【インタビュー】安藤裕子、15周年を経てたどり着いた新生への想い「これまでの安藤裕子らしさを超えた先の音を楽しみにしてもらえたら」

インタビュー | 2019.04.13 18:00

安藤裕子は今、過渡期の真っ只中にいる。昨年5月に開催されたデビュー15周年記念ライブで“この日を終えて、本当の意味でソロシンガーになった”と宣言した彼女は、同年6月に初のセルフプロデュースアルバム『ITALAN』をリリースし、秋からは2年ぶりとなる全国アコースティックツアーを開催した。時を同じくして、さまざまなライブイベントに積極的に参加し、各会場で新曲を惜しみなく披露。そして、2019年1月6日に迎えたアコースティックツアーのファイナルでは、同公演を収録したライブCDのリリースに加え、バンドメンバーを一新した全国Zeppツアーを開催することが発表された。
長年着慣れた衣服を脱ぎ捨て新たな仲間との音楽作りを始めた彼女は、果たして、どんな装いでステージに立つのか。今はただ、まだ見ぬ“新しい安藤裕子”との出会いが楽しみで仕方がない。

新しいことを始めた自分のライブをもっとやりたい

──3月27日に初のライブCD『Acoustic Live 2018-19 at Tokyo』がリリースされました。どうしてライブCDを出そうと思ったんですか?

それは、出したいっていうレコード会社の人がいたから(笑)。見たいとか聞きたいと言ってくれる人がいればありがたいなと思うし、プロですから、必要があれば脱ぐことも厭わないっていうことですね。

──あはははは。ヌードになったっていう感覚ですか?

そんな恥ずかしさはありますね。ライブCDって、レコード芸術とは離れたものじゃないですか。見られたくない部分も見られてしまうし、その場にいて得られる感動や空気も音に加工やEQを加えるたびに少しずつ答えが変わってきたり、その瞬間あったものは少しずつ捻じ曲がってしまう。でも、それ以上に、ライブならではのものを感じたいっていう人がいてくれるのであれば、とても必要な作品だとも思う。そういうジレンマとの戦いはありましたね。だから、製品として整える部分はありつつ、歌はまったく直してないんです。直せば直すほど、恥ずかしいものになっていく感じが私の中であったので、簡単にいうと、歌は手つかずで、間違った歌詞もそのままになってますね。

──生の緊張感や迫力、歌への没入感が伝わってくる音源になってると思います。それに、未発表の新曲が4曲も収録されています。オープニングナンバーがいきなり新曲の「nontitle」でした。

一時期、トオミヨウくんがつけた「クレヨン」というタイトルになってたんですけど、“いや、「クレヨン」じゃねーな”って思って、「nontitle」という形で表示させていただいて。1曲目だし、印象が強かったので、なんとなくリード曲扱いになってて。ラジオのプロモーションで、何度か「nontitle」という名前でかけてもらってたので、この曲は「nontitle」として生きていくんじゃないかなって思います。

──15周年イヤーに突入してから、どんどん新曲を歌ってますよね。

3年前に休業に入って歌が作れないってなった時でも、ライブだけはやろうとスタッフに励まされて歌ってきたんだけど、過去の曲を歌うのがすごくつらくなっちゃったの。立ち止まってしまった事で、それを作ってた頃の自分にもう共感できなくて。割と小さな空間で人と対面した時に、自分が思ってもないことや共感できないことを歌うのがつらくて。だから、イベントのたびに新曲を作って、新鮮な気持ちで人の前に立つっていうことにしてたのね。「nontitle」も、小林武史さんが石巻でやってるイベント、<Reborn-Art Festival 2017>の時に歌った時以来の曲だったんですね。その時は割と、曲が作れなくなって枯れたなって思ってて。私、人生折り返したけど、このまま枯れて、灰になって死んでいくのかなって思ってた時期だから、そういうカラーが濃く出た曲ですよね。その頃の私は感情がまったくなくなって、無感動で、何にも興味がなくなっていた。人間なのに、このまま残りの人生をこうやって生きていくのかなっていう疑問符と、本当にそれでいいのかい?っていう気持ちだけ。

──無感情でも自問自答はしてる?

少し残ってるんでしょうね。朝起きて、朝ごはんを作って、掃除して、みたいな日常の中ではまったく何も欲してないし、何も考えてないんだけど、イベントがあるので曲を作ろうと思って音を出した時に生まれた疑問ですよね。音を出した時に初めて、“何をやってるんだろう、自分?”って思うっていうところかな。ライブでは、昔の曲はちょっと自分を奮い立たせないと歌えないから、新曲から歌うべきだなと思ったし、一番毒の強いものからやったらいいなと思ってましたね。

──このまま、ライブで披露された新曲についてお伺いしたいと思います。フォークロック「箱庭」はいつ頃作った曲ですか?

