美里祭り2008 東京ブギウギキッス Special Interview

渡辺美里の新たなる挑戦。初の東京野外ワンマンで“夏祭り”を開催!

デビューの翌年である1986年、当時まだ20歳だった渡辺美里は、女性アーティスト単独として初となるスタジアム・ライブに挑んだ。場所は西武球場。以来20年間、その場所は毎年必ず美里ファンが全国各地から集結する夏祭りの聖地となった。そして“伝説”は、2005年8月6日、“スタジアム伝説〜最終章〜NO SIDE”と銘打たれた公演でその幕を閉じた。

動向が注目されたその翌年の夏、美里は新天地を求めて模索する。“美里祭り2006!in 山中湖〜初富士・美里・夏が来た!〜”と題した公演は、富士山の麓、山中湖にできた新会場のこけら落としとなった。最高のロケーションでありながら当日は曇り、ステージ・セットの奥にそびえるはずの富士山は見えずじまいか?と思われたアンコールでその絶景が垣間見れるなど、天も味方につけて美里の夏祭りは続いていくこととなった。

昨年の夏は場所を横浜みなとみらいに移した。“横浜美里祭り Cosmic Night 2007”と題されたこの公演でも、ステージ横には観覧車が廻り、後方の海から潮風がそよぐ素敵な環境の中、リリースされたアルバム『ココロ銀河』で貫かれた心に染み入る歌世界も披露。ただのお祭りではなく、ステージと客席の間で交わされた“気持ちのキャッチボール”が実に心地好い内容となった。終演直後に豪雨と落雷が襲い、まるで嵐が美里のステージに見惚れてその役割を忘れていたのでは?と思うほど天を味方につける幸運は続く。

そしていよいよ今年。2008年の夏の舞台は“東京”。なんと意外なことに彼女にとって東京での野外ワンマンライブは初めてだ。ライブに向けてじっくりと話をきかせてもらった。


渡辺美里
「去年、横浜でやったときにスタッフから『みさっちゃんってやっぱり都会が似合うね』って言われたんです。本人としては舞台に立ってる訳だからその額縁に合ってるかわからないけど、あとで横浜の映像を観て、確かにしっくりきてるな、スタッフの言わんとしてることはわかるなあって思って。じゃあ2008年の夏は東京を目指してみる?っていう感じになったんですね。

横浜はすごくよかったんですよ。風も強かったから風船が流れたり、シャボン玉をお客さんがふーっとしなくても自然に飛んだり、それが逆にいい演出効果になったりしたんですよ。だから今年も横浜でやりたいっていう気持ちもあったんです。だけど会場の都合で使えなくて。ならば引越し先を決めなくちゃということで探してもらったんです」


“西武”というホームグラウンドで20年という状況と比べて、ファンにとって近年は“今年の夏は美里の夏祭りをどこでやるんだろう?”っていう楽しみも増えました。

美里
「いろんなトライをしていきたいと思っています。
今まで20年、西武球場という場所は会場の目の前まで電車が走ってて、ある時期からはMISATOトレインっていうスペシャルな電車も走らせていただいたり、グッズを展示する場所もきちっと確保されているような恵まれた環境だったんですよね。

でも山中湖に決まったときに、山中湖の方々もまったくライブのことがわからないっていう状況の中でゼロから全部アイデアを組んでいったんです。先立つものがないとそれが実行できないっていうことも事実だし、協力してくれる人がいないとできないし。ちょうどその時期っていうのは夏のリゾート時期が始まったばっかりで、バスを出したりとか、会場までのアクセス方法を私たちなりにお客様に丁寧にお伝えしたりした最初の年だった。

だから夏祭り実行委員会はものすごくヘトヘトだったんですよ(笑)。ライブの内容もさることながら、そっちの方も考えなきゃいけないっていう」


会場選定から、その会場ならではの環境作り、企画、選曲から演出に至るまで、たくさんの苦労と思い入れがあるようですね。

美里
「今まで20年間、過保護とは言いませんが(笑)、恵まれた環境の中でやれてたっていうことがあったから。ご縁があって横浜みなとみらいっていう場所が決まったときに“あそこ”ってイメージできる場所だったのがよかったなと思った。

今年も東京の“あそこ”って言える場所だったらいいよねって。東京ビッグサイト西屋外展示場っていうところに決まって、そこが職場っていう人もなかなか少ないと思うんですよね。だから横浜のように“あそこ”っていう感覚ではないけれど、でもビッグサイトって“あの辺だろうな”ってイメージしてもらって。また今までと違った夏の予定表を組んでもらえるように、って思って準備を進めているところなんです」



今年は、初の東京野外ワンマンライブとなる8月9日(土)・東京ビッグサイト西屋外展示場の「東京ブギウギキッス」、9月13日(土)は大阪の野外として実に20年ぶりとなる「ラプソディ・イン・大阪」が大阪城野外音楽堂で行われます。
初の東京開催についての想いと、公演タイトルについてきかせてください。

美里
「今年は東京と同時に大阪も決まりそうだよっていう状態だったんです。東京と大阪っていったら、日本を代表する個性の強い街の代表ですし、両方とも“知事、頑張る!”みたいな(笑)。

