兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第1回 [2018年1月1日~31日の巻]

コラム | 2018.02.14 18:00

1月16日(火)夕方 小袋成彬 @都内某所

この日=1月16日の24時に、宇多田ヒカルプロデュースのアルバム『分離派の夏』で、4月25日にメジャー・デビューすることが発表になった小袋成彬のコンベンション・ライブ。メディアとかの関係業界各社のみなさんを招待して行うお披露目ライブです。水曜日のカンパネラなどのアーティストをプロデュースしてきたり、宇多田のアルバム『Fantôme』にゲスト参加したりしてきたアーティスト。で、16時半から30分間のライブだったんだけど、デビュー発表がその日の24時なので、観終わってもツイートとか一切しなかったんですが。
かなりの衝撃でした、ライブ。新しい。日本にもフランク・オーシャンみたいな存在が出て来たってことなのかな、などと事前に思っていたが、そんなような「以前に例があった何かを新しいパターンで」みたいなものではなかった。
歌もの、ハウス、アンビエント、エレクトロニカ、などの要素から成り立っている音楽なんだけど、そのようなルーツの流れの上にわかりやすく存在しているものではない。もっと、何かこう、突然そこに生まれた感じなのだ。
特にメロディ。あれだけ流麗なのに、日本的な歌謡感もないし、洋楽の各ジャンルの「歌もの」のどれかに沿っている感じもしない、予想もつかない展開をしていく歌メロ。強烈だった。

1月16日(火)夜 フラワーカンパニーズ @clubasia

『高橋祭り』というイベントのトリで、自分と長い付き合いのフラカンが出るというので、観に行きました。下北沢GARDENでの年越しワンマン以来、2018年初めてのライブ。
ボーカルの鈴木圭介という人は、このバンドを始めて今年で29年になるのですが、そして長年ホコリまみれのハイエースに乗って全国津々浦を日々ツアーし続けている人なのですが、「2週間ライブが空くと完全にリセットされてしまう」「初めてステージに立つ高校生と同じマインドになってしまう」という厄介な体質なのです。
それがゆえに1本1本のライブを新鮮なものとして、リアルなドキュメントとして観る人に届けられる、という利点もあるのですが(以前それについてトータス松本が感心していた)、逆に言うと「熟練」や「安定」にちょっとどうかと思うほど縁がない、ということでもあります。
この日も、頭3曲、めちゃめちゃテンパってるなあ、と思いながら観ていたら、4曲目に入る前のMCで、「よし、もう大丈夫! ここまではちょっとアレだったけどここからは大丈夫!」みたいなことを言っていた。
めちゃめちゃ笑いました。やはり最初は大変だったようです。

1月19日(金)04 Limited Sazabys @Zepp Tokyo

全国ツアー中のフォーリミ、東京は初めてのZepp2デイズ、これは2日目だったのですがもちろん両日余裕のソールドアウト。
今勢いのあるバンド、実力や才能だけでは不可能な「運」とか「タイミング」とか「時代の流れ」とかまで味方につけて爆進しているバンド、いくつか存在するが、その中にあってもフォーリミってさらに抜きん出ているんだなあ、ということがまざまざとわかるステージだった。
いや、ステージだけじゃなく、超満員のフロアの熱狂ぶりを観ていて、さらにそう思った。今ここで何かが始まっている人だらけなのだ。フォーリミとの出会いから、その人にとってのロックが、バンドが、ライブが、ライブハウスが始まった、そういう熱い空気。
MCでGENも触れていたが、ワンマンになると、このバンド、男のファンがとても多いことが改めてわかる。この中のかなりの人数がバンドやっている、もしくはこれから楽器を持つ、のではないかと思った。

1月20日(土)中村一義 @Zepp Tokyo

2017年2月18日(土)江戸川区総合文化センター大ホールのワンマン『エドガワQ 2017~ERA最高築~』から始まった、中村一義のデビュー20周年イヤー・プロジェクトの締めくくりを飾るライブイベント『20→(トゥエンティ・ゴー)』。中村一義と彼のバンド=海賊の他、ゲスト・アクトとしてサニーデイ・サービス、SPECIAL OTHERS、小谷美紗子が出演したこれ、ご依頼いただいて、彼の所属レーベル、ビクターがウェブメディア等に一斉送信するパブリシティのニュース原稿として、ライブレポを書きました。
各所にアップされています。たとえばこれ。
https://www.musicman-net.com/artist/72875
この日、中村一義のライブは、曲が始まるとステージ後方にその曲が収録されているアルバムのジャケットが映し出されるという趣向だった。すべてリアルタイムで聴いてきたので、ああこの頃こうだったよな、ああだったよな、と当時の彼のこと、当時の自分のことを思い出して、何度もしみじみしました。

1月21日(日)魔法少女になりたい @名古屋E.L.L.

ニュー・アルバムのツアーで、東京は1月27日に渋谷TSUTAYA O-EASTなんだけど、その日、Zepp TokyoでCharisma.comの活動休止ライブと当たっちゃってるのですね。
最後なんだからそっちを選ばざるをえない。でも魔法少女、年末にCOUNTDOWN JAPANで観たら、ステージの上も下も含めてすさまじくすばらしいことになっていた、このツアー観ないとあとで後悔する気がしてならない。
というわけで、レポとかの仕事何もないのに、名古屋まで行った。純粋なファンなら全然いいけど、プロの音楽ライターとしては間違っている気がしないでもない。
ただ、わざわざ行った甲斐あった。ライブ、最高だったので。
スラッシュ+アニソン+ユーロビートという発明がこのバンドだが、その音で満員のフロアが熱狂しまくっている、そこまで含めて、「今ここで何か新しい現象が起きている」というあっつい空気だった、終始。
あと、客観的かつ冷静に聴くと、曲の構成はほとんど全曲同じパターンなのに、飽きるどころか「もっと!」という気持ちになるのは、歌メロがいい、というシンプルな理由なんだな、ということも、改めて思い知りました。

  • 兵庫慎司

    TEXT・PHOTO

    兵庫慎司

    • ツイッター

SHARE

関連記事

イベントページへ

最新記事

もっと見る