音楽と映画が完全一致してるオススメ映画とその音楽。80~90年代サブカル編【横山シンスケのライブオアダイ】連載:第28回

コラム | 2020.03.24 13:00

以前、何かの本で読んだ「音楽はその音よりも、その音楽を聴いた時に見たもので人間は記憶をするらしい」という事をここのコラムで書いた事がある。
目に見えるものとその時に聞いた音楽がリンクする事により、無意識の内に記憶として心に深く残るという事らしい。だからライブなんかはその最たるもので、好きなアーティスト本人が自分の目の前で歌ったり演奏したりする訳だから、それがいいライブであればある程いつまでも記憶として残っていくのだろう。

映画とその映画音楽との関係も同じ事が言える。
優れた物語とその映像とそこに流れる音楽のシンクロ度数が高い程、僕らはそれに心を揺さぶられ記憶として自分の中にいつまでも留める。
僕は好きな映画のサントラも買う事が多い。映画を見た時の感動を、そのサントラを聞く事によって頭に思い浮かべて、いつでも余韻に浸れるのが好きで、色んなシーンで使われた音楽を聴きながらそのシーンの記憶を辿るのがとても楽しいからである。
でも、そんな風に映像と音楽と物語のすべてが完璧で、それが三位一体になり奇跡のような化学反応を起こして完全に一致するような事はそんなに頻繁に起きる訳ではないので、その化学反応が見事に起きている映画に出くわした時には軽く人生を変えられるような衝撃を受けるし、その後にまるで自分の体の一部分になったかのように、いつまでも深く僕の中に残り続ける。

なんかほぼ理由付けの言い訳のような前置きが長くなったが、要するに今回は僕が自分の好みで勝手に選んだ「音楽と映画が完全に一致している!」と衝撃をうけたオススメ映画とその映画音楽の紹介です。
それで、沢山ある自分の好きな映画とその音楽の中から厳選していたら、結局自分の若い頃の80~90年代のものばっかでやんちゃな映画が多めになってしまったので、後付けですが今回は80~90年代サブカル編と括らせていただきます。
若いサブカル系(このサブカルという言葉がもはや死語だけど)の映画好き音楽好きな人は見てない作品があれば是非チェックしていただき、同世代のサブカル男女の方は懐かしんでいただければと思います。

映画『AKIRA』 曲:KANEDA / 芸能山城組

言わずと知れた近未来SF作品の傑作。今と同じ2020年の東京が舞台でしかも東京オリンピック開催というとこまで偶然シンクロしていて40年近く経った今も何かと話題の「AKIRA」だが、リアルタイムだった僕らはとにかく当時この原作の漫画に夢中になり、映画化された時も不安半分で観に行ったんだが、オープニングで近未来都市を暴走族が抗争しながらバイクで疾走する中、民族音楽演奏集団「芸能山城組」によるバリのガムランや日本の昔の土着音楽をミックスさせた古代的かつアグレッシブな楽曲「KANEDA」が流れるシーンのそのアニメ映像の凄さと曲のあまりのカッコよさにブッとんでしまった。
近未来SFなのにそこに古代民族音楽を当てはめるという唯一無二の世界観は本当に圧倒的で、「音楽と映像の奇跡の一致」という意味ではいまだに一番最初に思い浮かべるのはやはりこの「AKIRA」である。

AKIRA

映画『パルプ・フィクション』 曲:Misirlou / Dick Dale&His Del-Tones

まさに王道ではあるが、音楽と映画の完全一致という意味ではやはりコレだろうという感じで、あまりにキャッチーな曲なので今でもテレビとかで頻繁に使われているからみんなも一度は聞いた事あるだろう。
そもそもこの監督のクエンティン・タランティーノは音楽オタクでもあり、映画の構想と一緒にそこに流れる音楽も自分のレコードコレクションから選びながら考えるという人なのでそれがシンクロしない訳がなく、そのシンクロの究極の到達点と言えばやはりこの「パルプ・フィクション」のオープニングで、確信犯的なB級映画感とスリリングなサーフミュージックの掛け合わせはもう理屈抜きでカッコいいの一言に尽きる。
当時僕はこの映画を期待値をアゲまくって公開初日に見に行ったんだが、映画のオープニングでカップルがドライブインで会話しながらいきなり強盗に豹変した瞬間にこの曲が流れ「PULP FICTION」という文字がスクリーンに浮かび上がった瞬間、僕のように期待値をアゲまくって来ていた観客のいたるとこからライブのような大きな歓声が上がったのを今も鮮明に覚えている。
劇中も名曲と名シーン揃いでまさに映画史に残る映像と音楽が完璧に合致した作品である。

