兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第124回[2023年1月後半・宮本浩次、奥田民生、フルカワユタカ10周年イベントなどの6本を観ました]編

コラム | 2023.03.02 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブ(基本的に生・時々配信)について短いレポを書き、月二回アップしていく連載の123回目、2023年1月前半編です。
 今回はOBLIVION DUSTとハンブレッダーズ×四星球で行っているZepp Haneda(TOKYO)、数年前に「天空橋駅そばにZeppを作る」と発表になった時は、絶望したものですが、そしてオープン後も「うちから遠い! 行きにくい!」と往生しつつ通っていましたが、1年前にバイクを買ってから、ずいぶん楽になりました。Zepp Haneda(TOKYO)のある羽田イノベーションシティのバイク駐輪場、Zeppのすぐ裏なのです。雨が降ると「ああ……」と思いますが。

1月16日(月)18:30 宮本浩次@東京ガーデンシアター/Streaming+

 『ROMANCE』と『秋の日に』に収録された、カバー曲を中心としたコンサート『ロマンスの夜』は、11月28日・29日東京国際フォーラムホールAの2デイズと、12月7日・8日神戸国際会館こくさいホール2デイズで行われるはずだったが、東京の2デイズが宮本浩次の体調不良で延期、その振替公演がこの東京ガーデンシアター。Streaming+で生配信もあり。なお、神戸の1日目の方を観て書いた、この連載の回はこちらです。≫ DI:GA ONLINE:兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第121回[2022年12月前半・電気グルーヴと桑田佳祐の2デイズ、宮本浩次@神戸、syrup16g、などの11本を観ました]編
 というわけで。『ROMANCE』収録の12曲と、『秋の日に』収録の8曲、さらに昔エレファントカシマシでカバーした「翳りゆく部屋」を歌った上に、アンコールで自身の「冬の花」と、新たなカバーである沢田研二の「カサブランカ・ダンディ」を追加した、全22曲のセットリストだった(神戸で観た時と同じ)。
神戸の時にも書いたように、「基本全部カバー曲」という縛りがあっても、曲の並べ方・演出のしかた・歌と演奏のしかたで、ここまで見事なストーリーを描けるのだ、そういうことをやれる人がいるのだ、という事実に、驚いたし、惚れ惚れした。
 で、アンコールの、サプライズ2曲。オリジナルの「冬の花」をやったのは、この季節だからだろうな、あとここに並んで違和感のない曲調だからだろうな、と納得したが、「カサブランカ・ダンディ」には驚いた。
 『ROMANCE』と『秋の日に』でカバーする曲を「女性シンガー縛り」に決める前の段階で、候補にしていた曲なのではないか。そのあと「女性シンガー縛り」にしたので、どちらにも入れられなかったが、好きなので歌いたかった、どこかで披露したかったのではないか、と、推測する。それはもう、胸のすくような見事な歌いっぷりだった。

1月21日(土)18:00 OBLIVION DUST@Zepp Haneda(TOKYO)/YouTube

 6年ぶりの新作ミニアルバム『Shadows』のリリース・ツアーのファイナル。だったのだが、このライブ、半分くらいしか観れなかった。この日の17:00から、ちょっと断れないし断りたくないインタビューの仕事が入ってしまい、オブリのスタッフに「すみません、途中からになってしまうんですが……」とお願いして、見せてもらったのだった。
 『Shadows』は、エレクトロニック・ミュージック方向に、かなり振り切った作品なので、これまでのファンは賛否両論分かれるだろうなあ、俺はもともとこのあたりのジャンルの音が好きだから賛だけど……と思っていたが、フロアの反応、とても良かったし、メンバーも楽しそうだったし、違和感もなかった。2012年発表の「Gateway」が、違和感なくセトリに馴染んでいて、そうか、昔からこういうカラーの曲もあったもんな、と、改めて気づいたりもしたし。
 で。このライブ、YouTubeのOBLIVION DUST公式チャンネルで、無料で生中継あり、だった。「会場の開始時間とは異なります」と但し書きが付いていたので、中継では頭の方は観れないってことですね。1月31日(火)までアーカイブが残るので、後で確認したら、生で観れなかった前半のうち、4曲目の「Everyday Negative」が終わって、5曲目の「Satellite」が始まるあたりから、観ることができた。
 当日、僕がZepp Haneda(TOKYO)に着いたのは、「AGAIN 」の途中で、曲が終わってから、KEN LLOYD(Vo)のMCタイムになった。昨夜、明日はライブだから音楽系の映画を観たくなり、前から気になっていた『ロード・オブ・カオス』、メイヘムというノルウェーのブラック・メタル・バンドの実話を元にした作品を観たら、これがもう、かなりえぐかった。メンバーを刺したり、教会を燃やしたりするバイオレンスだらけの映画で、2時間のうち1時間半は目を細めて観た。その映画を観て唯一よかったことは、オブリ、けっこう仲いいな、と思ったこと──。
 という話をしてから、「Gateway」に入ったのだが、それが10曲目と11曲目だったことがわかりました、アーカイブを観て。なお、そのYouTubeのアーカイブ、後に、期間限定から無期限公開に変更になった。なので、今も観れます。こちらです。

