兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第61回[2020年8月前半・観た配信ライブ全部書く]編

コラム | 2020.08.27 13:30

イラスト:河井克夫

音楽などのライター、兵庫慎司が、ライブや演劇やプロレスなど、自分が観た生の興行について短くレポを書いて、月に2回アップしていく連載です。2020年3月の新型コロナウィルス禍以降は、配信ライブを観て書くことにして続けているのですが、それ以降、1本1本のレポの分量がどうも「短く」ではなくなってしまっている傾向があるなあ、と思って、書いたあと削ったりもしたのですが、それでも、今回もまあまあ長い気がしないでもないです。次回からちょっと考えます。

8月2日(日)20:00 THE BACK HORN@StreamPass/FanStream

 コロナ禍で延期になってしまったツアーの代替企画として、予定していたツアーの公演日に過去のライブ映像の配信をYoutubeで行ってきた『KYO-MEI MOVIE TOUR -2004~2019-』、その“特別編”としての、無観客有料配信ライブ。配信のプラットフォームはStreamPass/FanStreamで、チケットは3,000円、8月9日(日)いっぱいまでアーカイヴ視聴可能。
 コロナ自粛の前に、ボーカル山田将司がドクターストップ→ノドの手術で、ツアーが延期になっていたので、ライブ自体約7ヵ月ぶりである。その間に菅波栄純が『アウトデラックス』に出て、その「アウトな人っぷり」を世間様に知らしめる(ファンはみんな知っていたが)、なんてこともあったが、それはここで言及しなくていいですね。
 場所は、「THE BACK HORNが過去に数々の楽曲を録音してきたレコーディングスタジオ」(オフィシャルサイトより)だそうだが、見た感じ、ビクター青山スタジオではないかと思われる(違っていたらすみません)。そこで、4人が向かい合う形で、彼らが初めて作ったオリジナル曲である「冬のミルク」でスタート。
 以降、前半は「グローリア」「太陽の花」、ドラム松田晋二のMCを経て「罠」、「心臓が止まるまでは」「悪人」「幸福な亡骸」「空、星、海の夜」というセットリスト。全員のMCを経ての後半は6月24日に配信リリースした新曲「瑠璃色のキャンバス」、そして「コバルトブルー」「シンフォニア」「刃」のライブ鉄板曲三連打で締められた。全12曲。
 「悪人」「幸福な亡骸」「空、星、海の夜」、MCをはさんで「瑠璃色のキャンバス」に行く、ミドル・テンポ寄りの曲が並んだゾーンが、とてもよかった。メロディのオリエンタルな響きとリリックの物騒さ、その両者を際立たせる方向に、バンドのアンサンブルがバチッと合っているさまがよくわかって。特に新曲「瑠璃色のキャンバス」、これ、ちょっと誤解を招く言い方かもしれないが、人に提供するのがありなくらい、真正面からいい曲だと思う。
 その「瑠璃色のキャンバス」をやる前のMCで、配信ライブをここまでやってみた感触を、メンバーそれぞれ口にした。「やっぱでも、ライブだね、これ。お客さんが観てくれてると思ってるからだろうけど、時間もあっという間じゃない?」と、ベース岡峰光舟。将司は「俺もいつものライブハウスと変わらない汗をかいてる。こもるね、やっぱ気持ちが」。マツは「観てる人に届け、って思いを込めるとライブだなと思う、そうするとすげえ熱くなる、もう一個スイッチが入る」。で、栄純、「今日このライブになってみて初めて、『やっぱライブやりたかったんだな』と思った。この興奮する感じは、ライブでしか得られないんだなと」。とても実感がこもっていた、4人とも。
 なお、9月6日(日)に、今度は場所をライブハウスに変えて、2回目の配信ライブを行うことが発表された。将司は、「シンフォニア」の「帰る場所ならここにあるから」を「帰る場所ならライブハウスにあるから」と変えて歌いながら、カメラを指差した。

