兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第115回[2022年9月前半・フラワーカンパニーズ、カーリングシトーンズ、10-FEET・BRAHMAN・マキシマムザホルモン・ELLEGARDEN、DENIMS、折坂悠太(重奏)・くるり・カネコアヤノ・フィッシュマンズ、の5本を観ました]編

コラム | 2022.09.26 18:30

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、生もしくは配信で観たすべてのライブのレポを書いて月に2回アップしていく連載の115回目、2022年9月前半編です。5本中2本がフェスというか大会場イベント系だった、というのが、9月はまだそういう時期なんだなあ、とも、でも2020年と2021年はそうじゃなかったもんなあ、とも思います。
 あ、最後の『wind parade』のアーカイブ配信、uP!!!とWOWOWはリンクを貼ったのに、TELASAはないのは、単に発見できなかったからです(TELASAのサイトで「wind parade」と「フィッシュマンズ」で検索かけたけど、これを書いている9月26日の段階では「一致する作品・人物がありません」でした)。

9月5日(月)19:00 フラワーカンパニーズ@京都磔磔/Streaming+

 ニューアルバム『ネイキッド!』のキャンペーン中に行われたスペシャル・ライブ。リリース・ツアーは11月からだが、それに先駆けて、京都磔磔で全曲初披露ライブをやって生配信もしましょう、という企画。なので、配信で観ればよさそうなもんだが、磔磔ずいぶん行ってないから久々に行きたい、というのもあって、京都まで足を運びました。
 で。その場にいた方も、配信で観た方も、うなずいてくれるだろうが、大笑いだった。何が。メンバー4人のテンパリっぷりが。『ネイキッド!』収録の11曲のうち、これまでライブで演奏したことがあるのは1/3くらい、つまりそれ以外は初めて人前でやる、というので、それはもう大変な緊張っぷり。とても結成33年のバンドとは思えないくらい。
 いちばん緊張していた鈴木圭介が、歌詞を飛ばすようなことはなかったが、某曲でギター竹安堅一が「イントロのリフを間違えて演奏が止まった」のかと思ったら、「イントロのリフそのものを忘れた」ことが判明。何度か弾き直して「あ、これだ」と思い出す、という事態に。あとできいたところによると、その曲は既にライブでやったことがあったので、油断していたそうです。『ネイキッド!』の11曲をすべてやり終えて、さあここからは既存の曲、というゾーンに入った時の鈴木圭介の安堵の表情、忘れられません。

9月8日(木)18:30 カーリングシトーンズ@NHKホール

 セカンド・アルバム『Tumbling Ice』のリリース・ツアーのファイナル、東京渋谷のNHKホール2デイズの2日目。本編18曲アンコール3曲の全21曲。メンバー全員でグダグダなギャグを執拗に繰り返したり、中盤に設けられた〈Road to 老後 CM王への道〉(という趣旨の企画アルバムが、セカンドの直後に発売になった)のコーナーで、その場で1曲作ってみたり、いつものことながら曲によってドラマーが替わったり、斉藤シトーンが手作りギターを紹介したり(これもいつものことか)、などなど、基本的に好き放題。そして、ゆるい。
 しかし、歌声やメロディやリズムなどの確かさ、そしてそもそものこのバンド自体の魅力である、ひとつの曲を複数の豪腕ボーカリストがまるでラッパーのように歌い継ぐことの魅力には、やはり抗えないのだった。
 アンコールは、さんざんしゃべりつつ、「夢見心地あとの祭り」から「ガッツだぜ!!」と、トータスシトーン中心で攻めて、シメは恒例、全員楽器を置いてカラオケで歌い踊る「涙はふかない」。次はいつやれるのかわからない人たちなので(スケジュール揃えるの、本当に大変だと思う)、観れてよかった。

9月9日(日)18:00 10-FEET、BRAHMAN、マキシマム ザ ホルモン、ELLEGARDEN@ぴあアリーナMM

 この4バンドによるイベント『BAND OF FOUR-四節棍-』(名前はこの日の出演順にしました)。2021年12月に、10-FEET、マキシマム ザ ホルモン、ELLEGARDENの3バンドで『Reunion TOUR 2021〜Eat music in the same LIVE HOUSE〜』が行われたが(オフィシャルのレポを書きました。こちら ≫ ぴあ:エルレ×10-FEET× ホルモンが夢の競演『Reunion TOUR』オフィシャルレポート到着)、そこにBRAHMANが加わり、会場が1万人規模の横浜のぴあアリーナになった状態、ということか、言わば。
 で。この4バンドだと、ホルモンは「しょっちゅう」と言っていいくらい、ライブを観ている。10-FEETも、今年春〜夏の各地のフェスで、何度か観てきた。という個人的な事情で、久々に観たBRAHMANと、復活以降でライブを観るのはまだ4回目だったELLEGARDENが、特に強く印象に残ったのだった。
 BRAHMAN、TOSHI-LOWはよく「鬼」と呼ばれているが、「鬼」に「神」が付くなあ、「鬼神」だなあこれは、と言いたくなるようなすさまじいパフォーマンス。9曲目の「今夜」で細美武士が登場、TOSHI-LOWとツインボーカルでハモる、というサプライズもあり。
 そしてELLEGARDEN、「No.13」(この日、他のバンドたちにトリを勧められたのは「9月9日」だからだそうで、つまりこの曲をやらない選択肢はなかったわけですね)「Supernova」「Fire Cracker」「Missing」「ジターバグ」「Make A Wish」「Salamander」等の、出し惜しみゼロの10曲を本編でぶちかました上に、アンコールでは細美の「今この場から現役のバンドに戻ります」という言葉から、新曲をやった! で、直後にその曲「Mountain Top」が、サブスク上にアップされた。で、ニュー・アルバムも完成間近だそうで、後日、11月からワンマンでZeppツアー(あ、仙台はGIGS)を行うことが発表になった。

