Tele「ハロー東京!」スタートであり通過地点。初ワンマン、キネマ倶楽部公演をレポート!

ライブレポート | 2022.11.08 17:00

Tele 東京宣言
2022年11月2日(水) 東京キネマ倶楽部

Teleが初のワンマンライブ<東京宣言>を11月2日、東京キネマ倶楽部で開催した。
谷口喜多朗によるソロプロジェクトTeleは、2022年1月に始動。6月にリリースした初アルバム『NEW BORN GHOST』でさらに注目を集め、9月に配信された「Véranda」もSpotifyの様々な有力プレイリストに入るなど、急激に存在感を高めている。本人の希望で実現した東京キネマ倶楽部での初ワンマンでも、ハイブリッドな音楽性と明確な意思を反映した歌、そして、“ここから自分の音楽を始めるんだ”という強いモチベーションに貫かれたステージを繰り広げた。

美しいピアノのフレーズがリフレインするSEが鳴り止み、会場が暗転。まずはバンドメンバーの奥野大樹(Key)、力毅(G/ Cody・Lee(李))、森夏彦(Ba/THE2)、森瑞希(Dr)がステージに登場する。<宣誓。肩をぶつけて遠ざかる人に、舌打ちする勇気もないまま。ただつま先を、ただつま先をあの青い空に向けて。>からはじまる詩が読まれるなか、Tele=谷口喜多朗がステージに現れ、1曲目の「アンダルシア」へ。直線的なベースラインと<遊び飽きた遊具の色。>というフレーズが聴こえてきた瞬間、楽曲の世界へグッと引き寄せられる。フロアからは自然発生的な手拍子。<青く、青く、染まれ涙よ。>というサビがはじまった瞬間にドラム、ギター、キーボードが加わり、早くも心地よいカタルシスが生まれた。

その後、軽快なリズムにとともに閉塞感を打ち破ろうとする意志を刻んだ歌詞が広がった「バースデイ」、開放的なポップネスをたたえた旋律と<ただ生きよう、どうにせよ僕ら醜いから。>という言葉が響き合う「私小説」、オルタナ的なバンドサウンド、“ここではない何処か”への希求を感じさせる歌が一つになった「夜行バス」を披露。冒頭4曲はアルバム「NEW BORN GHOST」の1〜4曲目の曲順と同じ。アルバムを聴き込んでいるであろうオーディエンスも、ライブが進むにつれて高揚の度合いを増していた。ロックの性急さを感じさせるステージングも鮮烈。音源はポップな手触りだが、ライブにおけるTeleはさらにアグレッシブで直接的だ。

「ありがとう、東京キネマ倶楽部。よろしくお願いします、Teleです」と挨拶し、“ワン、ツー、ワンツースリーフォー!”とカウントを出すも、メンバーは誰も反応せず。それを何度か繰り返したあと、喜多朗はステージ袖に引っ込み、その間にバンドメンバーが音を奏ではじめる。再び登場した喜多朗はMVと同じ帽子を被っていて、観客にハンドクラップを要求。ちょっとシアトリカルな演出とともに放たれたのは、愛らさしと切なさが詰まったポップチューン「Véranda」。ハッピーなグルーヴによって、会場全体が心地よい一体感に包まれる。

ここからは、Teleの色彩豊かな音楽性を実感できるシーンが続いた。まずは「誰も愛せない人」。孤独や愛という根源的なテーマを簡素な言葉で綴った楽曲だが、ドラマティックなメロディ構成、J-POP的なメソッドとオルタナティブロック的な要素のバランスを含め、Tele特有のハイブリッド感をダイレクトに感じることができた。「頭のなかで全力で歌ってください」というMCに導かれたのは、「花瓶」。シンガロング必至のコーラス、<全部嫌んなった!>からはじまる大らかなサビがなんとも気持ちいい。そして「クレイ」は、アコギの弾き語り。3フィンガーによる繊細なアルペジオ、素朴な美しさを内包した旋律、この世界に意味を見出そうとする祈りにも似た歌詞が溶け合うこの曲からは、シンガーソングライターとしての奥深い魅力が伝わってきた。幅広いジャンルを自由に行き来しながら、自らの音楽世界を広げ続けるスタイルはきわめて独創的であり、現代的だと思う。

「東京キネマ倶楽部にみなさんと出会えたことを幸せに思います。僕がこのライブを終えてからみなさんに見せるのは、人間がフィクションになっていくところです。今だって僕のどこまでが嘘っぱちで、どこまでが本当なのかなんて、僕にだってわからないですよ。ただ僕は、バンドじゃなくなって、一人でやることになったとき、素晴らしいフィクションになることを決めました」

そんな言葉とともに放たれたのは、新曲「ロックスター」。軽やかなギターフレーズ、思わず体を揺らしたくなるサウンドとともに描かれるのは、喜多朗が思い描く“ロックスター”像。シリアスな決意を込めた歌詞をポップに昇華するセンスにも惹きつけられた。

本編ラストは、「思想のない音を僕は鳴らしません。理想のない言葉を僕は使いません。希望のない未来なんて、意味がわからない。だって僕はミュージシャンだよ!」という言葉とともに披露されたアッパーチューン「comedy」、そして、アルバム「NEW BORN GHOST」の最後に収められた「ghost」。儚い美しさに貫かれたメロディ、<あなたの下へ僕が花を咲かそう。>というラインが響き、圧倒的な感動へと結びついた。エンディングにおけるノイジーなギター、透明感に溢れたファルセットも強く心に残った。

アンコールの1曲目は、ライブ当日(11/2)にリリースされたばかりの「東京宣言」。息苦しさが拭えない社会のなかで、それでも<僕は書くよ音楽を。>と宣言する決意の歌だ。未来に向かって躍動するようなリズム、ストリングスを取り入れたアレンジ、解放感をたたえたコーラスを含め、Teleの新たな進化をはっきりと感じ取ることができた。

最後の曲は未発表曲の「生活の折に」。ノートに鉛筆で書かれた歌詞をスクリーンに映し出すことで、言葉の一つ一つが真っ直ぐに入ってくる。特に“君は自由だ”という祈りにも似たフレーズは、すべての観客の胸に刻まれたはずだ。エンディングではインストを演奏しながらスタッフロールを写し、記念すべき初ワンマンは終幕した。

2023年2月19日に東京・Spotify O-EAST 、2月24日に大阪・BIGCAT にて東阪ワンマンライブ「nai ma ze」の開催も決定。初めてのワンマンライブ「東京宣言」を経て、Teleの音楽はさらに多くのリスナーを捉え、彼の才能と存在は幅広く浸透することになるだろう。“この場に立ち会えてよかった”と心から思う、記念碑的なライブだった。

SET LIST

01. アンダルシア
02. バースデイ
03. 私小説
04. 夜行バス
05. Véranda
06. 誰も愛せない人
07. 花瓶
08. クレイ
09. ロックスター
10. comedy
11. ghost

ENCORE
01. 東京宣言
02. 生活の折に

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