兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第60回[2020年7月後半・観た配信ライブ全部書く]編

コラム | 2020.08.04 13:30

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、音楽のライブや演劇やプロレスなど、自分が観に行った「生のパフォーマンス」について、日記形式でひとことずつレポしていく連載です。2020年2月末のコロナ禍以降は、配信ライブを観て書くことにして続けています。しかし、すっかり増えましたね、配信ライブ。7月後半は半月で7本観て書きました。

7月17日(金)19:00 突然少年 @横須賀かぼちゃ屋

 タイトルは『突然少年自主企画スタンディングスティックス〜優しすぎる転校生編〜』。突然少年のYouTubeオフィシャルチャンネルで生配信される予定だったが、直前で急遽鹿児島WALK INN STUDIOのチャンネルに変更になった。で、音割れや映像のズレも起きたので、7月20日に改めて「2020年7月17日これがやりたかったんだver.」として、突然少年のチャンネルで配信された。視聴は無料だが、番組応援チケット(投げ銭)あり。
 「こんばんは、突然少年です。今僕らは横須賀のかぼちゃ屋っていうライブハウスにいます。最初に伝えたいことがあります」と、大武茜一郎(Vo./Gt.)。サポート・ドラムの岩本斗尉が正式に加入して4人になったことを伝える。「今日はトーイの地元の横須賀、このすぐ近くの病院で生まれた、そういう場所です。今日はここから演奏します。よろしくお願いします」と、「メモリートレイン」からスタート、「フロムアンダーグラウンド」「火ヲ灯ス」「ボール」とたて続けに4曲。3曲目の「火ヲ灯ス」、とても速い曲なのだが(観ながらBPMカウンターで測ってみたら205くらいでした)、その速いリズムに合わせてカメラがハイスピードでがんがん切り替わる。酔いそう。でもかっこいい。次の曲、8月5日に配信先行リリース/9月3日にCDリリースの、ハロルド作石(!)とのスプリット・シングル「ボール」でも同様。
 そして、MCをはさんで「青空」、またちょっとMCをはさんで新曲「ゴーストタウン」、ノンストップで「やくそく」、MCで周囲に感謝の言葉を伝えてから「トーイと初めて作った曲です」(茜一郎)と「伝えられなかったこと」へ──と、後半はややMC多め。
 5曲目の「青空」、スローでずっしり→超速&超ラウド、を繰り返す構成の曲だが、茜一郎、ちょっと筆舌に尽くしがたいすんごい表情で歌っている。メガネのレンズ割れそう、というかフレームごと砕け散りそう。次の「ゴーストタウン」も、とても緩急のはっきりした曲だが、ゆえに4人の音がぴったり合っていることに改めて気がつく。「伝えられなかったこと」を経てのラストは、突然少年の中で屈指の重たさを誇る(歌詞というより音が)「サマータイムストレンジャー」だった。

7月18日(土)12:00 おとぼけビ〜バ〜 @LMスタジオ/ツイキャス

 『おとぼけビ〜バ〜 祝! 声帯ポリープ除去記念オンラインワンマンショー 「COME BACK SCREAM!」』というタイトルどおり、ボーカルのあっこりんりんの手術後初ライブ、無観客生配信。チケット代は1,000円+システム利用料100円、500円〜で投げ銭もできる。アーカイブは2週間後の8月1日まで。
 場所は、2019年4月リリースの最新アルバム『いてこまヒッツ』の曲の多くをレコーディング&マスタリングした大阪・四ツ橋のLMスタジオ。昼の12時から、というめずらしいスタート時間なのは、海外にもファンの多いバンドなので、そのためだと思います。実際、書き込まれる視聴者のコメント、半分くらいが英語だったし。
 機材トラブルがあったそうで、スタートが45分押すというアクシデントあり。で、始まってからも完全な配信状態とは程遠く、画面がコマ送り状態で、演奏と合ってなくてもどかしかった。ただ、歌&演奏が生々しいことこの上なくてやたらかっこいいので、そんな状態でも、意外と楽しく観ていられるなあ……と思った僕以上に、観ているみなさんのまあ優しいこと。怒ってもおかしくないのに、書き込まれるコメントの大半が「画はコマ送りだけど音はばっちり」とか「ズレてるけどOK」みたいなものばかり。中には「まあ、こういうMVだと思えばw」という人までいて、笑ってしまった。そんな観づらいコマ送り映像の上に、投げ銭ばんばん降ってるし。
 1時間で28曲という、超高密度なライブだった。なお、終了後、「ライブ映像をマルチビュー仕様(この日入れていたカメラ全部の映像が観れる状態)にした上で再アップロードさせて頂きました。本日より2週間アーカイブが残りますのでおたのしみいただければ幸いです。」というメールが、チケット購入者全員に届きました。観ました。すっきりしました。
あと、おとぼけビ~バ~の言語センス、下手したらザ・スターリン以来と言っていいくらいすばらしいといつも思う。この日も演奏された「いまさらわたしに話ってなんえ」という曲名が、私、特に好きです。特に「なんえ」が。京都弁ね。