パルプ・フィクション

映画『ソナチネ』 曲:Sonatine / 久石譲

北野武監督の近作「アウトレイジ」三部作も素晴らしいが、僕は個人的に監督の「ソナチネ」までの初期4作品があまりにも好きで、特に「ソナチネ」は人に好きな映画は?と聞かれたら「ソナチネ」と即答するくらいに洋画邦画問わず最も影響を受けた映画でもある。
それ程好きになった理由のかなり大きな要素として、全編に流れる久石譲の音楽がある。この作品は北野監督らしいバイオレンス映画ではあるが、舞台が沖縄でキレイな景色と静かで芸術的なシーンも多く、そこに久石譲の美しい楽曲が流れるので、一応ヤクザ抗争の映画なのだがそこに流れている空気感があまりに上品で澄んでいて、一体何の映画を見てるのか分からなくなるような不思議なトリップ感があり、映像と音楽の素晴らしい化学反応が全編を通して見事に起きている。
北野監督も自分の作品で一番思い入れがある作品と言っており、僕と同じ昔からのビートたけしファンの間でもいまだに最も人気の高い作品でもある。久石譲と言えばやはり一般的には宮崎駿作品だが、僕らにとっては圧倒的に北野武作品である。

映画『バグダッド・カフェ』 曲:コーリング・ユー / ジェヴェッタ・スティール

この映画「バグダッド・カフェ」はラスヴェガス近郊の砂漠にあるさびれたモーテルで起きる人々の出会いや友情を描いた名作で、いわゆる80年代ミニシアターブームを起こすキッカケになった作品でもあるが、とにかくテーマ曲のこの「コーリング・ユー」があまりにも素晴らしい名曲として有名で(アカデミー候補にもなり、今もカバーされ続けている)、映像に出てくる広い砂漠とうらぶれたカフェとそこで起きる様々な人間ドラマにその歌詞も含め完璧にシンクロしており、この曲を先に知った人が後で映画を見に詰めかけて更にヒットしたり、この曲以外にも劇中で使われる挿入曲の数々が素晴らしく(今もラジオやテレビでよく使われている)、サントラ盤もサントラというジャンルとしては異例の大ヒットを記録したりで、映画と音楽がこれほど幸福なマッチングをした作品も滅多にないだろう。
僕はなぜかこの当時、丁度舞台となったラスヴェガス近郊の砂漠を海外旅行の車で偶然通るという幸運な機会があり、映画で見た景色と同じ砂漠やカフェを見ながら、僕の頭の中ではこの「コーリング・ユー」がずっと自動的に脳内再生され続けて、まさに人はその時見たものでその音楽を記憶するというのを体現できたひと時となった。

バグダッド・カフェ

映画『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』 曲:Betty et Zorg / ガブリエル・ヤレド

最後に紹介するのは“ラブストリー映画の最高傑作”と僕が勝手に呼んでいる(サブカル界隈だけ同意見の人が多い)この作品で、気ままに暮らしていた男とチャーミングだが破壊的なベティという女のコとのこの邦題にある通りの愛と激情の日々の物語だが、とても美しい映像と共に強烈ではかない男女のドラマが進んでいくそのさまに当時は日本の僕らのみならず世界中のサブカル男女は一気に引き込まれてしまい世界中で大ヒットし、今も人気のこの有名なヴィジュアルのポスターを買って部屋に貼ったのだった。
今、改めて見てもその映像の素晴らしさとストーリーの衝撃度と切なさは全然色あせてなかったが、この映画の鮮度が落ちない要因のひとつは世界的映画音楽家であるガブリエル・ヤレドによるシンプルな音楽の力が本当に大きく、タイトルナンバーでもあるこのサックスの単音のみではじまるシンプル極まりない曲や、劇中で流れる音数の極端に少ないピアノのみの曲など、映画音楽にありがちな大げさで壮大なオーケストラ演奏とかと真逆で、それがかえってこの映画をその映像と共に美しく強力に見た人々に印象付けていて、今でもこの映画と音楽の全てが僕の脳裏から離れないまま体の一部分になってしまっている。

PROFILE

横山シンスケ

渋谷のイベントライブハウス「東京カルチャーカルチャー」店長・チーフプロデューサー。その前10年くらい新宿ロフトプラスワンのプロデューサー、店長。ライター、司会、外部企画もやってます。こういうのを書いているとよく途中から自分探しや自分再確認が始まってしまうが、今回は書いてて改めて自分が音楽が好きで映画が好きで、だから映画館やライブや(シネマコンサートにも)に今も足繁く通ってるんだなあと思った。今回の騒動が早く収まるのを祈りつつ。

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