兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第94回[2021年12月後半・THE SPELLBOUND、宮本浩次、帝国喫茶、『Reunion Tour 2021』最終日、石野卓球、COUNTDOWN JAPAN 21/22初日、フラワーカンパニーズの年越しライブ、に行きました]編

コラム | 2022.01.18 19:00

イラスト:河井克夫

 音楽ライター兵庫慎司が、基本的に生で、もしくは、(最近は)たまに配信で、観たすべてのライブのレポを、月二回ペースでアップしていく連載の94回目、2021年12月後半編です。今回は7本、すべて生でした。あ、正確に言うと、石野卓球は「ライブ」じゃなくて「DJ」だけど、いいですね、それは別に。では、2022年も、どうぞよろしくお願いいたします。

12月18日(土)18:00 THE SPELLBOUND@USEN STUDIO COAST

 BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之が、新しいバンドを始めるためにSNSでボーカリストを募集したところ、THE NOVEMBERSの小林祐介が手を挙げたことがきっかけで始まったのが、このTHE SPELLBOUND。2021年の1月から5月まで、5ヵ月連続で曲をデジタル・リリースしており、7月8日(木)にはリキッドルームで初ワンマンを行い、8月21日(日)はフジロック・フェスティバルに出演、RED MARQUEEの大トリ(3日間の最後)を務めた。
 以上、ご存じない方のために説明しましたが、そのフジロックで観たらどえらくかっこよかったので、この二度目のワンマンも楽しみにしていたのだった。で、そのフジ以上に、さらによかったのだった。
 小林祐介はTHE NOVEMBERSと並行しての活動だし、そもそものバンドの成り立ちから考えると、音楽的な軸は中野雅之で小林がボーカル、みたいな感じでもおかしくないのに、そうなっていない。両者のカラーが出た、そしてこれまでの両者の作品ではなしえなかった、新しい表現になっている。
ブンブンの曲とTHE NOVENBERSの曲も、1曲ずつやったが、それすらも新しかったし、とにかくライブ全体の「何かが始まっている感」が、すごい。ステージ後方の画面に、でかでかと歌詞が出まくったりする演出も、それに拍車をかけている。
 小林祐介はボーカル&ギター、中野雅之は(ベースじゃなくて)主にギターとシンセとバック・トラック等を担い、他はサポート・ドラマーがふたり(ブンブンもサポートしていた福田洋子と、yahyel/DATSの大井一彌)、という編成もいい。
 ライブの最後には、2022年2月23日にファースト・アルバムをリリースすることが発表された。楽しみ。

12月19日(日)18:00 宮本浩次@大阪城ホール

 全都道府県ツアー『日本全国縦横無尽』の前半戦のしめくくり。このツアー、初日の10月20日(水)の川口と、10本目の11月21日(日)の広島を既に観ているが、「大阪城ホールかあ。エレファントカシマシの30周年のスタート、大阪城ホールだったなあ」「2018年のクリスマスイブの東京スカパラダイスオーケストラの大阪城ホールに宮本が出た時、観に行ってSPICEにレポを書いたなあ(こちら ≫ SPICE:東京スカパラダイスオーケストラ、大阪城ホールのアリーナ中央に円形のステージを組んだ360度ライブ『スカフェス in 城ホール』)」などと思っていたら、観たくてたまらなくなって、大阪まで行った。
 ただ、行ったからといって、ツアーはまだまだ続くので、セットリストとかのネタバレはしない方がいいだろうし(後半からはセトリが変わる可能性もあるけど、念のため)、具体的なことはさして書けないのだった。ただ、初日の川口の時も、10本目の広島の時も「うわ、すげえライブ」とビビったが、さらに輪をかけてすさまじかった、今回も。三度目なのでセットリストもだいたい覚えているのに、ライブ全体のポイントとなる曲(が、いくつもある)にさしかかるたびに「うわ、きた!」と、ゾワッとする。
 特に、終わり方。アンコールの最後の曲が、本当にもうすばらしい。個人的に大好きな曲だというのもあるが、毎回、もうどうしようもなく、グッときます。

12月20日(月)19:00 帝国喫茶 対バン:チロと衛星、toronto、pavilion@下北沢THREE

 大阪のバンド、帝国喫茶の、初EP『開店』のリリースを記念しての、東京では初めての自主企画。大阪のABCラジオで『真夜中のカルチャーBOYZ』等のレギュラー番組を持っている知人の雑誌ライター/インタビュアーの鈴木淳史が激推ししているバンドで、おそらくその効果もあって、既に東京のバンド業界をもザワザワさせている。なのでこの日、初めて観るのを楽しみにしていたのだが、もう大変に手応えありだった。
 2020年結成で、初めて普通に客前でライブをやったのは2021年8月。という若いバンドなので、演奏の粗さが魅力にもなる瞬間も、ウィークポイントになる瞬間もあったりするのだが、そのへんも含めて、すっごく可能性を感じる。特に、メロディと歌詞の強さと、ボーカル&ギター杉浦祐輝の放っている、オーラというか、カリスマ性というか、そんなようなものに。
 杉浦祐輝、MCで「日本武道館でライブやりたい」と言っていたが、「そうなるといいなあ」じゃなくて、「できるだろうなあ」「というか、もっとでかいとこでできるんじゃない?」と思った。

