ハルカトミユキ、新しいチームで完成させた新AL『明日は晴れるよ』。周りが絶望的だからこそ、素直に光を歌いたい

インタビュー | 2021.08.31 18:00

ハルカトミユキがフルアルバムとしては約4年ぶりとなる新作『明日は晴れるよ』を完成させた。2019年に2枚組のベストアルバム『BEST 2012-2019 Honesty + Madness』を発表して以降、改めて「2人」という原点を見つめ直し、昨年はEP『最愛の不要品』を発表したが、やはりコロナ禍に伴う活動の制限はハルカトミユキの先行きにも暗い影を落とすこととなった。それでも、2人はあくまでアーティスト主体で必要なパートナーを選ぶという、現代的なインディペンデントに近い活動スタイルへと移行し、これまでのマネージメントと関係性を継続しつつ、新たなレーベルやプロモーターと組むことによって、『明日は晴れるよ』を完成させた。「大衆的な日本のポップス」を意識した音楽性と、「ラブソングと応援歌」という歌詞のテーマも、新たな出会いによる化学反応から生まれたもので、これまでの活動と地続きでありながら、新鮮な魅力を提示する作品となっている。ここに辿りつくまでの道のりについて、ハルカトミユキの2人にじっくりと話を聞いた。
──まずは昨年の活動を振り返ってもらうと、年明けにTriad編成(ドラマーをサポートに迎えた3ピース編成)でのライブを行い、6月にEP『最愛の不要品』を発表しました。あの作品はどのような状況の中で作られた作品だったのでしょうか?
ミユキ2019年にベストを出した後で、モード的にはなるべく自分たちだけでやりたかったというか、原点を振り返るような感じで、なるべく2人だけで曲を完成させたいと思ったんです。結果的には、デビュー当初からご一緒している安原兵衛さんと、あとThe Departmentにアレンジに関わってもらったんですけど、なるべく小さな規模感で、ある意味振り切って、やり切った作品ではありました。ただ、出したはいいものの、ツアーができなくて、不完全燃焼で終わってしまった作品という気持ちもあります。

ハルカトミユキ 「最愛の不要品」 (Official Music Video)

──ベストを出して、改めて「2人」であることと向き合って、その分自由なサウンドメイクにトライした『最愛の不要品』は非常にいい作品だったなと思います。もちろん、コロナ禍で苦労した部分はたくさんあったと思うけど、ポジティブに捉えれば、しっかり自分たちと向き合って、トライをすることができた期間だったのかなって。
ハルカ確かに、自分たちはコロナであろうがなかろうが考えないといけないことが多い時期だったので、もちろん不安もあったんですけど、根本的な部分をちゃんと考えることができて、それが作品にも影響したという意味では、いい期間だったかもしれないです。ベストを出して、「これから何を書いていこう?」みたいなときに、嫌が応にもいろいろ考えなきゃいけない状況になったというか、言いたいことがいっぱいある状況に投げ込まれたのは、歌詞を書く人間としてはよかった。ただ……「なげえな」とも思ってましたね(笑)。
──きっと『最愛の不要品』をリリースするまでは突っ走れたと思うんですけど、ミユキさんも言ってたように、その後のツアーが中止になって、半年くらいで落ち着くと思われたものが、ジリジリと長引いていった。その頃が精神的にも一番きつかったんじゃないかと思うのですが、実際いかがでしたか?
ミユキ自分のことを考える時間があり過ぎて、逆にどうしていいかわからなくなっちゃって。11月に去年の集大成として日本橋三井ホールでワンマンをやったので、「そこまでは頑張る」みたいな感じだったんですけど、そのときもまだ今回のリリースは全く決まってなくて、「この先どうしよう?」みたいな状況だったんですよね。ただ、曲を作るのを止めてしまうと、何のために生きてるのかわからなくなっちゃうから、「とりあえず作る」みたいな感じで。「どこに向けて」とかじゃなくて、自分の存在意義を保つために、とりあえず作って作って……なので、リリースが決まるまでは、ずっと悩みながら作ってた感じです。
──去年の日本橋三井ホールで、ひさびさの有観客でのライブ自体はどうでしたか?
ミユキ単純にライブができる嬉しさと、リリースしたものをやっと生で聴いてもらえるっていう嬉しさがありました。ただ、みんながマスクをしてる状態でライブをするのは初めてで……自分たちのライブはどちらかというとじっくり聴いてもらって、一人ひとりに消化してもらう感じで、みんなでワイワイするっていうのはあんまりない音楽だから、こういう状況はわりと得意分野だと思ってたんですけど(笑)、でもやっぱり、ちょっと異様な感じはして。逆に言うと、お客さんが今まで以上に曲を受け取ってくれた感じも強くて、曲を聴いて泣いてる人がいたりすると、自分たちも救われたなって。

HarukaToMiyuki “Wonderful sense of loneliness” 15/11/2020 LIVE at NIHONBASHI MITSUI HALL

──ハルカさんは去年後半をどんな風に過ごしていましたか?
ハルカ『最愛の不要品』を作ってたときは、怒りや苛立ちが強くて、言いたいことがいっぱいあったんです。私は震災の頃を思い出したんですけど、結局人同士が攻撃し合って、SNS上も荒れてるし、ワイドショーを見てもイライラするだけだし、さらにはライブハウスが攻撃されたり、怒りで日々を過ごしていたので、作品もそれを原動力に作ったところがあって。ただ、それを出した後に、それでも何も変わらないし、ライブもできないとなると、今度は虚しさが来るじゃないですか? 私も11月のライブまではそれをモチベーションに頑張れたんですけど、今は自分だけじゃなく、世の中みんな何となく虚しさを感じているようなムードになっているから、それに飲み込まれてしまって。ライブやリハの瞬間はフッと持ち上がるんですけど、正直それ以外の時間はダウナーな感じになっていて、去年の終わりから今年のアタマにかけてが一番しんどかったですね。
──ダウナーだった時期を経て、新作へはどのように向かっていったのでしょうか?
ハルカ今年に入ってから、「このままだとまた一年これで終わる」と思ったので、自分でいろいろスケジュールを考えて、「こういう風に動きたい」っていう話をミユキにしました。「これができないなら、ハルカトミユキをやらなくてもいい」くらいの気持ちで話をして、そこからやっと今年が動き出した感じでした。
──どんなスケジュールを考えたのでしょうか?
ハルカまだリリースができるかどうかもわからない状況だったんですけど、ライブもできない今、とにかく曲を発信していかないと、社会との接点がなくなってしまうし、ホントにやってる意味がなくなっちゃうから、配信とかCDといった形にもこだわらず、YouTubeに一曲ずつ上げていくとか、売り上げがどうこうは一旦考えずに、とにかく曲を出して行こうっていう話をしました。
ミユキそういうプランの話もしたんですけど、そもそも今の環境のままハルカトミユキを続けて行くことに意味があるのかっていう話もしたんです。これまでいろんな方に協力をしてもらいながら活動してきたけど、今の世の中の状況も踏まえて、「このままでいいのか?」っていう話をして。活動の転機はこれまでに何回もありましたけど、相当シビアに考えないといけないタイミングだなって。
ハルカみんながテレワークになって、会社に行く必要がなくなったり、リモートが主流になって、対面しないでも何かが進むっていうことが加速していく中で、私自身音楽をやっていく形として、昔からのやり方に捉われなくてもいいんじゃないかって、改めて考えたんです。「CDという形にしないといけないのか?」「ライブは目の前にお客さんがいないといけないのか?」「事務所やレーベルがなければいけないのか?」とか、そういうことを一つひとつ考え直すタイミングなんじゃないかなって。

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