ROTH BART BARON「日比谷でやれて本当によかった、来てくれてありがとう!」 月明かりの中、歓喜の余韻を残し終演。

ライブレポート | 2022.08.15 18:00

ROTH BART BARON “BEAR NIGHT 3”
2022年8月7日(日) 日比谷野外大音楽堂

2022年8月7日(日)、ROTH BART BARONが「夏の祭典」として行っている企画ライブ『BEAR NIGHT3』が、日比谷野外大音楽堂で開催された。『3』と銘打ってるとおり、今回で三度目であり、この企画以外も含めて、ROTH BART BARONがワンマンを行う会場として、日比谷野音は過去最大である。
客席は前方から「ヒグマ・エリア」「シロクマ・エリア」「「ツキノワグマ・エリア」、そして後方のスタンディングエリア「コグマ・エリア」の4つのブロックに分けて、チケットの料金設定がなされている。会場装飾やグッズ販売などに関して、バンドのコミュニティ“PALACE”のメンバーたちによるボランティアチームが、サポートしており、その“PALACE”がこの日のために制作したZINE「ROAR MAG」が、入場者全員に無料配布された。

この日のバンドは、西池達也(keyboard)、岡田拓郎(guitar)、Marty Holoubek(bass)、工藤明(drums)、竹内悠馬(trumpet)、須賀裕之(trombone)、太田垣正信(trombone)のレギュラー・メンバーに、西田修大(guitar)とermhoi(vocal/keyboard)が加わって、三船雅也(vocal/guitar)をバックアップする10人編成。
さらに、ゲストとして、中村佳穂(vocal)、角館健悟(vocal/guitar・Yogee New Waves)、森大翔(vocal/guitar)、本間将人(saxophone)が出演することが、事前にアナウンスされた。が、本間将人は当日直前に、コロナ感染のため、出演できなくなった。
なお、この日のライブは、Streaming+で生配信も実施された。

開演10分前、ROTH BART BARONでキーボードを担当する西池達也が登場し、いわゆる前説を務める。
会場内での飲食のルール、撮影とSNS等へのアップがOKであること、“PALACE”のメンバーたちが運営をサポートしていることなどを伝えた上で、今日の入場者数はキャパの上限を下回っているので、自分のチケットのエリア内なら空いている席に移ってもいいことにする、という、オペレーションの変更を発表。それまで固まって座っていたオーディエンスが、自由にあちこちに散らばったことによって、会場の空気感が、ぐっとピースフルなものになった。

ライブは、1曲目「電気の花嫁-Demlan-」から7曲目「Campfire」までを『夕暮れロット』、8曲目「BLUE SOULS」から13曲目の新曲「月に吠える」までを『日の入りロット』、14曲目から本編ラストの18曲目「けもののなまえ feat.ermhoi」を『夜ロット』と銘打った構成。日比谷野音が昼間から夕暮れになり、夜の闇に包まれていく、その時間経過とリンクさせたセットリストである。
『夕暮れロット』の7曲は、10人のフル編成による演奏。続く『日の入りロット』の最初の曲「BLUE SOULS」が終わったところで、三船雅也・岡田拓郎・西田修大の3人になり、そこに最初のゲスト、森大翔が加わり、「BURN HOUSE」をプレイする。
次の曲は、ermhoi以外のメンバーが全員戻り、プラス森大翔の10人編成に。レコーディング帰りのクルマでラジオを聴いていたら、自分の「極彩|IGL(S)」がかかった、曲が終わると森がROTH BART BARONについて熱弁していた──というMCを、三船雅也がはさんでから、森大翔の曲「台風の目」を披露した。

「国際フォーラム(のライブを)観に来てくれて、『連絡先を交換しましょう』って言われて。今、曲作ってるんですよって言うから、それならロットで一緒にやったらいいんじゃないって話で」と紹介されたふたり目のゲストは、 Yogee New Waves角館健悟。その未発表の新曲を初公開してから、「風の通り道」というタイトルであることを、角館健悟が明かす。次は、森大翔のときにも話に出た「極彩|IGL(S)」。三船雅也曰く、 「ロットの曲で何をやりたい? ときいたら、これをリクエストされた」とのこと。

森大翔

角舘健悟

中村佳穂

そして、「この曲ができた時に、どうしてもこの人の声が頭から離れなくて。むちゃくちゃ忙しいのに、来てくれました」という紹介で、中村佳穂が登場する。
「今日は月が出るかわかんないけど、月に吠えている曲です」と、未発表の新曲「月に吠える」を、共に演奏する。演者たちからは見えない位置だったのだろうが、客席後方から見ると、ステージの左上に半月が輝いている、という最高のシチュエーションである。
「BLUE SOUL」の一節を歌い出し「何が起こるかわからない」という歌詞に、中村佳穂は、そこに「私も」というひとことを付け足した。

