兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第186回[2025年5月後半・真心、Base Ball Bear×橋本絵莉子、子供ばんど+怒髪天+フラカン、サザン、Hump Back、三谷幸喜の芝居、の6本を観ました]編

コラム | 2025.06.18 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブ(音楽以外も含む)のレポを書いて、月二回ペースでアップしていく連載の、185回目=2025年5月後半編です。
自分の地元で真心ブラザーズ、一回延期になった久々の共演=Base Ball Bear×橋本絵莉子、サザンの10年ぶりのアルバムのリリース・ツアー、行こうとしていたイベントが中止になって、代わりに三谷幸喜の芝居──と、普段なかなか観れないものが多い半月になりました、結果的に。

5月18日(日)17:30 真心ブラザーズ @ 出雲大社広島分祠 神楽殿

毎年恒例、真心ブラザーズがYO-KINGと桜井秀俊のふたりだけで、教会や能楽堂など、いわゆるライブハウス以外の場所を選んで各地を回るアコースティック・ツアー『真心道中歌栗毛』、今年は広島公演もあって、その会場の神社が、うちの実家のある町だった。
広島県安芸郡府中町。吉川晃司の出身地です。奥田民生は隣町です。昭和の頃は走り屋がブンブン飛ばしていた山の峠道の途中にある、何度も初詣に行った神社。
あそこでライブできるのか。知らなかった。調べたら、わりと最近に神楽殿が作られて、そこでクラシックやアコースティックなどのライブが行われているようです。合わせて帰省しろってことだな、これは。というわけで、帰りました。
前半は懐かしい曲多め、後半は新しい曲や定番の人気曲多め。前半の某曲のところで、「この曲も、このツアーでやるの初めて」と、YO-KINGがおっしゃっていたので、毎回ちょいちょいセットリストを変えながら回っているのだと思う。
で、中盤は、箱からリクエストカードを引いて、それに応えて1コーラス歌う「三楽会」のコーナー。この日は「拝啓、ジョン・レノン」と「Dear,Summer Friend」を引いたのだが、いつもならYO-KINGが覚えていなくてグダグダになったり、最初から「無理!」とギブアップしたりすることが多々あるのに、この日は2曲とも難なく歌い切った。
それがおもしろくなかった桜井秀俊、急遽その場でもう1曲追加。引いたのは「頭の中」で、思わず「おおっ!」となった。セカンド・アルバム『勝訴』収録の、個人的に大好きな曲なので。
で、YO-KING、歌詞とコードを探り探りで思い出しながら、なんとか1コーラス歌いきった。さっきの2曲よりはだいぶヘロヘロだけど。「♪足りないものが多いほど〜」と、何度も出だしを歌って、コード進行を思い出しながらの歌唱で、その時点で、「違います、『知らないものが多いほど』です!」と、言いたくなったけど。
あと、今年はその次に「YO-KING二兆曲」という新しいコーナーが設けられていた。未発表の新曲のストックが二兆曲あると豪語するYO-KINGが、その中から1曲選んで歌う、というもの。コロナ禍の間ずっと、週に2曲ぐらいのペースで曲作りをしていたから、ストックが300曲ぐらいある──と、昨年秋にインタビューした時におっしゃっていたので、その中から、ということですね。
そこで歌った「不自然」という曲が、すばらしかった。特に歌詞、視点を変えれば生き方が楽しくなることを提示する、YO-KING節が全開のやつ。次のアルバムにぜひ入れてほしい。

5月23日(金)19:00 Base Ball Bear×橋本絵莉子 @ KT Zepp Yokohama

小出祐介の自転車単独事故による負傷で延期になった、Base Ball Bearと橋本絵莉子のライブ・イベント「SMA 50th Anniversary presents『なかなか(いい感じの)男女』」の振替公演。THE FIRST TIMESにレポを書きました。
【SMA50th】Base Ball Bearと橋本絵莉子のライブ・イベント『なかなか(いい感じの)男女』。ふた組ならではの信頼感と空気感に溢れたステージを振り返る

5月24日(土) 18:00 子供ばんど、怒髪天、フラワーカンパニーズ @ 渋谷クラブクアトロ

子供ばんどはここ数年、「生存確認」と銘打って年に一回ライブを行っている(去年は下北沢CLUB Que。配信で観ました。 詳しくはこちら≫ 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第161回[2024年5月前半・『OTODAMA’24〜音泉魂〜』2デイズ、ヤバイTシャツ屋さん @ 志摩スペイン村などの6本を観ました]編)。今年はデビュー45周年を記念して、怒髪天・フラワーカンパニーズと共に東名阪を回るツアー形式での開催。その東京編がこの日。超満員。
名古屋と大阪は7月なので、セットリスト等のネタバレはしない方がいいだろうな、とは思うが、この日の会場の物販で発売になった、子供ばんど初のセルフカバーアルバム『ROCK&ROLL WILL NEVER DIE!! /KODOMO BAND 45th』に、「応援ゲストボーカル」でフラカン鈴木圭介と怒髪天増子直純が参加していることは発表されているので、まあ当然そのあたり、ライブ本編で、何もないわけがないですよね。
ということもあったし、そもそも生で聴けてうれしい代表曲だらけだし、アンコールでは全員登場して、(「ギター弾けないのに」とぼやく増子直純も含めて)みんなで並んで曲に合わせてネックを上げ下げする恒例のアクションも観れたし。楽しかった、とにかく。
このツアー、名古屋は7月19日、大阪は7月20日だが、アンコールで「秋にも45年スペシャルを行う」という発表が。10月24日(金)恵比寿ザ・ガーデンホールにて、なんと、EARTHSHAKERと対バン。
何が自分的に「なんと」なのかというと、アマチュアの頃、この両方の曲をコピーしていた人を、2組知っているからです。フラカン鈴木圭介&ミスター小西と、奥田民生。圭介&小西の方は観たことないけど、OTの方は何度も観ています。ユニコーンの前のバンド=READYで、子供ばんどの曲とEARTHSHAKERの曲とオリジナル曲をやっているところを。EARTHSHAKERは前からファンだったけど、子供ばんどに関しては、その影響で好きになったところも大きい、自分の場合。