スポットが当たっている街のふたつであると思うんですけど、まったくキャラクターが違いますよね。東京と大阪では全然違うこともやりたいなって思っていて。

東京って最先端をいっていると思いきや、どこかレトロで、それぞれ生まれた場所、育った人によって東京っていうもののイメージが違うと思う。『東京タワー』っていう本をリリー(・フランキー)さんや江國香織さんが出されたけど、みんなが東京をテーマになにかを書きたかったり表現したかったり、それぞれの想いがある街だと思うんですね。例えば私が外国の友達に『浅草に行きたい』って言われて説明できるほど浅草を知っているかっていうと知らない。“知らない東京”がいっぱいあるなって思ったときに、私が生きてきた東京を再発見、再確認するのもいいなって思ったんですね。

前回の横浜もデビューしたときにずっとラジオで通っていた横浜ではあったけれど、どんどん様変わりしているし、コンサートをやることで、知らなかった横浜、今の横浜を知るきっかけにもなったんですね。

東京は私こんなにお世話になっているのに、夏祭りってやったことなかったなぁって思って。これはひとつ新たに東京を再発見する意味でも、東京っていうことをテーマにしたタイトルにしたいって思ったんです。

昭和生まれなので、どこか懐かしく生活感が凄く残っている昭和の香りがするタイトルがいいなって思って[東京ブギウギ]、そんな日々に[キッス]っていう意味で“東京ブギウギキッス”っていうタイトルにしたんです。
大阪はそれに対抗して[大阪ラプソディー]だなって(笑)。それで、“ラプソディー・イン・大阪”にしてみました。そのラプソディーっていう言葉自体が持ってる響きとか意味合いが大阪にすごく合ってると思うんですよ。
なので2つ対極にそんなタイトルをつけてみたんですよね」



そろそろ当日披露する曲選びも進んでいるのでは?

美里
「ビッグサイト3夜連続でお届けできるくらい曲のラインナップは出ています(笑)。
今回はバンマスがパーカッションのスパム大井さんなんですけど、スパム君は『わかりました!』って言いながら『もう少し曲を絞ってください、美里さん』って思っているはず(笑)。“東京”がテーマだったらあの曲があってこの曲があって…ってたくさん候補が出ているんですね。その中で絞り込んでいるところ。

去年は横浜で異国の風を感じられるような空気感の中でやったので、私の中で思う横浜っぽさをメドレーにしたりとか、夏っぽくて横浜っぽい曲を選んだ。それを今回は“東京バージョン”でやろうと思ってます。生まれたのは京都ですけど、生まれてすぐ東京にきて東京でずっと育っているので、今まで私が作ってきた曲って、季節の感じ方とか、自分の中で物語が始まったり、終わったり、笑ったり、泣いたりしてることが、この街“東京”から始まっているので、曲が出来てきた物語の場所巡りみたいなことができたらいいなって思ってるんです。

昨日も東京の街を鼻歌うたいながら歩いていたんですけど、『あー、この空気感だったらあの曲もいいな』とか選曲にまだ迷っていて。スパム君に出してない曲を(声をひそめて)『追加です』って言おうかなって思ったり(笑)」



当日のサウンドを支えるミュージシャンもこれまでの人に加えて、新たなメンバーも迎えるそうですね。

美里
「新旧織り交ぜてといった感じですかね。人を変えていくっていうよりは、音に対する斬新さとか貪欲さみたいなものを一緒に追求できる人たちとさらに磨きをかけていきたいなと思って、今回はこういう人たちがいいんじゃないかなって思って人選しました」



最後に、夏祭りを楽しみにしているファンにメッセージをいただけますか。

美里
「東京ビッグサイトっていう場所が、催し物会場っていうか、イベント・スペースといってもコンサート用のスペースではないので、『えっ、ここが東京ビッグサイトなんだ』って思ってもらえるような夏の1ページとして鮮やかに残るようなものにしたいなって思ってますね。毎年毎年全然違うことをやりたいと思っているので。

恒例の夏祭りとして集まってくださる方が多いし、どんどん子供たちもファミリーも増えてくれてるのもありがたいことですけれど、今まで夏祭りを観たことないっていう人たちにも音楽として届くもの、それからビジュアルとしてもバシッとお見せできるものを作りたいと思っています」


夏に先駆けて、赤坂サカスでピアノ・ヴァイオリン・ベースと歌というアコースティック編成でミニ・ライブをやったり、自由が丘駅のロータリーでフリー・ライブを敢行したり、これまでにない活動を積極的に展開し、また新たな刺激を受けたという。

昨年から今年の元旦まで続いた「ココロ銀河」ツアーも、毎回『今日以上のライブはできない!って思うくらいの達成感の中でやれた、やっとそういう域に近づけた』とその充実ぶりを語ってくれた美里。ひたむきに、誠実に、そして貪欲に…。

美里の夏祭りはこれまで22年間、一度だって予定調和なステージになったことはなかった。まして今年の舞台は彼女が育った街、東京。また新たな感動を届けてくれるはず。今からその瞬間をワクワクしながら待ちたいと思う。



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