兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第182回[2025年3月後半・ART-SCHOOLの25周年やBEGINの35周年などの7本を観ました]編

コラム | 2025.05.07 17:00

イラスト:河井克夫

ライター兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブ(音楽以外も含む)のレポを書いて、1ヵ月に二回のペースでアップしていく連載の182回目=2025年3月後半編です。
ART-SCHOOLの25周年、BEGINの35周年、コクーン アクターズ スタジオの卒業公演×2、ヒダカトオルがBEAT CRUSADERSの曲を歌うライブなどの7本。ビークル、自分の中で「再結成すればいいのにと思うバンド1位」なもんで、感慨深いものがありました。

3月16日(日)18:00 ART-SCHOOL @ Zepp Shinjuku (TOKYO)

25周年を記念しての久々のワンマン。ソールドアウト。本編と二度のアンコールで計26曲、2時間。
「SWAN DIVE」で始まり「スカーレット」「BOYS MEETS GIRL」「シャーロット」「クロエ」「ロリータ キルズ ミー」「FADE TO BLACK」等々を経て、本編は最新アルバムからの「Bug」で終わり、二度目のアンコールを「SWAN SONG」で締める。
という、歴代の代表曲を惜しみなく聴かせてくれる、うれしいセットリストだった。終わってから「あ、でもあの曲、やらなかったな」と思ったのは、「あと10秒で」くらい。……あ、でも、「その指で」もやらなかったな。それから……きりがないので、やめます。
一度目のアンコールで登場した時、ギターのトディ(戸高賢史)が「ART-SCHOOL、25周年なんで、ここはひとつなんかしないとな、ということでですね」と、ミニアルバムを作ったこと、タイトルは『1985』であること、5月28日にリリースすること、全国9ヵ所のツアーを行うこと、そして「せっかくなんで、やったことないことをやってみたいなと思って」トリビュート・アルバムの制作が決定したことを発表。
そして、『1985』に収録される新曲「Trust Me」が、初披露された。歪んだギターとクリア・トーンのギターの重なり、速い8ビートのリズム、振り絞るような木下理樹のボーカル、中盤で新しい展開が出てくるメロディ──いずれも、ART-SCHOOLの王道どまんなか。今後、ライブで必ず演奏される曲になると思う。

3月20日(木・祝)13:00 『アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―』 @ Bunkamuraシアターコクーン

Bunkamuraシアターコクーンの芸術監督を2020年から務めている松尾スズキは、コクーンと組んで自らが主任講師となり、2024年の4月から「コクーン アクターズ スタジオ」(以下CAS)を始めた。
《劇団をふくめ、周りに俳優仲間はたくさんいれど、気がつけば皆、中年も半ば過ぎ。
もちろん頼りになるけれど、そういう人ばかりでは物語が作れないという現実。
その高い壁におののいている松尾です。
となると、若い芝居の仲間がほしい。
なので、急ですが、スクールを始めます。
30数年、俳優として演出家として培ってきた、演技に関するあれこれを伝えたい。
これからの芝居の戦力がほしい。ただそれだけです。お待ちしてます》
というコメントが、このプロジェクトが始まった時、公式サイトにアップされた。
で、オーディションを勝ち残って、CASで1年間学んだ24人の卒業公演がこれ。松尾スズキが脚本と音楽を、CASの講師のひとりである杉原邦生が演出と美術を担当。
卒業公演なので、24人全員が出演するのがマスト、なので、【朱雀ver.】と【玄武ver.】の二種類の配役で、三公演ずつ行う。24人のうち6人が両方で同じ役をやり、18人は片方が主要キャストで片方が脇のキャスト、というふうに振り分けられていた。
なるほどー。両方で同じ役をやる6人は、特に実力が認められたのかもしれないが、それ以外の18人は、ふたつの役を3公演ずつ演じないといけないので、それはそれで大変、というか、その方が実力が必要かも、という見方もある。
なんにせよ、要は松尾スズキが書き下ろした新作なわけで、観ない手はない。なので、足を運んだ。この日は【朱雀ver.】でした。
3日後の【玄武ver.】に続く。

3月21日(金)18:00 the shes gone/FOMARE/ヤングスキニー/(O.A.)からあげ弁当 @ 川崎CLUB CITTA'

UKプロジェクトのイベント『ONE ON ONE』のスペシャル版『ONE ON ONE-SPECIAL-』、この4バンドが出演。the shes goneは、ここんとこよくライブを観ているが、オープニング・アクトのからあげ弁当、しばらく観ていなかったので足を運んだ。
素人丸出しで勢いまかせ、でも、そうでなければなしえない輝きに満ちていたバンドが、数々のライブやレコーディングを経験し、ギターが入って4人になり、たくましくなり、巧みになった、のではなく……説明が難しいな、これ。「素人丸出し」ではなくなったけど、「勢いまかせ」のままで、そこが途方もなく魅力的なバンドに成長しつつある、とでも言いましょうか。
とにかく、良くなっていた。短い持ち時間の中で「チキン野郎」を何度も演奏するやつ、今後もぜひ続けてほしい。この日は25分強の間に3 回やった。
ヤングスキニーは、人気あるのがうなずけるキラキラ感、the shes goneはイベント全体を背負っているようなタフさ、FOMAREはさすがの熱さで始まった瞬間に別のイベントになった感じ。それぞれがそれぞれに違うことをやっている感じが良かった。

