PLAGUES・深沼元昭の「ミュージシャン宣言」。3ピースの醍醐味を改めて感じる作品制作、ツアーへの高揚感を語る。

──そういう意識を音楽化するということに関して、冒頭の深沼さんが言われた「順番」が例えばGHEEEだったりMellowheadだったとしても「ミュージシャン宣言」的な内容の音楽を作っていたと思いますか。それとも「青春のバンド」と言われたPLAGUESの作品だったから、深沼さんのなかのそういうすごくベーシックな意識が出てきたんでしょうか。

深沼　自分のパーソナリティーに近いのは、やっぱりソロ・プロジェクトのMellowheadだと思うんです。
PLAGUESの場合は、主人公が僕とは別にいる気がしますね。ああいう世界で、ずっとああいう行動をとってきた人というのがいると思うので、それはすごく尊重したいというか、そのストーリーを守りたいという思いはすごく強いんです。だから、そのストーリーになぞらえて僕の思いを出してる感じです。バンドの仲間がいて、PLAGUESのあのイメージを好きな人たちがいて、そういう人たちのなかにあるバンドのビジョンというかPLAGUESのイメージを守るうれしさというものが僕のなかにはあるんですよ。もちろん、全曲とも僕が作詞／作曲してるわけですけど、でもPLAGUESのためにやってるという思いもあるんです。だから、自分の思いもそこに投影して伝えたいと思うんです。PLAGUESの音楽の主人公に「オレは、こういうふうに思ってるんだけど、オマエからそのことを言ってくれないか」と伝えてる感じというか。そのほうが、むしろ素直に自分が思ってることを表現できるという部分もあるように思うし。

3人で四苦八苦しながらやってるところにグッとくるんじゃないのかな。ツアーではアルバムの曲は多分全曲やりますので楽しみにしていてください。

──ちょっと話の角度を変えて、林さんが入ってからのことも聞かせてください。林さんが入ってからのPLAGUESサウンドの個性ということについて、深沼さんはどんなことを感じていますか。

深沼　単純に、ライブが変わってきましたよね。それは、林くんのおかげというだけじゃなく、僕自身の変化ということもあるんですけど。

──どういう変化ですか。

深沼　PLAGUESが一度休止するまでのライブについては、ライブをやるのが心から楽しいという感じではなくて、終わったら“いいライブだったな”と思えるという感じだったんですよね。ライブが始まる前はいつでもプレッシャーが大きくて、全然楽しくなかったんです。
最初からワンマンはクアトロだったし、それよりも小さなライブハウスでライブを重ねるということをやってなかったんですよね。だから、当時は“いきなりこんな大きな会場で大丈夫かな”みたいなプレッシャーがあって、それは日比谷野音でワンマンをやるまでずっとありました。
それに、僕自身のつもりとして、PLAGUESを始めるときに別にボーカルを入れるつもりだったから、でも僕が歌う形でどんどん進んでいって、僕のなかでは“ギターはこういうふうに弾きたいし、歌はこんな感じで歌いたい”というイメージがあるんだけど、それは同時にはできないよっていう。
つまり、自分の理想に全然追いつけていなくて嫌だなあという思いのなかでずっとやってたんですけど、でも休止期間に佐野元春さんや浅井健一さんのツアーに参加させてもらってやっていくなかで、思ってたよりも自分はライブが好きだなということに気づいたんです。基本的に同じセット・リストを毎日違う場所で演奏するということが楽しいなと思えるようになったんです。
それにGHEEEとして小さなライブハウスでもたくさんやったりして、ライブに対する意識がすごく変わったんですね。そういう自分の意識の変化もありつつ、林くんというとても素晴らしいプレイヤーが入って、一緒に鳴らしてみたら、単純にいい3ピース・バンドだなと思えたんです。

──それは、PLAGUESの面白さ、個性というのはやはり3ピースという編成にあると深沼さんは考えているということですか。

深沼　林くんが入って、初めて3ピースがいいと思いました（笑）。前は、3ピースでライブをやるのはしんどいなという感じが強かったんですよね。

──もうひとつ音を出すパートがいてほしい、ということですか。

深沼　そうです。でもいまは、足りないところも“なんとかするよ”と思うんです。“ここは、3人だからこれでやるしかないな”っていう取捨選択をやるのが楽しくなってきましたね。そこが、全然違います。

──つまり、3ピース編成の醍醐味は取捨選択にあるということですか。

深沼　そう思います。ただ、絶対に3人でできるような、破綻なくやり通せるような曲をうまく作ってやっても、それはそれで楽しくないんですよね(笑)。
やっぱりソングライターなり演者の頭の中にもっと広い世界が広がっているものを、なんとか3人でやれるように四苦八苦しながらやってるというところにグッとくるんじゃないのかなあと思いますね。
もちろん、休止する前のPLAGUESもそういうことをやってたんだとは思うんですが、でも当時の僕はただ「ひいこら」言いながらやってたんですよ(笑)。いまも「ひいこら」言ってるんですけど…、でもそれが楽しめてるっていう。それに、林くんが入ってきて、彼はトライセラトップスという3ピース・バンドを長くやってるから、こうすればなんとかなるんじゃないかというツボを何も言わずにさりげなく押さえてくれてたりするんですよね。何かの曲をやってて、いつの間にか楽になってると思うことがあるんですけど、そういう場合はたいてい林くんがうまくやってくれてるんですよ。

──ちなみに、今回のアルバムでそうした3ピースの面白みを感じてもらえるんじゃないかなと思うのは例えばどの曲ですか。

深沼　今回はそういう曲が多いですけど、１曲あげるとすれば「Knack」ですかね。というか、「Knack」と言いたいんですが、この曲はこれからなんですよ。

──というのは？

深沼　まだ、このリフを弾きながらうまく歌えないんです(笑)。最初はもっと簡単なリフだったんですけど、作っていく間に、一緒に演奏してて楽しい方向にどんどん変わっていくので、結果大変なことになっちゃったんですけど(笑)、でもライブでやる頃には3ピース・バンドとして一番いい感じに仕上がる曲になるんじゃないかと思ってます。
ツアーでは、「knack」も含め、アルバムの曲は多分全曲やりますから楽しみにしててください。
 
■PLAGUES”Fool on the freeway” (Official Music Video)