兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第160回[2024年4月後半・清水ミチコ、女王蜂、The Street Sliders、真心ブラザーズなどの7本を観ました]編

コラム | 2024.05.10 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライターである兵庫慎司が、月に二回・多い時は三回のペースで、自分が観たすべてのライブのレポをアップする連載の160回目、2024年4月後半編です。にしてのこのライブレポ、1本1本が長すぎないか? コロナ禍前は1日につき数行で終わっていたのに。そもそも、長ければ長いほど読まれないもんなんじゃないか、こういうのって。
と、自分でも毎回疑問を感じてはいつつも、いいライブだと書きたいことが多くて、つい長くなってしまう。一回書き上げたあと推敲して、あちこち削ってこうなっています、これでも。がんばって最後まで読んでいただけるとうれしいです。

4月19日(金)18:30 清水ミチコ @ 横浜関内ホール

清水ミチコは、新年の1月2日とか3日とかに、日本武道館でワンマンライブをやるのが、毎年恒例になっている。最終的には満員になるが、チケットが即完したりしないのが常だったので、いつも余裕こいて買っていたのだが、今年は早々と売り切れた。しまった。
なので、その日本武道館以降のツアー日程の中で、今からチケットを買えて、近場で、自分が行ける日を探したら、この関内ホールになったのだった。ファイナルの4/27沖縄の1本前。
笑福亭鶴瓶と浜口京子のオープニングお祝いコメント映像。夢グループの新曲映像(本物)。「100年使える声の歌」。「犯罪を歌う専門家」として披露した「大きな古時計」の替え歌。時事ネタをちりばめた「日本昔ばなし」。清水イチロウ(実弟。レギュラー)がピアノとボーカル(なのでツインボーカルになる曲も)で参加するコーナー。笠置シヅ子「東京ブギウギ」から始まり、美空ひばり〜越路吹雪〜山口百恵〜中森明菜〜宇多田ヒカル〜椎名林檎〜吉岡聖恵〜あので終わる「歌姫100年メドレー」。などなど、大充実の2時間10分。
この人の数あるネタの中でも、僕が特に好きな「××作曲法」は、今回は「Official髭男dism作曲法」と「アルフィー作曲法」と「YOASOBI作曲法」。どれも死ぬほど笑った。なお、「アルフィー作曲法」に関してはご本人、「なんで今まで作らなかったんだろう、と反省しております」とのこと。
あと特筆すべきは、アンコールで歌われた「希望のうた」。矢野顕子がMISIAに提供した曲で、矢野顕子のライブに行ったらMCでその話をしていた、でも「私は歌わないですよ、MISIAのために作った歌なので」だそうなので、聴きたいという希望は自分でかなえることにしました──というわけで、矢野顕子が憑依した状態で歌ったこの歌が、まともに美しすぎた。ちょっともう、どうしようかと思ったほど。
それから、ジョン・レノンの「イマジン」にのせてモノマネメドレーをやって、さんざん笑わせた末に、最後にその「イマジン」が、RCサクセション『カバーズ』収録バージョンの歌詞になって終わったのも、とても良かった。

4月20日(土)17:00 女王蜂 @ 国立代々木競技場第一体育館

『女王蜂 結成15周年記念単独公演『正正正(15)』』。観て、このDI:GA ONLINEにレポを書きました。≫ 女王蜂、15周年の今、表現したい全てがつまったステージを代々木第一で体現

4月21日(日)17:00 The Street Sliders @ NHKホール

前回のこの連載で、日比谷野音と沖縄ミュージックタウン音市場のレポを書いた、ストリート・スライダーズの40周年プロジェクト締めくくりツアーのファイナル、NHKホール。
ソニー・ミュージックの依頼で書いたレーベル発信のオフィシャルレポ、アップされた中のひとつを貼っておきます。クレジットありませんが、書いたの私です。≫ The Street Sliders40周年プロジェクト、4/21東京NHKホールにて完結!!

