兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第134回[2023年5月も数が多いので3回に分けた中盤編・THE SPELLBOUND、椎名林檎、ホフディラン『春のベースまつり』などの6本を観ました]編

コラム | 2023.06.13 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライターである兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブについて何か書いて、普段は月二回、1ヵ月で観た本数が15本以上の時は月三回のペースでアップしていく連載の、第134回目・2023年5月中盤編です。前回の5月6日から今回の5月11日まで、6日続けてライブに行っていたことに、以下を書いて、気がつきました。だからなんだと言われると困るが。

5月8日(月)19:00 THE SPELLBOUND×THE SPELLBOUND(BOOM BOOM SATELLITES 25th Anniversary Set)@LIQUID ROOM

 THE SPELLBOUNDが立ち上げた自主企画イベントの一回目で、今年はBOOM BOOM SATELLITESがデビュー25周年、ということで、THE SPELLBOUNDと、BOOM BOOM SATELLITESの曲をやるTHE SPELLBOUNDの対バン、というスペシャルな企画。
 最初はBOOM BOOM SATELLITESバージョンの方、中野雅之+小林祐介と、ブンブンのサポートメンバーだったドラム福田洋子の、3人編成でのステージ。次々と演奏されるブンブンの曲に、幸福過ぎてクラクラしていたら、ゲストでMAN WITH A MISSION のジャン・ケン・ジョニーが登場してびっくりした。後攻のTHE SPELLBOUNDは、ふたりに福田洋子と大井一彌のツインドラムが加わったいつもの編成で、ゲストボーカルでXAIも参加した。
 で。前半のブンブンセットがあまりも良くて、小林祐介の歌うブンブン曲になんの違和感もなくて、正直、観ていて、複雑な気分になった。中野雅之がボーカルを募集して、そこでTHE NOVEMBERSの小林祐介が手を挙げて、ふたりでTHE SPELLBOUNDを結成したわけだが、もしかして「結成」じゃなくて「亡くなった川島道行の後任として小林祐介が加入してBOOM BOOM SATELLITES続行」という方法もあったんじゃないの? この趣旨でやるライブが、こんなにいいのであれば。
 と、思ってしまったのだった。しかし、次のTHE SPELLBOUNDのライブが始まったところで、考えが変わった。いや、違うわ。そんなことないわ。もしそうなっていたら、今、目の前で繰り広げられている、中野雅之と小林祐介によるTHE SPELLBOUNDの音楽に、触れることはできなかったわけだから、という。
 なお、終演後に、この「THE SPELLBOUNDとBOOM BOOM SATELLITESの曲をやるTHE SPELLBOUNDの対バン」企画を、ツアーとして行うことが発表になった。9月17日札幌cube gardenから10月29日Zepp Shinjukuまでの6本。楽しみ。

5月9日(火)19:00 椎名林檎@東京国際フォーラムホールA

 ソロの椎名林檎としては5年ぶりのツアー『椎名林檎と彼奴らと知る諸行無常』のファイナル、東京国際フォーラムホールAの2デイズの1日目。
 BARKSにレポを書きました。未読の方、ぜひ。≫ BARKS:【ライブレポート】椎名林檎、5年ぶりソロツアー<椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常>完遂

5月10日(水)19:00 ホフディラン『春のベースまつり』@新代田FEVER/Streaming+

 今回で11回目の、ホフディラン、この時期恒例の『春のベースまつり』。そもそも1回目は、ホフのバックバンド=BEST3のベーシスト、キタダマキが、ブッキングのミスで出られなくなり、苦肉の策で友人知人のベーシストたちを寄せ集めてリレー形式で弾いてもらったら、観る側に好評だったし、やる側も楽しかった。というわけで、定例化したもの。
 最初はワタナベイビーが2曲、歌いながらベースを弾いて、そこから林幸治→田中貴→おかもとえみ→ウエノコウジ→グレートマエカワ→ヒーセ(廣瀬洋一)、と、2曲ずつ弾いていく、という構成。頭のワタナベイビーの時、水色の髪の男が乱入して来て、誰かと思ったらビッケだった(小宮山雄飛曰く「急に来て急に出た」)、という、ハプニングのようなサプライズもあり。
 アンコールはこのイベント皆勤賞の男=グレートマエカワがベースを弾き、最後は全員が登場して「ホフディランのテーマ」で終了。ベースを聴き比べる、それぞれのパフォーマンスを観比べる、という、普段なかなかできない音楽体験、今年も実に楽しかった。来年も観たい。