9月10日(土)16:00 DENIMS@COTTON CLUB

 丸の内の東京ビルTOKIAにある、オシャレで大人でジャジーなライブ・レストランCOTTON CLUBに、DENIMSが初登場。こういうお店のデフォルトで、16時からと19時からの1日2回公演。その1公演目を観た。
 というように1日2公演の場合、尺短め・曲数少なめでライブをやるケースが多いと思うが(僕がビルボードライブ東京とかで観てきたライブはそうだった)、この日のDENIMSは、本編13曲アンコール2曲、というしっかりしたボリューム。しかも、あとで知ったが、1公演目と2公演目では、セットリストも変えたそうだ。両方観るファンもいるであろうことを考慮したのだろうが、気合い入ってる。
 ただ、本人たちも、こういうハコでやるのは不慣れ、という自覚があったようで、最初のMCで「大丈夫ですか?」「似合ってますか?」と、気にしていた。普段よりこぎれいな衣装だったかもしれないが、立ちふるまいもパフォーマンスも、違和感ないですよ。と、言いたくなりました。
 4 曲目に、8月31日に配信リリースしたばかりの新曲「way back」をプレイ。1曲目から6曲目まではメンバー4人で演奏、そして7曲目からアンコールの2曲までの9曲は、サポートふたり=サックスとトロンボーンが加わった6人編成になった。それもよかった、取ってつけた感ゼロで、最初からそういう曲だったくらい自然で。

9月11日(日)12:45 wind parade(折坂悠太(重奏)、くるり、カネコアヤノ、フィッシュマンズ) @秩父ミューズパーク

 FUJI&SUN(というフェス)と、ぴあと、ライブナタリーが共催した『wind parade』というイベントで、場所は秩父ミューズパーク。すり鉢状の形で、前方はイス席、後ろ半分は段々状態で芝生席。で、前半分くらいは屋根がある、野外の会場です。着いて思い出したけど、ここ、昔、グループ魂が『ぱつんぱつんフェスティバル』2デイズをやった場所だ。いつだったっけ、あれ……と、検索をかけたら、当時自分が書いたライブレポがひっかかりました。こちら。 ≫ rockinon.com:グループ魂のぱつんぱつんフェスティバル @ 秩父ミューズパーク
 で、この日は、折坂悠太(重奏)・くるり・カネコアヤノ・フィッシュマンズが出演。折坂悠太が「野外のでかいステージ、平気な人」であることが、よくわかったりとか、くるりが「琥珀色の街、上海蟹の朝」で始まり「ロックンロール」で終わる大サービスなセットリストだったりとか、いつもながらMCなし曲間もほぼなしで曲を連打していくカネコアヤノが、ストイックでかっこよかったりしたが、この日いちばん観て「うわあ」ってなったのは、やはり、トリのフィッシュマンズだった。
 ボーカルは、原田郁子とドラムの茂木欣一。原田郁子、「ちょっと転んじゃいまして」とのことで、足をケガしており、自分がメインで歌う曲以外は座ってパフォーマンス。セットリスト、書いておきます。
  1:Go Go Round This World!/2:なんてったの/3:頼りない天使/4:ひこうき/5:Smilin’ Days,Summer Holiday/6:WALKING IN THE RHYTHM/7:Weather Report/8:いかれたBaby/9:ナイトクルージング/10:SEASON
 6曲目の「WALKING IN THE RHYTHM」で、カネコアヤノがゲストボーカルで参加。ってことはこの後、何かの曲で折坂悠太も出て来るのかな、岸田繁はさすがに出て来ないか、とか思っていたら、9曲目の「ナイトクルージング」で、なんと3人とも登場した(岸田はボーカル&ギター)。2コーラス目の頭で岸田がひとりでボーカルをとった時の「場の空気が変わる感じ」、すごかった。遠かったけど(うちからクルマで片道2時間強)、来てよかった。と、つくづく思った。
 なお、10月14日19:00からuP!!!とTELASAで配信あり、その後11月には、WOWOWでも放送と配信があるそうです。詳細はこちら。
 ≫ uP!!!
 ≫ WOWOW

  • 兵庫慎司

    TEXT

    兵庫慎司

    • ツイッター

SHARE

関連記事

イベントページへ

最新記事

もっと見る