5月28日(水)18:30 サザンオールスターズ @ 東京ドーム

10年ぶりのニューアルバム『THANK YOU SO MUCH!!』を携えての全国アリーナ&ドーム・ツアーのファイナル、東京ドーム2デイズの1日目。至福でした。リアルサウンドにレポを書きました。≫ サザンオールスターズ、ニューアルバムを携えたツアーの威力の凄まじさ 兵庫慎司による東京ドーム公演濃密レポ

5月29日(木) 18:30 Hump Back @ Zepp DiverCity (TOKYO)

6月からはニューアルバムのツアーがあるが、その前に行われた「打上シリーズ」全5本のファイナルがこの日。3人の産休を終えてライブ復帰してから、1月23日KT Zepp Yokohama、2月19日F.A.D YOKOHAMA、5月5日JAPAN JAMと観て、この日で4回目だった。
で、前の3回、どれも、「うわ、今日いいなあ」と思ったが、それらを超えて、この日がいちばんよかった。ものすごい振り切れっぷり、3人とも。精神の昂りとか、伝えたいという欲求とかが、きれいにそのままステージでの表現になっている感じ。
あと、オーディエンスの反応もすごい。熱狂的。産休前以上に高まった感じがした。1年半も休むと、流行り廃りはどんどん変わってしまうし、裏方の仕事もそうだ。しかも休む時は、どれくらいで戻って来れるかわからなかった。でもHump Backのスタッフのチームは、みんな待っていてくれた──という話を、MCで林萌々子はしていた。スタッフの事情はわからないが、少なくともファンに関しては、休んでいた間に、さらに熱く濃く多くなった感じがした、とても。次のツアーも楽しみ。

5月31日(土)17:00 『昭和から騒ぎ』@ 世田谷パブリックシアター

もともとこの日は、THE CHEMICAL BROTHERSがDJセットで来日する、あと石野卓球やSATOSHI TOMIIE等も出演する、『THE BEACH 2025』@幕張海浜公園に行くつもりで、チケットを買っていた。
が、前日に、荒天のため中止が決まってしまった。幕張海浜公園のビーチ、確かに悪天候の時はめったやたらと風が強くなる場所で、以前、JAPAN JAMやSUMMER SONICも、同じような感じで中止になったことがある(サマソニの時は「そこのステージだけ中止」という処置だった)。なので、まあしゃあない、と納得。
で、ポカンと空いてしまったので、昼メシを食ったりしつつ三軒茶屋をほっつき歩いていて、キャロットタワーの前を通りかかって、この演劇をやっていることを思い出した。
シェイクスピアの原作を三谷幸喜が翻案し演出した、シス・カンパニーの公演『昭和から騒ぎ』。出演は大泉洋、宮沢りえ、竜星涼、松本穂香、松島庄汰、峯村リエ、高橋克実、山崎一。
この演出家で、この俳優陣。そうそうチケット取れるわけがないが、この公演に関しては、当日券は「開演75分前までに並んだ人全員が抽選に参加できる」というオペレーションになっている──と、友人からきいたのを思い出した。時計を見たら、75分前まで、あと15分。
試しに並んでみた。土曜だけあって、かなりの人数が並んでいたが、なんと、当たってしまった。最上階の最後方で、立ち見で3,000円。1時間45分という、演劇としてはかなり短い尺だし、S席だと12,000円だし、全然いいです、立ち見で。
と、思いつつ観た。で、「これが3,000円って、ほんとお得だったなあ」と実感しながら帰った。三谷幸喜の舞台も、大泉洋や宮沢りえや竜星涼や高橋克実も、生で観れたのは初めてだし。松本穂香と峯村リエと山崎一は、舞台で観たことあるけど。「ああそうだ、シェイクスピアってこんな感じだった」(大昔に読んだことあり)とか、「それが三谷幸喜だとこうなるのか」とか思いながら、とても楽しみました。
あと、峯村リエがすばらしかった。というか、大笑いさせられた、何度も。
なお、THE CHEMICAL BROTHERS、このまま何もせずに帰国、というのは、イベンターとしてもご本人たちとしても、さすがにちょっとあれだろうから、都内のどこかのクラブのイベントに、急に出たりするんじゃないか。という気はしていたが、芝居を観終わってXを見たら、急遽、渋谷のO-EASTで、24時からイベントをやります、ということが発表されていた。で、とうに売り切れていた。これも、まあ、しゃあない。
でも、「どっかのクラブのイベントにねじこむ」んじゃなくて、「深夜営業もできるけど普段はやっていない大きめのライブハウスを借りる」というのは、なるほど、その手がありますよね、と思いました。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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