SPYAIRが5年目の富士急ハイランド・コニファーフォレストで見せた、素晴らしきロックの祭典!

ライブレポート | 2019.08.04 12:00

「JUST LIKE THIS 2019」
2019年7月27日(土) 富士急ハイランド・コニファーフォレスト

これがロックバンド、SPYAIRの嘘偽りのない姿だ──。
「俺はこの3年間、みんなとやるライブやこのステージに立つというプレッシャーが嫌で何度もステージを降りよう、歌うことをやめようと思いました。だけど、歌わない自分はもっとみっともなくて歌うしかないと思いました。この3カ月間もとても大変で…いろんなことがありました。でも、それでも約束します。必ず、このステージに這いつくばってでも立ちます。声が出なくてもステージに立ちます」
ライブ後半、IKE (Vo)の言葉はどんどん不器用さ丸出しになっていく。でも、そのほうがいい、それくらいでいい。そうやって自分に嘘をつかず懸命に生き抜くのがSPYAIRが貫いてきたバンド人生なのだから。途中で辞めたっていい、出すものがなくなったら充電すればいい、紆余曲折あってこそ人生。それでもまた4人はかならずこのステージに戻ってくるんだから。それまで、何度だって彼らと待ち合わせの約束をする。この、素晴らしき<JUST LIKE THIS>で──。

SPYAIRが7月27日、富士急ハイランド・コニファーフォレストにて夏の恒例野外ライブ<JUST LIKE THIS 2019>を開催した。豪雨のなか開催したあの伝説の<JUST LIKE THIS 2018>から約1年。富士急での開催が5年目となった今年は、開催日前日に台風上陸というニュースでドキリとさせながらも、当日それを“温帯低気圧”に変えるというスゴ技を繰り出し(微笑)、雨時折曇り空や晴れ間もありながらという天候のなかでの開催となった。
野外ならではの開放感、SPYAIRの音楽と融合して繰り広げられる様々なアトラクション、総勢69名の演者と集まった1万5000人のファンが作り出した今年の<JUST LIKE THIS>は、素晴らしきロックの祭典でありながらも、このバンドの核心にあるものに触れ、胸が締め付けられた文句なしの感動の一夜だった。

IKE (Vo)

UZ(Gt、Programming)

“スポーツ”がコンセプトに置かれていた今年の<JUST LIKE THIS>。舞台にはスポーツをするメンバーを描いた巨大なグラフィティーがあり、メインステージの後方にはスケボーのハーフパイプ、左右にはバスケのゴールまで設置。そんなセットに囲まれ、メンバーはスポーツウェア風の衣装でオンステージ。彼らとともに日本体育大学のチアリーダー部・VORTEX、フリースタイルバスケを極めたパフォーマンスで世界を魅了する侍BALLERSのクルーが続々登場し、ライブは「B-THE ONE」(『B.LEAGUE 2018-19 SEASON』公式テーマソング)で開幕。IKEがトーチを掲げると、客席最後尾の聖火台に火が灯るという華々しくスペクタクルなオープニングは迫力満点。曲中のコール&レスポンスでそこにオーディエンスまで呼び込み、1曲目から参加者総動員で一体感のあるライブを作り上げ、続けてアップチューンを畳み掛けていく。「OVER」では“夢の向こうへ”という歌詞に合わせてIKE、UZ(Gt、Programming)、MOMIKEN(Ba)が客席3方向に伸びた花道を通り、後方のサブステージまでやってきて観客との距離を縮めると、オーディエンスは拳を振り上げ彼らを熱烈歓迎。それに燃えたIKEが短い挨拶を告げたあと「ぶち上げていこうぜー!!」と叫び、「アイム・ア・ビリーバー」へ。明日もしうまくいかなくても、誰かにこれ以上は無駄だっていわれたって、それでも諦めんなというようにIKEがマイクを向け観客に“アイム・ア・ビリーバー”と歌わせる。拳を突き上げ、そこにそれぞれの人生を重ね合わせて歌うからこそ、SPYAIRのライブはオーディエンスのシンガロングまでグッとくるのだ。ビキニ+パレオ姿のSPYAIRダンサーズ参加の「COME IN SUMMER」、大きなバルーンが客席を飛び交った「C!RCUS」と踊れる陽気なサマーチュンを繰り広げていると、その瞬間だけ雨がやみ、上空に晴れ間が広がった。「THIS IS HOW WE ROCK」から再びロックチューンを立て続けに演奏していると、また空は雨模様へ。

MOMIKEN(Ba)

KENTA(Dr)

ライブも中盤戦へと差し掛かり、ステージはおなじみのアコースティックコーナへ。「俺、35年間の人生で一番緊張してる」というKENTA(Dr)が最近習っているというピアノを交え「サクラミツツキ(Acoustic ver.)」を披露したあと、4人はサブステージへ移動。
そこでKENTAから突然、2020年夏に開催する<JUST LIKE THIS 2020>まで充電期間を作り、バンド結成15周年、メジャーデビュー10周年というスペシャルイヤーに本気で向かっていくことが告げられた。「1回インプット期間を置いて、頑張って自分らの力をつけて10周年から動き出そうと思う」というKENTAに続いて、UZはSPYAIRが長年夢描いていた東京ドームを引き合いに出し「まだ俺ら諦めてないから。全員それぞれ修行して、新世界に行く。そこに行くためだから安心して」と宣言。「まだまだ一人ひとりが力不足。技術以上に人間力が。それをつけないとバンドを続けていきたいという思いが叶わないので」とIKEが語り、修行が終わり集まる場所は「来年もここでいい?」と優しくオーディエンスに語りかける。ここでしんみりしてしまった空気を吹き飛ばすようにMOMIKENが「最高だ、富士急!」と叫ぶと、4人は笑顔になり、次はいつものSPYAIRのアコースティックカバーユニット“キャンプファイヤー”になってライブでは1〜2回しか演奏してないというレア曲「MOVIN’ON(Acoustic ver.)」をプレイ。ひぐらしが鳴くなか、富士急は夕暮れに包まれていった。

