【インタビュー】まるで風のように、自由に形を変えながらどこまでも。進化し続けるピアノマン・園田涼の世界へようこそ。

インタビュー | 2021.11.13 12:00

人がいて、ピアノがあって、音楽が生まれる。ただそれだけの営みが、こんなにも心を動かし、心を癒す。園田涼、7年振りのソロピアノアルバム『まるで風のように』。それは今、たとえばコロナ禍でちょっと疲れた心をかかえた人に、そっと差し出してあげたい音楽だ。2022年1月には、東京と大阪で久々のソロピアノコンサートも決まった。まるで風のように、自由に形を変えながらどこまでも。進化し続けるピアノマン・園田涼の世界へようこそ。
──コロナ禍の約2年間を振り返ると、どんなふうに過ごしていましたか。

僕もみなさんと同じように、コロナが起こって仕事が全部キャンセルになったりしましたけど、今思えばそんなに落ち込むこともなく、逆に自分に近しい人との距離が縮まったなというふうには思っています。本当に必要なものが見えてきたり、なくても困らないことがクリアに見えたという面でも、ポジティブにとらえていますね。配信もそうで、家のリビングから月イチで配信ライブをやってみて、そうすると普段なかなか行けない地方に住んでいる方が集まって、励ましのメッセージをいただいたりして、それもすごくありがたい時間だったと思っています。

──基本的に前向きに、ポジティブに。

そうですね。だからこそ、何か月振りで舞台に立って拍手をもらったことは、一生の思い出になるぐらい今でも覚えています。その象徴的なものがデビュー10周年記念コンサート(2021年10月25日、ビルボードライブ横浜)でしたね。デビュー10周年という時期にコロナという大事件が起こりましたけど、一旦立ち止まって「これからどうしていこうかな?」って、すごく前向きな気持ちで考えていた記憶があります。

──その成果が今回のソロピアノアルバム『まるで風のように』だと思います。どんな気持ちで作っていったアルバムですか。

ソロピアノというのは、僕にとって一番身近な音楽のフォーマットで、日常生活で感情が動いた時に出来た曲を日記のように残しているんですけど、そういうものを肩ひじ張らずに録音して出せたことが、この時代にすごくうれしいことだと思っていますし、それに加えて、これからのことを考えて書けた曲もあるので、そういう曲には自分の中でメッセージ性がありますし、どちらもいい感じにブレンドされていたらいいなという思いはあります。

──前作にあたるソロピアノアルバム『YOU』『I』の2枚からは、7年経っていますけど、自身の中で何か変化を感じていますか。

あの2枚を聴いてくれたクラシックピアニストの友達や先輩から、ピアノという楽器の音色のバリエーションや歌い方がもっと出せるはずだということを、ポジティブな意見として言われたんです。そこで、ソロピアノは一番身近ですけど一番怖いジャンルだということを、すごく思ったんですね。あれはバンド(ソノダバンド)が解散した年に作ったアルバムで、正直バンドをやっている頃にはピアノの音色や歌い方まで耳が行かないというか、ビートに乗って、時には割れるような音を叩いて、それがかっこいいこともあると思っていたんですけど、たとえば由紀さおりさんのような、すごく繊細に歌われる歌手の方と共演する時に、もうちょっとピアノという楽器を知らないといけないなということは、あのアルバムを作ったことで思いました。

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──はい。なるほど。

そういうことが起こると、以前には気づかなかったところに耳が行くようになるので。自分の体を通じて、自分の出したい音や歌い方ができたら素敵だろうなというものを、その後は探していたということですかね。本当に、ピアノって奥が深いなと思います。

──いくつか、曲の話をさせてください。「花嫁の手紙」は、3年前にサンドウィッチマン富澤たけし監督作品『花嫁の手紙』のテーマ曲として提供した曲です。

一番少ない音数で紡がないといけない曲だったので、必死に頑張ってピアノを弾いたことを思い出します。最初の3音、4音でリスナーの方を引き込まないと、というのがあったので、すごく気を使ってイントロを弾いた記憶がありますね。この音は10年前には出せなかった音だなと思いますし、それは経験のおかげかもしれないですけど、言ってもピアノって、人間の体を使って鍵盤を押すだけの作業なので、しかるべき姿勢、フォーム、力の入れ方というものを、少しずつ学んで行ってるんだなということも言えると思います。

──「時の配達人さんへ」「四月は桜吹雪の中で」「二月の音楽」の3曲は、作家の江國香織さんと作詞家の森雪之丞さんの朗読会で演奏した曲ですね。

もともとお二人が書かれた詩があるので、注意深く言葉を読んで、お二人の言葉で自分がどういう気持ちの動かされ方をしているのか?ということを、一旦冷静に考えてみようとした思い出がありますね。朗読会のために書いた音楽なので、本番でお二人や役者さんが朗読をして、僕がピアノを弾いて、それが一つの完成形だったんですけど、それがリスナーの方にどう聴こえるかがわからないというか、そこが楽しみではありますね。

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