『踊ろよハリー♪』村越 弘明「TOUR 2019 “Awesome!”」下北沢GARDENライブレポート【横山シンスケのライブオアダイ】連載:第23回

ライブレポート | 2019.08.05 10:00

TOUR 2019 “Awesome!”
2019年6月30日(日) 下北沢GARDEN

今年の1月に村越はこの「TOUR 2019 “Awesome!”」の始まる前にリキッドルームで自身の誕生日に一夜限りの還暦記念ライブを行なったのだが、そのライブがあまりにも感動的な素晴らしいライブだったので、我々ハリーファンは今回のこのツアーに対する期待値を勝手にアゲまくっていた。
実際にチケットは各地で売切れ公演が続出していたし、SNSとかでチェックしてみたらライブに行ったお客さんの感想もすごぶるよかったので、僕も自分のその期待値をアゲたままこのツアーファイナルとなる下北沢GARDENに向かった。

前回、去年の3月にこのGARDENに村越のライブを見に来た時は、雨と風の強い春の嵐のような夜だったが、今回も下北に着くまで雨が降ったり止んだりの日だった(まあ梅雨だからでもあるが)。ライブの日はそりゃあ当然晴れるに越した事はないのだが、僕が思ってるだけかも知れないが、村越のライブの日はなぜか雨が似合うというか、雨が降ってても「わるくないな」と思ってしまう。スライダーズ時代から村越の歌詞にはよく曲の中の大事なポイントで「雨」とか「傘」とかというフレーズが象徴的な感じで出てくるから、そのせいだと思う。逆に会場に向かう途中の気持ちを盛り上げてくれてる様な気分になる。

チケットは即完売だったので会場は当然超満員。17時という少し早めの開演時間だったのだが、その17時ジャストにBGMが大きくなり客電が落ちてメンバーが現れたので少し驚いた。大歓声の中ステージに現れた村越はいつものように客席をしばらく見渡してから、おもむろにギターを抱え、人気ソロナンバー曲からこの日のライブをスタートさせた。

メンバーは村越としても最強とも言える、五十嵐"JIMMY"正彦(G)、市川"JAMES"洋二(B)、鈴木"ZUZU"将雄(Dr)の3人。この3人で還暦ライブも入れるとすでに20本ものライブをこなしているので(この3人はJAMESBANDとしてもライブやツアーをやりまくってるし)、最初から4人の出す音が一つの完璧な音の塊となって聞いてる僕らの体全体に浴びせ降りかかってくる。今回のツアータイトルの「Awesome!」とは英語のスラング的な使われ方で、「最高!」、「スゴイ!」、「ヤバい!」という感じの褒め言葉でよく使われるのだが、その「Awesome!」を村越が自ら今回のツアータイトルに持ってきた理由が僕はいきなり分かったような気がした。この2年間でのスライダーズ以来となる4ピーススタイルバンドでのライブ再始動、JOY-POPSの復活、そんな原点かつ新たなる挑戦の成功を経て、今自信に満ち足りた村越はツアーが決まった時点でこの4人で鳴らす音が凄い事になるだろうという事をすでに確信していたのだろう。その圧倒的な音の塊で人気ソロナンバーを次々と繰り出していく4人を見て僕は「ヤバい、ヤバい」と何度も繰り返し言っていた。

4人による問答無用、完全無欠なライブが続いていく。最近のライブでは割とよくしゃべったり、客席に「サンキュー」を連発する村越だったが、この夜はそれが割と少なめだった(サンキューはまあ何度もオフマイクでは言ってたが)。でもそれは村越の機嫌や調子が悪いとかとは全然違い、前記の通り今の村越自身とこのバンドメンバーに対する充実と信頼の現れという感じで、それは還暦になって更に演奏や音楽そのものに集中してきている村越のストイックでカッコいい姿だった。
いつも通り今回も曲ごとに頻繁にギターを変える村越だったが、今回はオープン・チューニング(開放弦でそのままコードが鳴る)を凄く多用していて、村越お得意のギターから両手を離したアクションも何度も見せてくれたが、そばにいた女性がそれに黄色い声援を送りながら「スゴ~イ!弾いてな~い!」と驚いてたので笑った。そうか知らない人が見たら手品みたいな技だもんな。
僕はライブレポーターでもあるので、時折メモを取りながらライブを見ていたのだが、同じくメモを取りながらライブを見てる男性が近くにいたので、少し気になって何を書いてるかちょっと覗き見したら、村越と五十嵐が曲によって変えているギターの種類やメーカーやチューニングなどの情報を全部メモっていたので驚いた。
還暦を過ぎても女性ファンから黄色い声援を浴び、ギターフリークの男性たちから憧れられる我らがハリー、おそるべしである。