4月23日(火)19:00 XAI @ 渋谷Spotify O-WEST

2017年に劇場版アニメ『GODZILLA』三部作の主題歌でデビューしたXAI。その3曲「WHITE OUT」「THE SKY FALLS」「live and die」すべての作曲と編曲を手掛けたのが中野雅之、という縁で、最近のTHE SPELLBOUNDのライブに、何度もゲスト・ボーカルで参加していて、僕も数回観たことがある。この日は二度目のワンマンライブで、ドラムがTHE SPELLBOUNDでも共にステージに上がっている大井一彌、ベースがDATSの早川知輝、バンマスであるギターがGLIM SPANKYの亀本寛貴、というすごいメンツ。
ということにも惹かれて観に行ったのだが、「こんなボーカリストだったのか!」「こういう人だったのか!」という驚きや発見がいっぱいあるライブだった。THE SPELLBOUNDで何度も観ているのに。いや、THE SPELLBOUNDで何度も観ているからか、むしろ。それぐらい印象が違ったということです。逆に言うと、THE SPELLBOUNDのステージにも、それくらい自然に馴染んでいる、ということなんだけど。
バンド全員での演奏、バンド全員+バック・トラック、4人でアコースティック編成、亀本寛貴とふたりでアコースティック編成、ひとりで弾き語り──と、バリエーションをいろいろ付けつつ、どの曲も、このメンツならではの強力な音に負けない歌いっぷり。
アニメ『薬屋のひとりごと』の挿入歌「明日を訪ねて」(この曲が亀本寛貴との二人編成)、前もってファンクラブでカバー曲のリクエストを募った上で歌った「StarRingChild」(Aimerのカバー)、今年1月にリリースした新曲「Rain Bird」などなどの17曲(本編14曲・アンコール3曲) 。えっもう終わり? そんなに曲やった? という印象だった。曲がよかった、パフォーマンスがよかった、というのはもちろんあるが、本人とオーディエンスの楽しさ全開の表情や言動に自分が巻き込まれた、というのもあったと思う。

4月28日(日)17:30 真心ブラザーズ @ LINE CUBE SHIBUYA

真心ブラザーズが、年一回中野サンプラザで行ってきた、10人編成のMB’Sでのライブ、昨年を最後にサンプラが建て替えで閉まったので、今年はLINE CUBE SHIBUYAでの開催になった。今年はベースは鹿島達也、それ以外はいつものメンバーで、サックスの宇田川寅蔵がパーカッション(コンガ)を叩く曲もけっこうあり。
2007年のアルバム『DAZZLILNG SOUNDS』収録の「ずっと遊ぼう」で始まったり、後半で同じく『DAZZLILNG SOUNDS』から「きみとぼく」を演奏したり、サードアルバム『あさっての方向』から「おぼろげな春」が歌われたり、「どか〜ん」が今サントリー196のCMで使われている、ということで(千鳥と渋谷凪咲が出ているあれです)、昔そのサントリーのCM用に書いた「モルツのテーマ」をやったり、桜井秀俊ボーカルの曲が「メトロノーム」と「ノーメル賞ブギ」だったり、その後者の最後に桜井が東急ハンズで買って来たという紅白のゴダイゴ式蜘蛛の糸を発射したり、「ブギつながりということで」その次の曲は、服部良一トリビュートアルバムに提供した「ヘイヘイブギー」だったり──というような、いつもに増してレア度高めでは? という、うれしいセットリスト。
あと、中盤で起きたこと。デビューシングルの「うみ」を、YO-KING&桜井秀俊&宇田川寅蔵&奥野真哉、という編成でプレイする前に、今日はシングル・バージョンで演奏できる、あのシングルにはピアノが入ってるから、と言うYO-KING。
そして、「確か俺が弾いてんだよね、あのピアノ」と桜井に問うと、桜井、「私です」。YO-KING「ええっ、そう? あのフレーズ俺じゃない?」桜井「私です!」「じゃあ帰ってクレジット見てみよう。もし俺だったらどうする?」桜井「絶対、私です!!」。
オーディエンス、大笑い&大拍手。このふたりの阿吽の呼吸っぷりが、端的に表れた瞬間だったように感じました。

