兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第86回[2021年8月後半・フジロック3日間とユニコーンのツアー初日に行きました]編

コラム | 2021.09.14 18:30

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、生もしくは配信で観たライブのレポを半月に一回書いてアップしていく連載の86回目、2021年8月後半編です。今回は宮藤官九郎作・演出(出演も)の舞台1本、フジロックフェスティバル3日間、ユニコーンのツアー初日、以上5本を生で観ました。で、フジロックは、いっぱい観た中で、特に3つのアクトが強く記憶に残ったので、そこを重点的に書きました。長いですが、お付き合いいただければ幸いです。

8月18日(水)18:00 『大パルコ人④ マジロック・オペラ 愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』@PARCO劇場/Streaming+/WOWOWオンデマンド

 大人計画とパルコ劇場がプロデュースし、作・演出=宮藤官九郎で行われてきたロック・オペラ・シリーズ『大パルコ人』の4本目。1本目は2009年、阿部サダヲ・森山未來・松田龍平等が出演した「メカロックオペラ『R2C2 ~サイボーグなのでバンド辞めます!~』。2本目は2013年、佐藤隆太・勝地涼・永山絢斗・綾小路翔(氣志團)等が出演した「バカロックオペラ『高校中パニック! 小激突!!』」。3本目は2016年、永山瑛太・増子直純(怒髪天)・りょう等が出演した「ステキロックオペラ『サンバイザー兄弟』」。で、今回が4本目で、のん・村上虹郎・藤井隆等が出演。大阪と仙台でも公演あり。
 過去3本は観れたのに、今回はチケット、取れなかった。が、8月18日(水)の公演を生配信するという。しかも、Streaming+と、WOWOWオンデマンドで。WOWOWオンデマンドは、WOWOW加入者ならフリーなので、無料で観れた。ありがたい。なお、Streaming+の方は、チケット代税込3,200円、8月20日(金)23:59までアーカイブ配信あり。
 物語の概要は公式サイト等あちこちで書かれているし、それ以上の詳細は、これを書いている時点ではまだ地方公演をやっているので書かないでおくが、ひとつだけ。
 このシリーズ、役者たちが実際にバンドで演奏して、この芝居のために書き下ろされた曲を何曲も歌う、というのが目玉になっている。グループ魂のドラマーでもある三宅弘城と、元JAPAN-狂撃-SPECIALのベーシストだったよーかいくんが、2本目から毎回出演しているのは、そのへんの事情もあるのだと思う。
 で、今回、のんがギターを弾きながら歌いまくるさまがすばらしかった、というのは、以前から音楽活動もしているのでまあ納得だが、村上虹郎の歌がやたらよかったのには、びっくりした。知らなかったもので、あんなに歌える人だとは。お母様の血だろうか、それだけじゃないのか。それだけじゃないんだろうな。

8月20日(金)FUJI ROCK FESTIVAL ’21 1日目@苗場スキー場/YouTube

 今年のフジロック、3日とも行った。普通のお客さんはともかく、毎年現場で出くわす同業者のみなさんも、大多数の人は今年は行かない、家でYouTubeで観ている、ということに、現場に行ってから気がついて、「え、俺、少数派なのか!」とびっくりした、正直。
 今年のフジ、通常の年とは大きく異なるんだから、行って体験しておかないと、と思ったのと、電気グルーヴの復活を生で観ないわけにはいかない、というのが理由で、「今年は行くのやめようかなあ」とか思わなかったもので。フジまでにワクチン二回打てた、というのと、レンタカーで行き帰りするので公共交通機関は一切使わずにすむ、というのも大きかったが。
 この初日に観たのは以下。1~2曲だけ観たものは除き、尺の半分~全部観たものだけ挙げます。
 くるり→手嶌葵→高野寛×原田郁子→KID FRESINO(BAND SET)→METAFIVE(砂原良徳×LEO今井)→坂本慎太郎

8月21日(土)FUJI ROCK FESTIVAL ’21 2日目@苗場スキー場/YouTube

 この2日目に観たのは以下。
 SIRUP→サンボマスター→ザ・クロマニヨンズ→サニーデイ・サービス→Ken Yokoyama→The Birthday→NUMBER GIRL→THE SPELLBOUND