8月12日(水)20:00 銀杏BOYZ @LIVEWIRE/PIA LIVE STREAM/渋谷La.mama

 スペースシャワーが立ち上げたオンライン・ライブハウス『LIVEWIRE』での配信ライブで、チケットは前売り3,000円で、8月18日(火)23:59までアーカイヴ視聴可能。『銀杏BOYZ スマホライブ2020』というタイトルで、「当公演はスマートフォンでのご視聴を推奨しております。ぜひお手持ちのスマートフォンでご覧ください」という但し書き付き。(事前にぴあWEBにアップされた峯田和伸のインタビューによると)撮影もスマホで行う、という。開演ちょっと前に、試しにPCでアクセスしてみたのだが、画面自体がスマホの動画撮影時と同じ形にしか映らない仕様になっていた。下に録画ボタンまで表示されている。おとなしくスマホにしました。
 夜の街を歩く峯田、着いたのは渋谷ラ・ママ、入口で検温と手の消毒をすませてラ・ママのドアを開けると、すでにバンドが爆音を放っている。峯田、マスクをむしり取ると(メンバーはマスクのまま)「あ、あ」と声を確かめると「イャ、イャ、イャア!」とシャウトし、「2020年8月12日、銀杏BOYZ、歌います!」と宣言。10月21日にリリースされるニュー・アルバム『ねえみんな大好きだよ』収録の新曲、「大人全滅」でライブがスタートする。
 で、「NO FUTURE NOCRY」「エンジェルベイビー」「YOU & I」と、4曲やったところで、「これから空気入れ替えで10分休憩入ります」と、いったん中断。メンバー一同外に出て、ラ・ママの楽屋口の階段に回り、そこでタバコ吸ったりしゃべったりして(峯田、なぜか「トカレフいいんだよね」とメンバーに力説)ちょっと休憩。
 後半は峯田、アコースティック・ギターを抱え、しばしMC。緊急事態宣言でレコーディングを中断せざるを得なかったが、その後再開してニュー・アルバムを作り終えたことなどを改めて伝え、「カメラをのぞきこんでる人たちがたくさんいるらしくて、誰もいないってことは、なんでもあるってことだね。先程ライブ始まって、(自分が)誰もいないって感じでやってないな、と思って。いるなあと思って」と、観ている人たちの存在を感じていることを、言葉にする。
 そして、プロレスラーの木村花、オナニーマシーンのイノマー、遠藤ミチロウ、自分の祖母、地元の友達の名前を挙げ、「俺は今日ここ、渋谷ラ・ママで歌ってます。みんなに届けばいいなと思ってます」と、「夜王子と月の姫」を歌い始める。続く「光」は、かなりの尺をひとりで弾き語りしてから、後半でバンドの音がどかーんと入ってくる構成で、ライブでも音源でも数え切れないほど触れてきたのに、その瞬間、やはり鳥肌が立つ、観ていると。次は「新曲歌います」と、ニュー・アルバムから「アーメン・ザーメン・メリーチェイン」という曲へ。「ふたりで街を出ようと ふたりで間違えようと」というラインが印象的。
 で、GOING STEADY時代から最重要曲であり続ける「BABY BABY」を経て、「また会えますようにって気持ちをこめて、ピースピース」という言葉でMCを締めてからの、ラスト曲は「ぽあだむ」。自分を映すスマホのカメラに、投げキッスしたりレンズを舐めたりしながら歌う峯田の上に、メンバー・クレジットやスタッフロールが流れていく、つまりこの曲が映画でいうエンディング・テーマになっているという演出だった。歌い終えた峯田は、「世界中の皆様、銀杏BOYZでした、また会いましょう」と指でカメラを覆い、そのまま配信も終わった。

8月13日(木)19:00 Creepy Nuts ゲスト:ZORN @Zepp DiverCity/Thumva/LINE LIVE-VIEWING/Streaming+

 4月から開催予定だったが、コロナ禍で延期になった2マンツアー「Creepy Nuts 2Man Tour『生業』2020」のうち、まず東京・Zepp DiverCityの公演を、4月10日から8月13日に振り替え、無観客ではなく入場者数を減らして開催したのがこの日。Thumva、LIVE-VIEWING、Streaming+、の3つで生配信。僕はStreaming+で観ました。チケット代は3,500円、8月21日(金) 23:59までアーカイヴ視聴可能。Thumvaでは、別料金でアフタートークの配信もあり。
 Zepp DiverCityの1Fにイスが並べられ、見た感じ、3席に1人くらいの割合でお客さんが座っている、というのは、事情が事情なのでやむを得ないのはわかっていても、やっぱりかなり異様な光景だ。正直、やりやすいわけがないと思う。最初に登場したZORN、「想像以上のカオスっぷりで困惑してるんですけど」と違和感を口にしながらも、その空気を打破しようとMCでオーディエンスにいろいろ話しかけたりするが、あんまり反応が返ってこない。みんな興味がないから反応しないのではなく、反応を自粛してるんだろうな、というのが見てとれる感じなのが、よけいにもどかしい。会場に行ってないのでわからないが、コロナ対策として「あまり歓声をあげたりしないでください」「立たないでください」というようなオペレーションが、敷かれていたのかもしれない。
 それでも曲が進むにつれ、そのパフォーマンスそのものの熱がフロアに伝播していくようで、オーディエンスの身体の揺れが大きくなっていく。ラストの「All My Homies」では、フロア全体に、大きなハンドクラップが起きた。
 そしてCreepy Nutsは「よふかしのうた」でスタート。R-指定、目の前のオーディエンスを「心の中で飛び跳ねてください!」、配信で観ている人を「家で飛び跳ねてください!」と、あおる。で、「合法的トビ方ノススメ」「トレンチコートマフィア」と人気曲を連打し、続く「スポットライト」では、DJ松永がスクラッチしまくる。
 MCをはさんでの「それじゃ無理」で、テークエム(梅田サイファー)が登場。続く「トラボルタカスタム」「マジでハイ」の3曲で、R-指定と、まるで闘うような、でも息がぴったりと合ってもいるラップを聴かせる。ここでだいぶ会場の温度が上がった感じがした。画面越しですが、僕が観ているのは。
 「ビートモクソモネェカラキキナ」を経て「博徒2020」(DJ RYOW)「speedin’」(AK-69)と、R-指定が客演した2曲、そして『フリースタイルダンジョン』のモンスター7人による『Dungeon Monsters』の「MONSTER VISION」まで披露(R-指定曰く「気づけば番組終わっとったわー」)。ここでもさらに温度が上がる。ギュウギュウのオールスタンディングの会場で、頭からどかーんと盛り上がっているCreepy Nutsのライブしか観たことがないので、こういう感じ、新鮮。
 「阿婆擦れ」に続いてのラストは、「未来予想図」「生業」という、自身のこれまでと現在をさらけ出した、重たくてシリアスで真摯な2曲だった。こういう、ある種特殊なライブの最後に、この2曲を持ってきた、ということも含めて、とても切実に響いた。

