HONEBONE「SURVIVOR TOUR 2022~巡礼~」完走!ファイナル公演をレポート!

ライブレポート | 2022.10.30 20:30

SURVIVOR TOUR 2022~巡礼~
2022年10月22日(土)渋谷PLEASURE PLEASURE

HONEBONEの14都市16公演をまわるツアー、「SURVIVOR TOUR 2022~巡礼~」のファイナル公演、10月22日の渋谷PLEASURE PLEASUREのステージを観た。感動したり、共感したり、胸が躍ったり、せつなくなったり、笑ったりする、バラエティに富んだ、密度の濃いステージだ。

渋谷PLEASURE PLEASUREが元映画館だったこともあり、映画上映前の注意告知を模した凝った映像での始まりとなった。しかも2人とも映像に出演している。観客に楽しんでもらいたいという2人のサービス精神の表れだろう。観客層は幅広いが、じっくり音楽を聴きたい層が多いという印象を受けた。数曲でスタンディングとなるシーンもあったが、基本的には着席スタイルだ。

オープニングナンバーは1st MINI ALBUM 『Too Many Kisses』収録曲の「ドクター」だった。下手にEMILY(Vo)、上手にKAWAGUCHI(Gt)、そしてステージ中央にはなぜかドラムセットがセッティングされている。MVの映像とバックトラックを流しながらのスタート。クールな歌と演奏での始まりだ。陰影に富んだシュールな歌の世界に引きこまれていく。続いては、EMILYが主演した映画『リスタート』の主題歌でもある「リスタート」。EMILYのアカペラの歌で始まり、伸びやかな歌声に、KAWAGUCHIの力強いアコースティックギターのストロークが加わっていく。映画『リスタート』のダイジェスト映像が流れる中での演奏。空が見えてきそうなスケールの大きな歌と演奏が気持ちいい。

HONEBONEのライブは、2人の“掛けあい漫才的なMC”にも定評があるのだが、「しゃべっている場合じゃないので、いっぱい曲をやります」(EMILY)とのこと。フォーキーな「冷たい人間」では、KAWAGUCHIが歌に寄り添うようにコーラスを付けている。歌とギターという編成は、音数だけでいうと、ハーモニーを除けば、1人の弾き語りとさほど変わらないのだが、2人がともに歌い奏でることによって、刺激しあい、影響しあい、その相乗効果によって、エモーションやテンションの大きなうねりが生じて、熱気と一体感あふれる空間が出現していると感じた。“2人が共有する音楽”から“多くの人が共有する音楽”へ。HONEBONEの音楽の持っている普遍的な魅力を堪能した。

序盤から中盤にかけては、今年2月リリースの6th ALBUM『SURVIVOR』からの曲が中心の構成。「そうじゃなかったじゃん」など、コロナ禍の中での心情が描かれた歌も収録されている。日々の生活の中で感じたことが、飾ることなく率直に歌われているからこそ、リスナーそれぞれが“自分の歌”として共有できるのだろう。EMILYのボーカルは、エネルギッシュな歌声も魅力的だが、ささやくような歌声もいい。ウイスパーボイスでありながら、ニュアンス豊か。「なんにもない一日」「きれいな夜」など、耳をそばだたせて聴き入ってしまった。聴き手の側から歌に近寄っていきたくなるような密やかさを備えている。KAWAGUCHIのギターも人間味と温かさを備えている。2人の歌とギターが、深みと余韻のある歌の世界を形成していく。

「とある出来事があり、整理がつかなかったから、歌にしました」というEMILYの言葉に続いて歌われたのは「捨てられない花」。SNSの悪意に満ちた言葉がもたらした、悲惨な出来事が題材の歌だ。悲しみやとまどいや憤りなど、胸の中で渦巻くさまざまな感情を生々しく表現している。悲痛な叫び声のようなEMILYの歌声と、ほとばしる感情を指先から弦へと注入していくようなKAWAGUCHIのスリリングなギターが、起伏に富んだグルーヴを生み出していく。染みこむのではなく、聴き手の体に刻みこまれるような歌だ。

ワルツのリズムを取り入れたフォーキーな「空は青いのに」では、EMILYの内省的な歌声とKAWAGUCHIが指弾きによる丹念なプレイが染みてきた。一転して、「地獄に落ちようか」では、ハードボイルドタッチの歌声とソリッドなギターによる、ドラマティックな演奏が展開された。真っ赤な光の中での、血まみれの歌とギターと表現したくなった。青から赤へ、照明の演出も鮮やかだ。ライブでの振り幅の広さは、フォーク、ポップス、ロック、ファンク、ソウルなど、多彩な音楽のテイストが溶けこんでいるからだろう。どの曲にも共通しているのは、核に歌があること。

