NEMOPHILAとSHOW-YA、世代を超えた敬意と友情に溢れる2組によるツーマンライブをレポート!

ライブレポート | 2022.10.06 12:00

MASTERWORKS PRESENTS 虎穴番外編「NEMOPHILA vs SHOW-YA」
2022年9月29日(木)KT Zepp Yokohama

今年6月に全国5都市で開催されたNEMOPHILAのZeppツーマンツアー「虎穴に入らずんば虎子を得ず」。各地で名だたる先輩バンドとの競演を果たした彼女たちが、同ツアーの番外編として、事務所の大先輩であるSHOW-YAとのツーマンを実現させた。かねてより親交の深い両者であるが、ツーマンは今回が初。結成3年バンドNEMOPHILAと、デビュー37年を迎えるレジェンドバンドSHOW-YAの競演をこの目に焼き付けようと、フロアには幅広い世代の観客が集まった。

先攻のSHOW-YAはステージに登場するとまず、メンバー全員でNEMOPHILAの「Life」のシンガロングパートをアカペラで歌唱。寺田恵子(Vo)が“拳をかざせ!”と呼び掛け一気に会場のハートを掴むと、1曲目「奪いとれ」から硬派な音色と耽美なメロディで魅了する。

寺田恵子(Vo)

寺田は“今日は虎穴番外編ということでNEMOPHILAとの対バン……タイマン?”や“若いエネルギーをいっぱい吸って、またバケモノになって帰ろうと思っています”などと笑わせる。この発言も、どれもNEMOPHILAを自分たちと対等の立場としてリスペクトしているからこそこぼれてくるものと言っていいだろう。

憂いを帯びたメロディが美しく輝く「水の中の逃亡者」、シンフォニックなイントロから厳たるムードで圧倒する「兵士の肖像」、仙波さとみ(Ba)の凄みのある低音で幕を開けるヘビーで妖艶な「Keep me in your heart」、寺田がペンライトを華麗に振りながら歌唱したキャッチーな「TOKYO, I Scream」と立て続けにプレイ。鮮度の高いサウンドスケープから、自らの美学を貫き通してきた彼女たちの強靭な意志が感じられた。

仙波さとみ(Ba)

角田"mittan"美喜(Dr)

MCで寺田は冒頭で「Life」を一部歌ったことに触れ、同曲にはNEMOPHILAのmayu(Vo)が“NAONのYAON”の出場が叶わず、観客として会場に赴いたときに生まれた“夢を叶えたい”という思いが詰まっていることを知り、よりこの曲を好きになったことを明かす。“NEMOPHILAが夢に向かって突進している姿は、30年前のわたしたちを見ているよう”と語るまなざしは、慈愛に満ちていた。

中村"captain"美紀(Key)

五十嵐☆sun-go☆美貴(Gt)のアコギと寺田の2人編成で届けた「Blue Rose Blues」は寺田のハスキーボイスと五十嵐の深みのある音色が胸を締め付け、中村"captain"美紀(Key)の奏でる音色が楽曲のメッセージ性を繊細に彩った「何故」はドラマチックな展開で観客を引き込む。五十嵐のギターソロと寺田のフェイクの交錯はとてもスリリングで、SHOW-YAというバンドとメンバーの年輪を感じさせる圧巻のセクションだった。

五十嵐☆sun-go☆美貴(Gt)

ソロ回しなどを入れて「BATTLE EXPRESS」を豪快に届けると、続いての「私は嵐」ではNEMOPHILAのSAKI(Gt)と葉月(Gt)が登場。五十嵐とともに3人でイントロや間奏でソロ回しをするなど、より迫力のある音で会場を高揚させる。マイクスタンドを構えた寺田、それぞれの楽器を持ったメンバーたちのアベンジャーズ感は壮観だった。

SAKIと葉月が去った後も勢いをキープし続け「ギャンブリング」へなだれ込み、ラストは「限界LOVERS」。五十嵐と仙波がそれぞれギターとベースを1回転させてフィニッシュさせ、ラストまで凛としたステージを届けた。

後攻のNEMOPHILAはメンバー全員がカジュアルな衣装に身を包んで登場。1曲目「REVIVE」から晴れやかな爆音を響かせた。余裕のある佇まいからも、バンドのグルーヴがめきめきと上がっていることを実感する。間髪入れずにハラグチサン(Ba)がステージ中央のお立ち台に乗ってベースソロを繰り出し「Rollin‘ Rollin’」へ。楽器隊が手堅い演奏と華やかなプレイを見せ、mayuもその様子を笑顔で見守る。バンドの健やかな空気がステージにも表れていた。

mayu(Vo)

ハラグチサン(Ba)

