山田洋次と本広克行が、映画『砂の器』シネマ・コンサートを語る。「シネマ・コンサートにこんなにぴったりの作品はありません」と激賞

インタビュー | 2018.03.22 18:00

映画

日本映画史に燦然と輝く不朽の名作『砂の器』(1974年)のシネマ・コンサートが、4月に東京と大阪で開催される。同公演は劇中のセリフや効果音はそのままに音楽パートをオーケストラが生演奏する映画上映+コンサートの複合ライブ・イベント。昨年夏に東京で行われた公演の再演となる。来るシネマ・コンサート開催に際して、同作で橋本忍と共に脚本を手掛けた映画監督の山田洋次に、自身が影響を受けた作品に『砂の器』をあげる映画監督の本広克行が迫る。
本広監督は映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)で、『砂の器』のキーワードでもある「東北訛りのカメダ」を使い、老練な刑事(いかりや長介)と若い熱血刑事(織田裕二)のコンビは、『砂の器』の丹波哲郎と森田健作の設定にも通じ、同作へのオマージュを捧げている。

本広克行踊る大捜査線チームって邦画が大好きで。で、『砂の器』をちょっと頂いちゃいまして(笑)。
山田洋次あの黒澤明監督も言っていたけど、色々な映画をいっぱい見て、どんどん真似しなきゃダメだよって。僕も一生懸命真似しますよ、このシーンをどう撮ろうか迷っている時には。今度の新作(5/25公開『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』)では、黒澤さんの『生きる』(1952年)の志村喬と小田切みきとの喫茶店での場面を参考にしてみました。志村さんが階段降りるシーンを西村まさ彦で(笑)。
本広エーッ!ネタバレしちゃっていいんですか!
山田昔、『幸福の黄色いハンカチ』(1977年)で喧嘩したことがあるんだよ。ポスターは”黄色いハンカチで”って言ったら、そんなのネタバレになるからダメだって宣伝部が言うからね。「そんなことでつまらなくなる映画なんか作ってないよ!」って言ってやったもの(笑)。

──『砂の器』は、ラスト40分で流れる組曲「宿命」に象徴されるように、音楽なくして語れない作品だ。本広監督も、『交渉人 真下正義』(2005年)ではラヴェルのボレロ全編をまるごと使っていたり、新作『曇天に笑う』(3/21公開)では冒頭からサカナクションを起用するなど、音楽にはこだわりをみせる。
本広映画学校でシナリオ7割、撮影3割と習ってきたんですけど、僕はそこをシナリオ5割、映像+音楽5割で考えていて、撮影中から頭のなかでは自分のイメージする音楽がガンガン鳴っているんです。

山田僕も大事なシーンでは、自身でイメージしたCDを撮影現場で鳴らして、それにあわせて芝居してもらうこともありますよ。マーラーとか、ニーノ・ロータとか。『砂の器』のシナリオでは、秀夫少年が走り出すシーンに「ここにシンバルが鳴る」と書きこみましたよ。
本広僕も『交渉人 真下正義』という映画で、ラヴェルのボレロを流して最後にシンバルを鳴らしてその瞬間に捕まえるというネタをやりました!
山田『砂の器』の撮影前に芥川也寸志(同作での音楽監督)さんのところへ相談に伺ったときにね、芥川さんが、「宿命」っていうのは19世紀のタイトルだよ。現代音楽はこんなタイトル使わないんだ、ベートーヴェンじゃないんだからと笑って仰っていたのをよく覚えてるなぁ。

公演情報

DISK GARAGE公演

映画『砂の器』シネマ・コンサート 2018

2018年4月22日(日)NHKホール・東京
16:00 開場 / 17:00 開演
お申し込み・詳細

指揮:和田薫
演奏:日本フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:近藤嘉宏

松本清張原作、日本映画史に燦然と輝く大作『砂の器』のシネマ・コンサートの再演が決定!
“シネマ・オーケストラ・コンサート”とは、オリジナル映画のセリフや効果音はそのままに、音楽部分のみをフルオーケストラが生演奏をする最新のライブ・エンタテインメント。原作者松本清張をして「原作を超えた」と言わしめた日本映画界に燦然と輝く傑作「砂の器」。昨年8月に開催された初演では、世代を超えた満場の観客が感動の涙に包まれ、特にラスト40分のコンサートシーンでは映画と現実の会場がリンクする臨場感に、多くの観客がシネマコンサートの醍醐味を体感したに違いない。映画の枠を飛び越えた今話題の“シネマ・コンサート”スタイルでお届けする奇跡の感動体験!是非この機会をお見逃しなく!

【上映映画】
上映作品『砂の器』松竹・橋本プロ=提携作品
1974年10月19日劇場公開 / 2005年6月18日リマスター版公開
上演時間:2時間23分 (第一部:紙吹雪の女 87分 / 第二部:宿命 56分) 途中休憩:20分あり

山田洋次

1931年生まれ。54年、松竹に助監督として入社。
主な監督作に『男はつらいよ』シリーズ、『たそがれ清兵衛』『母と暮せば』など。
新作『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』が5月25日公開予定。

本広克行

1965年生まれ。TV番組の制作・演出を経て映画監督に。
03年『踊る大捜査線THE MOVIE 2』は実写邦画の興行収入歴代1位。
『UDON』『亜人』など。新作『曇天に笑う』が3月21日公開予定。

SHARE

関連記事

イベントページへ

最新記事

もっと見る