DadaDのShigekuniくんが作ってくれてた曲で、歌詞は私です。アルバム『ITALAN』のアレンジのブラッシュアップや楽器の演奏をShigekuniくんとトオミヨウくんに手伝ってもらって。すごく面白い人たちだったから、彼らとお仕事として何かを始められないかなって思って。それぞれに才があるプロデューサーだから、次は彼らの才能をちゃんと生かしたいなと思ったんです。Shigekuniくんは私にはないキャッチーなメロディを作る才能があるんですよね。私、鼻歌でもややこしいメロディになっちゃうんです。山本隆二くんがつけるコードが難解だっていう前に、すでに私のメロディがひねくれてるんですよ。私に足りないのは、パッと一聴した時に、人が聴きやすいメロディなんじゃないかなと思って。それで、Shigekuniちゃんに曲を作ってくれないってお願いして、送られてきたのが「箱庭」です。やっぱりすごく開けてるし、メロが綺麗で1音1音が聴きやすい。私にはできないメロディだなって思いますね。

──ラブソングですよね。

ラブソングという面もあるけど、私としては、もう1回、人間を始めたいっていう意思表示でもあったの。私がずっと抱えていた枯渇、このまま焚き火の火が燃え尽きて、灰と煙になって、そのまま朽ちていくような不安になっていたと思うの。そうやって死んでいくんじゃないかっていう、非常につまらない灰色の未来を描いていたんだけど、人生あと半分あるのに、なんでこのまま死ぬんだよって思って。『ITALAN』のテーマは“至らぬ人々”で、恋が絶対に始まらなかったんですよね。結局、愛や恋にならない、つまらない温度だったわけ。私は、そういう人間がほとんどじゃんって思って作ってたけど、そういう人間がほとんどだと少子化は解決するのかって!

──あははは。大きな話になってきた!

少子化対策も考えてるから(笑)。「箱庭」の主人公は男の人で、中年の域に差し掛かったおじさんおばさんたちが、もっと心を裸にして、愛や恋に溺れたっていいだろう?命を燃やすというのかな、瞬間的な恋に落ちようよっていう表現の曲ですね。

──ライブでも“ここで出会った男女が一夜を共にしてほしい”って言ってましたね。

そうそう。ライブのたびに、おじさんにもっと恋をしてほしいってお願いをしながら歌い続けてたの。“ぜひ持ち帰ってほしい”って言いながら歌ってた(笑)。40でも50でも、70でもいいから、瞬間的な恋に忠実であってほしいなっていう、奮い立たせるための曲。「少女小咄」も同じようなことだよね。主人公が女性だからもうちょっと現実的だけど、ちょっと感じがいいなと思った人に告白されたらどうしようっていう妄想と、でもどうせ自分なんてつまらなくてすぐに彼は飽きちゃうだろうし、見せられるような体じゃないしっていうネガティブな考えの行き来がある。大人になればなるほど、いろんなことを考えたらめんどくさくて、恋愛にならないんだけど、もうちょっと夢見てもいいんじゃないのかなっていう曲ですね。

──もう1曲、「一日の終わりに」は昨年12月23日のamiinAのイベントや、今年1月18日のイベント<共鳴レンサ>、1月28日のイベント<LIVE in the DARK>でもやってました。

amiinAのイベントの前に作ったのかな。私もいい加減、自分で弾き語りで歌える曲を作ろうと思って。ギターの練習をしながら、好きな音をアルペジオで鳴らして作った曲で。Salyuちゃんと一緒にやったファンクラブイベントの晴れたら空に豆まいて(2018年12月27日)でも一緒に歌ってもらって。その時はハモってもらいましたね。

──デビュー以来ずっと一緒にやってる山本隆二(Pf)と名越由貴夫(Gt)との3人でアコースティックツアーを回りつつ、イベントにはShigekuni(Ba)とトオミヨウ(Pf)、あらきゆうこ(Dr)というバンドセットで挑んでました。

新しいことを始めた自分のライブをもっとやりたいと思ってて。新曲を作り出した時の考えの中に、自分でもうちょっと音楽っていうものについて考えたり、演奏したりしたいという思いがあったの。安藤裕子という音楽の後期は“チームアンディ”のカラーが濃くなってしまっていて、もともとモノ作りをしていた安藤裕子はどこにいったのかっていう疑問もあって。もうちょっと中心の私が音楽性を濃くしないとつまらないんじゃないかなって思っていた。自分で成長しないとチームの未来もないんじゃないか?っていうのがあって、今は自分だけが練り込む新曲をたくさん作って、いろんなことを試しています。

公演情報

DISK GARAGE公演

安藤裕子 Zepp Tour 2019 ~雨街交差点~

2019年6月22日(土) 大阪・Zepp Namba
2019年6月23日(日) 福岡・Zepp Fukuoka
2019年6月30日(日) 愛知・Zepp Nagoya
2019年7月7日(日) 東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
バンドメンバー:岡田拓郎(Gt) / Shigekuni(Ba) / あらきゆうこ(Dr) / 小林創(Key)

チケット一般発売日:2019年4月13日(土)

※3歳以上チケット必要/別途1ドリンク必要

RELEASE

『Acoustic Live 2018-19 at Tokyo』

Live Album

『Acoustic Live 2018-19 at Tokyo』

(Mastard Records)
2019年3月27日(水)SALE
  • 永堀アツオ

    取材・文

    永堀アツオ

  • 撮影

    西角郁哉

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