nano.RIPEが1日限りの全シングル曲演奏ライブを開催!12年間の軌跡、そして新曲も披露し、13年目のスタートへ!

ライブレポート | 2022.10.04 17:00

nano.RIPE 12th Anniversary LIVE「そらとぶベッド」
2022年9月23日(金・祝) 渋谷CLUB QUATTRO

 ボーカル&ギターのきみコさんとギターのササキジュンさんのバンド、nano.RIPEがメジャーデビュー12周年を記念したライブ『そらとぶベッド』を開催! 1日限りのスペシャルライブで、nano.RIPEがリリースしてきた全シングル曲を演奏するという初の試み。しかも全24曲中23曲がタイアップであり、それぞれの曲に作品の想い出も紐づく。nano.RIPEと一緒にタイムカプセルを開け、新しい想い出も詰め込む。そんなライブになった。

 きみコさんが綴る歌詞の独特の世界観や、透き通るような声ながら芯が通った歌声、ササキさんが織り成すメロディラインで多くのリスナーをトリコにしてきた。またシングル曲はアニメなどの作品のタイアップがほとんどで、作品に寄り添いつつ、nano.RIPEらしさは失わない。その難しいチャレンジの繰り返しを12年続けてきた。それらのシングル曲だけを演奏するライブとはどうなるのか?シングルというだけでもそれぞれ強烈な個性があるのに、そこにタイアップの作品のパワーものってくる。豪華でもあり、予測できない化学反応もありそうな、前代未聞のライブになりそう。
 事前に演奏される曲は発表されていたが、曲順はまったく知らされていない。ワクワクしながら開演を待っていると、オーバーチュアが鳴り、きみコさんの朗読が聴こえてきた。星や夜を感じさせるような詩で、最後の「きみに今、出会えたから」で一段とバックの音が大きくなり、会場もそのリズムに合わせてクラップ。そしてステージにnano.RIPEが登場。
 オーバーチュアが鳴り終わり、「こんばんは! nano.RIPEです」ときみコさんがあいさつすると「スターチャート」。ギターをかき鳴らしながら、伸びやかで澄んだ声でエモーショナルに歌うきみコさん。歌詞を聴いていると朗読ともリンクしているような。Dメロに入り、ササキさんが頭を激しく振りながら演奏すると会場も速いクラップ。きみコさんも赤い髪やギターを何度も大きく揺らす。1曲目からトップギアに。2曲目の「つぎはぎもよう」はきみコさんとササキさんのツインギターが奏でるきれいなメロディラインのABメロからサビではサポートドラムの菅間 匠さんが刻むバスドラのリズムと、きみコさんのボーカルが会場の鼓動を高めていく。そのままササキさんが刻むさわやかなギターリフから始まる「なないろびより」では一転してそよ風のさわやかさを感じるようなサウンド、「あおのらくがき」ではポップに、サビ前のお客さんの「パンパン」のクラップからアップテンポに変わる楽しい曲。きみコさんも歌いながらおでこを叩いたり、両手を広げたりと手振りやアクションも。最初の4曲だけで、nano.RIPEの多面性が感じられた。

きみコ(ボーカル&ギター)

ササキジュン(ギター)

 最初のMCで、きみコさんは会場を見渡しながら「いっぱいだー!」と喜びつつ、「ありがとうございます。昨日でメジャーデビューから12周年を迎えることができまして、今日はそのお祝いを盛大にパッと開こうと」。またセットリストを事前公開したことに触れ、「セトリがわかるとつまんなくなったり、来たくなくなっちゃうかもと思っていたら、こんなに来ていただいて」と嬉しそう。会場には初めてnano.RIPEのライブを観に来たお客さんも多く、「何してたの今まで。12年やっているんだよ。今日その一歩を踏み出してくれて、どうもありがとう。会えて嬉しいです」。一方のササキさんは、演奏中はクールなのに、急に大きな声で「今日も1日よろしくお願いします。名前だけでも覚えて帰ってください」とそのギャップにびっくり。「今日は初見の人もいるからふざけないつもりだったのに」と反省するおちゃめさも。
 またきみコさんは「こんなにお客さんが歌うことがある?っていうくらい一緒に歌ってきて。今は一緒に歌うことができないので、一緒に歌いたい時には手のひらから声を出すイメージで見せてください。それだけでもぼくらはみんなからの声を感じることができるし、みんなも少しは気がまぎれると思うので。これならAメロやオチサビでやっても大丈夫だから(笑)」と楽しみ方もレクチャー。
 照明が青い薄明りに照らされる中、きみコさんにピンスポが当たり「絵空事」神秘的な歌い出しから一気にドラムビートでBPMが上がり、会場も高速クラップ。きみコさんも歌いながら胸をどんどん叩いたり、身振りも歌い方も激しく。間奏やDメロではテンポが落ち、大サビでは再びアッパーにとアップダウンを繰り返すジェットコースターのよう。次の「ライムツリー」では真っ赤な照明になり、イントロから畳みかけるビートで演奏が激しく、きみコさんもより張った歌声で、カッコいいバンド感を堪能。「こだまことだま」はマーチみたいな軽やかな曲でササキさんたち楽器隊も笑顔で、Dメロではきみコさんが弾き語る中、ササキさん、サポートベースの菅野 信昭さんのフロントメンバーがお客さんと一緒にクラップ。ちなみに曲名がひらがな7文字なのはアニメ『のんのんびより』シリーズの楽曲だけ。こんなところにもnano.RIPEのこだわりや遊び心も。「透明な世界」も明るく、ハツラツとした曲で、きみコさんやササキさんらの笑顔が随所に見られ、Dメロでは客席中央を指差したり、楽しんでいる感じ。

