KIRINJI、自主レーベルからの第1弾アルバムは素敵な予感を感じる『Steppin’ Out』、新作を堪能できるツアーについて堀込高樹に訊く

インタビュー | 2023.09.06 18:00

──今年4月に自主レーベル・syncokinを設立されましたが、どのような思いがあったのでしょうか?
インディーズであれば、例えば「曲ができました」となったら、こちらの裁量で時期なども自由にリリースができる。あとは、CDも引き続き出していくんですけど、今やCDってデータが入った、ただのプラスチックになりつつありますよね?それでもCDを買ってくださる方が、まだたくさんいて。だったら、物として魅力のある形で出したいと思ったんです。紙ジャケットにしたり特殊パッケージにしたり、インディーズであれば、そういうやりくりがこちらでできる。そういう自由度がいいなと思って、レーベルを設立する運びになりました。
──そして新レーベルの第1弾作品となる、アルバム『Steppin’ Out』が完成しました。2020年に始まったコロナ禍という暗闇を経て、ここから明るい未来へ飛び出していくような、希望の扉を開けて駆け出していくような、そんな作品に感じました。
嬉しいですね。いつもはテーマを決めずに制作を始めるんですけど、昨年6月に出した「Rainy Runway」の一節に「素敵な予感しかない」というフレーズがあって。それを元に『素敵な予感』というタイトルのアルバムを作ろうと思ったんです。曲はメロディアスで明るいサウンドが良いな、とか。歌詞は最終的にポジティブなメッセージが込められている内容に着地させよう、とか。あからさまにハイテンションな曲はないと思うんだけど、全体的なムードとして、聴いた人の気持ちが上向く感じというのかな。そういうことを心がけながら曲も歌詞も作ったから、結果的にそういうムードがアルバム全体に出ているのかなと思いますね。

──勝手な妄想かもしれないですけど、1曲目「Runner’s High」とラストの「Rainy Runway」は対になっていると思いまして。
確かに、“踏み出して、今度は駆け出した”という物語の続きな感じはありますね。そこは意図的にそうしたわけじゃないですけど、結果的に連続性を感じますよね。それがちゃんと1曲目とラストに来ているのが、良い感じに収まったと思います。
──振り返ると、東日本大震災のチャリティーシングル「あたらしい友だち」とか、コロナ禍でリリースした「再会」とか、世の中で起きた悲しい出来事に対して、高樹さんは音楽で聴く人の気持ちを軽くしたり、前を向くようなアプローチをされてきました。そんな中、今作はより言葉の持つ光の強さを感じたんですよ。なんでだろう?と考えたら、それだけ言葉選びとか紡ぎ方が、いい意味で分かりやすくなっているからかなと。
そうかもしれないですね。「なんでか?」って聞かれたらちょっと分からないですけど、確かにその感じはあるかもしれないです。言葉の紡ぎ方とか伝わりやすさみたいなことは、やっぱり近年意識しながら書いてるところがあるんですよね。「うまいことを言う」とか「巧みな比喩」で見せるよりも、グルーヴと一体になった時に、ちゃんと耳に入ってくることが大切だと思っていて。つまり音とグルーヴにふさわしい言葉を選ぶ、ってことですね。だから漢文みたいな歌詞はもう書かない、とは思っていて。それが伝わりやすさの要因じゃないかなと思いますね。

──「Runner’s High」で言うと、僕は「太陽が脱皮する 今日の日が始まる 身体中の血が駆け巡っているんだ」という歌詞が好きで。“新しい何かが始まる喜び”を、肉体的な表現で書かれていて素晴らしいと思いました。
文章としてはとても平易だし、「体中の血が駆け巡っている」という表現は他の曲でも僕は書いているんですけど、いずれも実感なんですよね。朝日を浴びるだけでパーっと体が起きる感じってあるじゃないですか。その感覚を素直に歌っている。太陽が昇ってくる時って、やっぱり皮が剥けてパーって、言うなればライチとか葡萄を剥いた時の感じなんですよ(笑)。
──分かりやすい。
それを僕はいつも感じていて。過去の曲にも太陽を果物に例えた歌詞があったから、そういうイメージも繋がっているのかもしれないですね。
──後半にかけての、演奏の盛り上がり方も素晴らしかったですね。
あれは、ドラムの伊吹(文裕)くんがすごいっていうね(笑)。あと、キーボードの宮川(純)くんも素晴らしいプレイをしてくれて。シンセの後ろのアンサンブルとか、何度も音を重ねてもらいました。「Runner’s High」に関しては、先に曲と構成が思いついたんですね。ゆっくり始まってテンションがだんだん上がっていく構成が、ジョギングをしている時の感覚に近いと思ったんです。僕は、外は走らなくて大体ジムのランニングマシーンですけど、いつもゆっくりなペースから始めて、ちょっとずつ速度を上げていって、30分ぐらいやっているのかな?そうすると、初めはかったるいなと思って歩き出していたのが、だんだん軽い走りになって、最後は結構なスピードになるんだけど、そのプロセスを経て走り終わる頃には、身も心もほこっとなっている。その感じが、この曲の構成と似てると気がついて。じゃあ、そのことを歌にしようと。

