ASKAが“今のありったけ”が詰まった映像&ライブ音源作品をリリース!この作品について、10月29日に開催される「ASKA Premium Symphonic Concert 2022 -TOKYO-」について話を聞いた

インタビュー | 2022.10.05 18:00

──今回のツアーの構成でポイントにしたことはありますか?

孝三の映像とSATOKOとのセッションのパートで、いかにお客さんをつかんで離さないかということですね。通常のコンサートでは、自分の歌のどこにピークを持ってくるかを逆算して構成するんですが、今回はトータルの景色も含めて、お客さんをつかみたいと考えていました。

──SATOKOさんのドラムソロでは会場内が感動の渦に包まれました。

毎回毎回SATOKOがボロボロ泣きながらドラムを叩いていて、その光景に僕も毎回やられながら歌っていましたから、そうした空気も含めて感じとってもらえる作品になったんじゃないかと思います。

──SATOKOさんのドラムソロの後の曲は、初日の府中では「じゃんがじゃんがりん」でしたが、その後の公演では「なぜに君は帰らない」に変更したんですね。

SATOKOのドラムソロで、お客さんも感動していましたが、僕らも感動していたんですよ。あの独特の空気の中で「じゃんがじゃんがりん」では、気持ちの切り替えが出来ないと感じました。あの雰囲気に対抗できる曲が必要だったので、「なぜに君は帰らない」に変更しました。

──「なぜに君は帰らない」は会場内の空気を一気に変えるパワーを備えた曲です。個々の曲の演奏はもちろんですが、曲と曲とのつながりや流れも素晴らしかったです。「幸せの黄色い風船」は、生の歌と演奏で聴くことによって、今の時代の空気とシンクロして深く染みてきました。

僕たちは(コロナ禍によって)3年間我慢してきましたからね。もともとそういう思いから作った曲ですしね。「幸せの黄色い風船」は2020年9月11日に配信リリースしたのですが、リリース日に合わせて、全国で黄色い風船を飛ばそうという動きがあったんですよ。Twitterで、「私はこの風船を飛ばしました」「僕はこの風船を飛ばしました」「我々はこの風船を飛ばしました」というコメントが並んでいました。

──みんなで思いを共有できる曲がたくさん並んでいて、最近の曲だけでなく、以前からある曲も新鮮に響いてきました。初期の曲「熱い想い」も、今のASKAさんの思いもプラスされて伝わってくるようでした。

「熱い想い」は6枚目のシングル曲だったのですが、歌っていても、古さを感じさせず成立する曲ですね。それはおそらく、流行りに合わせようとしていないからでしょうね。自分の音楽人生の中でも、流行りに合わせようとしたことが、まったくなかったわけではありません。そういう楽曲は完成はしていますが、今、歌おうとは思わないんですよ。「熱い想い」は流行りを意識せずに作った曲なので、今歌えるんだと思います。

──アンコールでの「パラダイス銀河」では、会場内がハッピーな空気に包まれました。

お客さんに楽しんでもらいたいという一心ですよね。先日、光GENJIの35周年のライブを観に行ったんですよ。観るだけのつもりだったんですが、ステージにあげられてしまったので、歌ってきました(笑)。しかも、彼らは「ガラスの十代」を用意していた。“えっ! 聞いてないよ!”と思いましたが、一緒に歌ってきました(笑)。

──「パラダイス銀河」に続いての「WALK」では、胸がいっぱいになりました。

「WALK」は、孝三がCHAGE and ASKAのレコーディングに初めて参加した、思い出深い曲でもあるので、いろいろなことが全部つながっていますね。

──映像作品となることで、メンバーが泣きながら演奏している様子もダイレクトに伝わってきました。作品でありつつ、メンバー全員の気持ちの記録でもありますよね。映像作品として編集するうえで、要望したこと、こだわったことはありますか?

孝三とSATOKOの親子セッションのところでは、編集のやり直しをお願いしました。それぞれの演奏を交互に映すタイミング、遠くで映すタイミングがとても重要だと考えていたので、時間の許す限り、追求しました。いつか、思う存分の時間をかけて、“ASKA'Sカット”を作ってみたいくらいですね。

──菅沼さんがステージ上に一緒にいたんだろうなと感じる映像でもありました。

ツアー中ずっと、孝三は僕らと一緒にいましたね。今回のツアー、本当に楽しかったです。今どき、こんな人数でツアーを回るなんて、あり得ないですよ。移動・宿泊を考えただけでも、大変ですから。でも機会があったら、またこの全員で集まってやりたいです。

──10月29日には、「ASKA Premium Symphonic Concert 2022 -TOKYO-」が東京国際フォーラムAで開催されます。名古屋と西宮公演に引き続いての公演です、このコンサートはどういう経緯から実現したのですか?

