KIRINJI 堀込高樹、ニューアルバム「cherish」は“今の音楽として聴けるもの、かつ、ハーモニーやメロディを意識”。全国ツアーも開催!

インタビュー | 2019.11.20 12:00

©︎Yosuke Suzuki

──実は、昔からキリンジ(現在はKIRINJIに改名)が好きで、アルバムはもちろんエッセイ本も持ってます。
堀込高樹(以下略)ああ、ありがとうございます。
──なんなら学生時代は「Drifter」と「メスとコスメ」の歌詞を学校の机に書いてました。
机に書く!? なんで!?(笑)。
──当時は中学生だったので「この歌詞はどういう意味なんだろう。一回、机に書いてみるか」と思って。
だからって学校の机に書いちゃダメじゃないですか!まあ、文字を掘らないだけ良かったですよ。
──2人体制の頃と比べると、ここ3年間のKIRINJIはこれまでと違う作風になった印象がありまして。前々作の『ネオ』、前作の『愛をあるだけ、すべて』、そして今回の『cherish』とダンスミュージックやHIP HOPにフォーカスした作品が続いてますよね。
『ネオ』はグループとしても手応えがあって、評判も良かったんですね。あの感じでもう1枚作りたくて『愛をあるだけ、すべて』を制作しました。今回は一回経験しているので、どうすれば目指している音になるか当たりがつくわけですよ。だから、より具体的に方法から到達点に至るまでイメージして出来た感じがありますね。
──「最近のポップスは、ダンスミュージックかHIP HOPの影響下にある音楽が主流」と去年のインタビューで話されてましたけど。高樹さんはマーケットを意識して楽曲制作に臨まれているんですか。
それはそうですね。ラジオなりサブスクリプションなりで、世の中の音楽と一緒に混ざって聴かれるわけじゃないですか。そのときに自分の音楽だけ「ローが軽いな」とか「レベルが小さいな」とか、もっと言えば「何か古臭いな」と思われたら悔しいですよね。だから、ちゃんと今の音楽として聴けるもので、なおかつ我々のような世代の人間も満足できるようなハーモニーとかメロディがちゃんとあるものを作りたい。特に今回はそこを意識して作りましたね。
──時代の変化を見極めて音楽を作っている、というのが僕は意外で。KIRINJIって世間の流行りとは違う場所にいる印象があったんですよ。
かつての「メスとコスメ」とかね、ああいう曲を作っていたときって、当時の2000年代初めに流行っていた音楽が全然好きじゃなかったんですよ。自分が表現したいものはそれじゃなかった。でも、あの頃と同じことを今やると、時代にとり残された人の音楽に見えてしまうと思うんですね。ミュージシャンって音楽だけが大事なわけじゃなくて、スタンスとか「こういう意識で音楽をやってます」と伝えることも作品の一部だったりする。だから隠遁した感じで音楽をやっていると思われたら嫌だな、というのがあって。
──世間と離れたところで音楽を作っているような。
先ほど仰った通り、そこって昔はどうでも良かった。だけど今は流れてくる音楽が「カッコイイものが多いな」と感じるようになったんですね。高校1年生の息子がいて、彼はダンスミュージックとかHIP HOPとか、それに準ずるヒットチャートに入るような音楽を聴いているわけです。そうすると最初はどこが良いのか分からなかった音楽——トラップとか「暗いなぁ」とか「重いなぁ」しか思わなかったけど、段々と面白さが分かってきた。「こういう音楽って、自分だったらどうやるのかな」と聴きながら自然に考えるようになって。だからリスナーとしての環境が変わったのが大きいかもしれないですね。
──息子さんに「これ作ったんだけど」と聴かせる機会はあるんですか。
家でKIRINJIに関する話はしたことないけど、どんな音楽をやってるかは知ってるっぽいです。鎮座DOPENESSがウチに来たときは、異常に盛り上がってましたから。
──ハハハ、様子が違うぞと。
ウチのスタジオでレコーディングをするために来たんですけど、「ヤベー人が来る!ヤベー人が来る!」って、いつになく“ヤベー”を連発してて面白かったですよ(笑)。
──今回「Almond Eyes」で鎮座さんをゲストボーカルに迎えたわけですけど、ご一緒したのはどう言う経緯で?
前々から彼の存在は知ってて、いつかお願いしたいと思っていたんです。だけど鎮座くんは接点がなくて、どういうルートでお願いをすれば良いのか分からないのと「そもそもKIRINJIのようなポップスをやってくれるのかな?」と思ったんですよ。頼んで断られたら嫌だしな、とも考えたし(笑)。
──はいはい。
そんなこんなで気にはなりつつ、数年間は接触がなかったんです。それで「Almond Eyes」を作ったとき、これに鎮座くんが参加してもらえたらカッコよくなるなと。しかも彼は、最近FNCYというグループをやってて。それが割とブラック・コンテンポラリーとかAORと呼ばれているタイプの音楽を、現代にブラッシュアップさせたファンキーなポップスなんです。それで「こういう音楽もやっているなら、KIRINJIもやってくれるかも」と思ってお願いしましたね
──実際、ご一緒されてみてどう思いましたか。
まず声が良いんですよ。後半はラップというよりも割と歌い上げるパートじゃないですか。あの人はラップもすごいけど、歌もすごいんだなと思いました。

