結成25周年、ついにFUNKISTが日比谷野音の初ワンマンに挑む。音楽的にはボーダーレス、精神的にはフリーダムな姿勢を貫いて、音楽と人生を重ね合わせながら走り続けた25年。8年振りのニューアルバム『Pride of Lions-Heart-』『Pride of Lions-Beat-』は、全20曲の中にバンドの過去、現在、未来を詰め込んだ力作だ。順風満帆では決してなかった、波乱万丈なバンドライフの中で育んだ音と言葉を詰め込んだ、唯一無二の音楽だ。
バンドは今、過去の楽曲を振り返るツアーを経て、5月24日の日比谷野外大音楽堂でのライブを目前に、結束力も気力も最高潮。一夜限りのスペシャルなライブに挑む染谷西郷、宮田泰治、ヨシロウの3人に、彼らの地元・北区王子にある練習スタジオを訪ねて話を訊いた。
バンドは今、過去の楽曲を振り返るツアーを経て、5月24日の日比谷野外大音楽堂でのライブを目前に、結束力も気力も最高潮。一夜限りのスペシャルなライブに挑む染谷西郷、宮田泰治、ヨシロウの3人に、彼らの地元・北区王子にある練習スタジオを訪ねて話を訊いた。
──ずばり聞きます。25年バンドを続けてきた動機って、何だと思いますか。
宮田何ですかね?最初は期間限定バンドだったんですけど…。
染谷宮田がバークリー(音楽大学)の夏休みで帰ってくる、3か月限定でやろうというので始まったバンドだったんで。3か月目にライブして解散というつもりが、「もったいないから続けようか」って、僕とヨシロウが中心になってバンドを続けて、それが結局25年続いちゃった。
ヨシロウ例えばかっこつけたい、モテたい、売れたいとか、動機がそこじゃなかったというところに何かあるんじゃないかなとは思っていて。 (今のメンバーに)共通してるのは、染谷西郷の南アフリカのルーツを伝えようとか、世界を変えようというメッセージを発信することを最初の段階からやっていて、それが今に至っても変わってなくて、音楽はかっこつける手段とかお金を稼ぐ手段とかじゃなくて、「祈り」のようなものであるという立ち位置に自分もどんどんなってきていて、「FUNKISTはこういうものだ」というものがあるんですね。「FUNKISTとしてメッセージすることは、FUNKISTしかできない」という思いがすごく強くて、それがあるから続いてるんじゃないかと思うし、そこが誇りだなと僕は思ってます。FUNKISTがFUNKISTであるから続いたんだと思います。
──素晴らしいです。
ヨシロウみんな「25年ってすごいね」と言ってくれるんですけど、ただ好きだからとかじゃなくて、FUNKISTにはやるべきことが常にあったから、ということなのかな?と思います。このメンバーが好きだからとか、そういうことよりももっとすごく高いところで音を鳴らしているような気がしてます。
染谷でもその根っこの部分に、ガキの頃から一緒にいるということが根付いているんだなとは思いますね。子供の時から同じ街で育って、同じ学校に通って、同じ景色を見てきてるから、淀みがないというのもあるんだろうなと思います。
──それが、今この練習スタジオがある東京都北区王子。
染谷出身は練馬区なんですけど、バンドをやり始めた時に王子の駅前で母親がバレエ教室を運営してて、そこが夜8時に終わって、ビルが11時に閉まるから、8時から11時の間だけリハーサルできるんですよ。タダでリハができるから、みんな王子に引っ越してきて。
ヨシロウすぐ近くにカレー屋とコンビニがあって、僕はカレー屋でバイトしてて。
染谷隣のコンビニで宮田がバイトしてて、朝、二人で掃除しながら「今日も8時からスタジオな」って(笑)。
ヨシロウしかもみんな同じマンションに住んでたから。王子駅と、住んでたところと、バイトと練習場と、今いるところと、全部一直線で繋がってます。
染谷それがライブの中でも瞬発性を生むというか。バン!と音を鳴らした瞬間とか、俺がMCで何かひとこと言った時とかに、「あの日のあれね」という同じ景色がパッと見られる、それはやっぱり強みだろうなと思いますね。
──そんなFUNKISTの8年振りのニューアルバム。なんとフルアルバムを2枚同時リリースです。