7月18日(土)19:00 佐藤千亜妃 @YouTube

 佐藤千亜妃Official YouTube Channel開設記念「弾語り生配信ライブ」と銘打って開催。って、今までなかったのか、オフィシャルチャンネル。あ、きのこ帝国はあるけど佐藤千亜妃はなかったってことか。無料で生配信、ひとりで弾き語りで4曲。
「Summer Gate」でスタート。アコースティック・ギターの鳴りも、ボーカルに軽くかけられたエフェクトの響きも、最初からとてもいい空気感ができている。弾き語りだと配信がやりやすいからそうしました、というイージーな感じがない。
「マイクがどんどん低くなっていって、すいません(スタンドを直す)……あ、向きをまだ把握してないんですけど、あれ(カメラ)を見てしゃべればいいんですよね?」と、インスタでひとりで配信する時とは勝手が違うようで、ちょっと戸惑ったりしつつ、次は「大キライ」。アルバムでは、弾き語りっぽく始まってサビでガツーンとにぎやかになるアレンジの曲なので、ずっと弾き語りなのが新鮮。
 次はアルバムでは04 Limited Sazabysが演奏している「STAR」。最初は弾き語りっぽい感じで作ったんだけど、テンポを倍にして今のアレンジにした──と、『PLANET』リリース時のインタビューで言っていた。その元の形がこれ、ということですね。
 で、「配信ライブが決定しておりまして」と、初めて有料の配信ライブを行うことを発表。一度延期、そして最終的に中止せざるを得なかったツアーのファイナルの日に、何かできないかな、ということで、決めた、とのこと。日程は8月14日(金)19:00、PIA LIVESTREAMとStreaming+で配信、8月16日(日)までアーカイブ視聴が可能。チケットは2,500円、トートバッグ付きで5,000円というチケットも用意される。
 最後は「空から落ちる星のように」。メロディの一片一片、言葉のひとつひとつをリスナーの耳に優しく刻みつけるような歌だった。

7月25日(土)17:00 真心ブラザーズ @Streaing+

 真心ブラザーズ生配信ライブ『Cheer up! 001』。イープラスの視聴チケット制のストリーミング・サービス、Streaming+で3,000円、ライブ写真10点がデジタルフォトにてプレゼントされるオマケ付視聴券が3,500円。7月26日17:00までアーカイブ視聴可能。
 ふたり着座で、弾き語りでスタート。「GREAT ADVENTURE FAMILY」「荒川土手」「いい天気」の3曲をやってMCをはさみ、続いて「のりこえるの歌」「風を浴びて君想う」、ここまでの5曲が前半。「のりこえるの歌」ではYO-KINGがギターに加えてハープも吹き、「風を浴びて君想う」ではギターを置き、立ち上がって歌唱&ハープを聴かせる。
 後半は、ベース岡部晴彦&ドラム伊藤大地が加わってバンド編成になり、「突風」「All I want to say to you」「天空パレード」と続いていく。開演前にリリックMVも流れていた「天空パレード」は、7月8日に配信が始まったばかりの新曲。弾き語りツアーの「どんどん新曲をやるコーナー」で披露したことはあるが、バンド編成で人前でやるのは今日が初、とのこと。「これ、共作なんですよね、僕と桜井さんの」とYO-KING。過去の曲で言うと「空にまいあがれ」なんかにいい感じで近い、今後、ライブのハイライトになりそうな曲です。
 MCのたびに矢継ぎ早にいじってくるYO-KINGに、「久しぶりのライブで、ボケばんばん投げてきて、対応できない」と桜井が手を焼いたりしながらも、「この愛は始まってもいない」「サティスファクション」「ENDLESS SUMMER NUDE」「愛」と、後半はライブの鉄板曲を連打、コメントを沸き立たせまくって終了。「愛」を終えた桜井は、「ありがとうございました。第二回目やりたいです、またよろしくねー」と両手でピースし、YO-KINGは「さいならー」と手を振った。

