兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第113回[2022年8月中盤・ROCK IN JAPAN FES 2022の3日目、Caravan、JUN SKY WALKER(S)、突然少年とハシリコミーズと秋山璃月バンド、the telephonesとPOLYSICSとTOTALFAT、の5本を観ました]編

コラム | 2022.09.06 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、半月の間に観たすべてのライブの短いレポを書いてアップしていく連載の113回目。普段は月2回ペースで書いていますが、2022年8月は観る本数が多いので月3回に分けました、の中盤編です。8月中旬、という時期にしては、フェスは5本中1本だけですが、次回=2022年8月後半編は、3本くらいあります。

8月11日(木・祝)10:05 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022 3日目@千葉市蘇我スポーツ公園

 前回も書いたが、国営ひたち海浜公園から千葉市蘇我スポーツ公園へと、今年から会場が変わったROCK IN JAPAN FESTIVAL、全5日(ただし最終日が台風で中止になってしまったので、結果的には全4日)の3日目がこの日。自分が観たアクトは以下。全部観たやつも、一部だけ観たやつも含みます。
 Creepy Nuts→キュウソネコカミ→NUMBER GIRL→POLYSICS→10-FEET→9mm Parabellum Bullet→マキシマム ザ ホルモン→KICK THE CAN CREW→BUMP OF CHICKEN→雨のパレード→DJ和
 キュウソのステージに本物のスカパラのホーン4人が参加して(5月7日に大阪の『OTODAMA’22〜音泉魂〜』で観た時は偽物だった)、「優勝」と「ギリ昭和」を一緒に演奏する。POLYSICS、2003年以来19年ぶり・二度目の、ROCK IN JAPAN FES.にピンチヒッターで出演。マキシマム ザ ホルモンのステージにシークレット・ゲストでCreepy NutsのR-指定が登場、亮君・ダイスケはん・ナヲちゃんと掛け合うようにラップを入れまくる。と、うれしいサプライズがいろいろある日だった。
 で。初日=8月6日が終わった後、「帰りの蘇我駅までの道と蘇我駅が、混んで大変だった」「終演してから蘇我駅に向かったら、普段10分で着く距離が1時間20分かかった」などという声を、ツイートやブログでいくつか見た。ROCK IN JAPAN FES.がこの会場になる、と知った時、最初に僕が「大丈夫かな」と心配になったのは、まさにそこだった。JAPAN JAMでここに来た時、「この規模だからお客をさばけるけど、ROCK IN JAPAN FES.クラスになったら無理だよなあ、この駅では」と、実感していたので。
 ただ、運営側はそんなこと、僕なんかの100倍シビアに予測して、どうすればいいかを考え抜いて開催したんだろうし、にもかかわらず初日がそういう事態になったのなら、じゃあどこをどうすれば少しでも改善できるか、即座に考えて翌日から手を打つだろう。と思ったので、その次に自分が来場した、この3日目の帰りに、どれくらい時間がかかるか、試してみることにした。
 トリのBUMP OF CHICKENの後のクロージング・アクト(を設けたのも退場を分散させるためだと思う)、雨のパレードとDJ和の両方を観て、完全に終演するまで会場にいてから、蘇我駅まで歩く。その際、「終演時には会場出口がもうひとつ設けられていて、そっちからの方が早い」とか「駅まで回り道をすれば却って早く着く」というツイートも見たが、そういう策はあえて取らずに、最短距離、つまりもっとも混む距離を歩く。
 で、DJ和が終わって、退場アナウンスが流れたところから計測開始。会場内を出るまでにけっこう時間がかかったが(信号や駅がパンクしないよう、会場内から一度に出られる人数を調整していた)、会場を出てからは、もちろん混んではいるし、ゆっくりしか進まないんだけど、完全に足が止まってしまうようなことはないまま、蘇我駅についた。で、さあここからが大変だぞ、と思ったらそんなことなくて、スッとホームまで下りられて、ちょうど来た各駅停車に乗れた(急行は混むだろうと思ったので各駅を選択)。計測開始から48分後。「え、もう?」とびっくりした。
 もちろん48分だって、だいぶかかっているっちゃあかかっているんだけど、自分はさしてストレスを感じなかったし、周囲の参加者たちも、わりとそういう空気だった。あちこちでスタッフがマメにアナウンスしたり、交差点が爆発しないようウネウネと動線を作って誘導したりするなど、全体に「遅いけど全然前に進めないという状態はほぼない」「ちゃんとオペレーションした上でこれくらいの混雑になっていることが、この場にいればわかる」「だから、参加者たちが理不尽なことをさせられている感じがない」のが、その理由だと思う。
 会場から出るゲートで、高いところからトラメガで誘導しているスタッフたちに、「おつかれさまー」と手を振りながら出ていく参加者が何人もいたの、ちょっといい光景でした。