【Live Streaming】OBLIVION DUST “Plug In The Fuse” Winter Tour 2022 - 2023 in TOKYO

1月25日(水)18:00 ハンブレッダーズvs四星球@Zepp Haneda(TOKYO)

 ハンブレッダーズが四星球を招いて行った、『ハンブレッダーズ方向性会議』というタイトルのイベント。というのはですね。四星球が2022年11月に福岡・大阪・名古屋・東京のZeppで行った『対バンTOUR 四星球方向性会議』の、東京公演に出演するはずだったハンブレッダーズが、メンバーのコロナ感染で出られなくなり、代わりに四星球がハンブレッダーズのコピーバンド、昆布レッダーズとして出演。感染しなかったハンブレッダーズのでらしも出演した。で、そのお返しとして、急遽この日、ハンブレッダーズが自らの主催で『ハンブレッダーズ方向性会議』を行って、ゲストで四星球を呼んだのだった。いい話。
 まず先攻の四星球、それぞれハンブレッダーズのメンバー(を、まさやんが段ボールで作ったやつ)をおぶって「オンブレッダーズです」と名乗って登場したり、1曲目の「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」で ukicasterを呼び込んでムツムロアキラの赤いテレキャスター(をまさやんが段ボールで作ったやつ)をぶん投げさせたり、ハンブレッダーズの「ライブハウスで会おうぜ」をカバーしたり。
 そして、後攻のハンブレッダーズは、「ファイナルボーイフレンド」をやる前に「君はおばさんにならない」をワンコーラス歌ったり、新曲を初披露したり、アンコールでは4人で「ライブハウスで会おうぜ」をやってから、「クラーク博士と僕」と、ブルーハーツの「TRAIN TRAIN」で、四星球が全員参加したり。という、ひたすら楽しく、ひたすらグッとくる時間だった。

1月26日(木)19:00 突然少年@下北沢近松

 ザ・リラクシンズの企画に突然少年が呼ばれて、Glimpse Groupとの3マン。締切でてんぱっていた日だったので、サッと行って突然少年を観て、サッと戻った(うちから下北沢まで自転車で10分なのです)。
 ニューアルバム『ナチュラル・ボーン』のツアー中で、その合間に、今回みたいに誘われるとイベント等にも出ているのが現在の突然少年だが、観るたびに良くなっている。それまでは、爆音で押しまくるライブだったのが、『ナチュラル・ボーン』以降は押し引きや緩急も含めて聴かせる・見せるライブになって来た。と、僕は思っているのだが、そのメリハリがよりクリアになってきたというか、全体に逞しくなったというか。次に観るのも楽しみ。

1月28日(土)17:00 奥田民生@市原市市民会館

 2年ぶりの、MTR&Yでの全国ツアーの初日。奥田民生のレーベル、RCMR(ラーメンカレーミュージックレコード)が、各ウェブメディアに配信するオフィシャルのライブレポートを書きました。SPICEにアップされたのを貼っておきます。≫ SPICE:奥田民生、2年ぶり全国ツアー開幕 初日公演のオフィシャルレポート到着

1月29日(日)18:00 フルカワユタカ10周年記念イベント”10×25”@渋谷Spotify O-EAST

 ソロ始動10周年を記念してのイベント。5周年の時は、アンコールでDOPING PANDAがサプライズ登場、4曲をプレイしたが、その後、2022年1月28日に再結成して活動しているので、今回は出演はなし。と、途中のMCで本人が言ったが、集まったファンもあたりまえにそれを受け入れていた、というか、そもそも「ドーパン出ないかな」と期待する空気自体、なかった。という事実が、とても健康的に感じた。
 出演は、バンドはBase Ball Bear、the band apart(naked)、フルカワユタカ。で、合間にサブステージ(がO-EASTにはあるのです)で、弾き語りで須藤寿(髭)とLOW IQ 01。で、その5アクトすべてに、フルカワユタカは参加。
 かつてサポート・ギターとしてツアーを回ったBase Ball Bearでは、メンバーが彼に内緒で突然DOPING PANDAの「Transient happiness」を演奏し始め、フルカワ、慌てつつも、歌うし、ギター弾くし、間奏ではおなじみの両脚開閉ダンスを見せるしで、オーディエンス大喜び。
 などなど、見どころだらけのイベントだったが、中でもやっぱりトリの本人のステージが最高だった。本編ラストにバンアパ原昌和と共作した「ドナルドとウォーター」を持って来て、アンコールはBase Ball Bearが参加して一緒に作った「コトバトオト」をやって、ソロデビュー曲「too young to die」で締める。という、「10周年だから」「このゲストたちだから」ならではのステージだった。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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