5月14日(日)16:00 THE COLLECTORS@渋谷 CLUB QUATTRO

 2023年のTHE COLLECTORSは、『日曜日が待ち遠しい!』と銘打って、1月〜12月まで、渋谷クラブクアトロでのマンスリー・ライブを続行中。1本目の1月を観たきりだったので、足を運んだ。
 4月の開催時は、まだコロナが5類移行になる前で、今回が移行後初、ということも関係してか、しょっぱなからオーディエンスの熱量がめったやたらと高い。どれくらい。最初のMCで加藤ひさしが「すばらしいねえ!」と賞賛したくらい。
 ここ数ヵ月、フロアをギュウギュウに埋めたオーディエンスが歌ったり叫んだりして存分に楽しんでいる光景を見ることが増えて、そのたびに「やっとこの状態が戻ってきたなあ……」としみじみするが、この日は、その最たるものだった。
 ライブの定番曲もそうでない曲も、最近の曲も懐かしい曲も網羅しつつ、ギュッとコンパクトにまとまった印象のセットリストも良かったし、4人のパフォーマンスも「高値安定の極み」みたいな状態で、すばらしかった。あと、アンコールの最後に「恋はヒートウェーブ」を足してくれたのもうれしかった。この曲、もともと好きな上に、THE COLLECTORSのカバー・バージョンも大好きなもので。

5月17日(水)18:30 ハンブレッダーズ@NHKホール

 “ヤバすぎるワンマンツアー2023”のファイナル、会場はこのバンドのこれまでのワンマンでは最大キャパの東京渋谷のNHKホール。平日なのに余裕で満員。お客さんが若いのも関係なくはないだろうけど、それ以上に、今のこのバンドに勢いがある、ということの表れだと感じる。男のお客さんも多いし、みんな熱心で一所懸命で前のめり。で、歌う歌う、叫ぶ叫ぶ。すれまくったおっさんとしては、この場にいるだけで心が洗われるような気分になった。
 2020年の2月末以降、コロナ禍の苦しい状況と闘ってきたのはみんな同じだが、このハンブレッダーズは、メジャーからのファーストアルバムのタイミングと、コロナ禍の始まりが、モロにぶつかってしまったバンドである。当時、「ツアーどうなりますかね、できるといいんですけど」「ですよねえ」などと言いながら、彼らに初めてインタビューをしたので、よく憶えている。結局、そのファーストアルバムのツアーはできなくなり、それ以降も活動が大きく制限される中で四苦八苦しながら、でも支持の規模を大きくしながら、ここまでやってきた──。
 ということもあってか、本編後半のMCでムツムロアキラ、涙腺決壊してしまう。コロナ禍直後はPAのスタッフも楽器のスタッフも、仕事がなくなってしまい、「このままやったら仕事なくなって実家帰るかも」みたいなことを言うほどの状態だった……という話をしながら、耐えきれなくなったのだった。
 で、本編を終えて、アンコールで「またね」を歌い、感動的なMCを経ての「DAY DREAM BEAT」をプレイして、4人はステージを去った。が、ダブルアンコールを求める手拍子と歓声が収まらず、急遽再登場して「ライブハウスで会おうぜ」を追加。闘い続けた末に辿り着いた、自身過去最大規模のホールでのワンマンを成功させた日の最後がこの曲。今度はこっちが泣かされた。

5月18日(水)20:00 突然少年 ゲスト: CRYAMY @新代田FEVER

 ニューアルバム『ナチュラル・ボーン』(2022年10月30日リリース)のツアーの終盤、移動中にクルマの事故が起きてしまい、幸いメンバーたちにケガはなかったものの、金銭的なダメージを被り、急遽そのおカネを募る投げ銭ライブのツアー『生きてここでまた会おう』を東京・大阪・京都で開催した突然少年。この日はその東京編。入場無料(ただしひとり2ドリンク)。まあ俺も投げ銭はしなきゃな、と思いながら、受付で2ドリンク分を払って足を進めたら、入り口で募金箱を持って立っていたのは、ドラムのピエール畳。もちろん面識ある。ばれるじゃないか、俺の金額が! とりあえず、普段ここで突然少年がライブをやる時よりのチケット代よりは多い、くらいの金額を入れました。
 で、本番。このバンドのライブ、普段からわりと観ているが、それらの中でも屈指! と言いたくなるほどすばらしかった。ボーカル&ギター茜一郎・ギターカニユウヤ・ベースとだげん・ドラムピエール畳、四者が四様に炸裂しまくりながらひとつの曲を作っている、そう、「演奏している」とか「再現している」というよりも「作っている」感じがした、とても。
 なお、ゲストのCRYAMY のパフォーマンスもとてもよかったが、茜一郎のMCによると、以前に対バンした時に話した印象が、「二度と対バンすまい」と思うほど悪かったそうだ。しかし、なんやかんやあって、こうして出てもらった、出てもらえてよかった、というような話をしていた。いろんな意味で、実現してよかったな、と思わされた日でした。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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