ASKAがオーケストラ、合唱団と調和した至福のコンサートをレポート!

ライブレポート | 2022.11.01 18:00

『ASKA Premium Symphonic Concert 2022 -TOKYO-』
2022年10月29日(土)東京国際フォーラム ホールA

人々の奏でる音楽が混ざり合い、溶けあうことで生まれる調和のなんと美しいことか。栁澤寿男が指揮する京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団と横浜少年少女合唱団と、ASKAが共演するステージを観るのは至福の体験となった。『ASKA Premium Symphonic Concert 2022 -TOKYO-』の10月29日、東京国際フォーラム ホールA公演。

ASKAとオーケストラとの共演コンサートは、まず福岡公演が決まり、名古屋・西宮公演へと広がり、その後、東京での開催が決定した経緯がある。元をたどると、ASKAが初めてオーケストラと共演したのは2005年。当時はポップス系のシンガーとオーケストラとの共演は異例のことだった。初共演で確かな手ごたえを掴んだASKAは、その後、機会のあるたびにオーケストラと共演してきた。"異例の共演"が"恒例の共演"へと変化してきたのだ。

ステージは2部構成で、第1部の1曲目はOvertureの「Breath of Bless」。ASKAがオリンピックのテーマ曲をイメージして自主的に作ったインスト曲だ。ここではまだASKAは登場していない。栁澤寿男と京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団によるステージ。雄大にして荘厳なオープニングだ。客席からの温かな拍手の中、ASKAが登場して演奏されたのは「未来の人よ」。意表を突かれる始まり方だ。<あれは僕が21歳のとき 福岡から出てきた僕にとって 東京は未来だった>という、詩の朗読のようなASKAの語りから始まる曲だからだ。流麗な演奏が始り、ASKAが言葉を紡ぎ、やがて歌が始まり、オーケストラの調べが広がりと奥行きのある世界を生み出していく。この時点で、素晴らしいコンサートになることを確信した。こちらの想像をはるかに凌駕する、一体感のある歌と演奏だったからだ。

「オーケストラが65人いるとしたら、その次の"66番目のオーケストラの歌い手"という意識で参加させていただきました」とのASKAからのMCもあった。その言葉どおり、オーケストラの奏でる音に、まろやかに融合していく歌声だ。ASKAのせつない歌声を深みのあるサウンドがふかふかの毛布で包みこんでいくようだと感じたのは「MIDNIGHT 2 CALL」だ。ドリーミーなアンサンブルの中で、ASKAがたゆたうように歌っていたのは「僕のwonderful world」。陽だまりの中にいるような、なごやかな気分になった。

「今、この曲を歌いたいなと思いました」というASKAの言葉に続いて始まったのは「君が愛を語れ」だった。クウェート侵攻と湾岸戦争がきっかけで制作した1991年発表の曲だが、2022年の今、リアルに響いてきた。ASKAの歌声とオーケストラの演奏から、平和への願い、未来への思い、次の世代に託す気持ちなどが、真っすぐ伝わってくるようだった。続いて演奏された「PRIDE」は1989年に発表され、多くのリスナーから支持されてきた曲だ。2021年には新たなアレンジと歌でリリースされている。この曲の持っている鼓舞するパワーが全開になっていると感じた。観客だけでなく、歌い手や演奏者にも力をもたらす曲なのではないだろうか。

頭上に広がる青い空が見えてきそうだったのは「UNI-VERSE」だ。スケールの大きな演奏のもとで、ASKAが伸び伸びと気持ち良さそうに歌っている。シェイカーやタンバリンも加わって、荘厳かつ深遠である同時に、リズミカルで朗らかだ。<あの日のアトムみたいだ>というフレーズのタイミングで、ASKAが空を飛ぶアトムのように右手の拳を突き上げる動作をするのだが、その瞬間に胸が熱くなり、一緒に拳を突き出したくなった。

第1部のフィナーレを飾るのは、23名の横浜少年少女合唱団が参加した「歌になりたい」。この曲はもともと、ASKAが楳図かずおの傑作漫画『漂流教室』にインスパイアされて作った経緯がある。少年少女が参加することで、"完成形"になる楽曲という表現もできそうだ。弦楽器の優美な調べで始まり、横浜少年少女合唱団のピュアな歌声が加わっていく。さらにASKAの人間味あふれる歌声が加わり、歌の世界がどこまでも果てしなく広がっていく。ASKAの歌声から強靱さだけでなく、野に咲く草花に降り注ぐ雨のような温かさを感じた。ASKAの歌声と少年少女たちの光輝くようなコーラスと深遠なオーケストラとの"出会い"は感動的だった。

川の支流が合流して大河となり、海に注がれるような、大きさ、おおらかさを備えた共演だ。ステージ上の約80人の奏でている音はすべて異なっているのに、いや異なっているからこそ、生命力あふれる調和が生まれるのだろう。客席からの拍手がやまない。多くの人が心をひとつにして響かせるという意味では、この拍手はステージ上のアンサンブルやハーモニーと少し似ていた。

