兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第153回[2024年1月前半・フラカン打首からあげピーズなどを観ました]編

コラム | 2024.02.07 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、生で観たライブすべてのレポを書く連載の153回目、2024年1月前半編です。大晦日より年をまたいでのフラワーカンパニーズ@新代田FEVER/Streaming+から、1月14日ピーズ今年2本目のワンマン@F.A.D YOKOHAMAまで、6本を観て書きました。そういえば、新日本プロレス、後楽園ホールでは年に一回ぐらい観ているが、毎年恒例1・4の東京ドームに行ったのは、ものすごく久々でした。2005年以来とか、それくらいかも。

1月1日(日) (前日の)22:45 フラワーカンパニーズ @ 新代田FEVER/Streaming+

 前回の続き。フラワーカンパニーズの毎年恒例年越しワンマン『ヤングナイター』の、若干フワッとしたカウントダウン (メンバー4人がでかいクラッカーを撃った) が終わって、2024年になって以降の話です。
 16曲目の「夜空の太陽」が終わったところでカウントダウンを行い、17曲目の遠藤賢司のカバー「夜汽車のブルース」(久々!)からライブ再開。で、21曲目「終わらないツアー」で本編を締めて、アンコールで「行ってきまーす」と「サヨナラBABY」を追加、というセットリストだったのだが。
 そのアンコールで再登場して、ちょっとMCしてから「行ってきまーす」に入るところで、事件は起こった。この曲、竹安堅一のギター・リフで始まるのだが、「♪ジャーンジャーン」といつものリフを弾き始めた竹安、そこで演奏を止めてしまう。で、もう一度「♪ジャーンジャーン」と弾くが、またストップ。メンバーが声をかけると、「……どんな曲だっけ?」。竹安以外の3人もオーディエンスも「ええっ!?」となったところで、「あ、思い出した」と弾き始め、「ギターだけ」の部分を乗り切ってメンバーが演奏に加わり、無事完奏したのだった。笑った笑った。
 終演後の楽屋で、遊びに来ていたThe Birthdayのキュウちゃん(クハラカズユキ)が、「長くやってるバンドあるあるだよね。似たようなイントロの曲が何曲もあるからわかんなくなるっていう」と、竹安をフォローしておられました。
 で、私が思わずツイート(ポスト)したのが、これです。↓

1月4日(木)15:30 新日本プロレス @ 東京ドーム

 新日本プロレス恒例の1・4東京ドーム『WRESTLE KINGDOM 18 in 東京ドーム』。第1試合から第10試合まであって、それらの前の「第0試合」として、時間差バトルロイヤルが行われた(つまり実際は11試合あったということ)。この試合の勝者4人が、翌日1月5日墨田区総合体育館の「KOPW 2024」決定戦4WAYマッチ進出権を獲得する、というもの。1分ごとに選手が増えていくルールで、最終的に20選手が参加した。後半で、2019年に引退した飯塚高史が登場したりして、大いに盛り上がった。
 他も、いい試合やおもしろい試合、多数。中でも、高橋ヒロムのIWGPジュニアヘビー級のベルトにエル・デスペラードが挑戦した第7試合と、ウィル・オスプレイ×ジョン・モクスリー×デビッド・フィンレーの3ウェイマッチ(3人で闘う)だった第8試合が、特におもしろかった。僕はデスペのファンなので、彼の勝利&ベルト奪取が特にうれしかったです。
 第0試合から第10試合まで、飲み食いもせずトイレにも行かず、つまり一度も立ち上がらずに、ひたすら試合を観続ける5時間半でした。

1月9日(火)21:00 水川かたまり @ ヨシモト∞ドームⅡ/FANY Online

 TBSラジオ『空気階段の踊り場』のリスナー以外の方に、まず説明しておきます。
 11月13日にこの番組のイベント『空気階段の大踊り場』が行われることになり、その当日を迎える2ヵ月前から鈴木もぐらがダイエットを開始。現在の体重は119.4kgで、100kgを切れるかに挑み、イベント当日にその結果を発表する、という企画が行われた。
 ダイエットが失敗したら、鈴木もぐらがハマっているゾンビゲームのデータを消す。成功したら、みんな(番組準レギュラーの岡野陽一を含む)で韓国へ行って番組を収録する、というルール。その時ついでに、水川かたまりは「ダイエットが成功したらピンでライブをやる」という約束を、もぐら&岡野にさせられた。
 結果は、鈴木もぐら、98.5kgまで落として見事ダイエットに成功。水川かたまり、番組で癇癪を起こすレベルでいやがっていたが、ライブ、やらないわけにはいかない。
 水川かたまりの強固な主張で、渋谷のよしもと∞ドームⅡという44人しか入れない会場で、1時間だけのライブを行う、ということになった。そんなんチケット取れるわけない。頼む、配信やってくれ! と願っていたら、無事、配信ありになりました。通常チケットは3,150円、配信は1,315円。水川かたまりの持ちギャグ「サイコゥ! サイコーゥ! サイコゥ!」にかけた値段設定である。配信、FANYの手数料を足しても1,513円になる、という凝り方だった。
 これ、本人は本当にやりたくないのに、罰ゲームとしてやらされるものである。そして、現在の彼のスケジュールを考えると、そのやりたくなさを払拭できるほどの、つまり本気でネタを考えて稽古して成功できるほどの、充分な時間も手間も、かけられるはずがない。
 要は、観る前からわかるのだ、おもしろいわけないことが。つまり僕は……いや、きっと僕以外の多くのファンも「追い込まれている水川かたまりを観たいから、おもしろくないとわかっていてチケットを買う」ことにしたわけです。なんて倒錯したカネの使い方なんだろう。
 で、やはり、ネタはことごとくスベっていたが、終始てんぱりまくった顔で舞台に立ち続ける水川かたまりの姿は、めちゃめちゃおもしろかったのだった。
 ちなみに水川かたまり、舞台の最後に「ピンのライブはもう絶対やりません」と宣言したが、その後、1月15日放送の『空気階段の踊り場』では、「このままだと後悔するので、いつかまたやります。5年後とかになるかもしれないけど」と前言撤回。ライブを観た人のメールが何通か読まれたが、その中に、文章がうまくて極めて芯を食っている、ちゃんとしたダメ出しのメールがあったのも、彼の心を動かしたのではないか、と思う。

