WurtS、本編終わりに「分かってないよ」コールがフロアに溢れる!熱を絶やさぬまま走り切った東京ファイナルをレポ

ライブレポート | 2023.07.29 12:00

WurtS LIVEHOUSE TOUR Ⅰ
2023年7月13日(木)Spotify O-EAST

ステージもフロアも、直感的、衝動的なライブだった。今年3月からスタートした、WurtSのワンマンツアー「WurtS LIVEHOUSE TOUR Ⅰ」。彼のキャリアにおいて過去最長となる追加公演を含め計15公演の同ツアーは、比較的コンパクトな会場がチョイスされた。サポートメンバーは新井弘毅(Gt)、雲丹亀卓人(Ba)、城戸紘志(Dr)というロック色に富んだ強力な布陣であることに加え、WurtS本人も初ライブから1年強経ち、ある程度ライブ経験が蓄積されてきたタイミングである。さらにこのSpotify O-EAST公演は、延期となった福岡を除けばツアーファイナル。彼の心の奥にほとばしるナチュラルな熱がダイレクトに伝わるには、十分すぎる環境と状況だった。

サポートメンバーとDJやダンスなどのパフォーマンスを担ううさぎに続いて、トレードマークのキャップ風覆面を被ったWurtSがステージに登場すると、タイトなドラムにギターリフが重なり1曲目は「ユートピア」。ひりついた爆音とアンニュイな空気感、メランコリックなファルセット、リフレインから生まれる小気味よいリズムなど、00年代UKロックを彷彿とさせるサウンドが展開される。だがそれを当時のオマージュと感じさせないのは、現代を生きる若者の矜持だろう。先人の音楽家へのリスペクトを感じさせつつも、今の自分に必要な音として発信する気概は、目を見張るものがある。

さらに「ふたり計画」と「僕の個人主義」とバンドサウンドの強度を高め、それに導かれるようにフロアの熱量も上昇していく。WurtSも自身の持ちうる体力を注ぎ込むようにギターをかき鳴らした。そこに浮遊感のあるシンセや、バスケットユニフォームに身を包み観客を煽るうさぎなどキュートでファニーな成分が加わることで、WurtS流のロックが実現していることも痛快だ。
続いてマイクスタンド/ハンドマイクスタイルにシフトすると、ラップを多く含んだ楽曲が続くセクションへ。「Talking Box (Dirty Pop Remix)」では観客にクラップを促し、リフレインとサビの解放感のコントラストで魅せる「BOY MEETS GIRL」ではうさぎがミニサックスでパフォーマンスするなど、ポップな面を見せつつも徐々にディープな空間へと引きずり込んでゆく。さらにEDM的展開に《大丈夫僕らスーパースター》など頼もしい歌詞が凛と輝く「NERVEs」、言葉のコラージュが小気味よい「SWAM」と畳みかけ、観客を歓喜の渦へと巻きこんだ。

ここまでの7曲で、WurtSの音楽はロックバンドの躍動感、ヒップホップの毒気を帯びたユーモアセンス、ダンスミュージックの享楽性、エンターテインメントシーンに通用するポップネス、そのすべてを包含していることを痛感する。そしてどこまでも自然体だ。彼の音楽もボーカルも、悲しいから悲しみを、腹が立つから怒りを、嬉しいから喜びを表現するのではなく、自分の頭のなかに渦巻いている思考や胸に佇む感情をそのまま、音楽に向けて明け透けに投げつけている。ゆえに彼の音楽はひとつのジャンルでは収まりきらないのだろうし、回転する万華鏡のように喜怒哀楽がきらめくのだろう。そしてそれを真っ向から受け取る聴き手の我々も、心の奥から高揚を突き動かされるのだ。
心地よいグルーヴとホーンで魅せる「メルト」をきっかけに、「タイムラグ!」や「MOONRAKER」と、ロマンチックかつポップなサウンドで包み込む。WurtSに限らず近年のアーティストは短尺の楽曲が主流だが、配信やSNS、インターネット上では有利なそれが、ライブにおいては悪手に転がる可能性も否定できない。だがこの日のセットリストは似た色を持つ楽曲を集めて組み合わせることで、1曲だけでは成し得ない新しい物語を生み出すことに成功していた。