3月22日(土)17:00 GRAPEVINE @ LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

福岡・名古屋・東京・大阪を回るホール・ツアーで、東京は追加公演が出て2デイズになった、その2日目を観て、ぴあ音楽にレポを書きました。
GRAPEVINE、全24曲を披露した全国4都市ホールツアー『GRAPEVINE SPRING TOUR』東京公演2日目をレポート

3月23日(日)13:00 『アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―』 @ Bunkamuraシアターコクーン

3月20日の続きです。この日は【玄武ver.】を観た。
この芝居、そもそも、松尾スズキが新作を書き下ろしたこと自体に価値があるが、この出演者たちが演じるのが最適な物語として書かれていたことに、さらに価値がある。ということが、観てわかった。
『アンサンブルデイズ』の『アンサンブル』というのは、ミュージカルにおける「主要キャスト以外の俳優たち」、つまり大勢で歌ったり踊ったりする人たちのこと。その、ミュージカルのアンサンブルのオーディションで知り合った、若くて無名な俳優たちが主人公の物語なのである。
演技を学びたくて大学の演劇科を出たのに、主役は高卒のアイドルや2.5次元俳優や二世タレント、自分はアルバイトをしながらアンサンブルのオーディションを受け続ける毎日──という役を、演技を学びに自分のもとに集まって来た、若くて無名な俳優、もしくは俳優の卵たちに、演じさせる。
という、残酷というか、「でも確かにこれがいちばんいい」というか、なんだかもうリアルすぎてたまらないことになっていたのだった。著名な俳優たちが演じるよりも、この方がおもしろいよなあ、と観ながら何度も思った。
あと、【朱雀ver.】にも、【玄武ver.】にも、何年か後に演劇や映画やテレビドラマを観ていて「あ、『アンサンブルデイズ』に出てた人だ!」みたいなことになるだろうな、と思わせる役者がいた。

3月24日(月)19:00 ONIGAWARA、竹内サティフォ、BEAT CRUSADERSのコピバン @ 下北沢ERA

『サティフォ生誕祭2025〜遂に40歳スペシャル!〜』というイベント。ONIGAWARAの竹内サティフォの誕生日イベントは、毎年、サティフォがメンバーを集めて好きなバンドのコピーをやるのが恒例になっているそうで、今年はBEAT CRUSADERSのコピバン。
ギター:竹内サティフォ、ベース: 首藤義勝(ex.KEYTALK)、ドラム: 久野洋平(cinema staff)、キーボード:岡本伸明(the telephones)、というメンバー。
で、「当日発表」となっていたボーカルは、本物でした。ヒダカトオル。という5人で、「FEEL」「JAPANESE GIRL」「CHRISTINE」「WINDOM」「LOVEPOTION #9」「LOVE DISCHORD」の6曲を演奏。第一期から2曲、第二期の最初のアルバム『P.O.A.〜POP ON ARRIVAL〜』から4曲、というセットリストでした。
ならば「HIT IN THE USA」もやればいいのに!とは思ったが、まあとにかく楽しかったし、しみじみもした。第二期のビークル、よく取材したりしていたもんで。なお、2曲やったところでのヒダカトオルの挨拶は「こんにちは。ELLEGARDENです。嘘です、BRAHMANです」でした。
そのあとは、サティフォがバックトラックを使ってソロで2曲やってから(1ヵ月前にリリースした「マイ・ハニー・エンジェル」と2022年の「BGM」)、ONIGAWARAで7曲。2曲目の間奏で放たれた、斉藤伸也のアジテーション「おまえたち、ビークルの時ぐらい盛り上がりなさい!」に、笑った。で、盛り上がってた。

3月30日(日)BEGIN @ 日本武道館

東京と大阪で行われた、BEGIN35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW‼️』の東京編。
「日本盆踊り協会」のみなさん12名が共に踊った「東京音頭」で始まって、この日最大のシンガロングが起きたアンコールのラストの「島人ぬ宝」まで、全34曲、3時間弱。
「東京音頭」のように、ダンサー等の演出がある曲。メンバー3人だけで演奏する曲。上地等が歌う曲。島袋優が歌う曲。客席から飛んだリクエストに応えて、比嘉栄昇が1コーラスほど歌った曲。
今、ニューアルバムを作っているということで、そこから披露された新曲3曲。「上を向いて歩こう」「自動車ショー歌」「勝手にシンドバッド」等、カバー曲を多数組み込んだメドレー。そして、「涙そうそう」「三線の花」「笑顔のまんま」等の、ファンでなくても知っている、長年にわたり愛され続ける名曲の数々。すんごい贅沢な時間だった。堪能しました。
なお、7年ぶりのニューアルバム『太陽』は、7月2日リリース。それに先駆けて、5〜6月に、8年ぶりのライブハウス・ツアー(9本)が行われる。ファイナルの東京公演は、6月15日の渋谷クラブクアトロ、なのはわかるが、3・4本目(5/28・29)にも東京公演があって、それが渋谷のB.Y.Gであることを知って、びっくりした。
B.Y.GでBEGIN!キャパが合わないにもほどがある。音楽的にはしっくりくるだろうけど。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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