侍BALLERS、世界大会でも活躍するブレイクダンスチームのBODY CARNIVAL、VORTEXがアクロバティックなショーを繰り広げるゴージャスなハーフタイムを挟んで、ライブは「PRIDE OF LIONS」から後半戦へ突入。この曲でVORTEXが3段リフトから落下する迫力あるパフォーマンスを連発すると、「Just Do It」ではBODYCARNIVALがKENTA、MOMIKENが繰り出すソロと即興でコラボ。そうしたコラボから生まれたパワーをすべて放出するにIKEが激しいシャウトで「We’ll Never Die」を歌い上げ、そこから「Brand New Days」のオーディエンス一丸となってのジャンピング、“あんたはどうだい?”と観客に問いかける「ROCKIN’OUT」でみんなの感情を揺さぶりをかけたあと、突入した「感情ディスコード」は、“負けんな”という言葉を合図に、サビを観客たちが掛け合いのように歌っていく。人生いろいろあるけどくたばるなと互いにエールをおくりあっているように見えたこの場面は、バンドとお客さんの熱い絆が感じられ、この日のハイライトの一つとなって感動を呼び起こした。

そんなところから感情が高まったのか、IKEは自分の胸の内を吐き出すように冒頭に綴った言葉を激白。続く「Little Summer」がたまらなかった。“君がいればそれだけでいい”と想いを込めて歌う姿に、胸がぎゅっと締め付けられた直後の「JUST LIKE THIS」は、いままでここでアクトしてきたどの「JUST LIKE THIS」よりもせつなくて、リアルな痛みをともなって届いてきたのが印象的だった。そう、ここが唯一の“俺らだけの居場所”、それを確認するかのようにIKEは最後の最後まで「全然聴こえねーよ」といって客席を煽り、オーディエンスの“声”を求め続けた。そうして、お互いのつながりを再び感じたあとメンバーはトロッコに乗り込み、「I want a place」と「サムライハート(Some Like It Hot!!)」を観客の近くにいってアクト。どんなに会場が大きくなろうが、花道を作ったりトロッコなどを使って距離を感じさせないライブをやる。これまでSPYAIRが貫いてきた鉄則はいまも変わらない。そうして観客のパッションを間近に受け取ったIKEは「最高な1日です」といったあと、再び胸の内を吐露。「一生懸命生きてきてよかった、バンドやっててよかった、生まれてきてよかった。人はいろいろある。くじけたり裏切られたり、裏切ったり。だけど、適当なこといって人をけなしたり、適当なこといって人を褒めたりする人なんかに惑わされるより、しっかり前を見て、自分の言葉で、自分の心で生きていって下さい」と観客に強い口調で語りかけ「来年までなんとかこの大切なSPYAIRという僕らのファミリーを守って、未来に繋げようと思います。そのためにもっと貸して欲しい。みんなの力を。いい景色一緒に共有しようぜ」と伝えたあと、「Goldship」をアクト。会場にいた全員といつかこの日のことを“あの頃の俺たちは”と笑いあおう、そんな気持ちを分かち合いながらみんなと一緒にこの曲を歌い、本編はフィニッシュ。

オーディエンスが「SINGING」を歌うなか、アンコールは「現状ディストラクション」から大盛り上がり。そのあと、スクリーンを通して2020年、夏に<JUST LIKE THIS>を行なったあと、秋冬にはホールツアー、2021年春にはZeppツアーを開催することが告げられると、客席からは悲鳴に近い大歓声が上がる。次の予定を具体的に示し、ファンの心のなかのせつない気持ちを綺麗に拭い去ったあとのラストソング「SINGING」は、この日一番大きなシンガロングが場内に巻き起こり、壮大な打ち上げ花火が何発も上がるなか、みんなをちゃんと笑顔にして終演を迎えたのだった。すると終演後、富士急はパタリと雨がやんだ。

心と記憶に残るこの日の名演ーーこれよりもさらに高みを目指し、もっと素敵な景色を共有しようと約束してくれたSPYAIR。来年、またこの<JUST LIKE THIS>で、その姿を観たいと思う。

SET LIST

01. B-THE ONE
02. 0 GAME
03. OVER
04. アイム・ア・ビリーバー
05. COME IN SUMMER
06. C!RCUS
07. THIS IS HOW WE ROCK
08. イマジネーション
09. スクランブル
10. サクラミツツキ (Acoustic ver.)
11. MOVIN’ ON (Acoustic ver.)
12. PRIDE OF LIONS
13. Just Do It
14. We’ll Never Die
15. Brand New Days
16. ROCKIN’ OUT
17. 感情ディスコード
18. Little Summer
19. JUST LIKE THIS
20. I want a place
21. サムライハート (Some Like It Hot!!)
22. Goldship  
EN
01. 現状ディストラクション
02. SINGING

RELEASE

「JUST LIKE THIS 2018」

LIVE DVD/Blu-ray

「JUST LIKE THIS 2018」

2019年3月27日(水)Release!
※完全生産限定盤

≫詳細はこちら
  • 東條祥恵

    取材・文

    東條祥恵

    • ツイッター
  • 撮影

    平野タカシ

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