山崎千裕+ROUTE14band、「10年間の感謝を伝えたい」配信ライブ収録の模様をレポ

ライブレポート | 2021.02.23 18:00

トランペットの山崎千裕を中心としたインストゥルメンタルユニット「山崎千裕+ROUTE14band」が、結成10周年を記念して無観客で収録したライブ「JOURNEY」を2021年2月28日から1週間限定で有料配信する。初期の「にんじん」から、最新曲「JOURNEY」など19曲を演奏したライブには、鍵盤奏者の河野啓三、ギタリストの三浦拓也(DEPAPEPE)、演歌歌手の神野美伽など縁があるアーティストがゲストとして出演。節目のステージを盛り上げた。

「10年間支えてくださったみなさんに恩返しがしたい」と企画された配信ライブ。「感謝の気持ちを伝えたい」と思いを込めたステージは、人生の旅をテーマに書き下ろした「Journey」で幕を開けた。日本はもちろん、アメリカ、韓国、ニュージーランドなど音楽と共に世界を駆けてきた5人。初めての土地での不安、音楽という共通言語で理解し合えた喜びなど、編み上げていく音の中に、さまざまな感情が浮かび上がっていく。山崎のまっすぐなトランペットの音色からは、「信じた道を突き進んでいく」という力強さが感じられた。

「10周年。丸ごと昔の曲から、最新曲までやらせていただきます」という山崎の挨拶の後に、ベースの山本浩二、キーボードの高見英、ドラムの山下智、ギターの保坂亮太の順にメンバーを紹介。ふんわりとした空気のまま、春の日を思わせるような「にんじん」が奏でられた。身体をスイングさせながら演奏する山崎。交わすアイコンタクトに、柔らかい時間が広がった。

笑顔の花が咲いた「にんじん」から一転。高見のしっとりとしたキーボードで始まった「if」は、過ぎた日を思い返すような、ほろ苦さが感じられた。交差するキーボードとトランペットは揺らぐ感情のよう。断ち切るような力強い山崎の表現には、選んだいまの道を信じ、顔を上げていくんだという決意がにじんでいた。

聴き手を街を疾走する車に乗せた「ESCAPE」ではスリリングな演奏で引き込んでいく。窓の外を流れていくライトは、一本の線になる。そのスピード感に圧倒された。静と動が共存する最新曲「Changing」では、色彩豊かな表現で聴き手を魅了した。

10年目のアニバーサリー。共に祝おうと最初に呼び込まれたのは、昨年3月にアメリカ・テキサスで予定していた世界最大級の音楽イベント「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト=コロナ禍で中止)」に同行していたダンサーのazumi。高見の鍵盤に合わせ、ピンスポットの下で、ショーガールのように足を高く上げて盛り上げていく。投げキッスで釘付けにすると、「砂漠に咲く花」では、黒の衣装からセクシーな紫色のベリーダンスの衣装にチェンジ。舞台にひざまずいていたazumiが、音楽によって命を吹き込まれ、蝶のように舞う様子は圧巻だった。

続いてステージに上がったギタリストの三浦は、10年来の仲。共演した「Mr.miz」では、レコーディングの際、「ドラムしか入っていない段階で『ギターソロを弾いて』と言われた。伴奏がない中でエレキギターを弾いたのはあれが初めて」と裏話を告白。山崎は「正式なギタリストがいない時期で、色んな人に来てもらっていた。まだ自分の頭の中のことがアウトプットできていないときだった」と苦笑いしていた。

山崎のメジャーデビューアルバム「GOOD ONE」(2014年)をプロデュースした編曲家でキーボード奏者の河野を招いた場面では、河野から「同世代で集まっているバンドの結束力が見えてうらやましいと思う。20周年に向かって今よりもっと楽しいこと、苦しいことも出てくると思うけれど、20周年は倍以上の感動を味わえると思う」とエールを送られると、山崎が「泣きそうです」と一言。緊張していたのか、「大切なメジャーアルバムから、『GOOD ONE』」と続けると、会場のスタッフから「違うよ。タイトルが違う」と山崎が突っ込まれる場面も。目を丸くした山崎は、一呼吸置き「『GOOD ONE』から『ホントノコト』をお届けしたいと思います」と言い直す、収録ならでは一コマもあった。

「MCは難しい」と話していた山崎だったが、演奏での表現は一流だ。空に羽ばたいていく鳥のように、伸びやかなトランペットの音を、優しく支える河野の鍵盤が印象に残った。神野とは、2018年のSXSWで共演したことが縁で親交が続いていた。配信ライブでは、高見が作曲、神野が作詞を手がけた「Dear Friends」で共演。アメリカでは『ENKA DIVA』の異名を持つ神野の歌とバンドの融合は聴き逃せない。

「Mahal」では、azumiとC-oneが艶めかしい動きで聴き手をあおっていく。山下の力強いドラムと共演したシーンでは、切れ味鋭いダンスを展開。フロアで見ていた三浦は「かっこいい。僕も踊りたい」とこぼしていた。ドラムのカウントでスタートした「Spice of Life」では山崎とC-oneが息の合ったダンスを披露。会場をわかせた。保坂のギターソロでは、C-oneが保坂と向き合い、ダンスとギターでバトル。山下のドラムソロでは、両足を踏みならすなど、音に合わせて変化するC-oneの動きも見逃せない。

再び河野を招き入れた「hands」では山崎が「私たちが楽しんで10年やってこられたのは、楽しんで聞いてくれるみなさんがいるから」と感謝。「これからもワクワクすることに向かって、チャレンジをどんどんしていきたいと思います」とさらなる飛躍を約束した。トランペット、ドラム、ギター、ベース、鍵盤。互いの手を取り合うように。音を重ね、唯一無二の作品を編み上げていった。

回転するミラーボールが、会場を宇宙空間に変えた「Do it!」では、アコースティックギターを持った三浦も参戦。お祭りムードを盛り上げていく。山下、高見、河野、三浦がソロを繋ぐなどして、盛り上がりは最高潮になった。

5人だけで舞台に戻ったアンコールでは、真っ赤に燃え上がった照明の中で「Japan」を披露。10年間に培った経験をぶつけるようなステージで魅了した。ダンサー2人が再登場した「中国の踊り」では、山崎も再びダンスにチャレンジ。右手にトランペットを持ち、楽器から離した左手を懸命に揺らす様子は、リモートで見ているファンとひとつになることを願っているかのようだった。

コロナ禍で2020年は対面でライブを行うことがかなわなかったが、「10年間の感謝を伝えたい」と配信ライブを行うことを決意。無観客で行った収録では時間の制約などがある中、メンバーの希望で曲を演奏し直すなど、全力を注ぎ配信用の映像・音源を作り上げた。本編の最後、「また実際の会場でお会いしましょう」と口にした山崎。バンドの音楽が世界にライブで響き渡る日が待ち遠しい。

  • 翡翠

    取材・文

    翡翠

  • 撮影

    井上ナホ

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