SUSHIBOYS、ワンマンライブをレポ。生きる意味を求めてもしょうがねえ。今を存分に楽しもうぜ

ライブレポート | 2020.12.17 17:00

SUSHIBOYS ワンマンライブ 東京公演
2020年12月11日(金) LIQUIDROOM

「コロナの状況なのに来てくれて。……今、やっぱり音楽をやってて良かったなと、くさい言葉ですけど思います。何よりLIQUIDROOMには思い入れがあるんです。初めてHIPHOPのライブを観に行ったのがNORIKIYOさんのライブで……確か、あそこだった」。そう言って、感慨深そうにファームハウスは客席前方を指さした。「NORIKIYOさんのライブ、めちゃくちゃカッコよかったのよ。いつか俺も、ステージに立ってラップしてえなと思った」。喋りながら、マイクを持つ力が強くなる。「今、気持ちが暗くなったり辛かったり、悩んでる人もいると思うけど、絶対にそれがプラスになって返ってくる時があるから。俺も今日、そう思った」。
2020年6月30日(火)、SUSHIBOYSは東京・WWW Xでワンマンライブを開催するはずだったのだが、コロナの影響で延期を余儀なくされた。そこで急遽、新作音源『SUSHIBOYSの騒音集 Vol.1』の新作音源の収録曲すべてのミュージックビデオを1つの映像作品として公開したのである。それから約6ヶ月の月日が経ち、12月11日(金)に東京・LIQUIDROOMにて有観客+生配信という形で振替公演が開催された。

会場に到着し、一人ひとり検温してから受付へ。ドアを開けると、フロアには間隔を空けて椅子が並べられていた。マスクを着用して静かに開演時間を待つ観客。19時になり、ステージに設置されたスクリーンに映像が映し出された。
アパートの一室で、SUSHIBOYSの音源を爆音で流すファームハウスとサンテナ。そこへ近隣住民から通報を受けた警官が登場し、ギターを没収されてしまう。そして2人はギターを奪い返すため車に乗り込む。(ちなみに、配信では『SUSHIBOYSの騒音集 Vol.1』のレコーディング風景が流れていた)。車内で出来たばかりの新曲「DA-DA-DA」を聴いて盛り上がると、ここでスクリーンが真っ暗になって、場内にイントロが流れてきたと思ったら颯爽と本人登場。「DA-DA-DA」と「SUIMIN」を披露するとすぐに袖へはけて行った。

再び無人になったステージ。するとスクリーンの映像が始まった。車を運転しながら何気ない話題で盛り上がるファームハウスとサンテナが映っている。「ドン!」。突然、大きな音がした。不注意で通行人をはねてしまったのだ。「ヤベーぞ!」「お前がちゃんと前を見て運転してないからだろ!」と責任をなすりつけあっていると警官が登場。「こいつが悪いんです」「いや、こいつが」と揉めている2人をなだめながら警官が静かに口を開く。「まあ、待て待て。そういうことだったら、テニスで決めろ」。謎の一言を放ちスクリーンの映像が終わると、今度はテニスウェア姿でステージに現れた2人。「テニスで勝負をつけようぜ」と言って「テニス」「幽霊です」「ISCREAM」「疲れました」を連打した。

一息ついて、ファームハウスが『SUSHIBOYSの騒音集 Vol.1』制作時の話をした。「『騒音集』は騒音をテーマに作った曲だったんだけど、実際にすげえテンション上げながら、爆音で音源を作っちゃったんだ。そしたら『大学生がパーティしてる』と通報されて家に警察が来たの。でさ、俺は嬉しくて出来たばかりの曲を警察に聴かせたんだ。そしたら、一言『ヤバいね!』だって。で、俺はその警察のことも歌詞に入れてやったの。それが次の曲――」。そう言って「LOUD」を流し「うるさくても知らねえ 警察呼ばれた 何も止まれねえ」と声高らかに歌い上げた。

中盤に入り、この日3回目となる映像が始まった。車で轢いてしまった通行人が無事だったことを知り、安堵する2人。気分が良くなり、ギター探しは諦めて何故か海までドライブすることに。浜辺に到着すると、家を訪ねてきた例の警官が立っていた。ファームハウスにギターを返して「これからもカッコいい音楽作れよ」と去っていく。と……これで映像が完結したわけだが、正直メッセージ性があったわけでもなく「なんか面白いっしょ?」的な内容だった。そもそもSUSHIBOYSのライブは「楽しいと思うことをとにかくやる」というスタンスだったことを再確認する。いつでも肩肘を張らずに、バイブスの鳴る方へ突き進む。

気づけばライブは終盤に差し掛かっていた。ファームハウスが観客に向けて話し始める。「次は「SANAGI」という曲をやります。これは俺が人生で一番悩んでいた時期に作った曲です。もう音楽を辞めてもいいのかな、という気持ちになってた。だけど、みんなコロナの状況なのに来てくれて。……今、やっぱり音楽をやってて良かったなと、クサイ話ですけど思います」。ライブレポート冒頭の発言である。「俺はまだまだサナギだけど、いつかは蝶になりたいと思いながら、これからも生きていきたい」。――「SANAGI」の歌詞にこんな一節がある。「いつ死ぬかなんて本当に分からない Yeah 何故生きているかもよく分かんねえ」。そして最新作「必要ない」では「適当に生きて 適当に死ねばいい 必要なものなんて死ぬまでわからないよ」と歌う。コロナ禍になって、ステイホームをせざる得なくなり誰もが空虚感を覚えた2020年。この先のことに不安を覚えた人も多いはず。
「生きる意味を求めてもしょうがねえ。今を存分に楽しもうぜ」。この日、SUSHIBOYSがそう教えてくれた気がした。楽しめばいい。それがライブだ。
最後に披露したのは「save」だった。ファームハウスもサンテナも、そしてマスク越しだが観客もみんなが笑っている。ステージから、こんな歌が聴こえてきた。「将来の夢はない てか将来すら見えないくらい 今が楽しい」。

SET LIST

01. DA-DA-DA
02. SUIMIN
03. テニス
04. 幽霊です
05. ISCREAM
06. 疲れました
07. LOUD
08. 必要ない
09. 死んだら骨
10. 軽自動車
11. ダンボルギーニ
12. ママチャリ
13. 高速道路
14. OMG
15. Shopping Cart Racer
16. Good day
17. アヒルボート
18. SANAGI
19. DRUG

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■2020.12.11 SUSHIBOYS at LIQUIDROOM セットリスト

  • 真貝聡

    取材・文

    真貝聡

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  • 撮影

    中山桜

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