──2曲目の「nestling」についてですが、KIRINJIの楽曲でこのビート感は珍しい気がしました。
そうそう、やったことがないんですよ。どうしても16ビートとか、8ビートのミドルテンポになりがちなので、アップテンポの曲も作りたいと思って。この感じのビートって、最近よく聴くと思うんですよね。The Weekendもやっていたし、Harry Stylesもやっていて、じゃあ俺もやりたいと(笑)。「a-haの『Take On Me』みたいだね」と言われることが多いんですけど、リズムもそのものはThe Knackの「My Sharona」から持ってきているんです。ただサウンドが全然違うから、あんまりそう聴こえないかもしれないんだけど、それを自分になりにエレクトロニクスをいっぱい使って、こういうポップスに仕上げました。
──歌詞の内容としては、主題歌を務めているドラマの話に沿って書かれたんですか?
そうですね。『かしましめし』というドラマは、社会人にはなったけど、思うようにキャリアを築けないとか私生活がうまくいかないとか、色々な悩みを抱えている若者3人が、食卓を囲んでお互いの傷を癒しながら成長していく内容で。まさにそれを歌詞にした感じですね。大人になったけれども、大人になりきれない感じ。大人でも“雛鳥の巣”みたいな場所が必要なんだっていうことですね。
──ドラマの書き下ろしということですけど、アルバムの曲として聴いた時に、「Runner’s High」と呼応しているように感じました。
それはなんでですかね?
──なんか、空に飛んでいく印象なんですよ。
あ、そうですね。「nestling」は飛翔するイメージがあったし、「Runner’s High」も小さい飛翔を繰り返してるみたいなことですもんね。こっち(「nestling」)も空のイメージがあるから、歌詞のイメージに繋がってるかもしれないですね。

公演情報

DISK GARAGE公演

KIRINJI TOUR 2023

2023年11月17日(金) 宮城・仙台Rensa
開場18:30/開演19:00
2023年11月23日(木祝) 福岡・福岡DRUM Be-1
開場17:30/開演18:00
2023年11月24日(金) 広島・広島CLUB QUATTRO
開場18:30/開演19:00
2023年12月09日(土) 北海道・札幌PENNY LANE 24
開場17:30/開演18:00
2023年12月14日(木) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
開場18:30/開演19:00
2023年12月15日(金) 大阪・大阪BIGCAT
開場18:15/開演19:00
2023年12月19日(火) 東京・EX THEATER ROPPONGI
開場18:30/開演19:30
2023年12月20日(水) 東京・EX THEATER ROPPONGI
開場18:30/開演19:30
2023年12月24日(日) 沖縄・桜坂セントラル
開場16:30/開演17:00

【チケット】
スタンディング 8,800円(税込)
※ドリンク代別
※未就学児入場不可

■チケット一般発売日:2023年92()10:00

KIRINJI 弾き語り ~ひとりで伺います

2023年09月16日(土) 岩手(盛岡)・岩手県公会堂 21号室
開場17:00/開演18:00
2023年09月17日(日) 秋田・能代市旧料亭金勇 大広間
開場 17:30/開演 18:00
2023年09月18日(月祝) 青森・ねぶたの家 ワ・ラッセ
開場 17:00/開演 18:00
2023年10月07日(土) 山口・山口県旧県会議事堂
開場 17:00/開演 18:00
2023年10月08日(日) 島根(松江)・興雲閣
開場 17:00/開演 18:00
2023年10月09日(月祝) 鳥取・湯梨浜 東郷温泉・湖泉閣 養生館
開場 16:00/開演 17:00
2023年10月14日(土) 三重(伊勢)・賓日館
開場 18:00/開演 18:30
2023年10月15日(日) 滋賀・愛荘町・蔵元 藤居本家 けやきの大広間
開場 15:00/開演 16:00
2023年10月19日(木) 神奈川・SUPERNOVA KAWASAKI
開場 18:45 / 開演 19:30

【チケット】
前売:5,500円(税込)
※整理番号順入場・自由席(神奈川公演のみ指定席)
※制限枚数:各公演お1人様1申込4枚まで
※年齢制限:3歳以上有料(3歳未満のお子様は大人1名につき1名まで膝上に限り無料。座席が必要な場合はチケット必要)

■チケット発売日:2023年7月30日(日)10:00〜
■チケット販売URL(SKIYAKI TICKET) :
https://ticket.skiyaki.tokyo/event_groups/kirinji_2023/kirinji_2023


詳細はこちら

RELEASE

『Steppin’ Out』

ALBUM

『Steppin’ Out』

2023年9月6日(水)SALE

[通常盤]SCKN-0001 ¥3,850(税込)
[数量限定盤]SCKN-1001 ¥11,000 (税込)

≫各種音楽配信サイトはこちら
  • 真貝聡

    取材・文

    真貝聡

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    • instagram
  • 樋口隆宏

    撮影

    樋口隆宏

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