4月29日(月祝)18:00 家主 @ リキッドルーム

3月から8月までかけて回っている全国ツアーの東京公演。「こんなに入れる?」と言いたくなる、こんな状態のリキッドルーム見たことないくらいの、鬼のような超満員。で、4人が登場するや、まだ音を出していないのにすごい熱量で迎えるフロア。
それを受けての田中ヤコブ(Vo&G)の第一声、「ひとこと、よろしいですか? あの、違和感が、勝つ」。4〜5年前は下北沢シェルターでお客さん5人くらいしかいなくて、その中にトクマルシューゴとミツメのボーカルの川辺素がいたそうです。そのあともMCの時などに、フロアを見渡して感慨深そうな表情になる4人だった。
というのはわかるが、それ以上に、こんなに超満員のファンがこんなに大熱狂しっぱなしである理由が、よおくわかるステージだった。ギター・ミュージックとして……って、そんな言葉ないけど、エレキ・ギターを軸にしたバンド・サウンドで音楽を作る人たちとして、めったやたらと優れている。ほとんどもう「選ばれている」とすら言いたくなるほど。
演奏がすげえうまいとかいう話じゃなくて、リフの作り方とか、ギターの鳴らし方とか、2本のギターの絡め方とか、ベースとドラムの抑揚のつけ方なんかが、いちいちもう「ああ、それ! いちばんかっこいいやつ!」という感じなのだ。
かと言って、クラシカルでオールドスタイルな、古の洋楽好きにウケそうなバンドなのかというと、メロディは、日本語詞に無理をさせないとっつきやすさを持っていたりする。この日のMCでも、THE COLLECTORSとaikoの名前が出てきたが、真似してるとかパクってるとかじゃなく、「ああ、わかるわかる」と素直に思わせるような。田中ヤコブ、ギターの谷江俊岳、ベースの田中悠平の3人が曲を書いて、3人とも歌うんだけど、どの人の曲もそうなのが、さらにすごい、とも思う。
あと、このツアー、東京公演はワンマンだが地方はすべてゲストありで、1本前の大阪(4/27)では、ピーズと対バンしたそうだ。ピーズのタオルを見せて「サインもらいました」とうれしそうな田中ヤコブだった──という点にも親近感を覚えた、長年ピーズを追っかけている者としては。

4月30日(火)20:00 突然少年 @ 新代田FEVER

このワンマンライブを最後に、3年間活動を共にしたドラムの篠原賢a.k.a.ピエール畳がバンドを離れることは、以前から告知されていたが、その後、3人になったバンド自体もこの日を最後に「休憩と反省」に入る、なので今後の活動予定は白紙であることが、追って発表された突然少年。
だから、というのも大きいだろうが、今まで自分が観てきたどの突然少年のライブよりもお客さんが入っていた(2020年2月4日に、ここFEVERで行われたBiSHとの対バンを除く)。
で、こういう、今日で最後のメンバーがいるとか、これでバンドの活動がいったん区切りとかいう時のライブって、往々にして、すっごくいい出来になることが多いんだよなあ。で、出来がよければよいほど、観ているこっちは「こんなにいいんだから止まらなくたっていいじゃないか」「いや、でも、いったん止まることを決めたから、こんなにいいライブをやれているんだろうな」などとグルグル考えて、複雑な気持ちになるもんなんだよなあ……己の過去の経験と照らし合わせて、開演前にそう思ったが、まさにそのとおりの、ここ数年の突然少年のライブの中で、あきらかに最高レベルのライブだった。
シャープで重くてスピーディーなとだげん&しのけんのリズム、天才としか言いようのない自在な音が出っぱなしのカニユウヤのギター、それらの爆音をまといながらまっすぐ耳に飛び込んで来る大武茜一郎の歌。新しい曲たちもいいし、「火ヲ灯ス」や「フロムアンダーグラウンド」のような前からある曲も、もちろんすばらしいし。
なおこの日、5曲入りのミニアルバム『グッドバイ・マイ・ヒーロー』が、会場の物販で発売された。現在は、彼らのHP「犬の涙ONLINE」で買えます。≫ 犬の涙ONLINE

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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