8月12日(金)19:00 Caravan@SHIBUYA duo MUSIC EXCHANGE

 初めての全曲インストゥルメンタルのアルバム『Wanderlust』リリース記念、ということで、渋谷のduoにて行われた、「トークと弾き語りとコーヒーをお楽しみください」みたいな趣旨のイベント。
って、「トーク」と「弾き語り」はわかるが、「コーヒーを」とは? という方のために説明すると、このアルバム、Caravanのオンラインショップである「HARVEST ONLINE SHOP」で発売されたのだが、そこでの予約特典として、Caravanが通うご近所(茅ヶ崎)の自家焙煎コーヒー店、XAYMACAが監修したオリジナルブレンドコーヒー豆が付く。というわけで、この日はXAYMACAが会場に出張、お客さんは淹れたてのコーヒーを無料で何杯でもどうぞ、というサービスが付いていたのだった。
 Caravanがひとりでしゃべったり、『Wanderlust』収録の曲をみんなで聴く鑑賞会みたいな時間があったり、お客さんから集めた質問を箱から引いて答えたり、XAYMACA店主とふたりでトークしたり、「Run Away Sun」など数曲を弾き語りで歌ったり、という内容。終始リラックスした空気の中で進んで行く、楽しいイベントでした。
 そう、普段のCaravanのライブって、ひとりっきりで弾き語りでも……いや、「でも」じゃなくて「さらに」かもしれない、と思うほど、リラックスとかチルとかもないことはないけど、それ以上に、鋭かったりひたむきだったり切実だったりするものが、ステージから放たれているので。新鮮だった、そういう意味で。

8月13日(土)17:30 JUN SKY WALKER(S) @リキッドルーム/Streaming+

 ニューアルバム『BRAND NEW WORLD』のリリース・ツアーのファイナル。『BRAND NEW WORLD』は6曲入りだが、この日のMCで宮田和弥曰く、ファースト・アルバムの『全部このままで』は6曲入りだった、今回は3人体制になって初めてのアルバムなので、それに通じるイズムである、とのこと。なるほど。配信で観た。
 本編20曲、アンコール2回で4曲の計24曲をプレイ。『BRAND NEW WORLD』からは、「Beautiful Dawn」以外の5曲が演奏された。「つめこんだHAPPY」「歩いていこう」「START」「全部このままで」のような代表曲もふんだんに披露しながらも、そっちに寄りすぎて懐メロ大会になることもない、言わば「そうそう、この曲」と「あったあった、この曲」の両方がプレイされていく、絶妙なバランスのセットリスト。
 最初のMCで宮田和弥、「ROCK IN JAPANがなくなった分、俺たちががんばりますから」と言って拍手を浴びる。そう、この日、台風でROCK IN JAPAN FES.の最終日が、中止になったのだった。
 そのMC明けの曲が「Flower Moon 」だったり、本編ラストが「BRAND NEW WORLD」だったりと、新作からの曲が、ライブの流れの中で重要なポイントに置かれているのも良かった、今のジュンスカを聴かせていく感じで。
 余談。ジュンスカのサポートで、市川勝也がベースを弾いているのを観るたびに、不思議な気分になる。この男、僕の高校時代のバンド仲間なのだが(同い歳で、地元広島で対バンとかしていました)、高校卒業後に市川はTHE STREET BEATSに加入、インディーズで全国区の人気バンドになるが、メジャー・デビューが決まったところで自ら脱退。その後任として加入したのが、当時ジュンスカを脱退したばかりの伊藤毅だった。その2年後、伊藤毅がTHE STREET BEATSを脱退、メンバーに請われて市川は上京し、再加入する。
 それ以降、市川と小林雅之がPOTSHOTで一緒に活動したりなど、なんやかんやあって、現在、市川がジュンスカでベースを弾いている、という。だからなんだ、と言われると困るが、でも何かおもしろくないですか?

