Creepy Nuts「ここまで来た」と「ここから始まる」が交差する記念すべきツアーファイナル

ライブレポート | 2017.04.17 17:20

PHOTO:有高唯之

Creepy Nuts 全国ツアー2017「いつかのエキストラ、ライブオンステージ。」
2017年4月9日(日)LIQUIDROOM
TEXT:兵庫慎司
PHOTO:有高唯之/東美樹

セカンド・ミニ・アルバム『助演男優賞』のリリース・ツアー。全国各地をゲストありの2マンで回ってきて、最後の東京公演のみワンマン、超満員のリキッドルーム。
『助演男優賞』の5曲、ファースト・ミニアルバム『たりないふたり』の5曲、それ以前にコンピに提供した、初めてCreepy Nutsとして録音した曲、それぞれのソロ曲、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのトリビュート・アルバムに提供した「リライト」のカバー、R-指定の「聖徳太子フリースタイル」とDJ松永の「ルーティーン」まで含めて本編15曲、アンコール2曲の全17曲がプレイされた。

「聖徳太子フリースタイル」とは、フロアからお題をもらってそれを全部入れてフリースタイルをやるというR-指定の得意技で、普段より多い7人からお題をもらう。地方ではお題を全部拾えなかった公演もあったと自白していたが、この日は7つすべて見事クリア。DJ松永がそのスキルを見せつける「ルーティーン」では、フロア左横のスクリーンに彼の手元がアップで映された。なお、R-指定とフロアから、27歳童貞ネタで大いにいじられてからプレイに入った。

PHOTO:東美樹

PHOTO:東美樹

ここリキッドルームは、3年前にMCバトルの大会で、対戦相手から「おまえのワンマンガラガラだった」と言われた場所であり、その時「じゃあ俺がリキッドルーム、ワンマンでパンパンにしてやるわ!」と返した、それがこうして実現してうれしい──と、最初のMCでR-指定は笑顔を見せる。ちなみに後半のMCでは、その相手はDOTAMAだったことと、「リキッドルームをパンパンにしてやる」のあとに「その時おまえはラップやめてる」と言ったけどそっちは外れた、ということを、やはり笑顔で明かした。

彼らの目線で書いた「教祖誕生」は、「ネット評論家の守護霊を自分に下ろします」という体で披露した。次の、さまざまなラッパーになりきる「みんなちがって、みんないい。」も、そのまま憑依モード。

本編後半、『助演男優賞』の4曲目と5曲目の流れそのままの「朝焼け」「未来予想図」では、曲に入る前にシリアスな解説をはさむ。「朝焼け」では、根暗な自分たちがヒップホップという“いかつい”表現を選んだ理由と、そうしたらどのような道を歩むことになったか、という話。「未来予想図」では、リリックの内容どおりの「今フリースタイルブームで持ち上げられてるけど、ブームは必ず終わる、そうしたらどうするか」という内容。

本編ラストでやったR-指定のソロ曲「イマジン」は、DOTAMAに言われたガラガラのワンマンでも最後にやった曲だったという。

アジカンの「リライト」をやったのは、アンコールの1曲目。自分たち世代だったら当然、と思ってこの曲を選んだらまだ空いていた、ほかのバンドはこんな代表曲はあえて避けるということにあとで気づいて「しまった」と思った、という前置きで笑わせ、曲に入るとサビで大合唱を巻き起こす。

そして、事前にDJ松永がツイッターで「私事ではありますが、この日に重大発表をさせていただきます」とあおっていた、その発表タイム。「私事」という言葉に「まさかの童貞喪失?」という読みが渦巻いていたフロアに向かって(「イヤー!」と叫んでいた女の子がいたのには笑った)、ソニー・ミュージックからのメジャーデビューを発表した。

環境が変化しても自分たちは変わらずこんな奴らである、と最後に「使えない奴ら」でしめくくった。

PHOTO:東美樹

というふうに、もういろんな意味でドラマ性に満ちていた……いや、「ドラマ」というと作り物っぽく思われるか。ドキュメント性に満ちていたからこそ、とてもドラマチックな時間だった、と言った方がいいかもしれない。とにかく、そのような、はてしなく生々しい時間だった。彼らにとってのひとつの到達点のはずだし、今日この日までの軌跡を描いてきたライブでもあったのに、「これまで」よりも「これから」を強く感じさせる時間だった。

ダサい。情けない。イケてない。ふがいない。どうしようもない。このままじゃまずい。こう受け取られたらどうしよう。こんなふうに思われたらどうしよう。こう否定されたらどうしよう。などなどの、ありとあらゆる「人に言われたくないこと」を、自分で先に言う。指摘される前に自分であげつらう。疑われる前に自分で疑う。

そんなCreepy Nutsの戦い方を浴びせられると、聴き手はどうなるのか。すべてが「で、おまえは?」という問いとして戻ってくるのだ。こちらの上から目線が封じられる。対岸の火事だと思っていたら否応なしに向こう岸に渡らされる。笑いどころもなごみどころもいっぱいあったけど、それ以上にそんなヒリヒリ感に終始やられ続けたステージだった。

あと思ったこと。
ネットで評論家を気取る連中の目線で書かれた「教祖誕生」。SNSとかにいろいろ書かれて心底腹が立ったから書いた曲だ、みたいなことをR-指定は言っていたし、そのとおりなのだろうし、僕も同意する(いろいろ書かれることが多いもんんで)。

ただ、R-指定は、そんな自分を心底いらだたせる彼らのことを、まるで自分のようだと感じているところは、確実にあると思う。で、そういう人だからこそすばらしいし、日本のヒップホップとして「どまんなかだけど異端、だから可能性がある」という今のポジションをつかみ取れたのだろう、とも思う。

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