Almond Eyes feat. 鎮座DOPENESS

──ゲストボーカルの話をすると、「killer tune kills me」ではYonYonさんとご一緒されましたね。
ある日、ラジオを聴いていたらYonYonとSIRUPが一緒に歌ってる「Mirror (選択)」という曲が流れてきたんです。新しいタイプの人が出てきた、と思ってビックリして。最初、韓国語が始まったと思ったら途中で日本語交じりになって、この人は何なんだろうと思って調べたら、DJなんだけどシンガーもやっている人だと知って。もっと驚いたのは、韓国のトラックメイカーと日本のシンガーを引き合わせて、かつ自分も歌う。そんなコーディネート的な役割もやっている。それで気になっていたら、ある日インスタでフォローされたのでDMを送ったんですよ。そしたら「全然歌いますよ」とお返事をもらえて。
──「killer tune kills me」は、弓木英梨乃さんとYonYonさんの声が見事にシンクロしてましたね。
そうですね。YonYonの歌う節回しにブラックミュージックのフィーリングがあって、それが弓木さんとのボーカルの対比になって面白いなと思いました。1曲の中に違う人格があるじゃないですか。違うタイプの女の子が同じような感情を抱いてる画が浮かんで、それを2人が歌うことで奥行きが出て良かったです。

killer tune kills me feat. YonYon

──「雑務」は<雑務 雑務 雑務 エンターテイメント>っていうサビが印象的で。「雑務」って、こんなリズム感のある言葉だったのかと気づかされました。
「雑務」という言葉を3連符で乗せて、後ろのトラックは16ビートでスクエアに刻んでいるんです。だから2つのリズムがそこにあるんだけど、それがブラジル音楽っぽいし、ラップ的とも言える。僕も面白い曲が作れたなと思いましたね。
──そういう驚きで言えば「Pizza VS Hamburger」もそうで。<ハンバーガーかピザ 俺、ピザだな ピザだな>の歌詞は面白いのに音はカッコ良いっていう、そのギャップに笑っちゃいました。
ある日、小学4年生の息子が着てたTシャツに「Hamburger VS Pizza」ってプリントされてまして。
──ハハハハ、そこですか!?
それを入れ替えただけなんだけど……まあ、それだけです(笑)。単純にノリの良い曲じゃないですか。リフとかグルーヴで聴かせる曲だから、そこに観念的なことを乗せても面白くないんですよね。だから、意味が分かるように言葉の切れの良さを優先して作りました。
──逆に「善人の反省」は歌詞のメッセージ性が強いですよね。あの発想はどこから湧いてきたんですか。
親鸞の『歎異抄』って知ってます?
──全然読んだことないですけど、仏教の本ですか?
そうです。「善人でさえ救われるのだから、悪人はなおさら救われる」という言葉があるんですけど。その言葉を聞いたとき、意味が分かるような分からないような感じだったんです。で、どういうことなんだろう?と。まあ本を読めば良いんだけど、面倒くさいから読まずに考えようと思って(笑)。
──フフフ、はい。
自分が善人になって良いことをしている時の気持ちを考えると、「“ありがとう”と言われたい」とか「今、拾ってあげたのに“ありがとう”を言われなかった」とかちょっと図に乗ってるじゃないですか。それってイヤらしいなと思ったんです。逆に、悪人というのは自分の中の悪意をちゃんと自覚している。
──俺はあいつを憎んでる、とか。
そうそう。だけど善人というのは、それを隠そうとするでしょ。自分で自分に嘘をつく方が悪人よりもタチ悪いと考えたときに、『歎異抄』の言葉はそういうことかなと思ったんです。で、これは良いなと思って曲にしました。

公演情報

DISK GARAGE公演

KIRINJI TOUR 2020

2020年2月28日(金) 北海道 札幌PENNY LANE24
2020年3月5日(木) 広島県 広島CLUB QUATTRO
2020年3月7日(土) 福岡県 イムズホール
2020年3月13日(金) 宮城県 仙台 darwin
2020年3月18日(水) 大阪府 Zepp Namba(Osaka)
2020年3月20日(金・祝) 愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2020年3月24日(火) 東京都 LINE CUBE SHIBUYA [渋谷公会堂]
2020年3月25日(水) 東京都 LINE CUBE SHIBUYA [渋谷公会堂]
2020年3月28日(土) 沖縄県 桜坂セントラル

チケット一般発売日:2019年12月14日(土)

RELEASE

「cherish」

NEW ALBUM

「cherish」

(Universal Music)

※初回限定盤(SHM-CD+DVD)

※通常盤(SHM-CD)

2019年11月20日(水) Release !
  • 取材・文

    真貝 聡

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