今回のライブでは中盤でバラードやミディアムナンバーも数多く披露された(レゲエもやって超カッコよかった)。そして、村越もここ数年はきっとフッ切れたのだろう、往年のスライダーズのロックナンバー以外にバラードも惜しみなく次々と披露してくれるのだが、それが村越のソロナンバーと一緒に今ではライブの自然な流れの中で演奏されていくので、僕らスライダーズ時代からのファンもヘンに構えたりせずに楽しく聞けるようになったのが嬉しかった。
この夜も途中からソロのバラードも、スライダーズのバラードやミディアムナンバーも聞きたかった名曲ばかりが披露された。
“凍りついた 駅に降りて お前のいる街まで”という35年も前に発表されたスライダーズの名バラードの一節を村越と一緒に歌うみんな(自分含む)を見ながら、ここに集まった僕と同じ世代のスライダーズファン達の頭の中には35年の間のそれぞれの思い出深い「駅」や「お前」という誰かをいま思い出してて、若いファン達はまた僕達とは違う「駅」や「お前」という誰かをいま思ってるんだろうなあ...、などと勝手な想像をしながら見てたら、何だか僕は一人で泣けてきてしまった。
でも、それこそが音楽の(そしてハリーの)一番素晴らしくて大切な部分で、35年経った今も僕らから若いファンまでもがそこに集まり続けている理由はきっとそこなんだろうなあ、と思った。

人気ソロナンバー3曲からの本編最後はスライダーズのラストアルバム「NO BIG DEAL」1曲目の「On The Road Again」だった。この曲はまさしく「もう一度、道(前線)に戻ろうぜ」という感じの曲なんだが、残念な事にこんな象徴的なタイトルの曲とアルバムを発表して少ししてからスライダーズは解散してしまった。
ここにきて最強なメンツと自信と充実に満ちている今の村越が、本編の最後にこの曲を持ってきたのが僕には村越のリベンジ勝利宣言のように思えた。実際に当時よりも力強いかも知れない最高の演奏で会場は凄い盛り上がりとなり、本編のライブは終了した。

アンコールに呼ばれTシャツで出てきた4人。村越と五十嵐は「暑いぜ!」を連発しながら(実際ステージはこの日相当暑かったらしい)、今回のツアーでヤバいと話題になっていた怒涛のスライダーズ初期ナンバーオンパレードに突入。
「踊ろよベイビー♪」というフレーズのループ大合唱大会の中、「踊ろよハリー♪」と歌ってる人もいて、その時のヤバくも最高に楽しい雰囲気にあまりにピッタリなので僕も同調して「踊ろよハリー♪」と一緒に歌った。そう、僕らはこれからもずっとこうやってハリーと一緒に歌い踊り続けたいのだ。
そしてスライダーズのテッパン4曲で会場全体を怒涛の横揺れグルーヴで包み込みライブは終了した。興奮が収まらないファン達はその後も長い間ずっとアンコールの拍手を送り続けていた。

村越はこれからまた更に新しいフェーズにきっと向かうだろう。そう確信したライブだった。それがどんな形であろうと、僕らもまたそこに新たな夢を求めてハリーに会いに行くのだろう。

追いかけろ 狂った夢を
逃げ出すなんて 無理だぜ

SET LIST

01. 三白眼の油売り
02. Still Crazy
03. 狼煙
04. MAKE UP YOUR MIND
05. King Bee Buzzin'
06. one Day
07. PACE MAKER
08. 鬼魣に天狗風
09. 落陽
10. China Doll
11. 無題
12. パラダイス
13. Angel Duster
14. ありったけのコイン
15. RUN SILENT, RUN DEEP
16. Respectable Performer
17. 無頼白痴
18. On The Road Again

EN
01. Toa-Lit-Tone(踊ろよベイビー)
02. SLIDER
03. TOKYO JUNK
04. So Heavy

この日のライブの模様がLIVE CD、Blu-ray、DVDで発売決定!
詳細は村越 弘明オフィシャルサイトにて近日発表!

PROFILE

横山シンスケ

渋谷のイベントライブハウス「東京カルチャーカルチャー」店長・チーフプロデューサー。その前10年くらい新宿ロフトプラスワンのプロデューサー、店長。ライター、司会、外部企画もやってます。ハリーとスライダーズの好きな曲挙げたら実はほとんどバラード曲になる位ハリーバラード中毒なので今回は超オレ得なライブでした。

  • 横山シンスケ

    取材・文

    横山シンスケ

    • ツイッター
  • 撮影

    大谷十夢治

  • 撮影

    飯室光子

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