前半終了後の休憩時間を利用した、EMILYとKAWAGUCHIのやりとりによる映像の演出が楽しかった。2人の発言が一致していると言われることから発案された“相性テスト”では、2人の答えのシンクロ率をチェック。「『SURVIVOR』の中でもっともせつない曲は?」という質問に対して、2人が「ロンリーボーイ」と曲名を書き込んだ紙を掲げたところで映像が終了して、2人がステージに再登場して、「ロンリーボーイ」の演奏へ。この流れも実に鮮やかだ。せつない曲ではあるのだが、歌の主人公に寄り添うような2人の親密な歌と包容力を備えたギターがいい。客席のハンドクラッブが参加したのは「甘い生活」。コミカルな歌と演奏とパフォーマンスによって、会場内になごやかな空気が流れていく。KAWAGUCHIのコーラスがこの曲の“甘さ”や“親しみやすさ”を引き立てていた。

「ロックバンドみたいに、こぶしをあげてみようか」というMCに続いて、観客が立ち上がってハンドクラップする中での演奏となったのは「バカとはしゃべりたくない」。EMILYもKAWAGUCHIも激しくパフォーマンスしながらのプレイだ。「静かにしろ」はEMILYがべらんめえ口調で観客をあおりながら、始まった。怒りを題材にした歌でありながら、客席に笑いをもたらし、楽しい空間を出現させてしまうところが素晴らしい。「2人で16年一緒にやってきました」とEMILYが語っていた。数多くのステージに立ち、鍛えられてきた成果が、「静かにしろ」に凝縮されていたのではないだろうか。ミュージシャンにして、エンターテイナーと言いたくなった。

母親のことを歌にしたという「あと何回」は、パーソナルな愛の歌であると同時に、普遍的な愛の歌としても響いてきた。人が人を思うことのかけがえのなさや尊さが、深く柔らかく、そして力強く伝わってきた。「生きるの疲れた」では、弱音を吐くように始まり、<生きてみようか>というフレーズへと着地していく展開が見事だった。明るい希望を歌った歌ではない。暗がりの中で目を凝らすと、やっと見えてくる光のような歌と演奏だ。かすかではあるが、確かな希望の歌をHONEBONEは奏でていた。

本編ラスト前のEMILYのMCでは、音楽を休みたくなる瞬間があったこと、でもKAWAGUCHIやスタッフの支えがあって、音楽をやっていたいと思ったことなどを話す場面もあった。2023年11月4日に恵比寿LIQUIDROOMでライブを行うことも発表された。本編の最後は「バンドマン」。おそらくコロナ禍で感じた無力感がもとになった歌だろう。歌詞に登場する<翼をもがれた鳥>と、思うような活動ができないバントの姿が重なった。<届くまでやめない><届いてもやめない>といったフレーズからは、彼らの音楽に対する覚悟が伝わってくるようだった。ツアーファイナルのステージは集大成にして決意表明の場でもあったのではないだろうか。

アンコールでは、一寸先闇バンドのドラマーの大山拓哉が参加して、バンド編成でバックトラックも流しながら、「チェイス」と「夜をこえて」を披露した。2人での演奏とはまた違うダイナミックな演奏が新鮮に響く。絵画に例えるならば、水彩画から油絵へといった感じだろうか。ツアーファイナルのステージのアンコールで、新たな挑戦をするところが頼もしい。読売ジャイアンツの丸佳浩選手に向けたオリジナル登場曲でもある「夜をこえて」では、推進力を備えた歌と演奏に観客のハンドクラップも加わり、全員が一体となって夜をこえていった。

音楽の素晴らしさを堪能した夜だった。愛や希望だけでなく、悲しみや怒りやグチや不平不満のようなネガティブな感情だって、音楽として表現することで昇華できること、楽しい空間を出現させられることを、HONEBONEのステージが雄弁に示していた。ツアーファイナル公演は、新たな旅への第一歩でもあると感じた。彼らは夜をこえて、さらに見晴らしの良い世界へと踏み出したところだろう。

■2022年10月31日(月)23:59までアーカイブ配信中!
SURVIVOR TOUR 2022~巡礼~
2022年10月22日(土)渋谷PLEASURE PLEASURE

詳細はこちら!

SET LIST

01. ドクター
02. リスタート
03. 冷たい人間
04. そうじゃなかったじゃん
05. なんにもない一日
06. きれいな夜
07. 捨てられない花
08. 空は青いのに
09. 地獄に落ちようか
10. ロンリーボーイ
11. 甘い生活
12. バカとはしゃべりたくない
13. 静かにしろ
14. あと何回
15. 生きるの疲れた
16. バンドマン

ENCORE

01. チェイス
02. 夜をこえて

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