兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第149回[2023年11月後半・フラカンと宮本とGLIM SPANKYなどを観ました]編

コラム | 2024.01.23 17:30

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、生で観たライブすべてのレポを書く連載の149回目。1ヵ月に14本以下の時は月に二回、15本以上の時は月に三回書いていて、2023年11月は16本だったので三回パターンの方で、これがその3回目。11月25日から30日までの間に観た6本について書いています。6本で4アーティストだけど。あと、1本はライブじゃないけど。

11月25日(土)17:30 フラワーカンパニーズ @ 弘前KEEP THE BEAT

 名だたる神社のある土地を回るという趣旨なので『神さまツアー』と銘打ち、伊勢(11月11日)で始まり出雲(1月14日)で終わる、全14本のフラワーカンパニーズのツアー。
 11月18日(土)の東京公演=神田明神ホールが、自分は観れないスケジュールだったのと、25日(土)の弘前=青森県と26日(日)の盛岡=岩手県がどちらも、自分が一度も行ったことがない県だったので、これはいい機会かもしれない、と思い、呼ばれてもいないのに(いつもだけど)遠出したのだった。
 25日の朝、飛行機で羽田から青森へ。青森空港からバスで弘前へ行って、KEEP THE BEATでライブを観る。終演後、フラカンご一行はそのままハイエースで盛岡へ出発、僕は弘前に泊まって、翌26日の朝、高速バスで盛岡へ。CLUB CHANGE WAVEでライブを観て一泊、翌朝新幹線で東京へ戻る、というスケジュール。
 初日の青森が大雪で、飛行機内で「除雪のため滑走路が封鎖されています、着陸できる状態になるまでしばらくお待ちください」とアナウンスが流れて、到着が大幅に遅れたが、翌日の岩手は快晴でした。
 1日目は、そんな天候だったのもあって、弘前の街、ほとんど人が歩いていない状態だった。なので、会場に入ってびっくりした。いっぱい人がいる! 外とのギャップがすごい。ソールドアウトまでは行っていないものの、充分なくらいのみっちり度。そのお客さんたちの、フラカンのパフォーマンスに対するリアクションも、素敵にあっつい温度だったし、このバンドの、全国津々浦々における支持の根強さを実感した時間だった。翌日に続く。

11月26日(日)16:00 フラワーカンパニーズ @ 盛岡CLUB CHANGE WAVE

 で。その翌日の盛岡でのライブを観て驚いたのは、セットリストが前日と全然違っていたこと。1曲目は同じだが2,3曲目は違って、4・5・6曲目は同じだが7曲目は違って、8・9曲目は同じだが10曲目は違って、11曲目と13曲目は同じだがその間の12曲目は違って……という按配なのである。
 終演後、ギタリスト竹安堅一にきいたところ、ツアーの前半は、さらにもっと違うセットリストだったそうで、普段なかなかやらない曲のオンパレードな日もあったという。が、久々に行く地方でそれはどうなん? みんなが聴きたい人気曲を、もっとやった方がいいんじゃない? みたいなことで、1本ごとにセットリストを変えながらツアーが進んでいるらしい。
 確かに、しょっちゅう観ている自分のような奴からすると「星に見離された男」「SO LIFE」「口笛放浪記」あたりの、ちょっと久々な曲がうれしいけど、久しぶりに行く街だったら「深夜高速」「恋をしましょう」あたりの人気曲がないと寂しいですよね。というわけで、弘前は久々に来たので人気曲多めのセトリにして、盛岡はフェス出演も含めると今年3回目なので、レア曲多めにしたのだと思う。なるほど。いろいろと腑に落ちました。

11月27日(月)19:00 宮本浩次 @ 東京国際フォーラム ホールA

 1年ぶり・二度目のカバー曲主体のライブ『ロマンスの夜』、大阪2公演・東京2公演のうちの東京1日目。翌日も観るので、フラカンを2日続けて観てから宮本浩次を2日続けて観る、という、自分的には夢のような4デイズになった。
 で、この日観て、もっとも「おおっ!」となったのは、アンコールで沢田研二の「サムライ」をやったこと。カバー集の『ROMANCE』にも『秋の日に』にも収録されていないし、テレビの音楽番組で歌っているのは観たことがあるが、生のライブでは今回のこの『ロマンスの夜』が初めてでは? と、興奮した。
 が、あとで調べたら、自分が生で聴いたのが初めてだっただけで、以前にもライブで歌ったことはあるらしいです。でもうれしかった、なんせ。あと、11月20日にリリースされたばかりの薬師丸ひろ子のカバー「Woman“Wの悲劇より”」を聴けたのもうれしかった。リアルタイムで知っている曲だけど、こんなにいい曲だったのか! と、認識を新たにしました。

