時代錯誤が時代の先端だ!?大宮エリーとアーティストたちがプレゼントしてくれる心の中の「お絵描き」タイム

インタビュー | 2019.10.31 12:00

大宮エリーが、また新しいことを始めた。
日常を瞬時に笑いや涙に変える名エッセイストにして、映像や舞台の作・演出、ラジオやテレビのパーソナリティ、とりわけ近年は絵画制作に注力する多能な人。そんな彼女がこのたび企画したのは、親交の深いアーティストたちとともに繰り広げる、「音楽」「朗読」「おしゃべり」といった要素から成るステージだ。題して、「虹のくじら」。
11月から12月初頭にかけて4夜の公演が予定され、それぞれの夜に登場するお相手は豪華な面々が揃う。11月13日は原田郁子、15日がコトリンゴとスピードワゴン小沢一敬、12月2日に持田香織とおおはた雄一、4日がキヨサク(UKULELE GYPSY・MONGOL800)となっている。
個性的なミュージシャンと大宮エリーが、演奏や歌はもちろん、詩の朗読から音楽と詩についてもトークする贅沢な時間が用意されている。どうやら音楽と言葉が主役となるようではあるが、通常のライブコンサートの類とは様相がかなり異なりそうだ。いったい大宮エリーは何をしようとしているのかといえば、
「その場に集まったみんな、それは出演者もお客さんも含めてだけど、一人ひとりに自分だけの絵を描いてもらいたいんですよ」
とのこと。いや、何も実際に絵筆を取り出して写生大会をするというわけじゃない。そこにいる誰もが心の中で自由にお絵描きをできる時間と場をつくりたいというのだ。

大宮エリー(以下略) 私はこのところ、絵を描いたりそれを見てもらったりすることを活動の中心にしているんですけど、あるときふと思ったんです。描いたり見てもらうのも楽しいけど、もっと自由に人にものを伝える方法ってないかなと。

だったらたとえば物語を声に出して朗読したり、音楽を聴いてもらって、耳で受け取った言葉をもとにみんなが心の中で好きに絵を描いてくれたら、いちばん自由なかたちで何かが伝わることになるんじゃないかと思いついた。そうすれば筆やペンを持たずとも、絵を描く楽しさまで共有できるかもしれないし。

画材がなくたって絵は描けるんだよ、頭の中だけで。そう伝えるための場と時間を設けてみたい。体験すれば、きっと誰しも実感してくれるはず。そんな思いから企画されたのが「虹のくじら」というわけだ。

私はこれまでいろんなことをしてきたけれど、やりたいことの核みたいなものは、結局いつも同じだなと絵を描くようになってから気づいたんです。日常にあふれている小さい奇跡みたいなこととか、自分のなかから湧き上がる何かを表現して、人に伝えて、みんなで共有できたらやっぱりうれしい!そればかりを追い求めてきたし、いまもそれを続けている。

小さい奇跡や湧き上がる何かって、言葉にならないことも多いから、言葉から離れた絵や音によって掬い取ろうとしてみたり、またはあえて言葉を使って物語にのせて表現してみたりと、そのつどいろいろ試みているんですよ。

なるほどそう言われてみれば、ミュージシャンがライブで歌とパフォーマンスを披露するのも、オーディエンスの心の中に何かを届けて植え付けようとしているとみなせそうだ。

たぶん同じような感覚でしょうね。ただしミュージシャンが操る歌というのは、エナジーみたいなものを直接心に届けるのが得意だったりします。ロックフェスに行った帰り路、楽しかったあ!という高揚感はあるけど、その気持ちがビジュアルイメージにはあまり結びつかないですよね?音楽というのはすごく直接的なものだし、歌詞も言葉だけど、あれは気持ちや記憶や感情に直接つながるものなんですよ。一方で物語や詩というのは、もっとこう、情景が浮かびやすいもの。『虹のくじら』ではその力を大いに使ってみたいんです。

たとえば、と大宮エリーは三好達治の詩『雪』を挙げてくれた。

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

たった2行で、しんとして深い雪景色がまぶたに浮かび広がる。言葉に触発されて、これを読んだ私たち一人ひとりが自分の内側で絵を描いた結果だ。

そう、それを会場でみんなとやりたいんですよ。そこにいる全員で画家になれたらいいですね。

大宮エリーと対するミュージシャンたちはステージで、もちろんオリジナルの楽曲やカバーを歌ってくれるとともに、朗読にも挑むこととなる。

人に感情をダイレクトに伝える力に長けているミュージシャンが、詩や物語を朗読すると、すごい威力があります。話がグイグイ聴く側の内側に入ってくるんですよ。リズムやメロディにのせず何かを読むって、ふだん歌っている人にとってはちょっと恥ずかしいみたいですけど、同時に新鮮な気持ちにもなってもらえるみたいです。感受性豊かな方ばかりだから、本人たちとしても読んでいると絵がありありと浮かぶようで、そこからまた新たな歌が生まれたりもするんじゃないか。いい循環が生まれるといいですよね。私もミュージシャンの方々も、朗読しながら声に出して読むことの楽しさをたっぷり味わいたいと思います。人によって、同じ詩でも読む感じがぜんぜん違うんですよね。その違いも感じてもらいたくて、4回公演も用意したというところがあります。