宮田8年ぶりと聞いて、自分でびっくりしてます。でも確かに、曲を見ると思い出いっぱいの曲だらけなので、思い出アルバムですね。初めは、1枚に絞ろうという話もあったんですけど。
染谷13曲ぐらいに絞ってアルバム1枚にするか、20曲で2枚組にするか。自分は2枚組にしたくて、宮田に「次のアルバムは2枚組の20曲入りで行こうと思う」と言ったら、「2タイトル同時リリースが良くない?」って宮田が言い出して、あんまりそういうことを言う人じゃないから、珍しいなと思ったんですよ。で、ヨシロウにも「2枚組を作ろうと思うんだけど」と言ったら、ヨシロウも「2枚同時リリースがいいと思う」って言うんですよ。この二人は性格が違うから、意見が合うことがほとんどないんですけど、珍しく二人の意見が合って、ちゃんと理由があってそうしたいと言ってるから、じゃあそうなんだろうなと思って、2タイトル同時リリースという形にしました。
ヨシロウアルバムって、今はあんまり曲順を気にせずに聴くって言うじゃないですか。でも作る側として、ただ並べただけというわけにはいかないんですよね。今までのアルバムも、この曲があってこの並びがあって、一つの物語がアルバムになってきたので、「これだけ曲数があれば物語が2個作れるんじゃないか」と。一つの物語の続きじゃなくて、2個にできないかな?と思ったのが最初のきっかけでした。
染谷その上で、「Heart」にハートフルな、心に寄り添ってくれるような楽曲を入れて、「Beat」にリズムとかビートが強くて面白い曲を集めて、HeartとBEATが合わさると「Heartbeat」=心臓の音になって、25年間FUNKISTが心臓の鼓動を止めずに生きてきたことを表現できたら面白いねということで、『Pride of Lions-Hert-』と『Pride of Lions-Beat』にしました。
──メインタイトルの「Pride of Lions」は、どこから出てきた言葉ですか。
染谷これは5月24日の日比谷野音のタイトルとして先に決まったんですけど、FUNKISTが25周年記念ライブをやるということで、この25年の中で僕らの音楽と出会った人たちが、結婚して子供ができたり、ライブに来られなくなった人もいる中で、そういう人たちがみんな集まることの総称ってないかな?と思った時に、出てきたのが「ライオン」だったんですね。自分たちはずっとライオンをバンドのロゴにしてきたし、それで「ライオンの群れ」って英語でなんて言うんだろう?と思って検索したら、「Pride of Lions」が出て来て、ライオンって小さな獲物でも大きな獲物でも、狩りのやり方を変えないんですよ。そういう「自分の生き方を変えない」という信念をPRIDEという言葉に託して、「Pride of Lions」にしました。25年間、自分たちなりにライブを主戦場にして、お客さんが一人のライブハウスだろうと、野外フェスだろうと、信念を変えずに自分たちらしく戦ってきたということとも重なるし、それが今大きなライオンの群れになって、みんなで野音に集合しようという意味をタイトルに込めました。
──アルバム2枚で20曲。どんな手ごたえを感じてますか。
染谷2017年に『BORDERLESS』というアルバムをリリースして以降の、FUNKISTの歩みがぎゅっと凝縮されてる作品だと思います。例えば「日出づる」のサビはシンガロング(合唱)なんですけど、コロナ禍でお客さんが声出し禁止の時に、シンガロングしないと成立しない曲をあえて作って、「いつかコロナが明けた時にこの曲を大声で歌おうな」ってファンの人と約束して、その日を待ちわびる気持ちで作った1曲なので、コロナが明けて、みんなで「日出づる」を大合唱できた時は本当に震えました。「Bright」という曲もそうですね。コロナ禍でみんな鬱積してて、SNSに誹謗中傷が溢れている中で、それによって大切な知り合いが天国に旅立って、とか…この8年間にFUNKISTが見てきたもの、歩いてきたものが曲になって、それが全部集まってるから、とてもグッとくるアルバムができたなという感じがします。
──宮田さん、特に思い出深い曲は?