8月22日(日)FUJI ROCK FESTIVAL ’21 3日目@苗場スキー場/YouTube

 この最終日に観たのは以下。
 cero→青葉市子→秦 基博→羊文学→GEZAN→忌野清志郎 Rock’n’Roll FOREVER→平沢進+会人(EJIN)→電気グルーヴ→砂原良徳

 で。いいライブだらけだったが、「めったに観れないやつ」と「久しぶりに観たやつ」である3アクトが、特別によかったので、ちょっと書いておきたい。

 まず初日のホワイト・ステージ19:30~20:30、METAFIVE。
 高橋幸宏が療養中であることや、小山田圭吾の件などもあって、出演が危ぶまれたが、砂原良徳とLEO今井のふたりに、サポートでドラム白根賢一とギター永井聖一(相対性理論)が加わった4人編成で出演することが発表された。それを知った時は「キャンセルしないのか、偉い!」という気持ちと、「……でもそれ、METAFIVEではないのでは……」という気持ちの両方があった。本来のMETAFIVEのライブ、ワンマンやフェスで何度か観たことがあるもんで、それも含めて複雑だった。
 しかし。ステージが始まるや否や「うわ、何これ、めちゃくちゃかっこいいじゃん!」と、一瞬にして気持ちを持っていかれて、最後まで夢中なまんまだった。ステージ後方にフル画面で映る映像や照明などは、おそらくこの形で出演することになる前から用意していたものだろうが、その効果だけでなく、「本来のメンバーがふたりしかいない」ことによるマイナスが、不思議なくらい感じられない。高橋幸宏の歌う曲をLEO今井が歌っていても、小山田圭吾が弾くべきギターを永井聖一が弾いていても、ゴンドウトモヒコの代わりはいないのでそこはバック・トラックでなんとかしていても、違和感がないのだ。
 音も映像も、とんでもない情報量。画の数や音の数が物理的に多いのではなく、そこから伝わってくるものがすさまじく豊か、という意味での「とんでもない情報量」なのだ。いろんな意味があるし、いろんなふうに受け取れるし、いろんなふうに感じられる。それぞれ立ち位置から動かず黙々と演奏している4人の姿も、それ自体が表現になっている。
 なお、ライブが終わったあと、永井聖一が弾いていたギターは小山田圭吾のものではないか、とツイッターで話題になっていたが、白根賢一の叩いていたドラムも、高橋幸宏のセットじゃないかな、と思う。違ったらごめんなさい。

 ふたつめは、同じく初日のフィールド・オブ・ヘブンのトリ、21:30~23:00の坂本慎太郎。
 この人、めったにライブをやらない。ゆらゆら帝国解散後、ソロの最初の音源をリリースしたのは2011年だが、国内でソロでライブをやったのは、2018年1月17日のリキッドルームと、その追加公演の1月29日が初めてだった。その時は、運良く追加公演を観れたが(この連載の第一回目で書きました DI:GA ONLINE:兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第1回 [2018年1月1日~31日の巻] )、それ以降はチケットが取れなくて観れていない。で、フェスやイベントに頻繁に出る人でもない。ゆえに、同時刻にやっているRADWIMPSもmillennium paradeも、そりゃあ観たいけど、「これを逃したらおいそれと観れない」度で言うと、坂本慎太郎の方が上なのだった。
 ゆえに観た。すばらしかった。ボーカルとギターの坂本慎太郎、ベースAYA、ドラム菅沼雄太、サックス&フルートetc.の西内徹の4人編成。必要最小限の音による隙間だらけのアンサンブルがたまらないし、その音と共に届く「ひとりごとみたいだけど豊かなメロディ」の歌もたまらない。
 アルバム3作からも、2020年・2021年に出た最新シングル2作からも、まんべんなくやってくれた、とてもうれしいセットリストだったが、びっくりしたのは、6曲目ぐらいだったか、「まともがわからない」をやったこと。
 2013年1月クールのテレビ東京の深夜ドラマ『まほろ駅前番外地』の劇伴を坂本慎太郎が手掛け、エンディングテーマとして書き下ろしたのが、この曲だったのだが、前述の、僕が観た2018年のライブでは、やらなかった。彼に劇伴を依頼した、そのドラマの大根仁監督に「やりませんでしたね」と言ったら、「やらないでしょ、そりゃ」という返事だった。彼の作品の中ではポップで異質な曲だからかな、と思ってその時は納得したもんで、この日、生で聴けたことに驚いたし、うれしかったのだった。
 終演後に大根監督に「『まともがわからない』、やった!」とLINEしたら、「ね。初めてライブで観た」と返信がありました。