 「みんながどのタイミングで出会ってくれたのかは人それぞれだと思いますが、あなたがnano.RIPEを見つけてくれた曲が今日は多いのでは?『この頃、この曲をたくさん聴いていたな』とかいろいろと想い出せる、そんな1日になればいいなと思います。あたしも歌いながら作品のことや当時のこととか思い浮かんできました」と語るきみコさん。
 この前の4曲とは打って変わって、ミディアムナンバーの「ヨルガオ」。NHK『みんなのうた』で2019年8月~9月に流れていた曲で、しっとりした曲ではきみコさんの歌声がより心に染みてくる。続く「細胞キオク」もミディアムチューンで、終盤では歌いながら優しく微笑むきみコさんが印象的だった。ゆっくりとしたリズムを刻むドラムソロから「月の明かりに照らされて咲く、光る花の曲を1曲」と紹介して「月花」。会場は光るリストバンドを付けてクラップ。きみコさんのさわやかな歌声とササキさんがつま弾くギターリフが心地いい。
 会場の構造上、柱がお客さんの視覚をさえぎることもあり、「ちゃんと見えてる?」と気遣いながらも男性が多いことに、「いつの日かこの男女比が逆になることを夢見て」と言って笑わせるきみコさん。「もちろん今いる人もこのままで、大きくなっていくということだからね」。
 折り返し地点にさしかかると「エンブレム」、「虚虚実実」と再びアッパーな曲の連続で、メンバーの動きも大きく、激しく。「スノードロップ」では真っ赤な照明の中で、きみコさんは髪を振り乱し、ササキさんと菅野さんはヘドバンとアグレッシブに。
 MCでこの日の会場であるCLUB QUATTROの話題になり、「東京でのワンマンやツアーファイナルはここでやることが多かったので、いきなり今日を迎えてビックリしましたが、12周年というファイナルみたいなことですよね」と話すと会場から拍手。そして、今回なぜ12周年をアニバーサリーにしたのかについて「10周年の時にいろいろやろうと思ったけど、ライブができなくなって。みんなにほとんど会えなかったのが悔しくて。11周年の時もできなくて、やっと今日を迎えられました。10周年のお祝いのつもりでやっています」。また「節目の時にいろいろ思い返しましたが、10周年の時、これからはジュンにもう少し優しくしようと。最初からのメンバーは二人だけになっちゃったので。でも優しくするつもりがここ最近はむしろ厳しくなっているような(笑)」と話すきみコさんに、「昨日、12周年の当日にキレられて。仕事できないなって。『マジかよ!コイツ、何考えてんだ』って(笑)」と返すササキさん。「やっておいてね」と頼まれていたことを忘れてしまっていたため、自分の非を認めつつ、「変わらないままでいいのかな。キレられるたびに『コイツ、マジかよ』と思うだろうけど」と言うササキさん。きみコさんは「じゃあ、このままでいいか」と。冗談でもしnano.RIPEが解散しても「あたしがnano.RIPEを名乗る」と主張するきみコさんに、「nanoとRIPEに分けるのは?」とか提案するササキさん。
 「後半戦行きます」と言って歌い出したのは「ハナノイロ」。3枚目のシングルであり、nano.RIPEの存在を世に知らしめるきっかけになった代表曲の1つ。きみコさんの歌声とエモいメロディ、そしてグルーヴ感は鮮烈だったことを今でも覚えている。お客さんはリストバンドをピンクにそろえ、一緒に心の中で歌唱するように手のひらをステージに掲げる人も多数。まるで一面に咲き誇るひまわり畑のような美しい光景。
アッパーチューンの「面影ワープ」を歌った後、「12年間の間に幸せな経験をたくさんして、その都度この気持ちとみんなの笑顔、この景色を忘れたくないなと思ってきたけど、忘れてしまうこともあって。でも楽しいことがたくさんあるから忘れていくとしたら幸せなことじゃないかと。今日また幸せな時間を過ごしているけど、今の素敵な景色や気持ちも忘れてしまうかもしれない。それが生きるということなのかもしれないと。それでも忘れたくないと思って、今日隅から隅まで見ようと歌っています。そんな気持ちを次の曲に込めて」と紹介してアカペラで歌い出したのは「影踏み」。「夢のような今を少しも色褪せずにココロにしまっておけたらいいな」のフレーズから楽器隊が加わる。ドライブ感と爽快感あふれる演奏で4人は笑顔、間奏ではきみコさんとササキさんが向き合い、指差し合うシーンも。
 MCのたびに「みんなと出会えた曲をまだ聴けてない人」と尋ねていたきみコさんだったが、手を挙げる人もかなり減りつつもまだという人もいて、「何だろ?楽しみ」とワクワクするきみコさん。「24曲なので長いライブになるなと思ったけど、結構あっという間に進んじゃってるね。どうなんですか?こんなにシングルばかりやられる気持ちは?(笑)」。