7月26日(日)20:00 the shes gone @Streaming+

 このthe shes gone初の配信ライブは、DI:GA ONLINEにレポを書きましたので、そちらをどうぞ。

the shes gone 初の有料配信ライブで見せた強い眼差し。「どうか僕らの歌があなたのそばにありますように」

7月29日(水)21:30 ヤバイTシャツ屋さん @Youtube

 『ヤバイTシャツ屋さん-無観客ワンマンライブ「無料だから許して!低画質!低音質!5曲だけライブ!!!」』と銘打って、YouTubeのヤバイTシャツ屋さん公式チャンネルで無料生配信、21:30から22:30までの60分で、翌日の22時までアーカイブ視聴可能──ということを伝えるオフィシャルサイトのニュース欄には「※超重大発表がございます。」の一文が。
 場所はスタジオ。カメラは1台据え置きのみ、音もそのカメラのマイクで拾うだけ、というもっともシンプルな形の配信であることなどをネタに、頭12分ぐらいトークしてからスタート。「あつまれ!パーティーピーポー」「Tank-top of the world」「かわE」の3曲をすんごい勢いでやって、「すげえ、久々すぎる。はあー……ゼーハータイム!」(こやまたくや)などと言いながら、またMCになる。で、Twitterのトレンド1位になったことを喜んだり、「予想通りの画質です。音質、悪いです」という書き込みに3人で大笑いしたりしてから、「超重大発表」へ。
 9月30日に4枚目のフルアルバムをリリースする、昨日マスタリングが終わった、新曲9曲を含む全13曲で、タイトルは『You need the Tank-top』である、このあと22時から24時間以内に専用のページからCDを予約した方全員にメンバー全員の直筆サイン入りのアナザージャケットをプレゼントする、というのが、その発表でした。
 しばたありぼぼ、「プリントではなく直筆です」と念を押す。こやまたくや、「今これを観てる60,000人の方が予約してくれたら、僕らサイン60,000枚書きます。僕らのサインの価値がゼロになるまで書きます」。マジか。予約しました、思わず。
 で、「癒着☆NIGHT」と「ハッピーウェディング前ソング」をやって、演奏は終了。こやまたくやの締めの雄叫びは「早くまたライブができますようにー!!」だった。で、しばししゃべったあと、アンコールを求める書き込みの声に応えて、急遽1曲追加。ファンの希望が多かった「無線LANばり便利」をやってくれた。

7月31日(金)21:00 フルカワユタカ+須藤寿 @Streaming+

 フルカワユタカプレゼンツの配信イベント『オンガクミンゾク』のVol.1。ゲストに髭の須藤寿を招き、それぞれのアコースティック・ライブとトーク、チケット代は1,000円、Streaming+で生配信。24時間後までアーカイブ視聴可能。Faniconのフルカワユタカのファンコミュニティアプリ『星の降る町』会員は、これが終わったあとの追加公演的なパフォーマンスも観られる、という特典付き。
 21:00ぴったりに画面が切り替わると、場所はレコーディング・スタジオのコンソール・ルーム。卓の前にフルカワユタカがいて挨拶、そして須藤を呼び込んで10分ほどトークの後、須藤寿のライブ。マイクがあきらかにライブ用じゃなくてレコーディング用のそれ。という状態で、「きみの世界に花束を」「ヒサシ.カリメロ」「黒にそめろ」までやって、1弦が切れる。「じゃあ1弦がなくてもできる曲を」と、最後に「サマータイム・ブルース」。それを歌う前に「俺がこの配信ですげえいいことだと思ってるのは、自分たちがツアーで行けないところの人たちにも伝えられること。この形には未来もあると思う、もっともっとこういう場から届けられたらいいなと思う」とMCした。
 で、またコンソール・ルームでふたりでトークしてから、フルカワユタカのライブ。「須藤くんが間違いなく本気で誉めてくれた曲」という紹介で「僕はこう語った」、「須藤くんに作詞をしてもらった曲」と「DAMN DAMN」、「出す前に須藤くんに聴かせたら、気に入ってくれて、『この曲ください』って。それで須藤くんが先にGATARI(ACOUSTIC SET。須藤のユニット)でリリースした」と、後に自分でもリリースした「farewell」──というふうに、須藤とゆかりのある曲を並べていくセットリスト。
 次の「ボクは、少しズルくなる」は、「これも彼が本気で誉めてくれた曲。これなんかは須藤くんが歌った方がいい曲かも。そういう曲もあります」。最後は、「赤坂BLITZのイベントに髭(HiGE)に出てもらって、そこから仲良くなった。その時に一緒に歌ってるんです」と、DOPING PANDAの「It’s my life」を披露した。
 そして、三たびコンソールでトークした後、スタジオに移動せず、その場でアンコール。1曲目は「これは僕からのリクエストです、須藤くんに歌ってもらいたくて」とOASISの「Don’t look back in anger」、2曲目は「大先輩の曲を」と井上陽水奥田民生の「ありがとう」、そして3曲目は須藤の歌とフルカワのギターで「テキーラ!テキーラ!」だった。3曲とも「聴けてラッキー!」とつくづく思う、素敵な仕上がりでした。
 なお、この『オンガクミンゾク』の二回目を行うことも発表になった。8月30日(日)21:00、the band apartの原昌和を招き、フルカワユタカと共にLOW IQ 01& THE RHYTHM MAKERSで活動する山崎聖之も加わった、バンド編成での配信ライブになるとのこと。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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