12月21日(火)17:45『Reunion Tour 2021 Eat music in the same LIVE HOUSE』ELLEGARDEN、10-FEET、マキシマム ザ ホルモン@Zepp Haneda

 ELLEGARDENと10-FEETとマキシマム ザ ホルモンの3バンドが、『Reunion Tour 2021 Eat music in the same LIVE HOUSE』と銘打って、東京・福岡・仙台・名古屋・大阪・東京を回る、という夢のようなツアーのファイナル。
 オフィシャルのレポを書きました。ぴあにアップされたものを貼っておきます。
 ≫ ぴあ:エルレ×10-FEET× ホルモンが夢の競演『Reunion TOUR』オフィシャルレポート到着

12月26日(日)23:00 石野卓球『地獄温泉』@リキッドルーム

 毎年恒例、石野卓球が自身の誕生日に、リキッドルームで、オープンからクローズまでDJは自分ひとりで行っている『地獄温泉』。誕生日縛りなので、オールナイトのイベントなのに、翌日が休日ではない年もあって、今年はそのパターンだった。自分が勤め人ではないことをありがたく思うのは、こんな時です。
 が、にもかかわらず、今年も大盛況。コロナ禍であることを考えると、ほぼリミットの入りだったと思う。そう、この時期はまだ、感染者数、落ち着いてたんだよなあ……と、思わず遠い目になってしまいます。
 この『地獄温泉』、普段の石野卓球のDJとは異なる、「誕生日ならでは」の選曲になる。今年は、というか、毎年わりとその傾向があるかもしれないが、石野卓球のルーツの一部である、80年代のUK/USのヒット曲が次々とプレイされた。ブロンディ「Heart Of Glass」、デヴィッド・ボウイ「Let’s Dance」、ABC「Look of Love」などなど。
 僕は彼の一学年下、つまり同世代なもんで、10代の頃に慣れ親しんだ曲だらけで、すっごい楽しい時間だった。で、あまりの楽しさに、飲みすぎた。そう、この時期はまだ、感染者数……と、また遠い目になってしまいます。

12月28日(火)10:00 COUNTDOWN JAPAN 21/22 1 日目@幕張メッセ

 コロナ感染予防対策で、例年は5つあるステージをひとつにして開催された、2年ぶりのCOUNTDOWN JAPANの初日。櫻坂46、Little Glee Monster 、マカロニえんぴつ、ヤバイTシャツ屋さん、UNISON SQUARE GARDEN、東京スカパラダイスオーケストラ、宮本浩次、[Alexandros]が出演した。
 マカロニえんぴつのはっとりは、この日発売になった、初めて自分たちが表紙になったロッキング・オン・ジャパン2月号を掲げて登場。ヤバTは全11曲のうちの5曲目「癒着☆NIGHT」が終わった段階で、勝手にカウントダウンして、6曲目「げんきもりもり!モーリーファンタジー」からは、2022年ということにする。
 スカパラのステージには、ゲスト・ボーカルでUNISON SQUARE GARDEN斎藤宏介と[Alexandros]川上洋平が登場。宮本浩次、会場全体がもう「スターだ!」「スターが来た!」という超ウェルカムな空気。そしてトリの[Alexandros]、ヘッドライナーあたりまえな感じの堂々たるステージ──と、見どころだらけの1日だった。
 あと、感染予防対策で、あの広いエリアにイスがだーっと並べられたEARTH STAGE、やはり、不思議な光景だった。

12月31日(金)22:45 フラワーカンパニーズ@新代田FEVER/Streaming+

 毎年恒例、だが、昨年はコロナ感染者数の急激な増加で、直前で無観客で生配信オンリーになった、年越しカウントダウン・ライブ。今年はお客さんを入れて開催できた。Streaming+で配信もあり。
 では、セットリスト、書きます。1煮込んでロック 2ロックンロール 3チェスト 4元少年の歌 5深夜高速 6揺れる火 7DIE OR JUMP 8メーター振り切れ 9買い物へ行こう 10こちら東京 11ハイエース 12ザッツオーライ 13感情七号線 14この胸の中だけ
 こうして書いてみると、いいセトリですね。「メーター振り切れ」みたいな、普段あんまりやらない初期のレア曲もあるし、いちばんの代表曲「深夜高速」もちゃんとやっているし、近年の名曲「ハイエース」も披露したし。「ロックンロール」や「感情七号線」といった、個人的に大好きな曲が入っているのも、うれしい。
 で、この14曲を終えたところで、カウントダウン。2022年になりました。次回に続く。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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