宮田そうですね、「キラキラ」という曲ですかね。
染谷このアルバムのために、宮田が作曲したインスト曲です。
宮田3年前に子供が生まれて、あやしている時に鼻歌で歌っていたメロディを曲にしたんですけど、生まれたばかりの子供が、レコーディングする時には2歳になっちゃったので。最初に入ってる「ワン、ツー・スリー」というカウントは娘の声で、曲を作った時にはしゃべれなかったんですけど、今回だから入れられたというのが、親としては自己満です(笑)。
染谷本当に親バカだなと思ったのが、CDのクレジットって、いつも宮田がまとめるんですけど、「キラキラ」のクレジットに「MIYATA DAUGHTER(3歳)」って自分で入れてる(笑)。
宮田おまえだって、娘の泣き声を入れただろ(笑)。「Hello」という曲で。
染谷入れました(笑)。でもクレジットには入ってない。
宮田でも入れたいじゃん!
──ここは宮田パパの勝ちということで(笑)。ヨシロウさん、思い出深い曲はありますか。
ヨシロウ一曲一曲に思い出があるんですけど。「What a beautiful morning」は、8年よりもっと前からあった曲で、すごい古い曲だなという感じもするし、今だから完成したという感じもするし。
染谷2015年にメンバーが脱退して、バンドでの活動ができないので、アコースティックライブを月に1回やってた時に、「毎月1曲新曲を作る」という中で作ったのが「What a beautiful morning」。ライブで戦っていく曲を中心に考えてきた中で、アコースティックサウンドの曲は後回しになってたんですけど、コロナ禍でライブができなくなった時に、純粋に「どういう曲を作りたいか?」と思って、これを入れたいなと思ったんだと思います。
ヨシロウFUNKISTのライブって、タオル回して飛び跳ねて、みたいなイメージだと思うんですけど、座ってしっとりやるのも元々嫌いじゃなくて、それも出せるようになってきたんじゃないかな。今回はそういう曲もちらほらあって、「Sleep Talking」とか、実は得意な部分ではあるんじゃないか?とは僕は思ってます。
──染谷さんは、どの曲に思い入れがありますか。
染谷今回のリード曲として、『Pride of Lions-Beat-』に入ってる「流れ星」という曲があって、FUNKISTはずっと嘘をつかずに真っすぐに、自分たちの心の真ん中にあるものを表現することにこだわってやってきたんですけど、ちょっと角度を変えて考えてみると、例えば親が死んだ日にライブがあった時に、悲しい顔でライブするのか?というと、やっぱりそういう日も「今日は最高だよな!」って言ってきたんですよ。俺たちはめちゃくちゃ嘘つきなのかもしれないとも思っていて、それって何だろう?と思った時に、今まで世界中を回ってきて、エイズで亡くなる子供たちを目の前にして歌ったり、腹をすかせて喰うものもない子供たちの前でも歌ったけど、命は救えなかったとか…いろんな経験がある中で、「この5秒だけは絶対笑わせてやろうぜ」ということに賭けてやってきたバンドではあるから。自分たちがどんな状況であれ、「笑顔でいてほしい」ということがすごく大事なんだろうなと思った時に、「俺らは嘘をつくんだ」という曲を初めて書いてみようと思ったのが、「流れ星」という曲です。歌詞の内容は、一人の女の子が「これは私が拾った流れ星なの」と言って、僕はその子から流れ星をもらった。たぶん石ころだろうけど、俺らはこれを流れ星なんだと歌い続けて、いつの日か「あのバンドのボーカルは流れ星を持ってるらしいぜ」ってみんなが信じるようになる日まで歌い続けたいんだ、という曲ですね。それは25年経ったから書けたのかもしれないと思うし、貫いてきたこととか、信じたかったこと、今も信じていることが、きっとそういうことなんだろうなと思います。