寺田が「Life」について語ったことに触れたmayuは喜びと感謝を告げ、あらためて“わたしたちらしくとことんぶつかっていこうと思う”とこの日の意気込みを見せる。葉月も“SHOW-YAさんは女性の力強さやあたたかさのお手本のような存在で、そんな先輩方が目の前にいてくださることがありがたい”、SAKIも“自分は10代の頃からSHOW-YA先輩にはお世話になっているので、ツーマンをZeppでやらせていただけるのはとても感慨深く、すでにぐっとくる場面が多い”と心境を明かした。

mayuが“次の曲は、己のスタイルを貫きゃいいじゃん! 偽りの仮面は捨てようぜ! という歌詞”と語り「STYLE」へ。ヘビーな音像にクールなラップとボーカルが、歌詞に綴られた言葉に説得力を宿す。メンバーのふとした仕草などにSHOW-YAから継承される伝統を感じるが、彼女たちはあくまで自分たちのスタイルでバンド人生を歩んでいる。いちアーティスト、いちバンドとしての矜持が詰まった楽曲を、SHOW-YAとのツーマンで演奏することは非常に意味深い。「徒花-ADABANA-」では各メンバーのプレイが生きるだけでなくバンドの結束で会場を巻き込み、「Life」はSHOW-YAの思いも加わったことでより伸びやかな優しさを感じさせる。観客も拳に思いを乗せ、それを高く掲げた。

葉月(Gt)

むらたたむ(Dr)

「SORAI」ではSHOW-YAの角田"mittan"美喜(Dr)が登場し、むらたたむ(Dr)とともにツインドラムを披露。ビートが際立つ楽曲ゆえ、ドラムの音色がより映える。アウトロではドラムバトルを炸裂させ、竿隊とmayuもヘドバンで応戦。ロックショーとも言うべき華やかな1シーンだった。そこからさらに勢いをつけ「Fighter」「Change the world」と爽快に畳みかけ観客の高揚を煽ると、MC内で葉月が12月14日に2ndアルバム『Seize the Fate』をリリースすること、その表題曲を10月7日に先行配信リリースする旨を発表。mayuも“楽しみに待っていただけたらと思います”と笑顔を浮かべた。

「鬼灯」、「DESSENSION」とさらに集中力を高め、隅々まで研ぎ澄まされた音像を繰り出す5人。本編ラストの「OIRAN」ではメタルサウンドのなかメンバーも観客も首と身体をキュートに左右に揺らしたり、SAKIのイナバウアー奏法が見事な曲線を描くなど、“地獄のゆるふわバンド”の異名に違わないオリジナリティを見せた。

SAKI(Gt)

アンコールではNEMOPHILAとSHOW-YAの面々が登場。身重のmayuが自身の腹部を優しくさすりながら“ものすごくいい胎教になりました。スクリームしたら(お腹の中で子が)暴れてました”と笑うと、寺田は“ほんと心配で心配で! 生まれてきたらどうしようかと思った”とmayuを慮った。そして締めくくりとしてNEMOPHILAとSHOW-YAの計10人で、SHOW-YAの「FAIRY」をプレイ。何重にもなった音は迫力を超えてハーモニーによる浮遊感が生まれていた。寺田が“NEMOPHILA結成3年、SHOW-YAデビュー37年、足して40年。皆さん40回ご唱和ください!”とフロアに呼び掛けると、観客もふたりの掛け声に合わせて40回拳を振り上げ、盛大にこの日のラストを美しく彩った。

mayuはサクラメントで開催される10月7日の“Aftershock Festival 2022”以降に産休に入り、楽器隊4人は12月5日に下北沢シャングリラにて“NEMOPHILA quartette”としてインストライブ“NEMOPHILA Instrumental Night”を開催する。メンバーが産休に入ってもバンドは止まらずに動き続けること、つまりメンバーが安心して産休に入れるという優しさ由来のタフネスは、ガールズバンドのパイオニアとして我が道を切り開いてきたSHOW-YAの背中を見てきたからこそ育まれたものだろう。女性であることに誇りを持ち、それを謳歌する2組によるツーマンは、世代を超えた敬意と友情に溢れていた。

SET LIST

SHOW-YA

01. 奪いとれ
02. 水の中の逃亡者
03. 兵士の肖像
04. Keep me in your heart
05. TOKYO,I Scream
06. Blue Rose Blues
07. 何故
08. BATTLE EXPRESS
09. 私は嵐 with SAKI&葉月(from NEMOPHILA)
10. ギャンブリング
11. 限界LOVERS

NEMOPHILA

01. REVIVE
02. Rollin' Rollin'
03. STYLE
04. 徒花 -ADABANA-
05. Life
06. SORAI with 角田"mittan"美喜(from SHOW-YA)
07. Fighter
08. Change the world
09. 鬼灯
10. DISSENSION
11. OIRAN
ENCORE
01.FAIRY(NEMOPHILA×SHOW-YA)

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