第2部は豪華なメドレーから始まった。「はじまりはいつも雨」「LOVE SONG」「SAY YES」「僕はこの瞳で嘘をつく」「太陽と埃の中で」という構成だ。ASKAソロやCHAGE and ASKAの代表曲のメドレー、いや、日本のポップス史上の名曲のメドレーと言いたくなった。名曲の数々をこの編成で楽しむのは、贅沢すぎる体験だ。ASKAの書くメロディとオーケストラの相性の良さも実感した。このメドレーでの唯一の不満は、1曲1曲をもっと長く聴いていたいということだ。

「12月には初めてディナーショーをやらせてもらいます。ずっと前からお誘いはあったのですが、イメージがつかず、断ってきました。僕のイメージするものができたらと思っています」とのMCもあった。オーケストラとの共演、バンドとストリングスとの三位一体のツアーなど、ASKAは常に新たな表現を開拓してきている。ディナーショーもその流れの中て位置づけられるものだろう。

第2部の中盤はオーケストラとの共演の妙を堪能できる曲が続く構成だ。「帰宅」はパーソナルな歌声と叙情味あふれるアンサンブルが染みてきた。ファルセット混じりのせつない歌声と、その歌声を見守るような演奏が印象的だったのは「止まった時計」だ。「けれど空は青~close friend~」ではASKAのヒューマンな歌声とオーケストラの透明感と清涼感のあるサウンドが生み出す奥行きと広がりのある世界を堪能した。

沢田研二のカバー曲でありながら、オリジナル曲のように馴染んでいる「君をのせて」は、風のような軽やかさと朗らかさを備えた歌にやられた。第2部ラストはCHAGE and ASKAの「熱い想い」。1982年に発表された曲だが、40年たった今も色褪せないどころか、さらに熱く"想い"が伝わってきた。歌に寄り添うようなオーケストラの演奏も"熱さ"を内包している。ASKAの歌心と京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団のメンバーの歌心が共鳴しあっていると感じる瞬間がたくさんあった。

ASKAと栁澤寿男が手を取りあい、再登場してアンコールで披露されたのは「FUKUOKA」。ASKAが自分のルーツを歌った歌だ。いとしさの滲む歌声と丹念なオーケストラの調べが、ノスタルジックな世界を紡いでいく。この曲の最後は、日本語の中でももっとも美しい言葉のひとつである<ありがとう>。この言葉をかけるべき相手が目の前にいなかったとしても、歌にすることで、いつかどこかで必ず届いていくに違いない。そう思わせるようなASKAの歌声だ。客席に挨拶するASKAを温かな拍手が包み込んでいた。

ASKAが登場して最初に披露した曲「未来の人よ」には<福岡から出てきた>というフレーズがある。ASKAがラストに歌ったのも、福岡を歌った歌だ。始まりと終わりがつながり、円が完成していくような美しい構成だった。横浜少年少女合唱団が参加したことも含めて、この日のコンサートから"未来"というテーマが浮かび上がってくると感じた。"未来"を歌うことは、"過去"と"現在"を歌うこと。「未来の人よ」「君が愛を語れ」「UNI-VERSE」「歌になりたい」など、多くの歌が共鳴しあっていると感じた。世代から世代へと音楽のバトンを手渡すような、そして未来の種を蒔くようなコンサートでもあった。ASKAが2005年にオーケストラとの共演で蒔いた種が、17年後の2022年、見事に花開いていた。2023年もASKAが未知のことに挑み続けるのは間違いない。デビューから44年目に突入した今も、ASKAは種を蒔きつつ、花を咲かせつつ、忙しい未来へと向かっている。

SET LIST

第1部
01. Overture「Breath of Bless」
02. 未来の人よ
03. MIDNIGHT 2 CALL
04. 僕のwonderful world
05. 君が愛を語れ
06. PRIDE
07. UNI-VERSE
08. 歌になりたい

第2部
09. メドレー(はじまりはいつも雨~LOVE SONG~SAY YES~僕はこの瞳で嘘をつく~太陽と埃の中で)
10. 帰宅
11. 止まった時計
12. けれど空は青 ~close friends~
13. 君をのせて
14. 熱い想い

ENCORE
01. FUKUOKA

INFO

12月25日(日)にCS放送 フジテレビTWOにて「ASKA Premium Symphonic Concert 2022 -TOKYO-」の放送が決定!

『ASKA Premium Symphonic Concert 2022 -TOKYO-』
<放送日時>
2022年12月25日(日)21:00~23:00(予定)
<放送チャンネル>
フジテレビTWO ドラマ・アニメ

詳細
https://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/20221139.html

INFO

ASKA Premium Dinner Show 2022

12月5日(月)グランドハイアット福岡
12月20日(火)ザ・プリンス パークタワー東京(SOLD OUT)
12月22日(木)リーガロイヤルホテル広島(SOLD OUT)
12月26日(月)リーガロイヤルホテル(大阪)(SOLD OUT)
※詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。

RELEASE

『Wonderful world』

NEW ALBUM

『Wonderful world』

(DADA label)
2022年11月25日(金)SALE

◆公式HP:https://www.fellows.tokyo/news/?id=976
  • 長谷川 誠

    取材・文

    長谷川 誠

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  • 撮影

    相澤一茂

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