14曲目「000BigBird000」から、本編ラストの18曲目「けもののなまえ」までの『夜ロット』は、ゲストなしの10人で演奏。ただし、17曲目「X-MAS」に入る前に三船雅也、「今日、ほんとは本間さんがここで吹いてくれるはずだったんだけど、出れなくなっちゃって」と報告する。「でもまあ、いつか必ずリベンジするんで、またよろしくお願いします」と言ってハンドマイクで歌い始める彼を、大きな拍手が包む。
「けもののなまえ」ではermhoiがリードボーカルをとり、三船雅也はステージ前方でアグラをかいて歌ったり、寝そべったり、ムクッと起きてまた歌ったりした末に、曲の後半で立ち上がり、演奏に乗せて挨拶。コロナで大変な中、集まってくれたオーディエンスへのお礼や、「もう一生とれるかわかんないけど日比谷でやれてよかった」という喜びや(※日比谷野音は抽選制で、おそらく東京でもっとも取るのが難しい会場である)、スタッフや“PALACE”やゲストたちへの感謝を伝え、「またみんな会おうぜ」と締めくくった。

アンコールでは、まず、11月2日にニューアルバム『HOWL』をリリースすることと、9月26日にブルーノート東京でジャズ編成でライブを行うことを告知。
そして、「ほんとに今日、やれてよかった。みなさん、来てくれてほんとにほんとにありがとうございます」「今日の朝、土砂降りの夢で目が覚めました。晴れ人間がいてくれて助かったよ、ありがとう」と、改めて喜びを伝えてから、「岡田と西田と出会った頃の曲をやろうと思います」と、ermhoi以外の9人で「化け物山と合唱団」へ。
さらに、ermhoiが加わって「小さな巨人」と「鳳と凰」、以上の3曲を、アンコールでオーディエンスに贈った。

三船雅也のアコースティック・ギター&歌とオーディエンスのハンドクラップで始まり、そこにバンドの演奏が徐々に加わって楽曲の形になり、最後にまたアコギ&歌&ハンドクラップの形に戻って終わった「鳳と凰」のあと、三船はメンバーをひとりずつ紹介し、ゲストたちも呼び込み、全員で肩を組んで、一礼した。

晴れているが幸いにして猛暑日ではない、でも観ているとじんわりと汗がにじむ程度には暑い、そして日が暮れると共に徐々に涼しくなっていく、という天候。野音を囲む木々は、1年の間でもっとも濃い緑色。蒸し暑い空気に乗って、緑と土の匂いがしている。演奏中でも耳に入るくらい響いていたセミの声が、いつの間にか止み、秋を思わせる虫たちの声に替わっている。
という、「この季節」「この時間」「この場所」などの、すべての条件が最良の形で揃ったような、とてもマジカルな時間だった。ただ、それらは、運に恵まれただけではなく、ROTH BART BARONの音楽が、演奏が、パフォーマンスが、呼び込んだもののように、自分には思えた。
日比谷野音は音がいい会場だと思うが、その中でもとりわけすばらしかった音響。曲に合わせて表情を変えていく、照明やLED等の演出。ひとりひとりの出す音のキャラがいちいち立っている上に、それらが塊となった時の一体感も際立っている、バンドの演奏。
そして、言うまでもないが、三船雅也の歌。あの声が形にしていくメロディと、そこに乗る言葉の数々。特に、アンコールの最後の「鳳と凰」は、一声一声が(歌詞の乗っていない箇所も含む)、そしてひとことひとことが、聴けば聴くほどに、「ああ、確かに最後にやるしかないなあ、この曲。他のどこにも置けないなあ」と思わされる、そんな強さに満ちていた。

メンバー+ゲスト、全員での挨拶を終え、ステージを去る時、最後に三船が「良い夏を」と言ったのが、ちょっとおもしろかった。他人事みたいにそう言う感じが。
いや、たった今、あなたが我々の夏を「良い夏」にしたところじゃないですか、と思ったのだった。この夏がずっと「良い」わけではなかったとしても、少なくともこの2時間は、間違いなくそうだったので。

ROTH BART BARON
三船雅也 -vocal/guitar-
西池達也 -keyboard-
岡田拓郎 -guitar-
西田修大 -guitar-
Marty Holoubek -bass-
工藤明 -drum-
ermhoi -vocal/keyboard-
竹内悠馬 -trumpet-
須賀裕之 -trombone-
大田垣正信 -trombone-

〈Special Guest〉
中村 佳穂 -vocal-
角舘 健悟 (Yogee New Waves) -vocal/guitar-
森 大翔 -vocal/guitar-

SET LIST

01. 電気の花嫁 -Demian-
02. Buffalo
03. King
04. 春の嵐
05. EDEN
06. Eternal
07. Campfire
08. BLUE SOULS
09. B U R N H O U S E feat.森大翔
10. 台風の目 feat.森大翔
11. 風の通り道 feat.角舘健悟
12. 極彩|IGL(S) feat.角舘健悟
13. 月に吠える feat.中村佳穂
14. 000BigBird000
15. U b u g o e
16. フランケンシュタイン
17. X-MAS
18. けもののなまえ feat. ermhoi

ENCORE
01. 化け物山と合唱団
02. 小さな巨人
03. 鳳と凰

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