兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く：第12回［7月の巻～後編～］

CLUB Queの対バン企画がこの2バンドでブッキングされた後、カスタネッツのボーカル牧野元の舌癌が発覚。手術と療養、ということになり、この日は急遽友人のボーカリストたちに声をかけて2曲ずつ歌ってもらう、というセッション企画になった。集まったのはTheピーズ・大木温之、TOMOVSKY、無限放送・井垣宏章、フラワーカンパニーズ・鈴木圭介、GOMES THE HITMAN・山田稔明、という豪華メンツ。急な依頼にもかかわらずきっちり歌詞を覚えていて走り回りながら歌う人、逆にカンペをガン見な人など、さまざまだったし、そもそもの事情が事情なのでお祭り騒ぎという空気にはならないものの、我々は今とてもレアなライブを観ることができている、という興奮がじわっと場を包んでいる時間でした。アンコールは全員でカスタネッツの最初の代表曲「だいじょうぶ」でした。

メジャーからは初のシングル『Primal Three』のリリース・ツアーのファイナル。終始ひたむきで、ヒリヒリと切迫していて、なのにシリアスなだけじゃなくて同時に楽しくもあるし開放的でもある、というような、ギター主体のシンプルなロック・バンドとして理想的なのでは？と思わせるライブだった。頭からラストまで情熱が爆発し続けている感じ。

アナログフィッシュが毎年この時期に行っている（昨年はライブ休止期間だったので休んだが）ライブ、『ナツフィッシュ』の2018年版。ニュー・アルバム『Still Life』のリリース3日前というタイミングで、そこからの曲も織り交ぜつつ普段あんまりやらないレア曲を聴かせていく大充実のライブでした。すごいバンドだなあ、他にいないよなあ、と観るたびに思う。9月10月のリリース・ツアーが楽しみ。

毎年恒例、リキッドルームの周年シリーズの中の1日。オープニング・ゲストに町あかり、電気のライブにはトミタ栞と音源にも参加しているギタリスト・吉田サトシが登場。アンコールは町あかりが加わって、彼女の曲を石野卓球がリメイクしたバージョンの「もぐらたたきのような人」。彼女の出番で1曲目とラストがこの曲だったので、都合3回歌ったことになります。そして彼女とピエール瀧のデュエットで「エンジのソファー」を歌う、という、もう大変にレアなステージで大満足でした。
なおこの「エンジのソファー」、2009年に出た電気グルーヴ結成20周年記念アルバム『20』収録曲。寺尾聰の1981年の大ヒット曲「ルビーの指輪」にインスパイアされた、というか、久々に耳に入って来たら妙に印象的だった、というような理由で作られたものだと推測します。あと、このタイトルですが、この曲がTBS系『ザ・ベストテン』で12週連続1位、というそれ以前にもそれ以降にもない記録を打ち立て、それを記念して番組内で出演者が座るソファーのまんなかにエンジのソファーが置かれたので、だと思いますが、それをこうして説明するほど野暮なことはないとも思います。

フラカンの『トウキョウサマレスト！』『オオサカサマレスト！』という東阪企画ライブで、うつみようこと真城めぐみのユニット「BABA」(ABBAをもじったもの、と説明するのも野暮ですが、これも)がほぼ出ずっぱりで参加。
国内屈指の女性シンガー×2、終始もうすごい仕上がり。特に中盤、ふたりがフロントに出て来て、ようこさんはBo Diddleyの「Mona」、真城さんはFrank Loesserの「On A Slow Boat To China」を歌い、3人でフラカンの「元少年の歌」を歌ったのは、もう圧巻だった。
唯一不満に思ったのは、アンコールでBABAのおふたりがABBAの「Dancing Queen」を歌ったんだけど、カラオケだったこと。おふたりとも「カラオケだし！」と苦言を述べておられました。ギター・ベース・ドラムだけでやるのは無理がある曲なのは重々わかるが、次の機会があったら、無理やりでもいいから生演奏でお願いしたいです。