8月14日(日)19:00 突然少年、ハシリコミーズ、秋山璃月バンド@下北沢CLUB Que/CLUB Que LIVE STREAMING/Streaming+

 秋山璃月バンドの企画で、ゲストで突然少年とろくようびが出演、の予定が、ろくようびがメンバーの体調不良で出られなくなり、急遽代わりにハシリコミーズが出演。どれくらい急遽だったかというと、当人(ボーカル&ギターのアタル)のMCによると、前の日の夜の深い時間に代打出演依頼の連絡があり、当日は19時だったアルバイトの上がり時間を30分早くしてもらって、CLUB Queに駆けつけた、というくらい、急遽だったそうです(ってことは、リハはやれなかったのか)。
 で、トップの突然少年が「叩きつける」だけじゃなく「正面から聴かせる」みたいな最近のモードですばらしいライブをやった次に、ハシリコミーズ登場。ボーカル&ギターのアタルは男性で、ベースあおいとドラムは沙和は女性、見た感じ、21歳〜23歳くらい。音の出し方も歌い方も歌詞の乗っけ方もシンプルでストレート、ただし一聴するとスカスカ(「敢えて」な可能性も大)な音が、ソウルやファンクなんかの「ヨコ」なグルーヴを孕んでいて、自分の好みの感じ。
 秋山璃月バンドは、詞がくっきり耳に入ってくるハイトーン・ボーカルと、「詞のビット数を多くしたい」と「でもメロディの抑揚も言葉の響きも不自然なものにしたくない」の両立が生んだのかな、と思わせる楽曲そのものが、とても魅力的だった。

8月16日(火)18:30 the telephonesとPOLYSICSとTOTALFAT@下北沢シャングリラ

 UKプロジェクトが続けているイベント『ONE ON ONE』のスペシャル回。普段はUKプロジェクトのバンドと他のバンドでやっているのだが、今回はオールUKP、しかもこの3組。毎年この時期にUKPのアーティストたちのイベント『UKFC on the Road』を、新木場スタジオコーストで開催して来たが、コロナ禍で2020年は無観客オンラインで、2021年は恵比寿ガーデンホールでアコースティック・イベントとして行うことになった。そして、2022年1月をもって、スタジオコーストが閉館。
 というわけで、2019年までのような開催がかなわなくなったので、とりあえず今年は『ONE ON ONE』をこのタイミングで、『UKFC』の中心的存在である3バンドでやりましょう。ということだったのだと思う。電話ズ石毛もMCで「もうほとんどUKFC」みたいなことを言っていたし。
 トップはその電話ズ、二番手はPOLYSICS、そしてトリのTOTALFATのステージには、「夏のトカゲ」でPOLYSICSハヤシが(ギターで)、アンコールの「PARTY PARTY」で、電話ズノブ&長島涼平が参加。で、その途中から出演者全員がステージに登場……いや、出演者じゃないミュージシャンもいたか。
 とにかくそういう、来年からの『UKFC』再開を願いたくなる楽しい時間だったのだが、気の毒なのが長島涼平。当初はノブだけが参加する予定だったのに、急に駆り出され、なんの練習もしてないのに、SHUNの代わりに「PARTY PARTY」のベースを弾かされたようだったのだ。テンパっておられた。テンパるよそりゃ。でも、過去の『UKFC』でも、同じような光景を観たことがある気がする。

  • 兵庫慎司

    TEXT

    兵庫慎司

    • ツイッター

SHARE

関連記事

イベントページへ

最新記事

もっと見る