“これぞ黒木渚!”と呼ぶべきニューアルバム『死に損ないのパレード』が完成!今作について、黒木渚自身が語る。

インタビュー | 2021.07.13 22:00

──『合わせ鏡』は、渚さんにとっておそらく初めてのウエディングソング。ファン同士の結婚が増えたことが、この曲を書いたきっかけだったとか。

完全にそうですね。<昨日、結婚しました>とダンナさんと一緒に握手会に来てくれたり、会場で出会って、恋人同士になって、結婚して子供が生まれたカップルがいたり。<結婚式で黒木渚の曲を使いたい>という声ももらってたんですけど、両家のご両親を含めて、みなさんに<いい歌ね>って思ってもらえるおめでたい歌がなかったから(笑)、じゃあ、作ろうと。

──ファン同士のカップルが多いというのは、やっぱり嬉しいですか?

もちろんです。性格が私と似ている気がするんですよ、みんな。音楽ファンやフェス好きというより、小説や映画などにも興味があって、知的好奇心が旺盛で。出しゃばるタイプではなくて、クラスの端っこでサブカルの本を読んでるような(笑)。そういう人が集まってるから、居心地がいいんでしょうね。

──愛しいですねえ。

そうなんですよ!しかも私、ファンを溺愛するタイプで。ファンのコミュニティに参加して、<君たち、かわいいよ。好きだよ>ってイチャつくのがルーティーンです(笑)。

──(笑)『合わせ鏡』のソウル、ゴスペル的なサウンドも新機軸では?

式場で流れることを想像したときに、ゴスペルっぽさが欲しいなと思って。コーラスを初めて他の方に歌ってもらったんです。たくさんの人が歌って祝福しているイメージですね。

──『象に踏まれても』のバンドサウンドもカッコいいですね。ギラっとした派手さがあって。

サウンド的にはいちばん好きかもしれないですね。アイゴンさん(音楽プロデューサー、ギタリストの會田茂一)と<この曲はグラムロックでいこう>と決めて。<グラマラス>が合言葉みたいになってたんですけど、みんなでゲラゲラ笑いながら、ノリで突き進みました(笑)。曲の内容もオチャラけてるんですよ。<象が踏んでも壊れない>という筆箱のキャッチコピーがもとになってて。

──昭和の有名なCMですよね。

すごいコピーですよね、<象が踏んでも壊れない>って。まず、筆箱が象に踏まれるシチュエーションがあり得ないし、そんな強度も必要が必要なのか?という疑問もあって(笑)。すごくガッツのあるフレーズだし、わけのわからない説得力があるじゃないですか。そういう飛躍って大事だと思うんですよね、私は。

──『ダ・カーポ』は、2020年12月にリリースされた配信シングル。<捉われと繰り返し>をテーマにした楽曲ですが、2021年になって、社会の状況と完全に重なって。めちゃくちゃ予言めいてますね、この曲。

ここまで緊急事態宣言が繰り返されるなんて、思ってなかったですからね。『ダ・カーポ』は、配信ライブ(黒木渚Online Live2020「ダ・カーポ」)の演出のキーになった曲なんです。この曲を歌い終えた瞬間に巻き戻される演出だったんですけど、それが自分にとってもすごくおもしろかったし、新しい気づきにつながって。

黒木渚「ダ・カーポ」【Lyric Video】

──『あたしの心臓あげる(midnight ver.)』は、1stシングル『あたしの心臓あげる』(2012年)のセルフカバー。

今のメンバーでバンド時代の楽曲を録ってみたいとは思ってたんですけど、このバージョンが出来たのはまったくの偶然で。夜中のテンションでいきなりアレンジが始まって、みんなでワーキャー言いながら、順番にブースに入ってレコーディングして。4時間くらいで出来たのが、 <midnight ver.>なんです。ミュージシャンが主体になってアレンジするのがすごく楽しかったし、<普通にバンドじゃん!>って思いましたね。私はもともと、バンド上がりですからね。今もバンドのボーカルという意識があるし、バンドが好きなんだと思います。

──アルバムの最後はタイトル曲『死に損ないのパレード』。<生と死の境目でブーラブラ>というフレーズもありますが、こういうことを考えたことがない人って、たぶんいないですよね。

私もそう思うんですよね。私自身も何度か考えたし、周りの人たちもどうやらそういう経験があるみたいで。それを繰り返すなかで、諦めの境地になっていくというか。『死に損ないのパレード』は、黒木渚流の「ゲゲゲの鬼太郎」なんですよ。

──「ゲゲゲの鬼太郎」ですか?

はい(笑)。人間の生活って、けっこう難しいし、しんどいじゃないですか。私の楽曲に共感してくれる人は、生きづらさを抱えている人が多いと思っていて。それを例えるなら、現代の妖怪じゃないかなって。普段は人間の大人にバケて生活してるんだけど、一人になると<ふー疲れた>って本来の姿に戻って。そんな妖怪たちと一緒に百鬼夜行をしたんです。死に損ない同士じゃないとわからないことはいっぱいあるし、みんなで集まると楽しいだろうなと。

──アルバム『死に損ないのパレード』を引っ提げたライブは、妖怪たちの百鬼夜行のイメージ?

私のなかではだいぶ想像できてます。今って、ライブで声を出しちゃダメじゃないですか。もともとライブは、みんなでワーキャー言って、大きな声で歌ったり踊ったりするのが楽しいのに、それを禁じられて。でも、<人間になりきれない妖怪がこっそり夜中に集まってパレードする>というイメージでライブを作れば、おもしろくなるんじゃないかって。

──めちゃくちゃ楽しそうだし、今の時代だからこそ成立するエンターテインメントですよね。

そうだと思うんですよね。これは小説の話なんですけど、最近、リーダビリティを意識していて。

──読みやすさ、ですか?

読みやすさもあるし、次を読みたい、ページをめくりたいと読者を引っ張っていけるような小説を書きたくて。大きいテーマというか、<コレを探したくて読んでいる>というものが読者それぞれにあって、最後まで読むと、それがわかるというか。それをライブにも持たせたいんですよ。一人一人に追いかけたい謎があって、好奇心で引っ張っていけるような。そういうライブを作りたいんですよね、今は。

PRESENT

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