【ライブレポート】“らしさ”を脱ぎさり、スクラップ&ビルドの真っ只中にいる安藤裕子の“いま”のライブを観てほしい

ライブレポート | 2019.01.15 15:00

「安藤裕子 ACOUSTIC LIVE 2018-19」
2019年1月6日(日) 東京・なかのZERO大ホール
【BAND MEMBER】山本隆二(pf.) / 名越由貴夫(Gt.)

安藤裕子の“いま”をみんなに観てもらいたい。昨年6月にリリースした初のセルフプロデュースによるアルバム『ITALAN』や同年12月にリリースされたばかりのアナログ2枚組ベスト『Best Records』を聴いてもらうだけでもいいのだが、やはり、生のライブを観てもらいたいという気持ちが強い。“いま”の彼女は、デビューから15年かけて築き上げてきた“安藤裕子らしさ”を脱ぎさり、未来の自分に一番似合う衣装(音の位相)を探す、スクラップ&ビルドの真っ只中にいる。そこには、(まるで2回目の!)デビューに向かうシンガーとしての初期衝動のようなものがあり、これから先はどうなるか分からないという期待感もある。

デビュー15周年のアニバーサリーイヤーに突入して以来、彼女は、様々な編成でのライブを精力的に行ってきた。昨年5月にはファンのリクエストを基にした一夜限りのスペシャルライブを開催。フルバンドに加えて、女性コーラスとホーン隊を従えた豪華な編成で、涙とともに蒔いた種を喜びの歌と共に刈り入れた。同年8月には山本隆二(pf. & key.)、Shigekuni(ba. & per.)、羊毛とおはなの市川和則(Gt.)という小編成のコンボ「ITALAN CHIBIBAND」でジャズクラブを周り、11月からは山本と名越由貴夫(Gt.)との3人で2年ぶりとなる全国アコースティックライブツアーを開始。時期を同じくして、アルバム『ITALAN』の共同制作者であるTomi YoとShigekuniを引き連れて、アイドルとの対バンイベントなどに参加した。現在の彼女は、バンド、アコースティック、マルチプレイヤーによるミニマムな編成という、主に3つのスタイルでライブを行っていることになる。

全国7カ所に及んだアコースティックライブは1月6日(日)に東京・なかのZERO大ホールにてファイナルを迎えた。特筆すべきはやはり、新曲や未発表曲の多さだろう。15周年記念ライブでやらなかった代表曲「問うてる」や「のうぜんかつら」、記念ライブでホーン入りで華やかに弾んだ「パラレル」では、名越がエレキギターに弓を使って奏でた〈悲しみバージョン〉など、アコースティックライブならではのアレンジで観客を楽しませたが、何よりも、アンコールを含む全14曲中4曲が新曲というセットリストにフレッシュな息吹を感じずにはいられなかった。

なにせ、1曲目がまだタイトルも付いてない「新曲」からライブをスタートさせるという構成には、MCでも言っていたように、「今の自分を旅の先々で届けられたらいいな」という彼女の思いが込められていたように思う。
しかも、その「新曲」は7分超えのピアノバラードで、いつの間にか大人になってしまった“僕ら”のやるせなさのようなものが語られていた。そして、中盤で披露された未発表曲「箱庭」はオルガン・シンセとエレキギターによって浮遊感たっぷりのサイケデリックな音像の中で、男性視点の恋の始まりを描き、2年前のアコースティックライブでお披露目された未発表曲「少女小咄」はピアノとアコギの演奏で、恋を忘れてしまった女性の心情を丁寧に綴っていた。

そして、本編最後も新曲「一日の終わりに」であった。エレキギターによる深遠なリフが夜のとばりを下ろしていくなかで、何度も繰り返される<会いにきて>というフレーズ。夢の中でだけ会える人なのか、もう2度と会えない人への切実な思いなのか。新曲はどれも、聴き手に複層的な物語を想起させてくれるものとなっていた。この15年間で培ってきたシンガーとしての“安藤裕子らしさ”は残しつつも、楽曲の主人公や物語を伝えるストーリーテラーとしての魅力が際立つようになったと思う。振り返ってみれば、彼女はどこか、自ら安藤裕子を演じているきらいがあった。ややこしい言い回しになるが、安藤裕子を演じない安藤裕子が歌う既発曲はこれまでとは違う響きを持っていた。特に、この日のライブの後半は演劇的で、まっすぐに前を見据えて永遠を誓った8分超えの大作「夜と星の足跡3つの提示」は女性の強さと弱さ、繊細さと激しさが見事に演じきられた名演となっていた。

アンコールのMCでは、当日のライブ音源のCD化に加え、今年の6月には15周年を締めくくる全国Zeppツアーの開催が発表された。近年は主にホールを中心としたツアーを行ってきた彼女がどんな編成でどんなステージを見せてくれるのか。まだ予想がつかずにワクワクしている。

SET LIST

1. タイトル未定(新曲)
2. TEXAS
3. のうぜんかつら
4. お祭り -フェンスと唄おう-
5. 鐘が鳴って 門を抜けたなら
6. レガート
7. 箱庭(新曲)
8. 少女小咄(新曲)
9. 風雨凄凄
10. 海原の月
11. パラレル(悲しみバージョン)
12. 夜と星の足跡 3つの提示
13. 一日の終わりに(新曲)

ENCORE
問うてる

公演情報

DISK GARAGE公演

安藤裕子 2019 LIVE TOUR

2019年6月22日(土) 大阪・Zepp Namba
2019年6月23日(日) 福岡・Zepp Fukuoka
2019年6月30日(日) 愛知・Zepp Nagoya
2019年7月7日(日) 東京・Zepp DiverCity(TOKYO)

チケット一般発売日:2019年4月13日(土)

RELEASE

「Best Records」(2LP)

アナログ2枚組

「Best Records」(2LP)

2018年12月26日(水) Release!
  • 永堀アツオ

    取材・文

    永堀アツオ

  • Photo by

    YAMA

SHARE

安藤裕子の関連記事

アーティストページへ