KIRINJI 20th Anniversary Live「19982018」、KIRINJIと堀込泰行は、今を生きるミュージシャンと再確認した夜

ライブレポート | 2018.11.28 21:00

KIRINJI 20th Anniversary Live「19982018」
2018年11月15日(木) 豊洲PIT

出演:KIRINJI /キリンジ/ 堀込泰行

スペシャルゲスト:冨田恵一(キリンジ-Key )
サポートメンバー:矢野博康(KIRINJI/キリンジ- Per&Manip)/ 伊藤隆博(堀込泰行/キリンジ/KIRINJI pt1 -Key)/ 真城めぐみ(堀込泰行/キリンジ- Cho&Per ) / 松江潤(堀込泰行- Gt )

19時に開演して約3時間の間、どれだけ感情が振幅したことだろう。詰めかけた観客一人ひとりの胸にも様々な想いが去来したことだと思う。

堀込高樹と堀込泰行が同じステージに立つ。

2013年4月12日のNHKホール以降、袂を分かったふたりがキリンジを歌う。心の準備がまったくできていないところに不意に知らされた一報は心をざわざわと波立たせ、どきどきと上気させたのだが、次第に今のふたりにとってこの邂逅は何の意味を成すのだろうかという思いを巡らせるようになった。

KIRINJIの暖簾を受け継ぐ高樹は今年6月に『愛をあるだけ、すべて』で現行型のR&Bに急接近し、新たなKIRINJI像を見せてくれた。そしてそのアルバムを携えて7月に行われたライヴハウス・ツアーではさらに集束した強固なバンド・サウンドを繰り出して圧倒。5周年という節目に過去を振り返ることなく、ピークをアップデートし続けるKIRINJIにとって、キリンジに引き戻されることは疾走を止められることに等しい。

一方、泰行。10月に『What A Wonderful World』をリリースしたばかりであり、「GOOD VIBRATIONS」から続いていた新たなサウンド・ヴィジョンの構築を蔦谷好位置プロデュースの「WHAT A BEAUTIFUL NIGHT」でひとつのかたちにした矢先でもあった彼も同様に引き戻されることになる。

また、我々ファンも忘れかけていた感傷が蘇ってくることは避けられない。メジャーデビュー20周年記念本『KIRINJI20THBOOK19982018』のインタヴューで高樹は「兄弟が5年ぶりに共演することへの期待が高いのもわかっている。同窓会みたいな雰囲気にもなるだろうけど、今の堀込泰行、今のKIRINJIをそれ以上に楽しんでもらえるようなステージを見せたい」と胸中を話してくれてはいたが、それでも複雑な想いを解消できないまま、11月15日、満員の豊洲PITに足を踏み入れたのだった。

結論から言うと、それぞれの矜持をまざまざと見せつけられた一夜になった。泰行は馬の骨の楽曲を交えながら、自らの新しいサウンド・アプローチをライヴでも提示。様々なスタイルの楽曲が揃った今、より多面的な見せ方をできるようになっていくだろう。続くKIRINJIはまず『11』の楽曲と高樹のソロ曲「冬来たりなば」を演奏。盤石の体制である現在のKIRINJIが5年前からの鮮やかな進化の過程を投影していった。

そしてキリンジ。今回の公演ではアーリーキリンジとして告知されていた。演奏前には現在からメジャー・デビュー時へと巻き戻すような演出の映像がステージ後ろに映し出されたが、これがある意味、タイムマシーンとしての役割を果たしたと思う。このひとときだけ高樹と泰行、そして我々は2013年4月12日に戻ったのだ。そして演奏された6曲もあの日から歩みを止めてしまった曲たち。おぼえのあるかつての感動が再び訪れ、すっと去っていった。高樹と泰行がステージから消え、我々も2018年の11月15日に戻ったのだ。

それからのKIRINJIは時間を旅していた記憶を消し去るように圧巻のパフォーマンスを繰り出していった。7月のライヴから4か月しか経っていないにも関わらず、さらなる進化を見せられるだけの地力がある。これがKIRINJI。20年も5年も横目にしてさらに先に向かおうとする5人の全力疾走をまじまじと見せつけられたすばらしい演奏だった。

次は5年先か、10年先か。“いろんな人がいて いろんなことを言う”。それでいいと思う。ただ、この夜、再確認したのはKIRINJIと堀込泰行は今を生きるミュージシャンだということ。「双子座グラフィティ」、『ペイパードライヴァーズミュージック』を出発点に20年。互いの旅はこれからも続いていく。その旅の途中、どこかでまた出会うことを願いながら、我々もふたりの背中を追いかけるのだ。

SET LIST

● ACT1:堀込泰行

1. New Day
2. さよならテディベア
3. Beautiful Dreamer
4. バース・コーラス
5. Chewing Gum On The Street
6. クモと蝶
7. 燃え殻
8. WHAT A BEAUTIFUL NIGHT

●ACT2:KIRNJI pt1

SE 心晴れ晴れ(Instrumental) 
1. だれかさんとだれかさんが
2. 冬来りなば
3. 進水式
4. 雲呑ガール

●ACT3:アーリーキリンジ

SE . P.D.M.
1. ニュータウン
2. 雨をみくびるな
3. アルカディア
4. エイリアンズ
5. Drifter
6. 双子座グラフィティ

●ACT 4:KIRINJI pt2

SE. ペーパープレーン
1. Mr.BOOGIEMAN
2. 非ゼロ和ゲーム
3. 新緑の巨人
4. タンデムラナウェイーtandem runawaysー
5. 明日こそは/ It’s not over yet
6. 嫉妬
7. The Great Journey
8. AIの逃避行
9. 時間がない
10. After the Party
11. silver girl

RELEASE

『愛をあるだけ、すべて』

13th ALBUM

『愛をあるだけ、すべて』

(Universal Music)
※初回限定盤】(CD+DVD)、通常盤(CD)の2携帯
2018年6月13日(水)SALE

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デビュー20周年を記念して、各社復刻盤、紙ジャケット盤など続々リリース!また、「レコードの日」にKIRINJIのオリジナル・アルバム3枚がアナログLPで一斉リリース!

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2018年11月3日(土)SALE
●20th企画盤「キリンジ Melancholy Mellow I – 甘い憂鬱- 19982002 (LIMITED EDITION)」「キリンジ Melancholy Mellow II -甘い憂鬱-20032013 (LIMITED EDITION)」 (ワーナーミュージック・ジャパン)
2018年11月3日(土)SALE ※通常盤は11月7日 SALE
●「キリンジ SINGLES BEST ~Acchives 完全版」(CD+DVD)2018年11月7日SALE
●コロムビアからリリースされたキリンジ、馬の骨、堀込高樹のオリジナル作品が紙ジャケ仕様で20周年記念再発決定。
2018年11月7日(水)SALE
●Blu-ray「KIRINJI TOUR 2003 / LIVE at BUDOKAN」(Universal Music)
2018年12月5日(水)SALE
  • レポート

    油納将志

  • LIVE PHOTO

    立脇卓

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