SuG、「こんなボーナスステージがあるとは思わなかった(武瑠)」無期限活動休止から6年後の同日に限定復活ライブ開催

ライブレポート | 2023.09.08 20:30

SuG 39 DAYS LIMITED TOUR FINAL
"VersuS" 2013-2017
2023年9月2日(土) LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)

「SuGを守れなかったこと、心から申し訳なく思っています。日本武道館というものすごい賭けをして、その賭けに負けて状況が悪化して、バンドが続けられないぐらいの状況になってもなんとか強がって。誰も逃げずに、この無謀だった武道館に挑戦した5人を誇りに思います」(武瑠)
そんな言葉とともに、2017年9月2日。バンドを無期限活動休止させたあの日本武道館公演から6年後の同日。こんなに楽しさに全振りしたハッピーなボーナスステージのSuGが待っていたなんて、まったく想像していなかった。きっと武瑠(Vo)、masato(Gt)、yuji(Gt)、Chiyu(Ba)、shinpei(Dr)。そして、会場に集まったみんなが実感したはずだ。
「ハロー この声が聴こえますか? こっちの景色は最高だぜoh yeah」(「teenAge dream」)

武道館で活動休止を告げた後、2017年12月20日、公式HPを通して突如解散することを発表したSuG。それ以降パタッと途絶えたままだったバンドの時間が、2023年1月12日。謎のムービーとともに、SuGのオフィシャルSNSを通して再び動き出した。そうして2023年3月9日のSuGの日、彼らは日本武道館を無理やり発表したあの場所、東京・EX THEATER ROPPONGIで<SuG LIVE 2023 THE GAMBLER>という意味深なタイトルで単独公演を行なった。解散公演でも再結成でもなかった。武道館公演から解散にまつわるもやもやしたもの。そのすべて吐き出すという祝祭感はそっちのけの特殊な公演“THE GAMBLER”で、ある意味危険を承知の上で、再び彼らは強引な賭けに出た訳である。その賭けを経て、彼らはバンドを“SuG”に合わせて39日間、期間限定で復活させることを決断。そうして、7月から<SuG 39DAYS LIMITED TOUR>と題したツアーを全国各地で開催してみると、これが公演はどれもチケットSOLD OUT。その期間限定復活の締めくくりとして、9月1日は2007-2012年までの、2日は2013-2017年までの楽曲で<SuG 39DAYS LIMITED TOUR FINAL>と題し、恒例のバトルライブ“VersuS”公演を東京・LINE CUBU SHIBUYAにて行なったのだ。ここではそのFINAL公演から2日目のライブをレポートする。

SuGが過去にもやってきた公演、“VersuS”とは、ステージに大きな集音器を設置し、観客の声援が叩き出すdBの大きさで勝敗を決めるという全オーディエンス参加型のバトルライブのこと。白い衣装できめた“白SuG”で登場し、初期ナンバーを演奏した1日目に続いて、2日目は黒い衣装の“黒SuG”で彼らは登場。1日目とは全く違うセットリストで、バンドの後期ナンバーを中心にパフォーマンスを繰り広げていった。

舞台にはまず最初にMC役のBooが登場。VersuS公演の概要を説明をしたあと、さっそく集音器に向かって声援の練習を行なった。その後、「mark」のイントロとともにメンバーがオンステージ。ライブはバンド後期、武瑠が無気力だった10代の頃の自分が目標に向かって一歩を踏み出し、メンバーと次々と出会い、SuG結成に至るまでを描いたMVが印象的だった「teenAge dream」で幕を開けた。「お前はちゃんと生きてるか」、そんな風に聴き手の心までヒリつかせるようにこの曲のストレートなメッセージを叩きつけていた当時の彼ら。その届け方が変わっているように思えた。そのまま「DEAD or DEAD」、「SCREAM IT LOUDER」を連発していくSuG。解散のブランクを感じさせないバンドサウンドは、ツアーを通してさらにエネルギッシュなものとなり、5人が互いのこの日の呼吸をとらえたところで放たれたのは「CRY OUT」。無機的なブレイクビーツに有機的にバンドサウンドを掛け合わせていく緻密なサウンド作りは、解散前よりもさらに洗練されていて、音でドキドキ胸を震わせていく。