 終盤に入り、「もしもの話」、「アザレア」とアッパーチューンを続けると客席のクラップと体を揺らす動きも大きく。一層BPMが速くなった「ツマビクヒトリ」ではササキさんが定位置のステージ下手から何度も左右に動き回る。そして「10周年がお祝いできなくて、2年間ろくにライブができなくて。曲は作っていたけれど、やっぱり何かモノたりない。言葉を選ばずに言うとクソみたいな毎日を送っていました。だけど、やっと戻ってきたんだよ、ぼくらのライブハウスが。そしてこれがぼくらのリアルなんだよ。次の曲で心の中のクソみたいな気持ちをタオルを回してステージに送ってください」というメッセージとタオル回しをリクエストして「リアルワールド」へ。かつてnano.RIPE史上最高にポップな曲と語っていたが、間違いなくライブで映えるキラーチューン。
 「信じられないくらい絶好調で、信じられないくらい楽しいです」と満足そうに話すきみコさんは「(ライブで)みんなの声をあまり聴けなくなってから、みんなの手拍子や動きの1つひとつから今まで以上に気持ちが伝わってきて。気持ちを伝える術は言葉だけじゃないんだなとステージで感じています」。そして「これまで通りのライブができるまで、今までとは違う遊び方、楽しみ方を作っていって、またいつか一緒に歌える日が来たら声が枯れるまで一緒に歌いたいと思います」とメッセージを送るとこの日初めて、ギターを置き、ハンドマイク1本を持って、「ラストチャプター」へ。「ラスト」と言いつつも力強いサウンドと歌声で、最後に「ぼくらしくあるために」と歌う希望を感じさせてくれる曲で本編は終了。
 アンコールはきみコさんが描いたイラストからデザインされたライブTシャツで登場。10月2日からアコースティックツアー『にんぎょのいわば』、11月5日からは、10月12日発売のアルバム『不眠症のネコと夜』のリリースツアーをお知らせ。アルバム『不眠症のネコと夜』について「最高傑作ではないかと自信を持って言える素晴らしいアルバムになっています。全曲シングル級です」と紹介。
 アンコール1曲目は「フラッシュキーパー」は全シングルの中で唯一のノンタイアップの2ndシングル。ドライブ感のあるパワフルかつエモいナンバー。タイアップではないけれど、シングル表題曲になったのも納得。そしてシングルで歌っていない曲はデビューシングル「パトリシア」のみ。洗いざらしの気持ちをのせたロックバラードで、発表当時はきみコさんの歌声と刺さるような歌詞に衝撃を受けた。その後、12年間常に心を揺さぶられてきた気がする。そんなことを想いながら聴いていた。
シングル全曲の演奏を終えると、「ここまで終わってほしくないと思うライブは久しぶりです。まだまだやりたい。12年間を振り返る、いい機会になったし、みんなと一緒にこういう時間を作れて幸せです」。そして「せっかくなのでもう1曲やっていいですか?」と驚きの言葉が。いったいどの曲を?「みんなに会えなかった2年間にいろいろなことを感じました。当たり前だと思っていたことが当たり前ではない。わかっているようでわかっていなくて。何の気なしに生きているとあっという間に終わってしまうなと。改めてバンドや自分を振り返った時、ライブをするのが辛かった時が一度だけあって。このクアトロに着くまでにずっと泣いていて、エレベーターが開いた瞬間に『よし!』と切り替えて本番を迎えた覚えがあります。その時から比べてあたしはすごく変わって。それはあたし一人で変われたわけではなく、会いに来てくれるみんながいて、そんな日々は重なって、今日ができていると思います。それと一緒にnano.RIPEのライブも変わっていくと思います。そんな曲をアルバム(『不眠症のネコと夜』)に書きました。その曲を初披露したいと思います」と紹介したのは「トリックスター」。きみコさんは再びマイクを手にして、ドラムビートに合わせて会場はクラップ、歌い出しも「トゥルトゥルトゥルぶっ飛ばして」と、「パッパッパラッパ」から始まる「リアルワールド」をほうふつとさせるポップチューンで、会場はタオルを回し、ミラーボールも回る。ササキさんのコーラスなど、キャッチーで耳に残る曲に。これまでになかったような曲で、最後にnano.RIPEの今後の可能性を広げる曲で締めくくった。
 きみコさんは「12年どこで出会っても、一度でもnano.RIPEのライブを一緒に作ってくれた人はみんな、nano.RIPEです。世界で一番メンバーが多いバンドだと思います。メンバーでも強制参加じゃないからね(笑)。またみんなが会いたいなと思って、心に余裕がある時に会いに来てくれたらいいなと思うし、その時間を作れるようにぼくらはライブハウスで待っています。この先まだまだ続く、nano.RIPEの長い旅を一緒に歩んでもらいたいです」とメッセージ。この日からメジャーデビュー13年目を迎えたnano.RIPEは早くも10月2日からアコースティックツアーがスタート。そして10月12日にニューアルバム『不眠症のネコと夜』のリリース後にはレコ発ツアーがツアーラストの2023年1月14日の渋谷CLUB QUATTROまで続く。振り返りを終えて、もっと楽しいことを求めて終わらない旅へ。

