フジジュンの「ライブ終わったらど~する?」#15 「『いつもありがとう』なんて言葉はなくても、想ってくれるだけで良い」

コラム | 2025.05.27 18:00

Photo:にしゆきみ

BIGMAMAとファンが年に一度集まる約束の日、感謝の日。

以前、金井政人(Vo&Gt)がそんな言葉でこの日の存在を説明していた、BIGMAMAの毎年恒例となる“母の日ライブ”が今年も開催された。

2025年は“音楽を奏でる空想遊園地”をコンセプトに掲げて、全体をテーマパーク、楽曲をアトラクションに準えて、『MOTHERLAND』の世界を構築していくことを宣言したBIGMAMA。2024年末にリリースされた「Mirror World」、1月にリリースされた「旋律迷宮」と、アトラクションをテーマとした楽曲たちを掲げ、2月に『MOTHERLAND ~reception~』と名付けた東名阪ツアーを開催。

Zepp DiverCity(TOKYO)で行われた、『MOTHERLAND 〜opening ceremony〜』と銘打った母の日ライブで、音楽を奏でる空想遊園地・MOTHERLANDの本格オープンを華やかに宣言。希少曲や多分な遊び心を含んだセトリに加え、未発表の新曲も披露。今年も約束の日に集ってくれたファンに、愛と感謝の気持ちを届けた。

Photo by Yusuke Takagi

幻想的なSEと手拍子でステージ登場すると、定位置にスタンバイするやSEに生演奏を重ねるメンバー。柿沼広也(Gt)の勇ましく心躍るギターリフがオーディエンスの気持ちをアゲると、間髪入れずに「旋律迷宮」のスリリングな楽曲世界へと誘う。イントロに大きな歓声が上がった「CPX」、会場中が手拍子やジャンプを合わせた「MUTOPIA」、フロアを掻き回した「Neverland」と続き、序盤からめくるめく風景を描く空想遊園地にドキドキと興奮が止まらない。

「音楽で奏でる空想遊園地、MOTHERLANDへようこそ!」と金井が短い挨拶をして、「どうぞ、頭の中を空っぽにして」と始まった「Mr. & Mrs. Balloon」で胸の高鳴る方へと導くと、「Paper-craft」、「かくれんぼ」と続く。歌と演奏に心を委ねるオーディエンスは、楽曲や空想の世界にどっぷり浸り、心地よさそうに身体を揺らしている。

「荒狂曲“シンセカイ”」、「ファビュラ・フィビュラ」、「Cinderella~計算高いシンデレラ~」と世界観がしっかり構築された“アトラクション=楽曲”を聴きながら、空想遊園地というコンセプトは、BIGMAMAだからこそ成立するのだなと改めて思う。

Photo by Yusuke Takagi
Photo by Yusuke Takagi

『Roclassick』シリーズだったり、最新アルバム『Tokyo Emotional Gakuen』だったり、もともとコンセプチュアルな作品制作は得意な彼ら。バイオリニストとバケツを要するファンタスティックな構成と、フレキシブルな発想や姿勢から生まれる多彩な音楽性を持つ楽曲たちを見ても、こんなバンド他にいないし、真似しようと思って出来るもんじゃない。

続く、新曲「Mirror World」の痛快なビートでフロアを沸かせて……あ! <鏡よ鏡>で、“シンデレラ”からの“白雪姫”だったんだ、いま気づいた!! からの「ダイヤモンドリング(2035/09/02)」で壮大な世界観を描いて。Bucket Banquet Bis (Dr)のダイナミックなドラムソロから「G1ファンファーレ」を高らかに鳴らすとライブは後半戦へ。

Photo by Yusuke Takagi
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「Zoo at 2 a.m.」、「Merry-Go-Round」、「Swan Song」と空想遊園地にぴったりな楽曲が続き、「虎視眈々と」でフロアの熱を上げてクライマックスに突入すると思いきや。金井がアコギに持ち替えて始まった曲は、「母に贈る歌」。母への想いと綴った曲ながら、決してお涙頂戴の泣き曲ではなくて。照れ隠しのシニカルな表現ながら、母への愛や感謝をしっかり感じる歌詞が男の子っぽくてシンパシーを感じるこの曲を聴き、母ちゃんの顔を思い浮かべてた俺。ライブが終わったら忘れずに連絡しようと、心のメモに記す。

そんな温かい雰囲気から、ライブを急加速させた「Time is like a Jet coaster」で始まった終盤戦。「POPCORN STAR」、「the cookie crumbles」とアップチューンでブチアゲて最高潮の盛り上がりを生むと「No.9」の美しすぎる大合唱で歓びを分かち合う。