1月11日(木)19:00 打首獄門同好会 @ Zepp Haneda

 2024年は結成20周年イヤー、ということでまず1月3日にニューアルバム『ぼちぼちベテラン』をリリースし、全都道府県ツーマンツアーをスタートするなど、年明けからそれはもう大変に精力的に動いている打首獄門同好会、その全都道府県ツアーの1本目がこの日だった。
 ゲストはスキマスイッチ。いつもとあまりに客層が違うので大橋卓弥は戸惑い気味だし、常田真太郎も「(大澤)会長曰く『(発表した時)ざわついた』」と言ったりしていた。確かにそうだが、あったかく迎えられて盛り上がっていた。
 で、打首は打首で、初日とは思えぬ仕上がりのライブをやった上に(大晦日にCOUNTDOWN JAPANに出ていたりしてライブ活動が地続き状態だったのもあるんだろうな)、さらにアンコールでサプライズ、セッションあり。大澤会長+junkoさん+河本あす香(+VJ風乃海)に、スキマスイッチのふたり=ボーカル大橋卓弥とピアノ常田真太郎が加わって、打首の「布団の中から出たくない」をやったのだ。
 あの曲にピアノが入る、そして大橋卓弥のせつない美声が「♪布団の中から出たくない トイレの方が来たらいいのに」などと歌うのは、どうしたってミスマッチに思える。確かに、そのミスマッチ感が笑える瞬間もあったが、それ以上に「あれ? ありじゃないこれ?」と驚く瞬間の方が多かった気がした。貴重! 大澤会長も「人生で一度きりのセッション」と言っていたし。いやあ、この日に行けてよかった。

1月13日(土)18:00 からあげ弁当 ゲスト:ペルシカリア、南無阿弥陀仏 @ 下北沢近松

 ファーストアルバム『I am hungry』の東名阪リリースツアーの1本目=東京編、対バンでペルシカリアと南無阿弥陀仏が出演……って、「からあげ弁当」「ペルシカリア」「南無阿弥陀仏」と並ぶと、「ペルシカリア」が普通というか、まっとうなバンド名に思えますね。字面も響きもいいし。調べたら、「スマートウィード」という植物の学名「ペルシカリア・ロンギセタ」から取ったそうです。日本語では「イヌタデ」だそうです。
 そのペルシカリアも南無阿弥陀仏もあっついライブをやったが、からあげ弁当、それ以上にあつかった。荒っぽいところもあるが、というかあきらかに荒っぽいが、その荒さがパフォーマンスとして吉に出ているし、じっくり聴かせるタイプの曲も「つくづくいいメロディを書ける人だなあ」と思わせるし。
 この時期のバンドにしかない勢い、輝きがすごくて……いや、正しく言うと「この時期のバンドにしかない」けど「この時期のバンドならみんなあるもんでは決してない」勢いだし、輝きだな。ソールドアウトだったが、こういうライブを続けていれば、今後も動員、さらにどんどん増えると思う。

1月14日(日)18:00 ピーズ @ F.A.D YOKOHAMA

 2024年1月のピーズはワンマンが3本。8日千葉LOOK、14日横浜F.A.D、28日下北沢CLUB Que(この日は配信もあり)。14日のF.A.Dに行った。
 中盤ではる(大木温之)が「休憩」と言いつつリズム隊なしでギターのアビさん(安孫子義一)とふたりでやった2.5曲(3曲目の途中からリズム隊も加わったので)も含めると全部で41曲、2時間45分。
 はるは、ライブが1本終わるたびに必ず公式サイトのブログを更新して、文末にセットリストを書く人なので、それを見ていただければわかるが、特別な日だからこんなにいっぱいやったわけではない。これが今のピーズの「いつもの」ワンマンのボリュームである。今の4人編成で「Theピーズ」から「ピーズ」になり、コロナ禍が若干落ち着いあたりから本格的にライブを始めて以降、じわじわと曲数が増えて、現在はこんなことになっている。
 当時、公表されたので、ファンはみんな知っているが、はるはコロナ禍の前に大病をした(食道がん)。幸い、手術がうまくいってわりとすぐ復帰できたが、病気が発表された段階では、どうなるかわからなかった。という経験もあって、今日が最後のライブになってもいいように、とにかく今できることは全部やろう、みたいな気持ちで1本1本をやっているから、40曲以上やるのかな、などと思ってしまう。
 そんな悲壮感なんか全然ないステージなんだけど。4人とも楽しそうだし、勢いに満ちてもいるんだけど。というか、はるとアビさんの現在の年齢(58歳)を考えると、「異常!」と言っていいテンションなんだけど。
 とにかく、初めてこのバンドを知って虜になってから34年くらい経つ今も、こうしてライブを観れて、うれしい限りです。自分も元気でいなくては。と、観るたびに思うようになりました。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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