もともと福岡のイベントがきっかけでした。「シンフォニックコンサートをやってもらえないか」との話があり、僕にとって特別な場所である福岡から指名だったので、やらせていただくことにしました。その福岡のイベントとは、コンサートタイトルは違いますが、福岡開催がきっかけとなって、名古屋、西宮へと広がり、さらに東京でもやろうということになったのが経緯です。

──京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団と横浜少年少女合唱団との共演になります。

子どもたちは、僕のことを知らないわけですよ。子どもたちのご両親や合唱団の指導者の方々は、僕らの音楽にふれた世代なので、喜んでくれていますね。

──子どもたちの合唱と一緒に歌うのは、いかがですか?

合唱団が入るのは「歌になりたい」だけなんですが、「歌になりたい」はもともと楳図かずおさんの『漂流教室』の世界観を歌にした作品なんですよ。なので、子どもたちと一緒に歌うことは、とても大きな意味があると感じています。

──曲の本質に合致した共演と言えそうですね。

全部、後付けかもしれませんが、後からすべてがつながってくるというか。今回も流れの中で実現した共演なんですが、“そういえば、『漂流教室』につながるなあ”って気が付くという感じでした。狙ってやっているわけではなくて、つながってくるという感覚です。

──管弦楽団との共演で、指揮者は栁澤寿男さんですが、どのようなやり取りをされたのですか?

栁澤さんとは初めてだったんですが、力強さ、繊細さを兼ね備えたうえに、華麗な指揮をされますよね。そして何よりも、僕がオーケストラの方をリスペクトするように、栁澤さんがボーカリストとしての僕を認めてくることが伝わってくるので、相乗効果が起こっていると感じています。とてもいい関係を築けたうえで、歌わせてもらっています。京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団の演奏で、歌う気持ちをさらに押してもらっていますね。

ASKA Premium Symphonic Concert 2022[long ver.]

──バンドとストリングスとの共演、管弦楽団との共演など、さまざまな形態でのステージに立つことによって、歌い手としての可能性が広がっている部分はありますか? ASKAさんはどう感じていますか?

刺激をもらっていることは間違いないですよね。今後、何を思いつくかは、わかりませんが、思いついたことはどんどんやっていこうと考えています。2005年に初めてオーケストラと共演したときには、どのようなステージになるのか、僕も含めて、誰にも予想がつかなかったんですよ。でも、とてもいい化学変化が起こりました。そして、そのステージを観た方々の情報の拡散によって、いろいろなアーティストがやることになり、さらに垣根が低くなり、オーケストラの皆さんの感覚も変わってきたと思うんですよ。歌というリード楽器を受け入れて、演奏してくれるようになってきました。

──そういった変化も肌で感じてきたのですね。

もともとはクラシックの人たちから見ると、ポップスというのはアウトローなんですよ。クラシックとポップスでは歴史が違うでしょう。でも近年になって、クラシックとポップスを隔てていた間仕切りがなくなってきました。“今、自分たちは音楽で何をしたいんだろう”“お客さんを感動させたいよね”というところに、ミュージシャンの気持ちが向かっていると感じています。

──震災やコロナ禍など、困難な状況だからこそ、音楽の本質が見えてくる面もありそうですね。

今はミュージシャンたちが“自分たちにできる演奏に集中しよう”と心がけていることを強く感じます。個人的にも、ともかく思いついたことはなんでもやっていこうというスタンスになっています。自分の歌える時間があとどれくらいあるのか、わからないじゃないですか。やりたいと思ったことは、これまで以上に、積極的にやっていきます。

公演情報

DISK GARAGE公演

ASKA Premium Symphonic Concert 2022 -TOKYO-

2022年10月29日(土) 東京国際フォーラム ホールA

出演:ASKA
指揮:栁澤寿男 
管弦楽団:京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団
合唱団:横浜少年少女合唱団
※来場者特典プログラム付

チケット一般発売日:2022年9月24日(土)10:00

RELEASE

「ASKA premium concert tour-higher ground-アンコール公演」

Blu-ray+Live CD

「ASKA premium concert tour-higher ground-アンコール公演」

(DADA label)
2022年10月5日(水)SALE
※Blu-ray&2Live CD

【収録曲】
01.Overture
02.塗りつぶしていけ!
03.着地点
04.幸せの黄色い風船
05.笑って歩こうよ
06.僕のwonderful world
07.not at all
08.NO PAIN NO GAIN
09.草原にソファを置いて
10.ID
11.PRIDE
12.歌になりたい
13.はじまりはいつも雨
14.なぜに君は帰らない
15.じゃんがじゃんがりん
16.百花繚乱
17.higher ground
18.月が近づけば少しはましだろう
19.僕の来た道
20.We Love Music
ENCORE
01.パラダイス銀河
02.WALK
03.熱い想い
  • 長谷川 誠

    取材・文

    長谷川 誠

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  • 撮影

    新井秀幸

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