爆音の中に咲いた5輪の花!チケット完売となったNEMOPHILA 2年ぶりの有観客ワンマンライブ!

ライブレポート | 2022.01.14 18:00

NEMOPHILA 『REVIVE ~It’s sooooo nice to finally meet you!!!!!~』
2022年1月9日(日)LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

2022年1月9日、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)。開演10分前に客席エリアへ入ると、広いステージに掛けられた白い紗幕に映し出された数字が9:30、9:29、9:28……と1秒ごとに減っていく。時間的にも開演までのカウントダウンのようだ。

ラウドロックを基盤に様々なジャンルを取り入れ、“音は地獄のように激しく、その他はゆるふわ”を標榜する地獄のゆるふわバンド、NEMOPHILA。2019年8月から活動を開始し、そこから半年ほどでコロナ禍に突入してしまうものの、オンラインライブや動画投稿、公式サイト通販でのシングルリリースやストリーミングサービスで、世界中のラウドロックファンを魅了してきた。このLINE CUBE SHIBUYA公演が、初の全国流通盤となる1stフルアルバム『REVIVE』のリリース前にソールドアウトしたことは、それを十二分に物語っている。

この日はバンドにとって約2年振りとなる有観客ライブであり、むらたたむ(Dr)が産休を終えてメンバー全員が揃った初のワンマンライブ。自分たちの巣で様々なトライをするなか力を蓄えてきた怪物がとうとう我々の目の前にその姿を現した――まさにバンドのスタート象徴となる日だったのではないだろうか。

紗幕に映し出されたカウントダウンが0:00を迎えると、暗闇に包まれた場内に不穏なSEが流れる。その音が止まるや否や「鬼灯」のイントロのギターが響き渡り、紗幕にはメンバーのシルエットが。するとmayu(Vo)のスクリームとともに幕が落ち、ステージ上には『REVIVE』のアー写と同じ衣装を身にまとった5人と、その奥にそびえ立つ巨大なバックドロップが露わになった。1曲目からテンションはマックスで、場内を駆け巡る爆音に気を失いそうになる。それだけ5人の気合いが溢れているということだろう。

mayu(Vo)

続いての「雷霆-RAITEI-」では前衛4人がお立ち台でパフォーマンスしたりと、ステージをフルに使う。照明のLEDセットがステージの両脇に構えられ、スリリングでド派手なライティングが施されるものの、ステージ自体は非常にシンプル。5人の演奏と歌唱、そしてパフォーマンスを中心に置いたライブというだけあり、序盤からそれぞれの個性が際立っていた。

SAKI(Gt)

葉月(Gt)

mayuは憂いのあるメロディに強い芯を宿すようなひりついたボーカルを繰り出し、SAKI(Gt)と葉月(Gt)は間奏でギターソロを掛け合い、ツインギターを披露する。ハラグチサン(Ba)は笑顔で凄みのあるベースを鳴らして石板の如くグルーヴを支え、むらたたむのドラムは余裕を醸しだしつつも前のめりで、爆発力を絶やすことがない。1曲のなかで主役が移り変わっていく様も目まぐるしく、油断していると振り落とされそうだ。

ハラグチサン(Ba)

「こーんにーちはー!」と某お笑い芸人のツカミを全力で行ったmayuが、キュートな笑顔を浮かべて「このまま加速していくぞ! 最後まで楽しんでいってください!」と叫ぶと、「SORAI」へ。ポップでありながら激しく、妖艶さも併せ持つサウンド感、弦楽器隊がヘドバンやしゃがむタイミングを揃えたり、同時に3人がセンターのお立ち台まで出てきてパフォーマンスをするなど、オードブルのように欲張りなステージングだ。アウトロでは前衛4人がドラム前に集まってヘドバンしながら演奏。音源化はしていないもののライブの定番曲にもなっている「Night Flight」も、豪華絢爛なライティングにダンスを取り入れたパフォーマンスを繰り広げるなど、エンタメ性も併せ持つ。硬派でありながらも遊び心は忘れない。“地獄のゆるふわバンド”の異名に偽りなしだ。

むらたたむ(Dr)

