高野寛が見据えるアーティストとしての現在地、そして30周年アニバーサリーイヤーへの想いとは?

インタビュー | 2018.04.26 12:00

今ほどライブが楽しくできてる時期ってもしかしたら今までなかったかも

──少し話を変えて。のんちゃんに書いた「スーパーヒーローになりたい」がヒットしましたね。そこから高野寛の世界へ入ってくる若いリスナーも、きっといると思うんですよ。
のんちゃんファン、多いですよね。
──のんちゃんの印象は?
のんちゃんって、話そうとすると言葉が見つからなくてあわあわしちゃうことがあるじゃないですか。いわゆる不思議ちゃんなのかな?というイメージを持ってたんですけど、しゃべるのが苦手なだけで、すごくしっかりしている。自分の意思をはっきり持っていて、同世代の子よりもしっかりしているところがあるんじゃないかな。若い時からずっと仕事をしてきた人だから。
──曲調も、グラムロックというか、オールドタイプのカッコいいロックンロールで、あの年の女の子がこれやるんだ!と。あれは、高野さんがそうしたいという意図もあったんですか。
いやいや、僕はなるたけ気持ちよく歌ってもらえるように、いろんな話を聞いて、職業作曲家のスタンスで作ったんです。まず彼女の第一声が、「好きなバンドは、ブルーハーツとRCサクセション」だったので、逆に楽だなと。自分のリアルタイムな感じでやればいいんだと思ったので。でも珍しいですよね。
──どこで知ったんでしょうね。
彼女の地元に、バンドのリハーサル場所を提供してくれるおじさんがいたらしくて、みんなそこで楽器を演奏してたんですって。その人たちにいろいろ教えてもらったと言ってました。音楽のことも、ギターの弾き方も。年上の人が周りにいた環境で育ってきて、ひと昔前の音楽の好みに落ち着いたのかもしれない。
──若い世代つながりで言うと、高野さんは京都精華大学のポピュラーカルチャー学部で作詞作曲を教える教員でもあります。今の若い世代の音楽の好みを、どんなふうに見てますか。
YouTube世代ですね、やっぱり。都合5年間見てきたんですけど、1年ごとに、たぶん僕らの世代の3年分ぐらいの隔たりがある気がする。言い方を変えると、20世紀の頃のように、みんなが共通して体験したムーブメントがほとんどないんですよ。40歳以上の世代なら、ビートルズやベストテンの歌謡曲みたいなスタンダードがあるじゃないですか。今の大学生だと、おそらく宇多田ヒカルぐらいでそれが終わってる。そのあとは本当にそれぞれの好みで、いろんなものを心のおもむくままに聴いてるし、親や兄弟の影響ですごく古いものに詳しい子もいれば、ニコニコ動画とかボーカロイド、アニソンやゲーム音楽とか、自分の好きなジャンルに特化して掘り下げてる子もいっぱいいる。だから、同じ20歳でもみんなが「あれは良かったね」と言える音楽がほとんどないんですよ。RADWIMPSぐらいかな、みんなが好きというバンドは。星野(源)くんも、彼が大ブレイクした時高校生だった1〜2回生には、聴いてる子が多いような気がする。4回生や卒業生にはSAKEROCKのことを知ってる人もいるけど、下級生になるとほとんど知られていない。あくまで、僕の授業に出てた学生の印象ですけど、そういう隔たりはある気がします。
──そこで高野さんの役割は、スタンダードを教えるということですか。
僕らのスタンダードが、彼らのスタンダードになるのかどうかは、微妙ですよね。僕もそうだったんですけど、自分の趣味じゃないものを押し付けても、ときめかないと入ってこないですから。勉強しても仕方ない。年に一回ぐらい、ビートルズのドキュメンタリー映像を見せたりして、反応を見てるんですけど、三分の一以上が寝てたりするんで(笑)。そもそも英語の歌を聴かない子も多いですから。それが響く人はキャッチしてもらえばいいけど、画一的なテーマを押し付けると絶対みんな飽きるなと思ったんで、それよりは、自分が音楽にワクワクする感じをただ掘り下げてほしいなと思ってやってます。僕がやってるのはソングライティングの授業なんですけど、「曲作りってめんどくさい」とか思われたら最悪なんで、自分が面白いと思うものを掘り下げて、曲ができた時の達成感を知ってくれたらそれでいいやということにしました。
──一方的に教えるということとは、ちょっと違う感じがしますね。
違いますね。その代わり一人ひとりの作品をすごく丁寧に見て、"ここはこうしたほうがいい"ということは言います。僕は教員免許があるわけじゃないし、音楽の教育を受けたこともないんで、先生を始める時に先輩の先生に"教えるだけじゃなくて自分も教わる気分でやったほうがいいですよ"ということを聞いていて、その気持ちを忘れないようにしていて。何せ、自分自身が大学生の時にどうだったか?を思い出すと、偉そうなことは絶対言えないです(笑)。でも、やってよかったですね。ためになります。
──ライブの話に戻ります。次は5月15日、渋谷でのバンドライブですね。今回はトリオ編成で、ベースが鈴木正人、ドラムが宮川剛という、お馴染みの顔ぶれが揃いました。
ひとりに較べると、3人は本当に楽です(笑)。単なる人数の問題だけじゃなくて、ふたりとも付き合いが長くて。正人くんと最初にやったのは96年のアルバム(『Rain or Shine』)でしたが、彼がLITTLE CREATURES以外のレコーディングに初めて参加したのがそれだったんですよね。気心も知れてるし、しかも超絶うまい。宮川くんも、10年以上になるのかな。彼とはGANGA ZUMBAのメンバーとして、いろんなところでライブをやってきた間柄なんで、その信頼関係はありますね。
──どんな内容のライブにするか、もう決めてますか。
一応、冠は『Everything is good』発売記念ツアーになってたんですけど、タイトルを決めたあとに『A-UN』のリリースが決まったので、時系列がタイトルに追い付いてないという(笑)。『A-UN』と『Everything is Good』の曲を多めに、もしかしたら今書いてる曲もやれるかも、という感じです。もちろん古い曲もふんだんにやります。あと、普段のライブは歌ものがメインですけど、『A-UN』と『Everything is Good』にはインストが1曲ずつ入ってるので、その曲もフィーチャーしてやってみようかなと思ってます。
──そのライブが終われば、いよいよデビュー30周年の本格的なお祭りが始まります。
10月デビューなので、そこからアニバーサリーをスタートしようかなと思ってます。まずベスト盤を出して、もちろんオリジナルアルバムも出します。そこから先は未定ですけど、いろんな方に支えられてきた音楽人生なので、それをちゃんとまとめたいなという気持ちがありますね。ソロだけじゃなくて、バンドもいくつかやってきたんですけど、意外と知られてないので、それもいい形でまとめられないかな?と思ってます。アニバーサリーは1年間あるからなんて思ってると、あっという間に終わってしまいそうなくらい、やりたいことは多いですね。
──楽しみです。最後にあらためて、ライブへのお誘いの言葉をもらえますか。
最近は親子で来てくれる方もちらほら増えてきて、30年やってたら当たり前ですけど、時の流れを感じますね。ライブのあとにサイン会をするんですけど、そこでいろいろお話していると、"20年振りに来ました"という方も増え始めてます。たぶん子育てが済んだとか、そういうこともあるのかもしれない。あとは、のんちゃんの曲で僕の名前を知った若い人とか、いろんなきっかけで来てくれる人も増えてきていて。「声が変わらない」とよく言われますが、歌は進化しているので(笑)、ぜひライブを観てほしいなと思います。今ほどライブが楽しくできてる時期って、もしかしたら今までなかったかもしれないですね。

