空白ごっこの始動から3年、進化を感じさせるツアーファイナル!

ライブレポート | 2022.09.26 14:00

空白ごっこ ONEMAN TOUR 2022 halo
2022年9月16日(金) 渋谷CLUB QUATTRO

空白ごっこが『ONEMAN TOUR 2022 "halo"』 を開催した。名古屋、大阪公演に次いでファイナル公演を9月16日に渋谷CLUB QUATTROにて行い、無事にツアーを回り終えた。

ツアーファイナルとなるこの日の1曲目は「かみさま」。ふんわりとした歌いだしで丁寧にライブを幕開け、バンドサウンドと合流すると少しずつ会場を温めていく。後半になるにつれ楽器隊の熱も上がる一方、声色は柔らかくどこか幻想的。その柔らかさをキーボードにも伝播させた「19」では鍵盤の音色が儚げな一方、サビでは張り上げた高い歌声が爽快な印象を醸す。これまでのライブでは、セツコのパワフルな歌声が歌詞の強気なニュアンスや切実さを力強く表現していたのが印象的だったが、この日はこれまでの魅力に加え、控え目な声量での存在感や柔らかさの表現も際立っていた。
セツコの気さくなMCも空白ごっこのライブの魅力のひとつだ。「手まで振っていただいて、アイドルになった気分です。みなさんからの愛され度が増しているのを感じます」と笑いを誘いながらリラックスした様子で話す。のちのMCでは、元々は人と目を合わせて話せなかったこと、空白ごっこに誘われていなかったら内気なままだったかもしれないこと、人との距離感を取るのが現在も苦手なことを話していたが、そんな彼女がリラックスしてステージを楽しんでいる姿に胸が暖かくなる。

ライブは序盤の柔らかく爽やかな雰囲気から印象を変えながら、シンセサイザーの音色がクールな「びろう」、歪んだギターが牽引する「だぶんにんげん」へ。力強い歌唱とファルセットのバランスのとれた歌い回しで、表情豊かな歌声を聞かせていく。豊かな声量を響かせるように、感情を押し出すようにと様々なアプローチを巧みに使い分けながら歌いこなす繊細さも印象深い。間髪入れずに「ピカロ」に続くと、終盤の転調で一段ギアを上げるように更に力を込め、ライブ中盤ながら圧倒的な迫力で魅了した。

続く「サンクチュアリ」では打って変わって可憐な印象を醸し出す。この日のライブ1曲目に演奏した「かみさま」は映画『神は見返りを求める』挿入歌として、「サンクチュアリ」は同作の主題歌として書き下ろされた楽曲だが、この2曲はそれまでの空白ごっこの楽曲に多かったエモーショナルなものとは雰囲気を異にし、セツコの歌声の柔らかい表現を広げた2曲でもあった。優しく可憐な表現が光る、それでいてどことなく翳った印象もある歌声を乗せ、会場を引き込んでいく。その落ち着いた印象を引き継ぐように披露したのは「ラストストロウ」。続く「なつ」では「サンクチュアリ」から続くしっとりとした雰囲気に馴染ませるように、1コーラス目をピアノの伴奏とともに歌うアレンジで演奏。2コーラス以降はバンドサウンドも混ざることで大きく雰囲気を変えたが、堅実で安定感のあるドラムの演奏もあり、上品で丁寧なバンドの全体像が、楽曲の流れや柔らかく歌い上げるセツコの歌声にもぴったりであった。

その後のMCにて、自分にとって空白ごっこが安心して過ごせる居場所になっていると語ったセツコ。それから披露した「ふたくち」の〈大丈夫になったら強くなって 大丈夫になってまた弱くなる〉という歌詞は、彼女が空白ごっこという居場所を獲得するまでと今までの感情を綴っているように響いた。そんなパーソナルな楽曲を経て、バンドとの一体感のある「カラス」、「雨」とアッパーな楽曲を続け、ライブは後半へ。「運命開花」のスピード感ある展開で勢いをつけると、EDM調の曲調とうねるベースがオーディエンスの身体を動かす「リルビィ」、キーボードのイントロが自由な雰囲気を加速させる「シャウりータイム」へ。怒涛の展開に「楽しいね!」とセツコも笑顔をこぼす。サビの多い構成で会場を掻きまわしていく「リスクマネジメント」でさらに盛り上げたあとは「天」で伸び伸びと歌声を響かせ、本編を美しく締めた。

アンコールでは、キーボードの特徴的なフレーズとベースのスラップから「キザな要素が足りない」へ。ダンスミュージックの「ハウる」ではシンセサイザーの電子音とバンドサウンドの融合で盛り上げる。最後は「ストロボ」で、これまで温めた会場の空気を保ちながらもどこか切なげに歌い、ツアーファイナルの幕を閉じた。

空白ごっこが始動して3年、セツコの歌声はライブの度にそれまでよりも豊かな歌声を獲得し、成長を続けている。そんな豊かな表現は、ときに既存曲の雰囲気も進化させながら、3人のソングライターのいる空白ごっこのバラエティ豊かな楽曲に柔軟にマッチしていく。そういった、セツコの歌声とキャッチーな楽曲の融合によって更に魅力的になる空白ごっこのスタイルを存分に感じさせる公演であった。
セツコが今後どのような成長を見せ、楽曲にどのような思いや感情を吹き込んでいくのか、今後も期待したい。

SET LIST

01. かみさま
02. 19
03. びろう
04. だぶんにんげん
05. ピカロ
06. サンクチュアリ
07. ラストストロウ
08. なつ
09. プレイボタン
10. ふたくち
11. カラス
12. 雨
13. 運命開花
14. リルビィ
15. シャウりータイム
16. リスクマネジメント
17. 天

EN01. キザな要素が足りない
EN02. ハウる
EN03. ストロボ

SHARE

最新記事

もっと見る