ここでラウンド1が終わり、集計タイムへ。集計をしている間、Booから「ツアーを回ってメンバーの新しい発見は?」と質問されると、武瑠やshinpeiを筆頭に「まーたん(masato)が変わった」と大騒ぎ。メンバーのなかでもステージングが以前と比べて大胆にワイルドかつ男らしくなったmasatoは、メンバーにそういわれ笑顔を浮かべる。もちろん、笑ったときの美貌は昔のままの美しさ。

武瑠(Vo) & masato(Gt)

このあと、ライブはバンドの足掻き続けた生き様を歌い込んだ「AGAKU」からラウンド2へ突入。ファンクなビートで躍らせたあと、「FRIDAY!!」は、オーディエンスも“FRIDAY”を連呼しながらジャンプして大騒ぎ。「何かを手に入れながら、何かを失い。それが失敗だったとしても、手に入れたものは変わらない」という武瑠の話に続いて、曲は「0song」へ。この曲に歌いこまれた”さよならはいわないよ“の一節が、SuGの1度目の活休時、どれだけみんなの心の支えになっていたかを思いだす。続けて、せつない極上のバラードソング「桜雨」へとつなぐと、武瑠のボーカル、他のメンバーの演奏はさらに曲の世界へと入りこんでいく。ステージをじっと見つめる観客たち。その視線の先で、武瑠はそっと右手を伸ばし、手のひらで雨を受け止めるような仕草をして幻想的なシーンを作り出していった。そうして、ひと呼吸置いたあとは、yujiの16ビートのキレのいいカッティングからネオシティソウルな「神様の悪戯」へ。Chiyuがスライドをふんだんに使って、ベースでダンサブルなうねりを作り出し、場内を楽しく躍らせていく。

yuji(Gt)

Chiyu(Ba)

ここでラウンド2が終わり、Booが出てきて「この曲、好きなんですよ」というとyujiは「俺、俺。俺が作曲!!」と何度もアピール(笑)。次にBooからツアー中のアクシデントを質問されると、まずshinpeiが昨日、バックの中でお茶が漏れて白い衣装が茶色になっていたことを告白。「それをスタッフさんが2〜3時間漂白してドライヤーで乾かしてくれました。すいません」と頭を下げた。続けてmasatoも金沢で日本酒を飲んだ後、生配信をしながら路上とホテルの部屋、2回も寝落ちしたことを話し「すいませんでした」と告げた。

そうして、ライブはラウンド3へ。「さあ、ここからは後半戦。いけるか?」と武瑠が煽り、白煙の柱が吹き出すなか、重厚なロックチューン「MISSING」が勢いよく飛び出す。ヘヴィでエレクトロなダンスチューン「HELLYEAH」でオーディエンスを激しく飛び跳ねさせていって熱狂を生み出し、そこに「無限Styles」をドロップすると、タオル回しとシンガロングでさらにその熱狂の渦は大きくなり、Chiyu、yujiが武瑠のマイクを囲んで“Bibidi-Babidi-Boo”の魔法の言葉をフロアにかけ、オーディエンスが“OK OK OK“とレスポンスを送る「B.A.B.Y.」を畳み掛けると、ご機嫌なSuGのポップソングが、場内にどこまでも開放的な夏気分を広げていく。「そのままいくぜー! あっ、間違えた。それ以上いくぜー!」という武瑠の彼らしい煽りから「SICK’S」へ。武瑠の歌とyujiのギターから始まるこの曲は、次々とあらゆるミクスチャーソングを生み出してきたSuGの決定打。彼らの1番の持ち味である踊れるサウンドとポップなメロディー、とことん病んだネガティブ発進から無理やり放つポジティブソングが、オーディエンスの体と心をどこまでも熱狂させていって、すさまじいエネルギーを生み出していく。熱狂が少し収まった頃、武瑠が口を開き「SuGは”無理やり前向き“というコンセプトで、すべてネガティブなところから作品を作ってきました」と語り出す。17歳のときに曲を書き始め、そのときに音楽で描いていた夢は「すべて叶った」と伝える。だがその後、2年間曲を書くことができなくなり「だからこそ、SuGをこのまま放っておくと後悔するな」と思ったことを素直に話し、そうして勇気を出してSuGのツアーに出てみたところ「みんなの笑顔は、じつはいろんな苦労を乗り越えての笑顔だったこと。メンバーのことももっと知りたいなと思ったら、昔は気づけなかったことも感じることができて。やっとみんなのこと、メンバーのことが昔より好きになれました」と告白。「そうして、SuGに紐づくものすべてに、いままでしてこなかったポジティブな感情から作るということをしてもいいのかなという勇気をもらいました」といまの気持ちを吐露した。そして「負の感情から作ったもの。そこにメンバー、みんなの声が重なってすごくハッピーなものになった。それを、最後に歌います」といって、始まったのは「Smells Like Virgin Spirit」だった。SuGのメンバー5人で楽曲制作したこの曲を、ステージと観客が1つになって歌い上げていったとき、この日は本当に場内がキラキラした幸福感に包まれていって”紡いだ想いが薄れぬよう どうか このまま 時を止めて”と歌う武瑠のフレーズに胸が熱くなった。