8月14日(金)19:00 佐藤千亜妃 @Streaming+

 このライブはSPICEにライブレポを書きましたので、そちらをぜひ。

https://spice.eplus.jp/articles/274099

8月16日(日)19:00 サカナクション @Streaming+/ローチケ LIVE STREAMING/PIA LIVE STREAM/LINE LIVE-VIEWING

 『ONLINE LIVE「SAKANAQUARIUM 光」』と銘打って8月15・16日に行われた、サカナクションの配信ライブ。15日の方はサカナクションの公式ファン・サイト「NF member」の会員限定配信で、16日は誰でも観れる。チケットは公演2日前まで割引視聴券で4,000円、それ以降は通常視聴券で4,500円。Streaming+、O-チケLIVE STREAMING、PIA LIVE STREAM、LINE LIVE-VEWINGで配信された。僕は16日の割引視聴券を、チケットぴあで買いました。8月23日(日)23:59までアーカイヴ配信あり。
 「新宝島」等のサカナクションのMVを作ってきた映像作家であり、2019年のアリーナ・ツアーにも関わった田中裕介が総合演出で参加、というスタッフ・ワークや、「ライブ映画」というコンセプト・ワードを掲げていることや、山口一郎の事前の発言からすると、MVとライブを合体させたようなものになるんだろうな、と予想していた。で、確かにそういうものだったが、プラスアルファがとんでもなかった。
 白い衣装の山口一郎が、自販機の前にいる画から始まり、歩き出し、倉庫みたいなスタジオに入っていくとそこにはメンバーが──というオープニングは、言わば映画。照明(ライトだったり行灯だったりする)やスモークやレーザー、曲によっては「後ろに映る」だけでなく「バンドと一体化する」効果映像、バンドを囲うように立っていたスクリーンが消え、画面から溢れるくらいの光でバンドが包まれる、というセットチェンジなどは、MV。そのセットチェンジがあったのは、10曲目の「ボイル」だったのだが、続く「陽炎」で山口一郎が歩いて移動した先はスナック(のセット)で、店のおねえさんたちやお客さん(2の古舘祐太郎だった)と一緒に歌って盛り上がってビールを飲んだりする、というのは、映画というよりコントか、これ? と混乱させられる。
 以降は、おなじみの和装の踊り子さんが登場する「夜の踊り子」、「アイデンティティ」、これもおなじみの山口一郎が風に吹かれながら歌う「多分、風」など、人気曲の連打。一気に「ライブのサカナクション」方向になる。そして、メンバー5人が横一列に立ってPCを操る、これもライブでおなじみの17曲目「ミュージック」からは、またもや彼らの姿に映像が合成されていく……ええと、これ、何度も演奏して撮り直したりしたやつを、あとから編集した映像作品じゃないよね? ライブよね? ということが、信じられない。
 チアダンサー多数登場の「新宝島」、紙吹雪が舞った「忘れられないの」、画面にエンドロールが流れる中演奏し歌われた(つまり生で演奏されるエンディング・テーマだった)「さよならはエモーション」、の3曲で、ライブは終了した。
 すごいもん観ちゃった。というのが素直な感想。以前から、MV等の映像作品も、ライブ時の映像の使い方も、ケタ外れなことをやってきたのがサカナクションだが、今回、すべてがいちいち予想の範囲・期待の範囲を超えていた。あとで映像作品として発売するとかしてほしい。するか。じゃないともったいなさすぎるし。
 と、ここまで書いて気がついたけど、このレポ、後半は曲名を書いているのに、前半は触ってないですね。なので、最後に書いておきます。

01.グッドバイ
02.マッチとピーナッツ
03.聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに
04.ユリイカ
05.ネイティブダンサー
06.ワンダーランド
07.流線
08.茶柱
09.ナイロンの糸
10.ボイル
11.陽炎
12.モス
13.夜の踊り子
14.アイデンティティ
15.多分、風。
16.ルーキー
17.ミュージック
18.新宝島
19.忘れられないの
20.さよならはエモーション

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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