がメインだ。つまり演奏ではなく、お客さんを楽しませる事がホネヌキマンの役割だという事がやっとわかった。
「何なんだこのバンドは」「何なんだ他のバンドではありえないホネヌキマンの役割は」そう思った時に、僕はふとあの高校生の時に見た白塗りモヒカンのバンドの事を思い出した。今思うと、あの高校生バンドは、あのシャイな白塗りモヒカンがいたからこそ成り立っていた。
そうか、ピアノゾンビのその“他のバンドではありえない事”は、ピアノゾンビの“他のバンドにはない最大の魅力で最大の武器”なんだ。そう気付いたのだった。

ピアノゾンビは楽器メンバー全員が抜群の演奏力を持ち、ボーカルのアキパンマンも素晴らしい声と歌唱力とメロディーセンスの持ち主だ。
楽曲のクオリティは昔からズバ抜けている。いくつかの代表曲やシングル曲は全てカッコよくてポップな名曲揃いで、どのアルバムも捨て曲なしと言い切っていい作品ばかりだ。
でも、ピアノゾンビの最大の魅力は、という事になると、やはりそこにホネヌキマンとGEBOKUが加わった、あの破天荒かつエンタメなライブという事になる。
ライブで素晴らしい楽曲達が抜群の演奏力とカッコいいパフォーマンスで繰り広げられる中、何が起きるか・何をしでかすか分からないホネヌキマンとGEBOKUのハチャメチャなパフォーマンスは、一度見たら忘れられず、カッコいいバンドグルーヴと共に病みつきになり、みんなそのゾンビの祭りにハマってしまうのだ。

ピアノゾンビの結成10周年目のニューアルバム「ほねざんまい」が発売になった。
このジャケットを見てほしい。ホントにフザけてる。

ほねざんまい ピアノゾンビがその素晴らしい活動の10年目にしてたどり着いたのがコレというのが、清々しくもバカバカしくもあるが、10周してカッコよく見える。
今回も中身は全曲が名曲揃いで、超カッコいいキラーチューン「feeling」から始まり、パンク、メタル、音頭、和モノ、ディスコポップ、青春ソング、そしてホネヌキマンの赤裸々な告白が泣けるラップなど、まさに“音楽ざんまい”で、ピアノゾンビのその音楽家としての実力と多彩なセンスが一気に大放出された最高の作品だった。

■【Music Video】feeling/ピアノゾンビ

ピアノゾンビの、いち音楽アーティストとしても非常にハイレベルなこの作品を聴きながら、このあまりにフザけたジャケット写真を見てると、ピアノゾンビが普通のロックバンドのようにスマートにカッコよくしていれば、そのままハマるバンドなのに、意図的にそれを避けてきているような気がする。ただの照れ隠しなのかも知れない。

きっと、ピアノゾンビのあらゆる面でのこういうフザけ方も、あのハチャメチャなパフォーマンスも、要するにホネヌキマンとGEBOKUを含む、センスと才能と実力にあふれた凄いバンドの照れの裏返し、というか、もう照れの爆発なんだと思った。
いつか見た、あの白塗りモヒカンのように、シャイを爆発させ、それを最上級のエンタテイメントにしてしまっている。それがピアノゾンビなんだと思った。

■【Music Video】社長さんの歌/ピアノゾンビ

今月の最終日にZEPP東京で行なわれるピアノゾンビの結成10周年と「ほねざんまい」発売を記念した過去最大規模のワンマンライブで、そのピアノゾンビのシャイは過去最大の爆発をする。

RELEASE

NEW ALBUM「ほねざんまい」
NOW ON SALE

横山シンスケ

渋谷のイベントライブハウス「東京カルチャーカルチャー」店長・プロデューサー。その前10年くらい新宿ロフトプラスワンのプロデューサーや店長。イベント企画、司会、ライターもやってます。
この「DI:GA online」で僕と同じ頃からホネヌキマンもコラム連載してたので、勝手に同期と思ってライバル視してました(笑)。ピアノゾンビが目標とするのが「世界平和」ってホント最高ですよね。
横山シンスケ ツイッター:https://twitter.com/shinsuke4586
東京カルチャーカルチャー:http://tcc.nifty.com/