武瑠(Vo)

shinpei(Dr)

その勢いのまま、集音測定タイムへと投入。そうしてBooが集計結果を報告。「DAY1が合計304dB、DAY2が307dBでDAY2の勝ちです」というと、場内は大歓声に包まれる。「ではここからはウイニングランへどうぞ!」というBooの案内から「じゃあ初期の最高傑作、いってみようか」と武瑠がいい、キラキラの「Vi-Vi-Vi」、踊りも掛け声もかわいく弾けるキラーチューン「☆ギミギミ☆」を連打。こうしてツアーやこの2日間のステージを通して、SuGのオールスターを演奏してきた5人。shinpeiは「この39日間はご褒美だと思ってやってきました。1度こういう場が作れたので、またいつか」と話し、Chiyuは「今回のツアー、全力で楽しもうというテーマでやってきました。どこかのカリスマボーカルが“生きてりゃまたどこかで会える”といってました。全力で生きていこうと思います」と熱い言葉を伝えた。「いうことない。楽しかったです。ツアー、ありがとうございました。以上っ!」とどこまでもらしい言葉を放ったyujiに続いて、masatoは「みんなのなかでどれだけSuGが大切なものなのかが伝わりました。ただただ楽しくライブをさせてもらい、メンバーのいいところもすごく見つけられて。自分たちがやってきた曲が、さらに素晴らしい曲に育っていって。すべてが幸せでした。SuGを愛してくれてありがとうございます」と各々この39日間を振り返った。武瑠は、人生全てを出し尽くして作ったSuGがあり「真剣に作ったからこそ、音楽を超えたところでSuGに紐づくものすべてがつながって、今回のボーナスステージがあったんだと思います」といって、過去のSuGに感謝の気持ちを述べた。そういう気持ちになったからこそ、今後は「たまにはSuGを額縁から取り出してもいいのかなと思いました。いつかまた額縁から取り出すとき、それぞれが自分に自信がある人生を送れていたら、きっとこの“奇跡”は起こると思います」とポジティブなメッセージを伝えた。そうして、ライブ定番の人気曲「不完全Beautyfool Days」、SuGのアティテュードを歌ったメジャーデビュー曲「gr8 story」をみんなで歌って本編を締めくくった。

アンコールの声に迎えられた5人は「LOVE SCREAM PARTY」、「ときどきすてきなこのせかい」をパフォーマンス。「数字じゃくくりきれない道を作ってくれたSuGに紐づくみなさん。ありがとうございました。こんなボーナスステージがあるとは思わなかった」と無邪気な笑顔を浮かべた武瑠は、「この後の捌け方分かんない」といって「じゃあ昔みたいに“せ〜の”でジャンプして終わろう」と提案。最後はみんなで手を繋いで、ジャンプをして「これから5人を、よろしくお願いします」という言葉を残し、多幸感や祝祭感がどこまでも溢れまくった、キラキラしたSuGの39日間という期間限定復活を締めくくったのだった。

<DAY1>“白SuG”集合写真

<DAY2>“黒SuG”集合写真

SET LIST

01. teenAge dream
02. DEAD or DEAD
03. SCREAM IT LOUDER
04. CRY OUT
一MC&集音一
05. AGAKU
06. FRIDAY!!
07. 0 song
08. 桜雨
09. 神様の悪戯
一MC&集音一
10. MISSING
11. HELLYEAH
12. 無限Styles
13. B.A.B.Y.
14. SICK'S
15. Smells Like Virgin Spirit
一集音-Day1 Versus Day2一
16. Vi-Vi-Vi
17. ☆ギミギミ☆
18. 不完全Beautyfool Days
19. heavy+electro+dance+punk
20. gr8 story

ENCORE
01. LOVE SCREAM PARTY
02. ときどきすてきなこのせかい

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