SET LIST

01. スターチャート(2013年5月22日発売)
02. つぎはぎもよう(2021年2月24日発売)
03. なないろびより(2013年10月30日発売)
04. あおのらくがき(2018年8月29日発売)
05. 絵空事(2012年4月25日発売)
06. ライムツリー(2016年2月24日発売)
07. こだまことだま(2015年7月22日発売)
08. 透明な世界(2014年7月23日発売)
09. ヨルガオ(2019年8月21日発売)
10. 細胞キオク(2011年6月29日発売)
11. 月花(2013年5月22日発売)
12. エンブレム(2019年11月6日発売)
13. 虚虚実実(2017年11月15日発売)
14. スノードロップ(2016年8月3日発売)
15. ハナノイロ(2011年4月20日発売)
16. 面影ワープ(2011年8月3日発売)
17. 影踏み(2013年3月6日発売)
18. もしもの話(2012年10月31日発売)
19. アザレア(2018年2月7日発売)
20. ツマビクヒトリ(2013年5月22日発売)
21. リアルワールド(2012年7月25日発売)
22. ラストチャプター(2020年4月22日発売)

ENCORE
23. フラッシュキーパー(2010年12月22日発売)
24. パトリシア(2010年9月22日発売)
25. トリックスター(2022年10月12日発売 7thアルバム『不眠症のネコと夜』収録)

公演情報

DISK GARAGE公演

nano.RIPE ACOUSTIC TOUR「にんぎょのいわば」

2022年10月2日(日) かぼちゃ亭【栃木公演】
2022年10月8日(土) 川口SHOCK-ON【埼玉公演】
2022年10月9日(日) 柏Studio WUU【千葉公演】
2022年10月15日(土) 静岡UHU【静岡公演】
2022年10月16日(日) 紫明会館【京都公演】

チケット一般発売日:2022年8月13日(土)10:00〜

nano.RIPE TOUR 2022-2023 「こおりのどうくつ」

2022年11月5日(土) 仙台enn 3rd
2022年11月19日(土) 梅田バナナホール
2022年11月20日(日) 名古屋ell.FITS ALL
2022年12月3日(土)4日(日) 金沢AZ
2023年1月14日(土) 渋谷CLUB QUATTRO

チケット一般発売日:2022年8月13日(土)10:00〜

RELEASE

『不眠症のネコと夜』

7th Album

『不眠症のネコと夜』

2022年10月12日(水)SALE
  • 取材・文

    永井和幸

  • 撮影

    佐藤広理

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