吉川晃司がツアーの終着地・日本武道館で魅せたソロシンガー/ロックバンドとしての魅力!

ライブレポート | 2023.05.09 12:00

KIKKAWA KOJI LIVE 2022-2023 “OVER THE 9”
TOUR FINAL&EXTRA SHOOTING LIVE
2023年2月23日(木)24日(金)日本武道館

ソロシンガーとしての魅力とロックバンドとしての魅力を同時に楽しめる“一石二鳥”のライブ。吉川晃司の2月23、24日の武道館公演をそう表現したくなった。2日間それぞれに異なる位置づけのステージで、23日はツアーファイナルで2階スタンド最後列までぎっしり満員、24日はシューティングライブで、アリーナには撮影チームと機材が陣取り、スタンドにのみ観客が入る状態で行われた。最新アルバム『OVER THE 9』のツアーで、ステージを重ねるごとに新曲が進化していることも実感。新たにLUNA SEAのINORANが加わったことによって、バンドの演奏も化学変化を起こし続けていた。メンバーの探究心がそのまま音に反映されていた。

23日のオープニングナンバーは最新アルバム『OVER THE 9』1曲目の「ソウル・ブレイド」だった。いきなり1曲目から渾身の歌と演奏。アクセル全開。強靱な歌声とソリッドなバンドサウンドによって、会場内が熱気に包まれた。観客に配布されたLEDリストバンドが青白く光っている。炎のような演奏によって、武道館全体が青い炎で包まれたかのようだ。青い炎はやがて赤い炎に変化。バンドはEMMAこと菊地英昭(Gt)、INORAN(Gt)、ウエノコウジ(Ba)、湊雅史(Dr)、ホッピー神山(Key)という“実力と華”とを兼ね備えたメンバーが揃った。EMMAとINORANのコーラスも強力で、歌声に彩りをプラスしていた。「ギムレットには早すぎる」ではジャジーなグルーヴに会場内が揺れた。

「笑顔の再会ができて感無量です」と吉川。「にくまれそうなNEWフェイス」「LA VIE EN ROSE」など、初期の代表曲も交えながらの構成なのだが、どの曲も新鮮に響く。今の吉川の鍛え抜かれた歌声と超強力なバンドの演奏によって、80年代のポップなナンバーに2023年の息吹が加わり、懐かしさとみずみずしさとのミクスチャーになっていたのだ。

中盤は最新アルバムの曲が続く展開。スリリングなグルーヴを備えた「タイトロープ・ダンサー」、爽快な風が吹き抜けるような開放感あふれる「風が呼んでいる」、デビッド・ボウイを彷彿させるシニカルなテイストがクセになる「One Side Liar」、深みのある低音のボーカルの魅力が詰まった「まだ愛のために」などなど。

久しぶりの披露となった「サイレント シンデレラ」は、ホッピー神山のピアノとの2人だけでの演奏。以心伝心と言いたくなるような見事なコンビネーションだ。深みのある歌声と重厚な演奏が染みてきたのは「Nobody's Perfect」。映画『仮面ライダー』シリーズで吉川が演じた鳴海荘吉(仮面ライダースカル)のハットを手にしての歌。吉川にはハードボイルドのテイストがよく似合う。曲の終盤からはバンドのみのステージとなったのだが、豪快にして繊細、大胆にして緻密な演奏が見事だった。エモーショナルな演奏に割れんばかりの拍手が起こった。

「BLOODY BLACK」からの4曲は吉川がギターを手にしてのステージとなり、吉川、EMMA、INORANのトリプルギターも実現。「GOOD SAVAGE」ではウエノ、INORAN、吉川、EMMAの横一列での演奏。4人が並んだ光景も壮観だった。全員、絵になりすぎ。「GOOD SAVAGE」では、EMMAとINORANがガットギターを披露する場面もあった。メンバー全員が自らのプレイを更新するように振り切った演奏をしているところが素晴らしい。百戦錬磨のメンバーが渾身の演奏を展開し、とてつもないエネルギーが会場内に充満していく。

「コロナにもやられたし、世界も大変だし、円も安い。でもね、元気なだけで丸儲けですから。やれる時にやれるだけ、やればいいじゃないか。世界が徐々に戻ってくれる時までは、ほふく前進で頑張って、元に戻ったらドカンといきましょう」との吉川からのMCに大きな拍手が起こった。「Lucky man」からは怒濤の展開。手をひらひらさせながらの「LOVIN' NOISE」では観客もハンドクラップで参加。「SAMURAI ROCK」では硬質なバンドサウンドが際立っていた。「恋をとめないで」では久々にコール&レスポンスが復活。<Don't stop my love>というフレーズの1万人のシンガロングに胸が熱くなった。<ファイナルの夜だぜ>という歌声にも大きな拍手と歓声。切れ味抜群の「No Noサーキュレーション」では、シンバルキックでフィニッシュ。2023年の「No Noサーキュレーション」のパワーがすさまじい。

アンコールの1曲目「INNOCENT SKY」は、EMMA、INORAN、ウエノと4人でアコースティック編成での演奏。深みのある歌声が胸に染みてきた。80年代の名曲をこんなにも鮮やかに表現できるところが素晴らしい。“イノセントであり続ける強さ”を備えた者だけが奏でられる音楽と言いたくなった。アンコール最後の「KISSに撃たれて眠りたい」では、「みんなで歌おう」との吉川の言葉にも胸が熱くなってしまった。シンガロングのなんと美しいことか。会場内の全員が思いをひとつにして歌うことのかけがえのなさと尊さを、再認識するファイナルとなった。

  • 長谷川 誠

    取材・文

    長谷川 誠

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  • 撮影

    外山繁

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