むらたたむとmayuのツインボーカル曲「Breaking Out」をエモーショナルに届けたあと、自己紹介のMCでは「みなさんの心臓にバスドラムを突き刺そうと思うので楽しみにしててください~!」「ベースでみなさんの身体からいろんなものを出したいと思います!」「ギターのズクズク音でみなさんの脳みそをかき混ぜます」と、ここでも地獄のゆるふわテイストを発揮。SAKIは客席を見渡して「よく来たね~! 3階席まで見えてるよ! 配信のみなさんも!」と笑顔で観客と配信の視聴者を歓迎した。

「REVIVE」では4ヶ所から火の玉が吹き出し、mayuもそれに負けないスクリームを轟かせる。ハラグチサンとmayuのツインボーカル曲「Blooming」では、SAKIが凄みのなかに熱さを宿す、葉月が涼しくもアグレッシブなギターソロを響かせ、ツインギターセクションではそのふたりの音色が混ざり合うからこそのロマンチシズムとカタルシスが生まれていた。キャッチーなメロディが存在感を放つ「Fighter」ではリズム隊のソロ合戦から「ねこふんじゃった」を織り交ぜたあと抱擁を交わしたりと、気を抜く暇がないほどに刺激的なコンテンツの応酬。カラフルな照明も、彼女たちの作り出すパワーをさらに焚きつけていた。

エキゾチックでオリエンタルなムードが妖しく広がる「HYPNOSIS」では異世界の怪物のような身のこなしのmayuが圧倒的な存在感を放つ。ミドルテンポの「GAME OVER」、「Creature」では強い思いを聴き手に突き刺してこようとする彼女の歌が印象的だった。楽曲自体は憂いや涙を感じさせていても、彼女たちの音や歌はつねに笑顔で未来を見据えているように晴れやかだ。それはバンドが花の名を冠しているのも一因だろうか。自分たちの美学を最善の状態で咲かせようとする矜持が、5人の佇まいからまっすぐ立ち上っていた。

今年の6月に全国5ヶ所を回るZepp対バンツアー「NEMOPHILA Zepp Tour 2022 ~虎穴に入らずんば虎子を得ず~」を開催することを発表すると、観客から大きな拍手が起きる。メンバーを代表してmayuがツアーが開催できる喜びと感謝を伝えると、その思いに応えるように客席からよりあたたかい拍手の音が響き渡った。mayuの「ラストスパートいけるかー!」の掛け声で、キラーチューンを畳み掛ける5人。シャウトと同時にスモークが噴射する「DISSENSION」、火の玉とヘドバンの乱れ打ちが起こった「OIRAN」は、本編の最後にすべてを引っ掻き回すようなサウンドスケープだった。

アンコールは「これからの人生を明るく照らすような曲です」とmayuが語った「Life」。曲中で彼女はメンバーとバックドロップを見渡しながら歌う瞬間があった。その背中はどこか物思いに耽っているようだ。「心のなかで一緒に歌ってください」と呼びかけたmayuは、歌いながら涙を流す。結成からたった2年半で、コロナ禍でありながらも快進撃を続けている彼女たちだが、メンバーしか知り得ない様々な気持ちを抱えながら辿り着いたロックの聖地・渋谷公会堂だったのだろう。隙を見せることなく気丈に振る舞っていた彼女の涙に思いを馳せた。

演奏を終えたあとステージの前方で5人が肩を組み、SAKIとむらたたむが母のような表情でmayuの頭を優しく撫で、葉月とハラグチサンがそれを見守るシーンは、NEMOPHILAというバンドがこの先さらに結束を強めていくこと、深いグルーヴを作っていくことを予感させた。6月のZeppツアーは全公演で強力な対バンが決定しているという。観客と目を合わせながらライブを重ねていくことで、彼女たちはもっと鮮やかな花を咲かせていく――そんな期待に胸が躍る一夜だった。

SET LIST

01. 鬼灯
02. 雷霆 -RAITEI-
03. SORAI
04. Night Flight
05. Breaking Out
06. REVIVE
07. Blooming
08. Fighter
09. Rollin’Rollin’
10. HYPNOSIS
11. GAME OVER
12. Creature
13. MONSTERS
14. Change the world
15. DISSENSION
16. OIRAN

ENCORE
01. Life

本公演の配信アーカイブあり!

チケット販売:2022年1月16日(日)21:00まで
ご視聴:2022年1月16日(日)まで

詳細
https://l-tike.zaiko.io/e/nemophila1029
  • 沖 さやこ

    取材・文

    沖 さやこ

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  • 撮影

    半田安政

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