週刊少年ジャンプで連載中の『SAKAMOTO DAYS』とのコラボ曲「BORDER」でスタイリッシュなエモーションを見せると、ここから美しいグラデーションを描きながらクライマックスへと駆け上がる。センチメンタルかつハートフルな「ハイジャックサマー」、ひずんだギターとシンガロングパートがキャッチーな「オブリビエイト」に続き、「SIREN」から「コズミック」へのスマートなつなぎで会場一帯が興奮を増し、「東京もっと来いよ!」というWurtSの高らかな呼び掛けから「リトルダンサー」へ。4人(と1兎)の鳴らす音は、自分の心の中の様々な感情を駆け巡り、次々とハイタッチしていくような感覚があった。人は普段隠している感情に触れられると、許された、認められたような気持ちになるのかもしれない。フロアもステージも、その喜びにいざなわれるようにさらに心を解放していった。

WurtSが「こんなもんですか東京!?もっといける!?」と拳を掲げ、本編ラストは「分かってないよ」。悶々とした気持ちを晴れ晴れと鳴らしていく。曲中でWurtSが「みんなの声が聞きたいです!」と呼び掛けると、フロアから大きな歌声が轟いた。コロナ禍の渦中でリリースされた同曲を、エネルギッシュなシンガロングのなか聴けることへの感慨深さもさることながら、「分かってないよ」への事実だけを書いた歌詞が妙に優しく心に染み入る。行き場がなく彷徨う感情の居場所として、救済のように響いていた。

フロアの「分かってないよコール」に応えて再びステージに現れたWurtSとうさぎが「Capital Bible」でアンコールを迎えると、WurtSは今回のツアーで自身の音楽をどのようにリスナーが楽しんでいるのかを実際にこの目で見ることができた喜びと、一緒の空間で楽しめたことへの満足感を明かす。「このツアーで僕もWurtSというものをあらためて認識することができました。みんながここに来てくれているからこそ僕も頑張ろうと思えるので、これからもライブに来てください」と力強く語り、その後はフルメンバーで[Alexandros]とのコラボ曲「VANILLA SKY (feat. WurtS)」をセルフカバーで披露。「ブルーベリーハニー」と「地底人」で熱を絶やさぬままこの日を走り切った。

ひとりの大学生の個人研究としてスタートし、好奇心を原動力に固定観念から解き放たれた活動を続けてきたWurtS。今回のツアーでリスナー/観客の存在が、彼に大きく作用していることを目の当たりにした。秋からスタートするZeppを中心としたワンマンツアー「WurtS LIVEHOUSE TOUR Ⅱ」ではさらにアーティストとして進化した姿を見せるだろう。まだまだその全貌は計り知れない。だが人生も物語も、簡単に解き明かせないからこそのめりこんでしまうものだ。彼はこの先どんな景色に心を奪われ、それを音楽にしていくのだろうか。その行方をこの先も追い続けたい。

SET LIST

01. ユートピア
02. ふたり計画
03. 僕の個人主義
04. Talking Box (Dirty Pop Remix)
05. BOY MEETS GIRL
06. NERVEs
07. SWAM
08. メルト
09. タイムラグ!
10. MOONRAKER
11. BORDER
12. ハイジャックサマー
13. オブリビエイト
14. SIREN
15. コズミック
16. リトルダンサー
17. 分かってないよ

ENCORE
01. Capital Bible
02. VANILLA SKY
03. ブルーベリーハニー
04. 地底人

公演情報

DISK GARAGE公演

WurtS LIVEHOUSE TOUR Ⅱ

2023年10月7日(⼟)北海道・Zepp Sapporo
2023年10月15日(⽇)福岡・Zepp Fukuoka
2023年10月19日(⽊)愛知・Zepp Nagoya
2023年10月20日(⾦)大阪・Zepp Osaka Bayside
2023年11月10日(⾦)石川・⾦沢 EIGHT HALL
2023年11月12日(⽇)新潟・新潟LOTS
2023年11月16日(⽊)香川・⾼松festhalle
2023年11月18日(⼟)岡山・岡⼭ CRAZYMAMA KINGDOM
2023年11月19日(⽇)広島・広島 BLUE LIVE
2023年11月26日(⽇)宮城・仙台GIGS
2023年12月6日(水)Zepp Haneda(TOKYO)
2023年12月7日(木)Zepp Haneda(TOKYO)

東京(Zepp Haneda)公演、先行受付中!

▪受付期間
2023年7月29日(土)12:00〜8月6日(日)23:59まで

 

▪受付URL
≫ローソンチケット
≫イープラス

※受付対象公演、詳細は上記受付URLでご確認ください。

 

  • 沖 さやこ

    取材・文

    沖 さやこ

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  • 撮影

    renzo masuda

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