11月28日(火)19:00 宮本浩次 @ 東京国際フォーラム ホールA

 その『ロマンスの夜』東京国際フォーラムのホールA、2デイズの2日目。セットリストは前日と同じで、3部構成。1部9曲・2部8曲・3部6曲、アンコール1曲の計24曲だった。
 というのが、実は、ちょっと新鮮なのだった。宮本浩次は、ソロの時も、エレファントカシマシの時も、2部構成+アンコール、という形でのライブを長年続けてきたが、今年10月8日のエレファントカシマシ@日比谷野外大音楽堂は、3部構成+アンコールだったのだ。
 その時は、日比谷野音だけがそうなのかな、と思ったが、この『ロマンスの夜』2デイズもそうだったので、今後は3部構成が定番になっていくのかもしれない。なお、日比谷野音は全部で30曲、この『ロマンスの夜』は24曲だったので、何曲やるかによって2部か3部かが決まるのではなく、全体の流れや、空気感や、お客さんの集中力がどれくらいもつか、などによって、3部構成にしたのではないか。本人の体力的な問題で、3部構成にして休憩を増やすことを選んだ、という可能性は、ないと思う。この日も前日も、終始全開だったので。

11月29日(水)18:00 奥野真哉、グレートマエカワ(DJ) @ 元代々木町・押競満寿

 これは、いわゆるDJイベントで、『オクノマサヒコのDJ DINNERS』というタイトル。小田急代々木八幡駅から徒歩数分のところにある、魯肉飯などを出すお店で、仲良しのこのおふたりがDJをやる、というもの。
 『New Acoustic Camp』に出店していたり、真心ブラザーズが現在公式サイトのトップに貼っているアーティスト写真をここで撮っていたり、うつみようこさんがここでイベントをやったり──と、バンド系・音楽系と近しいお店らしい。あ、ようこさん、この日も、店のスタッフとして働いておられました。うつみようこ&YOKOLOCO BANDの5人のうち3人が揃っていた、ということですね。18時から23時頃まで、ということで、その日、19時頃に渋谷まで戻って来るスケジュールだったので、ちょっと足を伸ばして寄ってみたのだが。
 びっくりした。赤と白のプラスチックでできた、ポータブルのアナログ盤用のプレイヤー、あるじゃないですか。ちゃんとしたアナログプレーヤーには手が出ない子供の頃に、最初に親から買い与えられたりした、あの、おもちゃみたいなやつ。1990年代の渋谷系全盛期の頃に、復刻されてリバイバルヒットしたこともあった。
 あれを2台並べてDJをやっていたのだ、おふたりは。同じメーカーから出ているポータブルミキサー(そんな商品があったこと自体知らなかった、僕は)で、左右をつないで。ただただ驚く僕にグレート、「すごいでしょ? 意外とできるもんだよ」。まあ確かに、おふたりとも主に7インチのアナログレコードを使ってDJをやるし、BPMを揃えて左右の曲をミックスする、みたいなことはやらないので、可能だったのかもしれないが。
 あともうひとつ、びっくりしたこと。僕は2時間ぐらいいて、お先に失礼したのだが、僕が帰る直前に、うじきつよしが遊びに来たのだ。フラカンのアルバムをプロデュースしたこともある、グレートの師匠的存在が、子供ばんどの湯川トーベンで、グレートは2023年に、そのトーベン師匠の代わりに二度ほど子供ばんどのライブで弾いたこともあって……という縁があるのは知っていたが、にしても、来る!? 家が近いとかなのかな。話しかけたりはしなかったが、こっそり興奮しました。で、あとで、ご本人が写真付きでポスト(ツイート)しておられるのを見て、じゃあ書いてもいいよね、と確認して、書きました。

11月30日(木)19:00 GLIM SPANKY @ リキッドルーム

 ニューアルバム『The Goldmine』のリリースパーティー、かつリリースツアーの1本目。8月に松尾レミがコロナに罹患して、その症状が重かったようで、一度ライブに復帰したが万全の状態での歌唱が難しく、もう一度療養に入り、9月のイベント出演などが軒並みキャンセルになっていた。僕は『The Goldmine』のインタビューをしたのだが、その時もまだ亀本寛貴ひとりだった。
 というわけで、けっこう心配していたのだが。松尾レミ完全復活、もうバッキバキだった、この初日から。セットリストの詳細には触れずにおくが、『The Goldmine』収録曲は全部やってくれたし。
 最初のMCで亀本寛貴、最近はCDを買わない人も増えているし、ミュージシャンはみんなアルバムというものを聴いてもらうためにどうしたらいいかを考えている、でも我々のリスナーのみなさんはアルバムを聴いてくれるからなんの心配もない──という話をする。松尾レミ、「リリースパーティーは全曲やろうって決めていたんです」。みんな大拍手、だった。
 なお、このツアー、これ以降の東京圏での公演は、1月20日横浜ベイホール、2月9日柏PALOOZA、3月24日日比谷野外大音楽堂。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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