「Everything is Good」trailer

公演情報

DISK GARAGE公演

高野寛 LIVE 2018「Everything is Good」発売記念 Live tour Band ver. “Man-O-jishite”

2018年5月15日(火) Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

member:高野寛(vocal & guitar)/鈴木正人(bass)/宮川剛(drums)

チケット一般発売:2018年3月3日(土)

EVENT出演情報

■蔦屋家電 ミニライブ&サイン会
2018年5月6日(日) 蔦屋家電 2階 ラウンジ (二子玉川ライズ S.C. テラスマーケット)
※入場無料

■のんシガレッツ / ファーストライブ・ゲスト出演
2018年5月8日 (火) 渋谷クラブクアトロ
出演:のんシガレッツ
Special Guest:大友 良英、高野寛、弓木英梨乃(KIRINJI)
*『スーパーヒーローになりたい』(作詞・作曲・編曲:高野寛)でデビューした のん のバンド・のんシガレッツのライブにゲスト出演

■出前GACHI 034 ~広島場所 浜崎貴司 vs. 高野寛
2018年5月11日(金) 広島 Live Juke

■ごごしま音楽プール
2018年5月13日(日) 愛媛 興居島 しまのテーブルごごしま(旧泊小学校)屋外プール

■GREENROOM FESTIVAL’18
2018年5月27日(日) 横浜・赤レンガ地区野外特設会場

■高野寛×宮沢和史×おおはた雄一
2018年6月16日(土) ビルボード大阪

すべてのLIVE出演情報詳細はオフィシャルサイトにてご確認ください。

RELEASE

『Everything is Good』

『Everything is Good』

2017年10月4日(水)リリース

SBST-007¥2,160(税込)

■収録曲
1. Everything is good
2. Portrait

3. Candle of Hope

4. Mondo Electro

5. 180°

6. DAN☆SHARI

7. Rio-Tokio
― Bonus Tracks ―

8.炎 (1992) - “Candle of Hope” Prototype

9. Everything is good (2005) - Acoustic demo

10. Portrait (2016) - Cassette demo

11. 180°(2016) - Cassette demo

12. Children’s Song (2017) - “Rio-Tokio” instrumental ver.
『A-UN』

『A-UN』

2018年2月14日(水)リリース
URCP-40543¥2,500(税込)

1.Salsa de Surf(Overture)
(セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:高野寛&田島貴男) 
3.とおくはなれて
(オリジナル新曲)
4.ME AND MY SEA OTTER
(セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:矢野顕子)
5.Rambling Boat
(セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:本木雅弘)
6.時代は変わる
(カバー) 作詞/作曲:ボブ・ディラン/日本語訳詞:高野寛
7.上海的旋律【Shanghai Melody】
(セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:野宮真貴)
8.みじかい歌
(オリジナル新曲)
9.Salsa de Surf
(セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:coba)
  • 宮本英夫

    取材・文

    宮本英夫

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