音や言葉だけを原動力にして想像を膨らませ、自分の内なる場所に絵を描いていく。思えばそんな行為は、ちょっと時代に逆行しているのかもしれない。だっていまや世界中どころか宇宙の映像だって通信技術を活用して居るままに得られるし、過去の人物の姿だって未来の光景だってテクノロジーで詳細に描き出すことができる。圧倒的に視覚が優位な時代であるのはまちがいないというのに、視覚に頼らず「読む・聴く」から入るなんて、古めかしいような気もするけれど……。

そうかもしれません。ちょっと時代錯誤かな。でも、なんでも便利になって、そこにいなくてもいるように見せてくれるほど技術の進歩がすごい時代に、あえて『見せない』朗読会をしてみたいなあと。バランスをとる意味で、ね。テクノロジーがすごくなるのと同じくらいの割合で、人それぞれの想像力も鍛えていかないといけないんじゃないかと思いません?そのひとつとして、この朗読と音楽のライブがある。

みんなでイチから想像を働かせていって、オリジナルな絵を描こうとすればこそ、何かを感じる力やそれを膨らませていく力にもう一度気づくこともできると思うんです。いまの時代に生きていると、『感性の筋力』みたいなものが知らず失われがちになるんじゃないか。意識的に『感性筋』のトレーニングすることが、これからはきっと大事になってきますよ。
そのための場として『虹のくじら』はあります。今回も立て続けに4公演ありますし、今後も継続してやっていくつもりでいます。だって、これは小さい声でささやきますけど、これをやるのは大いなる使命感からでもあるんです。いまどきなぜ朗読会?って思われるかもしれないのはわかっています。でも、なぜいま大宮エリーが朗読会なんてやろうとしているか、すこしだけ、こう、なぞなぞを考えるみたいに謎解きしてみてもらいたいです!

11月と12月の4公演、いずれも豪華ながらお相手のアーティストによってずいぶん雰囲気は変わってきそう。それぞれどんなことが起こりそうだろうか?

そうですね、一夜目の原田郁子さんは、私、彼女と同い年なんですよ。すごく近しいものを感じる人で、ふたりのいいグルーヴが観に来てくれた人にも自然と伝わるんじゃないかと思います。とくに世代の近い女性の方には、『言わずともわかる!』みたいなところがきっとたくさんあるんじゃないかな。郁子さんはどんなメッセージでも、すぐそばに寄って来てささやくように伝えられる人。音楽とその声で『光』を届けられるような光のライブになるといい。

二夜目のコトリンゴさんは、ほんとピアノの魔術師なので、その音色に酔いしれてほしいです。小鳥のよう人なので、話す声、歌、ピアノが相まって大自然に囲まれた気持ちになれると思う。癒しのライブが展開されますよ。
朗読のパートにはスピードワゴンの小沢一敬さんも登場。彼は芸風からもわかるように、言葉に対する洞察力がすごい。3.11の直後のころ、私がTwitterで『あきらめさせない』ってただひと言つぶやいたのを覚えてくれていて、その意味を解説してくれたのが小沢さんでした。こういう場に出られるなら、たくさん話したいことあるよと言ってました。3人のあいだでどんな言葉が飛び交うか楽しみです。

三夜目、おおはた雄一さんのギターと歌はいつも聴く人に寄り添ってくれるみたいで、大切なものを思い出させてくれるよう。今回も歌い上げてくれるのでしょうね。持田香織さんは声が独特ですよね。聴いているだけでポジティブになれるし、笑い声まですてきだから、それがたくさん聴けるといいな。あの笑顔はみんなを巻き込んで笑顔にするから、持田さんをたくさん笑わせたい。そうしたら、会場みんながひとり残らず笑顔な『笑顔のライブ』になると思う。

四夜目のキヨサクさんは演奏も人柄も、その場にいる全員を必ずハッピーにさせてしまうという稀有な人。悲しくても、つらいことがあっても、彼の世界に触れると『なんて世界はすばらしいんだ!ワンダフル!』って気分になる。きっと底抜けにハッピーなライブになりますよ。

歌ったり朗読したり、語り合ったり。演者も目いっぱい楽しんでやろうと思うので、そういう姿を間近にすると観ている側も楽しい気分になるものでしょう?舞台の上と客席には実際のところは多少の距離があるけれど、気持ち的にはいっしょにコタツに入ってミカンでも食べながらいるような感じでやるので。帰って数日後に、
『この前、大宮エリーや原田郁子さんといっしょに飲んだんだよ』
などとついだれかに話したくなるような、親密な気分を楽しんでもらえたら何よりです。あ、お酒は出ませんけどね、念のため。
私は言霊ってあると思うんです。みんな言霊を浴びないと!と思うんです。『虹のくじら』にはそれがあります。記憶に残る一夜限りのライブに、ぜひ来てください。

この先ずっと大切にとっておきたくなるような、他に似たもののない特別な時間を、ぜひ会場で体感したい。

公演情報

ディスクガレージ公演

大宮エリーの音楽と朗読とおしゃべりの「虹のくじら」

[上段/左から]原田郁子、コトリンゴ、小沢一敬(スピードワゴン)
[下段/左から]持田香織、おおはた雄一、キヨサク(UKULELE GYPSY・MONGOL800)

会場:草月ホール

2019年11月13日(水)
大宮エリー×原田郁子

2019年11月15日(金)
大宮エリー×コトリンゴ×小沢一敬(スピードワゴン)

2019年12月2日(月)
大宮エリー×持田香織×おおはた雄一

2019年12月4日(水)
大宮エリー×キヨサク(UKULELE GYPSY・MONGOL800)

チケット一般発売日:2019年10月20日(日)

  • 取材・文

    山内宏泰

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