 で、3日目グリーン・ステージのトリ、21:40~22:50、電気グルーヴ。
 フジロックの出演はもちろん、それ以外も含めて、電気のライブはけっこうな数、観てきているつもりだが、その中でもトップレベルのステージだった。「来てよかった!」と何度も思った、観ながら。
 全17曲、昔に偏ることもなければ最近の曲ばかりでもない、1991年のデビューから現在まで、全キャリアを網羅するセットリストだったが、1曲目が「Set you Free」、ラストを「富士山」にすることで、電気は、フジロックへの愛と感謝を表していた。
 「Set you Free」は、1年前のオンラインでのフジロック・フェスの最後に、MVと共に初公開された新曲。「富士山」は、1997年の一回目のフジロック出演時、長らく活動休止していた電気が久々に出演した2006年の出演、後にドキュメンタリー映画『DENKI GROOVE THE MOVIE?-石野卓球とピエール瀧-』の軸となった2014年の出演など、重要なポイントで披露されてきた曲である。じーんときました、始まった時も、終わった時も。

8月28日(土)16:00 ユニコーン@千葉県 森のホール21(松戸市文化会館)/Stagecrowd

 ニューアルバム『ツイス島&シャウ島』のリリース・ツアー「ユニコーンツアー2021“ドライブしようよ”」全27本の初日。27本のうち、この初日=8月28日(土)松戸・10月2日(土)姫路・10月20日(水)呉・11月6日(土)広島・11月13(土)・14(日)山形の6本は、Stagecrowdで生配信もあり。視聴チケットは、オリジナルグッズ付き(フラッグ)とか、6公演セットとかもあるが、普通に観るだけだと、早割3,500円で当日・見逃し4,000円、1週間後までアーカイブ視聴可能。
 配信ありとはいえ、11月23(火・祝)・24日(水)の日本武道館2デイズまで続くツアーなので、あんまりネタバレするのはあれですね。ええと、前回のツアー(2019年)の「100周年なので100分で終わるツアー」ほどではないが、でもあれをやったことで手応えを得たのでは、と思わせる、尺はやや短めで曲数はみっちり詰まっている、タイトで濃い内容のライブだった。『ツイス島&シャウ島』収録の13曲、すべてやってくれたし。最初にアルバムを聴いた時、「これ、ライブ、楽しそうだなあ」と思ったが、ご本人たちにもそんな、「全曲ライブでやりたい!」みたいな手応えが、あるのかもしれない。
 なお、『ツイス島&シャウ島』は、テーマを「ロックンロール」に定めて作られたアルバム、ということで、メンバー5人中ふたりがリーゼントにサングラス姿になっていた。ABEDONと奥田民生。ABEDONはびしっとリーゼント、OTはいつものモジャモジャパーマのサイドをなでつけてリーゼントにした風情。衣装がセットアップなのと合わさると、OTが自身のルーツのひとつとして挙げる、ダウンタウン・ブギウギ・バンドのようだった、おふたりとも。
 余談。ドラム川西幸一は、アマチュア時代から26インチという規格外のでかさのバスドラムを長年使い続けてきたが、確か、2019年の100周年ツアーから、22インチに下げた。が、このツアーでは、28インチという、前よりでかいサイズになっている。インタビューで訊いたところ、レコーディングで使って、気に入ったそうです。一般にバスドラムというのは、でかければでかいほど、強く踏まないといい音が出ないものである。大変じゃないすか? と訊いたら、「実は胴が浅いけえ鳴らしやすいんよ」とのことでした。

  • 兵庫慎司

    TEXT

    兵庫慎司

    • ツイッター

SHARE

関連記事

イベントページへ

最新記事

もっと見る