Photo by Yusuke Takagi

年に一度の約束の日、『MOTHERLAND』に集まったファンにありったけの愛と感謝を届けたBIGMAMAと、全力でライブを楽しむことでその思いに応えてたファン。ここからも明るい未来を共に描いていくことを約束するように披露した「ESORA」に会場中が両手を上げて応えると、「母の日ありがとうございました」と金井が感謝を言葉にする。

「来年にデビュー20周年を迎えます。その日までこの“MOTHERLAND”というテーマで遊び倒したいと思います」と意気込みを語り、「新曲やっても良いですか?」と本編ラストとなる新曲「The Parade」が始まる。東出真緒(Vn)の演奏に乗せた金井の感傷的な歌声で始まると、柿沼の勇ましく心躍るギターリフがインする。おぉ、OPで演奏したあの曲だ!

Photo by Yusuke Takagi
Photo by Yusuke Takagi

Bisと安井英人(Ba)がリードする痛快なビートに心と身体を躍らせ、印象的なコーラスに自然と歌声を重ねる観客。初披露ながら大盛り上がりの新曲に、来るべき20周年に向けた新たなライブアンセムの爆誕を期待させる中、母の日ライブは終演を迎えた。

――と、そんなライブを見終えて、Zepp DiverCity(TOKYO)を後にした俺。ライブ終わったら、ど~する? ということで、普段だったらお台場から帰宅するのに、りんかい線に乗って大井町駅に向かうんだけど。いつもと違って、ゆりかもめに乗り込み、新橋駅へ向かう。

ゆりかもめに乗ってスマホを覗き、「お花届きました、ありがとう」と母ちゃんからLINEが届いてたことを確認。そう、母ちゃんの好きな地元のお花屋さんに、母の日のお花の配達をお願いしていたのだ。可愛いお花が届いて、喜んでくれたみたいで良かった。

「ええ年して、ご心配やご迷惑ばかりおかけして申し訳ない。いつもありがとう」と母ちゃんに返信。照れずにこんなことが言えるのは、実際にええ年だからというのもあるし。「母に贈る歌」を聴いた効果かもしれない。

そして、ゆりかもめは新橋駅に到着。向かったのは、新橋駅のほど近くにある烏森神社という神社。実は昨年春、ウチの母ちゃんが肺がんに侵されてることが発覚。なにか俺に出来ることはないか? と考えた結果が、困った時の神頼み。がんに効果のある神社を探してたどり着いたのが、都内最強のがん封じ神社と言われる、烏森神社だった。

さっそく烏森神社へ行って、“特別祈祷癌封じお守り”を購入して。名前や住所を書いてお祓いしてもらったのが1年前。現代医学の凄さに加えて、お祓いの効果もあってか、完治まではいかずとも、お医者さんもびっくりするくらい治療の成果が出ている母ちゃん。

なんと、今年の春には弟家族と一緒にグアム旅行に行ったくらい元気で過ごしてるので。母の日にその報告や御礼をして、「これからもよろしくお願いいたします」とご挨拶に行こうというのが、神社を訪れた理由。

新橋駅から徒歩2分、繁華街のど真ん中にある烏森神社。最初に来た時は「本当にこんなところに神社があるの!?」と驚いたくらいで、飲み屋の路地を潜った先にある、ひっそりした神社は東京ならでは。なんでもこの神社、江戸のほとんどを焼き尽くした“明暦の大火”の際も延焼から免れたことから“封じる力”が強いと言われてきたそう。へぇ!

休日の夜にも関わらず、数人の参拝者がいる中、並んで参拝して。おかげさんで母ちゃんが元気にやってることを報告し、深々と頭を下げてお礼した俺。「こっからもがんを封じていただいて、母ちゃんを守ってやって下さい」とお願いして、神社を後にする。さて、せっかく新橋まで来たから、繁華街をパトロールして、一杯やって帰ろうっと。

日々の生活に追われてると、母の日とかすっかり忘れてたり、ないがしろにしてしまうこともあるけれど。年に一回、約束の日にBIGMAMAが思い出させてくれて。ふっと母ちゃんのことを思って、久しぶり連絡するキッカケになるとか、すごく良いなと思う。

「いつもありがとう」と口に出して言うのはなかなか照れくさいけど。自分のことを気にしてもらって、わざわざ電話をくれて「元気?」とひと言もらうだけで嬉しいってことは、自分が親になって分かったこと。この原稿を読んでる、うっかり母の日タイミングを逃してしまったあなた! 今夜、母ちゃんに一本電話してあげてよ、きっと喜ぶと思うよ。

PROFILE

フジジュン

1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野で、笑いやバカの要素を含むバンドは大好物。

  • フジジュン

    TEXT・撮影

    フジジュン

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